- 『羽黒山縁起』『三山雅集』によれば、能除太子がこの山を開山。のちにその跡をしたって役小角が尋ねてきたが、権現が現われ修行不足として追い返したという。その後荒沢の常火堂で修行をし、ようやく登る事ができたという。
- 能除太子が荒沢に不動明王を勧請して護摩を焚こうとしたところ、不動明王みずから剣をぬいて自分の左臂を切り、したたりおちる血を護摩木にそそいだところ、その血は猛火となって燃え上がった。これが荒沢の常火堂のおこりという。
- 月山は月の神を祀るため、兎が神の使いだという。大晦日から元旦にかけておこなわれる松例祭で、兎のぬいぐるみをかぶった役が登場する「兎の神事」がある。
- 月山八合目から一時間ほど東北に下ったところに「東補陀落」という秘所がある。三体の巨岩からなり、陽根の形をしている。三体の巨岩は弥陀薬師観音をあらわすとも言う。
- 「東補陀落」から少し先に「御浜(おはま)」と呼ばれる湖水がある。弁財天擁護の地と言われ、雲おさまり風除(おもむろ)なるときには、微妙荘厳の弘誓(ぐぜ)の船を見ることがあるという。
ふたらくや弘誓の船に帆をかけて弥陀の浄土に入ぞうれしき(『三山雅集』所収秘歌)
(『國文学 解釈と鑑賞』1982年3月号 特集「寺社縁起の世界」)
最終更新:2010年11月11日 10:52