地球空洞説

登録日:2011/07/17(日) 20:11:39
更新日:2023/09/13 Wed 21:42:22
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我々が暮らし、地を踏みしめているこの地球。


もし、この地球が中身の詰まった球体でなく、ピンポン球のような中空だったら?

そして、その内部で我々が生活できたり、あるいは全く別の世界があるのではないか?

という考え方のこと。

概要

昔から、様々な神話宗教で「地下の世界」というアイデアは非常にポピュラーだった。
やがて科学が発達し、人々は地下を科学的に解明しようとしていく。

エドモンド・ハレーは北極・南極の両極の変則的な磁気変動を説明するべく、
「地下には一つの中心核、二層の中空の球核があり、それらが空気を挟んで浮かんでいる。
それらはそれぞれ磁極を持っていて、異なる速度で自転している」という説を発表。

他にも、レオンハルト・オイラーによる「中空な地球内部には一個の内部太陽が存在する」という説、
アドルフ・ヒトラーと少数の側近が、南極の開口部から地球の空洞内部へ脱出した」という空想的な記事が流布するなど、
地球空洞説は人々の心を惑わし続けていた。



そして1967年1月6日、アメリカの気象衛星ESSA-3が、北極・南極に空いた巨大な穴らしきものを初めて撮影。
と言っても、これは衛星の仕様と、撮影した時期がちょうど極夜の時期にあたったことが原因。
当時の気象衛星は、複数のアングルからの写真を合成して一枚の写真にするのだが、当然一枚を撮ってから次の一枚を撮るにはタイムラグがある。
その結果、各方面から見た「昼間」の写真を繋いだものなのに、極地方の部分が真っ黒になり、丁度穴が空いてるように見えたのだ。


昔は長期間に渡り大真面目に議論されていたこの説だが、科学者達には一様に疑似科学であるとして退けられている。
まず、地震波の観測により、地下に巨大な空洞など存在しえないことが分かっている*1

仮にそれが間違いだとしても、地球内部が超高温のマグマ地帯であることはほぼ確実であるため、なんらかの地下世界が存在しうるのはプレートまで、つまり地下数十kmまでである。
しかし、そのように薄い*2層があっても、自重で潰れるだけだ。どのような素材でも、直径12000km、厚さ数十kmの球を支えることなど出来ない。ましてや自然のものでは。
風船の理屈で膨らませればいいと思うかもしれないが、その場合岩を気圧で支えるには数万気圧というあまりに非現実的な値が求められる。

また、そういった事情を全て無視しても、「地上とは重力が逆向きの地下世界」というのはありえない。
というのも、アイザック・ニュートンの「万有引力の法則」に従うと、球状に対称な凹面の殻内部では、殻の厚さに関わらず全ての地点が無重力になってしまうから。これは紙とペンさえあれば高校生でも求められる計算である。
地球の自転による遠心力も、重力には全くかなわない*3
それどころか、よくあるイメージ図のように中心に太陽があろうものなら、その質量が生む重力によって全てが太陽に向けて落下する。我々を待つのは落下死、さもなくば焼死である。
従って、空洞内に人や建造物が存在することは有り得ないので、地球空洞説は成り立たないのだ……。

もちろんこれは万有引力の法則やそれに乗っ取った仮説が正しいという前提の話なので、
万有引力の法則が誤ったものだと仮定すれば空洞になっている可能性もある。
しかし、様々な観測結果(地震の伝播・地熱・鉱物等々)からすれば、その可能性は限り無く極々小さいものだと言わざるを得ない。


まあ実際に見に行けばわかることなんですけどね。



余談:本作を題材とした作品の例

  • ペルシダーシリーズ
エドガー・ライス・バローズによるSFシリーズ。
全7巻で、第1巻『地底世界ペルシダー』は1922年刊行という、古典的作品。
主な舞台は地球空洞内に広がる地底世界。ジャングルが広がり、古代生物や巨大昆虫、類人猿や恐竜人、地底独自の生物など様々な生物が登場する。
「地底世界」のイメージ構築に大いに影響した作品では無いだろうか。

なお地底世界に行く方法は、ドリル式掘削マシンの「鉄モグラ」で掘り進める他、後には「極地の大穴から飛行船でターザンが乗り込む」という展開も。
…うん、あのジャングルの王者として有名な『ターザン』も登場するんだ。パロディで無く本家本元が。同じ作者の作品だし。

勿論作中では普通にマントルやコアのある地球にドラえもんたちは棲んでいるが、
TC23巻の『異説メンバーズクラブバッジ』にて地球空洞説が登場している。
何もない空洞にのび太たちが「生き物粘土」で作った地底人と「ミニ植物」が生えている。
その他、大長編『のび太の創世日記』でも、「創世セット」によって創造された地球がこの説に基づいた構造となっている。

本作では地球空洞説を採用しており、その下にマントルやコアがある設定。
「挑戦シリーズ」では当時話題となっていたUFOは地底に住む種族(作中ではUFO人と呼称)が飛ばしている設定。
「鬼太郎国盗り物語」では地球空洞の内部に住むモグラ人類とムー帝国が現れた。
前者は鬼太郎ら幽霊族の親類で温厚だが、後者は地上制服を狙う凶暴な種族。

地球内部には双子太陽が存在している別世界が存在し、チョコレー島もそこに流されている。

地下に広大な空間「ダウンワールド」が存在し、北極に地上との出入り口が存在。
凡そ2万年前に地上の環境が激変した時、一部の人類はこのダウンワールドへ潜った。それが、本作の悪の組織やヒーローである「アクマ族」のルーツである。

地球内部にも現世と似た世界が存在し、バダンはそこに潜伏していた。
しかし、そこは地球の内部などではなく、もっと深い部分であった…。

地球空洞説を元に作成された記事。設定が壮大。

地球の内部にある地底世界ラ・ギアスを舞台にしたスパロボシリーズ。
ただし、確かにラ・ギアスは「地球内部に存在する世界」ではあるものの、厳密には多次元的に折り畳まれた異空間、異世界に近い存在であり、一般的な地球空洞説における「地底世界」とは根本的に異なる。
そのため、地表面積は地上の数倍など単純な地底世界ではあり得ない設定が(半ば意図的に)組み込まれている。

レジェンダリー製作の、いわゆる『モンスターバース』シリーズ。
作中で地球空洞説を提唱するキャラクターがいる。
時系列上に並べると、当初は現実同様トンデモ扱いされているが、「怪獣」が現実の脅威として研究されるに連れ、彼らの住処や食糧源といった生物学的疑問を解決しうる材料として再評価を受けていく……という流れを汲み取る事ができる。
そして第4作『ゴジラVSコング』では、ついに地下空間が舞台となる。

地球内部に存在する地底都市アガルタが登場。
歴史に名を残す指導者や発明家、フィクサーらの正体であるレプティリアン民族、そして彼らが従える恐竜達が永久動力ヴリル・ヤーの下で繁栄しているという設定。
上記したヒトラー生存説や内部太陽説のパロディであると同時に、各種陰謀論のパロディでもある。



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最終更新:2023年09月13日 21:42

*1 気体と固体では波の伝わる速度が大きく異なるため

*2 参考までに、地球の直径は「キロメートル」の定義より12000km強

*3 というか中心から遠いほど重力は弱まり、遠心力は強まるので、地下で重力と遠心力が釣り合ったりしようものなら地表にいる我々は宇宙に吹き飛ばされる