12/25 災害2日目 4:38 ジオ石油奥富サービスステーション
――
「ごご、ごめんなさい!」
ぱりん!
青山透は申し訳なさそうに勢いよく謝ると、器用にガラス戸の鍵部分を
石で割り、手際よく鍵の部分だけを壊し店内に入っていった。
「思ったとおりだ、佐伯さん。
店員用の仮眠スペースがあるから、とりあえずここで休むといいよ」
店内の奥のドアから青山は振り返り、婦警制服姿の佐伯優子に声をかけた。
「すいません、青山さん・・・」
優子がよろよろと店内に入り奥のドアをくぐった時には、青山は既に
背を丸め石油ストーブに火を入れている。
出会って間もない頃だったら青山のこの行動力を意外に感じたかもしれない。
ところが、頼りなさそうな第一印象とは裏腹に、青山の行動力と判断力は
確かなものであることを今の優子は知っていた。
――
時は30分程前に遡る。
一路奥富ダムに向かうべく、二人を乗せたレストラン・アンジェリーナの
軽乗用車はみぞれ混じりの豪雨の中をひたすらに飛ばしていた。
「佐伯さん、大丈夫?寝てて、いいよ?
奥富ダムまでは、まだ2時間くらいはかかるからね」
先ほどからうつらうつらと頭をもたげさせる助手席の優子に、運転席の青山は
声をかけた。もっとも、寝てていいと言われても、富坂市内ではあちこちで
道路陥没や浸水・崖崩れが起こっており、ただでさえ乗り心地は二の次の
商用軽自動車は想定外のオフロード走行に悲鳴を上げ、眠りに落ちそうになると
車への何かしらの衝撃に叩き起こされるのだ。
しかし、優子の目にはそう言う青山のほうが限界に近いように見えた。
事実、先ほどからこの車、2,3回怪しげな蛇行運転を繰り返しており、
優子が完全に眠りに落ちることができない原因のひとつはその怪しげな車の
挙動でもあった。
車体が大きく揺れる。車が4回目の蛇行を行ったその時、たまらず優子は叫んだ。
「青山さん!」
ビクッと顔を上げ、車の挙動を戻す青山。
「危ないですよ!
確かに急がなきゃいけないかもしれませんけど、仮眠、とりましょう」
「わわわわかったよ・・・き、君がそう言うのなら・・・」
実際、この二人の疲労と睡魔は限界に近かった。
執拗にあの刑事に追われ、雨の中を走り、濁流の中を歩き、青山に至っては
それに加え成人男性を背負っての移動に刑事にタックルまでかましている。
優子は睡眠をとるのは車内でいいと言ったが、既に雨は雪に変わっており、
最終的には吹雪の中車内で寝てしまうのは危険だという青山の意見を
素直に聞いた形となる。
――
優子は石油ストーブの灯りに照らされた室内を見渡した。
簡易ベッドと事務机、雑誌と帳票類が詰まれたラックの殺風景な部屋。
唯一事務机の上の安そうな卓上クリスマスツリーだけが季節感を誇示するように
石油ストーブの灯りにゆらめいていた。
優子はひとつだけのベッドを見て一瞬顔を赤らめたが、そんな優子に
気付く風もなく椅子に腰かける青山を見て、内心がっかりした。
そう、確かにがっかりしたのだ。
出会って半日も経っていなかったが、優子は目の前の、お世辞にも男前とは
いえない気弱そうな眼鏡の青年に惹かれている自分を自覚していた。
「ああ、佐伯さんはちゃんと横になりなよ。
僕は椅子でいいからさ」
立ったままの優子に気付いた青山は優子に優しく声をかけた。
「そんな、青山さんこそお疲れですよ!ベッド、使ってください」
「いやいや、そういうわけにはいかないよ!
大丈夫だよ佐伯さん、僕は、椅子で寝たりとかよくあるから」
ああ、優しいこの人は、こういう時はあくまで引かないんだろうな。
そう思った優子は、少しだけこの優しい男を慌てさせてみたくなった。
悪戯っぽく小首を傾げ、言う。
「それじゃあ・・・一緒に寝ませんか?」
間。
ごうごうと激しく風と雪が打ちつける音だけが静寂した部屋に響く。
事態を把握できないのか、ぽかんとした表情で優子を見上げた青山は
小首を傾げる優子を見て口をぱくぱくさせはじめた。
「な、ななななな・・・」
ずでん!
立ち上がろうとして体勢を崩し勢いよく椅子からひっくり返った青山は、
尻もちをついた体制のまま裏返った声で叫んだ。
「なななな何を言っているんですか佐伯さん!?」
ひっくり返った拍子にズレ落ちた眼鏡を直しながら、引きつった笑みを返す青山。
「じじじじょ、じょ、冗談きついなぁ佐伯さん、あはは、はははは・・・」
少しだけ慌てさせてみたい。
そう望んだのは自分自身の筈なのに、あまりにも予想通りの青山の反応を見て
悲しくなった優子の口からは、次の瞬間、自分でも予想できない言葉がこぼれていた。
「本気です」
悲壮な表情を浮かべた優子は、青山の前にぺたんと座り、言った。
「青山さん。
私は、本気です・・・」
優子の表情に事態を笑って流せない事を悟った青山は、両手を優子の肩に乗せ、
諭すように、あくまで優しく言った。
「君は、色々ありすぎて気が動転しているんだ。
そんな風に、流されちゃ、駄目だよ」
「流されちゃ駄目ですか!?」
青山の言葉が終わらないうちに、優子は悲痛な顔で青山を見上げ叫んだ。
きっかけは確かに冗談のはずだったのに、青山の諭す言葉で優子の中の何かが弾けていた。
今の自分は流されている。図星だ。
それでも、自分の中の様々な感情が抑えられない。
どうしてお兄ちゃんが殺されなきゃならないの・・・!
どうして私が犯人にされなきゃならないの・・・!
どうして警察は私を殺そうとまでするの・・・!
どうしてあなたはそんなに優しいの・・・!
わからない、何を信じれはいいのかわからない・・・!
抑えられない様々な感情はその美しい瞳から大粒の涙となって流れ落ちていった。
「青山さん・・・」
青山の胸にもたれかかり、優子は泣き崩れた。
自分自身の中でうずまく疑問と感情のパズルを組み立てられる程には佐伯優子は
聡くはなく、今の優子は、本能のまま何かにすがろうとしている女だった。
胸にもたれかかり泣き続けるそんな優子を、青山はぎこちない動きでそっと抱き寄せた。
ふたたび訪れる静寂。
街の喧騒は全く聞こえず、響くのはただ風と雪が激しく鳴く音だけ。
青山の腕の中で泣き止んだ優子は、そっと目の前の青山を見上げた。
複雑な表情を浮かべて固く目を閉じていた青山は、深いため息をひとつ落とすと、
ゆっくりと目を開く。
目の前にはまっすぐに青山を見つめる優子の瞳があった。
優子を見つめ返した青山は、ふと表情を消し、優子がこれまで聞いた事のない、
低い、静かな声で言った。
「佐伯さん。
・・・後悔、しないね?」
――
青山は小さく頷いた優子の肩を抱き、ベッドに座らせた。
青いスーツの上着を脱ぎその隣に腰掛けた青山は、手錠に繋がれた優子の手をとった。
じゃらり。鈍い鎖の音が部屋に響く。
青山は手錠に繋がれた手を見つめる。優子の細く白い手首は過酷な逃亡の中で擦れ、
うっすらと血が滲み出ていた。
「佐伯さん・・・痛そうだね」
そう呟いた青山は、血が滲む傷口に舌を這わせた。
傷口を這う青山の舌に優子はぴりりとした痛みを感じていたが、その痛みは
優子の身体を熱くする官能的な痛みだった。
そして、その痛み以上に優子の心を乱したのは、傷口に舌を這わせる、
今までに見たことのない青山の表情。
どこか倒錯的なその行為に身体の芯が熱くなってゆく。
「外してあげられればいいんだけど・・・」
手を取ったまま顔を上げた青山は、そのまま優子に口づけた。
血の味。
唇を割って青山の舌が入ってくる。
「んんっ・・・」
思わず優子は吐息を漏らしたが、青山はその吐息を許さない程に強く
優子の唇をふさぎ、そのまま覆いかぶさるように優子を押し倒した。
押し倒された優子は、本能のままに強く深く青山と舌を交わらせた。
正確に言えば、経験の無さ故に本能に頼るしかなかったのだ。
くちゅくちゅと舌を交わらせながら、血の味が唾液に溶けてゆく。
優子は呼吸を求め唇を開いた。
ところが、開かれた唇は青山にさらに強い力で塞がれ、優子は呼吸を許されない。
青山さん、苦しいよ・・・、息が・・・できない・・・
優子の意識が混ざり合った苦痛と官能で遠くなりかけた時、血の味が完全に
唾液に溶けたのを見計らったかのように、青山の唇は優子を解放した。
「はあっ・・・!」
優子は喘ぐように大きく息を吸い込んだ。
青山は優子の苦悶の表情にとうに気付いていたが、構わず荒い手つきで
優子の婦警服のネクタイを解き、ブラウスのボタンを外していった。
――
はだけた胸元から、形の良い膨らみを包む黒いブラジャーが覗く。
青山の手がブラの上から胸に触れる。触れた手とブラの布地と乳房の先端が擦れ、
ただそれだけで優子の身体はびくりと反応した。
その反応を悦しむかのような動きで胸を揉みしだかれながら、耳元に落とされた
青山の唇がそのまま首筋に這ってゆく。
「ひぁっ・・・・」
優子は思わず声にならない喘ぎをこぼした。
揉みしだかれる胸、唇、舌、あらゆるところが触れ擦れるたびに、身体の中に甘い
電流が走るような感覚に襲われ、それはびくびくと身体を震わす動きとなって現れる。
そして、その度に優子は自分の中の何かが溶けていくのを感じていた。
常に命の危険と隣り合わせだったこの一日のせいだろうか。
研ぎ澄まされた感覚は、優子の身体を普段とは比べ物にならない程に敏感にしていた。
青山の手がブラを押し上げると、ストーブの灯りだけでも白さがはっきりとわかる
形の良い乳房が露になった。乳房の先端の突起は固くしこりつんと上を向いている。
(いやっ・・・は、恥ずかしい・・・・)
自分が感じているという事実がさらけ出された事が恥ずかしく、優子は咄嗟に
胸を隠そうとしたが、両手を前に拘束されている手前、胸を隠す腕は皮肉にも自ら胸を
寄せ上げる形となり、結果的に胸の膨らみを更に強調する形になってしまっていた。
青山は動きを止め、顔を赤らめ困惑した表情で目を逸らす優子を改めて見据えた。
薄汚れた婦警服から覗く白く柔らかな肌。押し倒された時にはだけたスカートからは
その機能をもはや果たしていないボロボロに破れたストッキングに包まれた傷だらけの脚。
そして、あらゆる抵抗を無意味なものに変えてしまうであろう、手錠。
その姿が嫌でも男の劣情をかき立てる事に、あまりにも無自覚な女。
軽くため息をついた青山は、自らのネクタイを緩めると、手錠の鎖を掴み優子の両手を
片手で頭上へと押さえつけた。
じゃらっ。勢い良く鎖が擦れる音と共に、再び乳房の突起が露になる。
「あっ・・・」
真っ赤になってつい切なげな声を出した優子に、青山は顔を近づけて言った。
「・・・僕だって、一応は男なんだよ?」
手錠ごと押さえつけられた両手に一層強い力が込められたのを感じ、優子は逸らした
目線を青山に戻した。
息がかかるくらいの距離。青山の眼差しに、視線を外すことができない。
「後悔しないと言ったのは君なんだからね」
こうなった以上やめるつもりはない。
青山の眼鏡越しの目がそう言っているのを、優子は正しく理解した。
そして、理解したことがもうひとつ。
青山相手に抵抗するつもりは無いが、どちらにしても今の自分に抵抗の術はない。
これから青山とそういう行為に及ぶとしても、『少し状況が普通でない』ことに、
押さえつけられた両手に込められた力で優子はようやく気がついたのだ。
繋がれた手錠。それは、行為のすべてを青山に委ねるしかないことを意味していた。
――
青山の下で、優子は翻弄されていた。
痛いくらいに固くなった乳首に青山の舌が這い、同時に反対側の乳房を今までよりも
強い力で掴まれ、固くなった乳首をつね上げるように転がされる。
舌に押しつけられるように強く乳首を舐めあげられたかと思うと、今度は唇と舌で
ちろちろと優しく刺激される。
絶え間なく与えられる刺激に、優子はびくびくとした身体の震えを止めることができない。
掠れがすれに声にならない吐息を漏らしながら身体を震わせるそんな優子の姿は、
抵抗していやいやをするようでもあり、艶かしく身体をくねらせるようでもあり。
その姿に、青山の劣情は間違いなく加速していた。
青山は、優子のその震えすら許さないように身体を密着させ優子を押さえ込んだ。
青山は決して体格が良い男でもないのだが、それでも優子の体はあたかも支配下に
置かれたようにすっぽりと青山に組み敷かれてしまう。
「あ・・・」
優子は思わず声を漏らした。
再び首筋へ這わされた舌のせいだけではない。
身体が密着されたことにより、優子の太股に服の上から青山の硬いものが押し付けられたのだ。
(そうか・・・今はもう、青山さんもその気なんだ・・・)
青山に求められている。そう思うと、なお一層身体の芯が熱くなる。
熱さのあまり何かが溶けそうな感覚は、じゅんと熱いものとなってそのまま文字通り
溶け出してしまっており、優子は堪らず脚を擦り合わせるように身体をくねらせた。
その擦り合わせる脚の動きが硬くなった青山のものに更に刺激を与える。
優子のその動きに気付いた青山は、くすりと意地悪そうに小さく笑うと、押さえつけた
両手はそのままに身体を一旦離し、はだけたスカートをたくし上げ素早くするりと
ショーツの中に手を滑らせた。
合わされた太股に手を阻まれ、中指だけを奥へと潜らせる。
潜らせた中指を閉じられた太股の間に沿って滑らせると、ぬるりとした粘液とともに
唇を思わせる柔らかい肉の感触が指に絡みついてきた。
「僕、そんなに何もしてないよ・・・
佐伯さん、感じ易いのかなぁ?」
「ち、違います!今日はっ・・ぁっ・・・!」
優子の否定は最後まで言葉にならない。
ぬらぬらと愛液が絡みついた青山の指が優子の肉芽を探し当て、肉芽にその粘液を
塗りつけるように妖しく動いたからだ。
優子の身体がびくんと大きく仰け反る。
(やぁっ、な、何、これ・・・!)
快感に慣れていない優子の身体に電撃が走る。
「知らなかったなぁ、佐伯さんがこんないやらしい子だったなんて」
優子の反応を悦しむかのように、薄い笑いを浮かべた青山は割れ目から溢れる愛液を
すくってはその粘液で肉芽を弄んだ。
(気持ちいい!?ぬるぬるして・・・気持ちいい!?)
優子は、身体を駆け抜ける慣れない快感に戸惑いつつも、羞恥のあまり必死に否定の
言葉を口にし続けていた。
「ち、違います・・・違います・・・やぁっ・・・」
「違わないよぉ、今日始めて会った男にこんな事させてるんだよ?
なんていやらしい子なんだ君は」
いつもの青山からは想像もつかないような言葉が妖しい声で次々と降ってくる事が、
優子の羞恥心と混乱に拍車をかける。
「ひょっとして」
じゃらり。押さえつけていた両手を解放し、手錠の鎖を指にひっかける青山。
「"手錠は好きでつけてる"って、実は案外、本気だった?」
「あ、青山さんっ!」
優子は顔を赤くして青山に抗議したが、青山はそれを軽く無視するとショーツと
ストッキングに手をかけ、一気に膝まで引き下ろした。
――
既に意味をなさない程に破れたストッキングであったが脱がす際に破られるような事はなく、
青山は抱えた優子の右脚からショーツとストッキングをするりと抜いた。
「っつ・・・・!」
ズキッ。脚のあちこちにある擦り傷が脱がされるストッキングと触れ合い、優子は秘所を
晒された恥ずかしさよりも先に、傷の痛みに小さな悲鳴を上げた。
「ごめん、痛かった?」
そう言うと青山は目前に抱えたままの優子の膝の擦り傷を舐めた。
「ひぁっ!」
冷えた傷口に生暖かい感触が広がる。ズキズキするのにどこか心地いい。
手首を舐められた時と同じ、身体が熱くなる感覚に襲われ、優子は全身をひくひくさせた。
「あ、青山さん・・・汚いですよ・・・」
優子は傷口を舐める青山に声をかけた。
傷口に舌を這わす青山の表情はどこか恍惚としているようにも見え、優子の心を更に乱す。
「どうして?」
薄い笑いを浮かべたままの青山はそう言うと優子の膝裏を掴み、自らの体を割り込ませて
大きく脚を開かせた。
「きゃっ・・・」
今度は恥じらいで小さな悲鳴を上げる優子。
「ここはそうは言ってないみたいだけど?」
くちゅっ。
愛液でてらてらと光る閉じた割れ目に指を這わすと、それだけで湿った音が部屋に響く。
そのままくちゅくちゅとわざと音を響かせるように軽くなぞるように指を操らせると、
きゅっと閉じているのに柔らかい肉感が青山の指を悦しませた。
「きれいだね、佐伯さんのここ・・・」
「ゃぁ・・・見な・・あぅっ!」
再び敏感な突起をぬらぬらと愛液にまみれた指先に捕らえられた優子は、声にならない
叫びを上げて身体を大きく仰け反らせた。
充血した突起を円を描きながら押し付けるように弄ばれると、頭の奥まで痺れてしまいそうな
電流が身体中に流れ、身体の奥からはとめどなく愛液が溢れてくる。
「凄いね・・・触るだけでこんなになっちゃうなんて、
僕の入れたら、佐伯さん、一体どうなっちゃうんだろうね?」
「そっ、そんな事・・・いやぁ・・・ぁあっ・・・・」
羞恥に染まった表情で首をふるふると振る優子。
そんな優子の反応を楽しむようにひときわ意地悪そうな微笑みを浮かべた青山は、
くちゅりと中指を一気に優子の奥まで挿し入れた。
「っああああああ!」
肉壁を押し割って食い込んできた指の感触に堪らず優子は叫び声を上げた。
青山の顔から笑みが消える。
優子の硬い膣壁は中指でもきゅうきゅうに狭く、とろとろと溢れる愛液で潤滑そのものは
スムーズに行われたものの、侵入を拒むかのような締め付けで肉壁が指を押し返してくる。
青山はまさかという表情で優子を見た。
肩で息をする優子は何かに耐えるように固く目をつぶり、目尻にはうっすらと涙が滲んでいる。
まさか、まさかそんな。
「さ、佐伯さん・・・君、も、もしかして・・・?」
先程までの様子とは一転、一気にへたれた空気をまとった青山はおそるおそる優子に訊ねた。
涙ぐんだ優子は観念するように消え入りそうな小さな声で答える。
「・・・はい・・・・・・したこと、ないんです・・・・」
――
本当は黙っているつもりだった。わからなければそれにこしたことはないと思っていた。
二十歳にもなって男性経験が無い。
優子にとってはものすごく恥ずかしい事実だったのだ。
青山にどう思われるかが怖い。優子は動きの止まった青山を下からそっと見上げた。
申し訳なさそうな表情で壊れ物を扱うかのようにゆっくりと指を引き抜く青山は、まぎれもなく
いつもの青山だった。
「ごご、ごめん・・・色々、意地悪言っちゃったね・・・
い、痛かったでしょ?大丈夫?いい痛かったら止めようか?」
行為の全てを止めてしまいそうな勢いで青山が訊ねてくる。
ここまできてその発言のほうがよっぽど意地悪だ。
青山の質問に顔を俯かせた優子はそう思った。
「・・・そんな意地悪言わないでください・・・」
俯いたまま小さく呟く。
「え?」
小声で聞こえなかったのか、青山は訊き返した。わざとじゃないにしても本当に意地悪だ。
「あ、あの・・・」
恥ずかしい。こんな格好で、こんな状況で、自分からお願いするのは。
でも、言わないとこの人は本当にやめてしまうかもしれない。
恥ずかしさのあまり涙を滲ませながら、優子は必死の思いでお願いを口にした。
「・・・・・やめないで・・・ください・・・」
沈黙。羞恥に顔を赤らめ俯いた優子に、青山は最後の確認を入れる。
「・・・本当に、僕なんかでいいの?」
こくんと頷く優子。
「確かに、流されてるのかもしれません・・・けど、
流されるのなら・・・・私、青山さんがいいんです・・・・」
「わ、わかったよ・・・君がそう言うのなら・・・・
で、できるだけ優しくするから・・・」
「流されたいんです」
「え?」
意味がわからずに訊き返す青山。
「青山さんがいつもするように、普通に・・・してください・・・」
「だだだ、だって、普通にしたら佐伯さん、痛いよ?」
「いいんです」
優子は俯いていた顔を上げ、潤ませた瞳で青山を見つめて言った。
「青山さんの・・・好きなようにしてください・・・」
これは反則だ。
不覚にもくらりとする青山。
好み云々はさておいても、胸元も下半身も露わな婦警服姿手錠オプション込みの可愛い女、
しかも処女に涙を浮かべた切なげな表情でこんな懇願をされて平常心でいられる男が果たして
いるのだろうか。
「反則だよ・・・」
「はい?」
「あ、いいいいやぁ、何でも」
動揺のあまり思わず思った事が口に出てしまっていた。
青山は自問自答する。
彼女自身がここまで言っている。ここまできて紳士的に、理性的に振舞う意味はあるのか?
流されたいと彼女は言っている。むしろ、こちらも状況に完全に流されてしまおうか?
自分の役目、目的を改めて思い出す。既に自分はここまでの信用を勝ち得ている。
もう一人の自分が囁く。
ほんの少しだけの間、面倒なことは全部忘れてただ状況を楽しんでしまえ。
自分自身の声に従った青山は、理性の証ともいえる眼鏡を外し、ズボンのベルトに手をかけた。
――
優子は青山を見つめていた。
ほんの少し何かを思案するような表情を見せた青山は、徐に眼鏡を外すとスラックスの
ベルトに手をかけていた。
カチャカチャとベルトを外す音に、優子の心拍数は一気に跳ね上がる。
視界の隅に、青山のスラックスから覗く赤黒く反り立ったものが見え隠れしていたが、
直視すると恐怖を覚えてしまうような気がして優子はそれを正視することができず、
どこか不安げな表情のまま、ただ青山の顔だけを見つめていた。
眼鏡を外した青山の、意外と鋭い眼差しと視線が交わる。
どくん。その眼差しに心臓を鷲掴みにされたように鼓動が跳ね上がる。自らの心臓の音で
どうにかなってしまいそうで、優子は手錠で拘束された腕でぎゅっとはだけた胸を押さえた。
青山は視線を外さない。
射抜くような視線で優子を見つめたまま、もう待てないと言わんばかりにその身体に
覆い被さると、優子の傷だらけの膝を立てながら、素早くと腰を沈めていった。
ちゅく・・・
「あ・・・」
互いの性器が触れ合う。
硬く熱いものが愛液を絡みつけるようにちゅくちゅくと割れ目にこすり付けられると、
愛液にまみれながらもぴっちりと閉じていた肉の相は、こすり付けられる程その熱い
肉塊によって少しずつ左右に押し広げられる。
膝を抱える青山の手に力がこめられ、これ以上ないくらいに容赦なく優子の脚が広げられると
そそり立った肉塊の先端がまだ誰の侵入も許した事のない優子の中へぐぐっと押し入ってきた。
「あぁっ・・・・!」
未知の感触が優子を襲う。
自分の中に押し入ってくる硬く大きく熱い塊。
その肉塊を強く押し返す処女の証。
優子の処女膜に青山の亀頭が埋没する。
どくどくという互いの性器の脈動が互いの興奮に拍車をかけてゆく。
優子の脈動を感じながら、押し返される力以上の力で少しずつ、少しずつねじ込まれてゆく青山自身。
(む、無理!こんなの・・・絶対に入らないっ!)
そんな優子の思考などお構いなく、青山は力任せにぬめりをたたえた粘膜を押し広げてゆく。
今やどす黒い本能だけで動いている青山に、最早躊躇は無い。
めり・・・ぷつっ・・・・・・
「ひっ・・・・ぁ・・・・」
徐々に裂けゆく痛みに無意識に体をよじらせ逃げてしまう優子。
青山は、逃げる優子の細い腰を掴みぐいっと引き寄せ、のしかかるようにして肩を押さえつけた。
「佐伯さぁん・・・駄目だよ逃げたりしちゃあ・・・」
荒い息づかいで、どこか嬉しげにも聞こえる声で囁いた青山は、優子と繋がった一点に
自らのすべての体重をかけた。
その瞬間。それが音だったのか感触だったのかはわからない。
ぶちぶちぶちっ。
「っつあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
悲鳴とも喘ぎともつかない細い音が優子の口から発せられていた。
想像を超える破瓜の痛みにぎゅっと閉じられた目からは涙が溢れる。
その痛みを忘れられるくらいに青山に抱きつきたかったが、手錠の拘束がそれを許さない。
優子は、涙をぽろぽろ流しながら、青山の胸元のワイシャツとネクタイをたぐり寄せるように
ぎゅっとしがみつくしかなかった。
(ダメっ・・・自分から言い出したんだから・・・泣いちゃ駄目・・・!)
痛みには強いほうだと自分では思っていたが、破瓜の痛みは別格だった。
生まれて今まで傷などついた事のない場所に傷がつき、痛いなどと感じたことのない場所が痛いのだ。
想像できる訳もない。
こうなりたいと自分から言い出したこともあり、泣いたりは絶対にしないつもりだったが
"自分が裂けている"、それがリアルに感じられる痛みに涙が止まらなかった。
それでも、せめて、痛いとは絶対口にしないように、優子はくっと歯を食いしばり苦痛に耐えていた。
そんな優子の思惑を知ってか知らずか、まるで虐めるように男のそれは更に奥へ奥へと
処女肉を押し分けて捻じ込まれてゆく。そこはぎちぎちに狭いながらもとろとろと十分に濡れているので、
捻じ込みさえすれば、捻じ込んだ肉塊に心地よい抵抗を与えながら柔軟に入っていく。
僅かに動かれる毎に、優子は息を吐き苦痛に喘ぐ。
そして、優子本人の苦痛とは裏腹に、繋がった結合部は男には抗えない快感しか与えない。
「くぅっ・・・・あっ・・・・」
「痛い?」
痛いっ・・・痛い・・・!
痛みを振り払うかのように優子はふるふると首を振るが、涙は止まらない。
「・・・嘘は、よくないよ」
「嘘なんか・・・はぁっ・・・・ひああっ!!」
シャツを必死に掴んだまま苦しくて深く息を吐いた刹那、それを見計らったように一気に突き入れられた。
優子の秘裂ははじめての男ですべて埋められ、互いの腰が完全に密着する。
優子の肩を押さえつけていた青山は、優子の頭を抱くように覆いかぶさるとその首筋に顔を埋めた。
耳元で聞こえる青山の息づかいは紛れも無い雄のそれだった。
男としての青山をいやでも意識せざるをえないその息遣いに、これからどう扱われようとその相手が
青山さんなら・・・と優子が覚悟を決めていたその時、
「・・・痛かったら痛いって言っていいんだよ」
優しい声だった。
「えっ・・・?」
「無理して堪えなくてもいい。
こんな時まで、強がる必要なんかないんだからね」
強がりをすべて溶かすかのような優しい声だった。
青山の言葉に、心が溶けていく。
どこまでこの人は優しいんだろう・・・
張り詰めさせていた気持ちがすべて崩れていく。
優子の心の堤防は、その瞬間、決壊した。
「うっ・・あうっ・・・・ごめんなさい、青山さん・・・
ひくっ・・うえっ・・・痛いです・・・」
優子は繋がったまま、堰を切ったように泣きじゃくり始めた。まるで子供のように。
この一日、張り詰めていたものがすべて崩れていく。
少し困ったようないつもの顔で笑った青山は、小さい子供をあやすように、
どこまでも優しく優子の頭を撫でた。
◆
我ながらよく言うよなと心の中で自嘲しつつ、優子の頭を撫でながら青山は自分を落ち着かせていた。
こんな状況下で必死こいて落ち着こうとしているのにはそれなりの理由がある。
処女という事もあり、もっと硬い感触を想像していた佐伯優子のそこは、男性経験はなくとも
体は女として成熟しているのか、予想に反し、ただ狭いだけでなく包み込むような柔らかさを備えた
肉壁がひたりと僕自身に絡みつきまわり、奥へ奥へとと吸い込まれそうなその感触がたまらずに・・・
………要は、あまりの心地よさに一瞬射精感に襲われそうになったのだ。
ちょっ・・・流石にそれは早すぎるぞ。落ち着け、僕。
心の中で苦笑しつつひとりツッコミを入れながら、一旦動きを止めて落ち着いている次第だった。
余裕かましてるようで青山、実のところかなり必死である。
折角だし、もっと愉しまなければ。
「泣きたかったら泣けばいいよ。
我慢なんかしなくていいからね」
しかし、我ながら本当、よく言うよな。まあ、優しい男のふりは得意だ。
勿論、今優しい言葉をかけているのは優しさからなどではない。
単に、素直に痛がってくれたほうが愉しいからだ。
つづく
最終更新:2006年08月08日 04:10