ヤドリギ

  • 古代ギリシャでは、鳥を捕えるためのトリモチを寄生木から作った事が知られている。
   『イソップ寓話集』で、ツバメフクロウが将来の難を除くために寄生木の木を切り倒すよう
   進言するが、他の鳥に一笑に付されたため鳥たちは人間に捕えられるようになった、という話がある。

  • プリニウス『博物誌』第十六巻に、ヤドリギを用いた鳥もちの詳しい作り方が載っている。いわく、
   ムギの収穫期に未熟のうちに採取したものを用いる。干してすっかり乾いたところで搗き砕いて水に浸しておくと、
   やがて腐る。(プリニウスは、これは「腐ることによって魅力あるものになるたった一つの例」であると言っている)
   それを再び搗き砕いて流水の中に浸しておくと、その皮を失って内部の果肉が粘着性のものになる。
   これを油で捏ねることで鳥もちができるのだとか。



  • また、プリニウス『博物誌』第十六巻に、ガリア地方のドルイドがヤドリギとそれが宿っている木をこの上なく神聖なものと考えている事を述べている。
「あらゆるものを治癒する」という意味の土地の言葉で月を歓呼しながら、彼らはある木の下での生贄の式と饗宴の準備をし、二頭の牡牛を連れて来る。その角はこのめでたい折に初めてくくられる。白い法衣を着飾った一人の僧侶がその木に攀じ登り、金色の鎌でそのヤドリギを切り落す。するとそれは白い外套の中に受け止められる。それから最後に、それを賜った人々は情深い賜物を授けられるよう神に祈りながら生贄を殺す。彼らは飲み物に入れて与えられたヤドリギはどんな不妊の動物にも生殖力を与え、そしてそれはすべての毒に対する解毒剤だと信じている。
   また、雄山閣『プリニウスの博物誌』ではヤドリギが宿って神聖と見られるのは「カシに限る」という記述があるが、
   おそらくこれはヨーロッパナラを指すと見られる。詳細はヨーロッパナラの項目参照。


      参考文献

『イソップ寓話集』
『プリニウスの博物誌 Ⅲ』



最終更新:2016年09月01日 03:06