→ドラクスという水怪があり、川の淵を棲み処とし、水に浮かぶ金の指輪や盃に変身して、
水浴びする女子供を引き込むのだという。特に授乳婦が狙われ、引き込まれるとドラクスの子孫の乳母にされるという。
が、七年すると十分な報いと共に戻されるといい、戻って来た女たちは川の淵や岸辺の広大な宮殿に住んだと話すという。
ゲルウァシウスは、
フランスの
ローヌ川川辺でドラクスに連れ去られた婦人に会った事があると記している。
→ベン・バルベンの海側にあるグランジ村というところで少女が妖精に連れ去られたと噂された。
村人は少女を連れ去られまいと抱き留めていたが、結局妖精に力で負けてしまい、村人の腕の中には箒の柄だけが残された。
捜査にあたった地元の治安官は、
オグルマ草は妖精にとって神聖なものだから、これを焼いてしまえば良いと助言、
村人が助言通りに少女が消えた野原のオグルマ草を焼いてしまうと、翌朝少女は野原をさまよっているところを発見されたという。
少女の話によれば、彼女は妖精たちの馬に乗せられ遠くまで連れていかれたと言ったとか。
- 同じくイエイツ『ケルトの薄明』に、妖精たちは生まれたばかりの赤ん坊や、結婚したばかりの花嫁が居る時には
好んで山へ連れ去ってしまうといい、その場合攫われた赤ん坊や花嫁は血のぬくもりの無い妖精の国で暮らすという。
言い伝えによればそこでの暮らしは幸せで、しかし最後の審判の日に、妖精の国で暮らした人間は輝く気体となって溶ける運命にあるという。
霊魂というものは悲しみなしには生きられないからであるからと云々。
- またその際、大抵は連れ去られてから7年後に、友人などに一度、一目だけ会う事を許されるという。
→ハート・レークから2,3マイル離れたところに、若い頃妖精にさらわれた事があるという老婆がいたという。
彼女はさらわれてから7年後に家に戻されたが、その際、足の指が無くなっていたという。
踊り続けて足のつま先がなくなってしまったのだとか。
参考文献
『ケルトの薄明』W・B・イエイツ
参考文献
『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』ティルベリのゲルウァシウス
最終更新:2016年12月09日 17:09