サラマンダー

   「チンニータラス」という地方(恐らくは天山山脈とアルタイ山脈の間のどこか)で、サラマンダー
   産出する鉱脈があるとし、このサラマンダーは動物ではなく、鉱脈から採取して砕く事で見出される
   羊毛状のものであるという(記述から見て、石綿を指していると見られる)。
   これを乾かし、大きな鉄の乳鉢で洗って土をすべて流し去り、残った糸を紡いで布を織る。
   これを火の中に入れてから引き出すと雪のように白くなり、汚れた時はいつでも火の中に入れればきれいになる。
   またマルコ・ポーロは、ローマにはフビライ・ハーンから送られた非常に立派なサラマンダーの布があり、
   これはイエス・キリスト聖骸布を包むために使われている、と記している。


  • ティルベリのゲルウァシウス『皇帝の閑暇』序文に、ゲルウァシウス本人がローマにて、
   腰紐ほどの幅のサラマンダーの革の靴紐を見たという記述がある。火中に投じる事で手垢の汚れが綺麗になったと云々。
   また、この話を記すにあたり動物としてのサラマンダーの性質を述べていることから、こちらは
   『東方見聞録』のような鉱物としてではなく、幻獣サラマンダーの革と見なされていたことがわかる。
   →火浣布


      参考文献
『東方見聞録』マルコ・ポーロ
『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』ティルベリのゲルウァシウス
最終更新:2016年10月30日 05:20