ジャングル/熱帯雨林

登録日:2023/03/08 Wed 05:35:58
更新日:2024/02/12 Mon 20:24:35
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ジャングル/熱帯雨林とは高温多湿で木々の生い茂った環境の事である。


概要

ジャングルという言葉の語源はヒンディー語のjangalという言葉であり、木や植物が鬱蒼と生い茂って踏み入れることのできない森林を総称して読んでいたものとされている。

定義としては南方系植物が生い茂り、湿気が多く見通しが悪い環境というのが一般的である。

このイメージから派生して高層ビルが多数立ち並ぶ大都市を木々に見立てて「コンクリートジャングル」と呼ぶこともある。

熱帯雨林との違い

本来「ジャングル」という言葉は人が踏み入れることのできない森林全般を指すものであり、必ずしも熱帯雨林を指す言葉ではなかった。
なので本来なら熱帯雨林ではなく「密林」と呼ぶのが適切であろうか。
だが、熱帯雨林の事をジャングルと呼ぶことも多く、今日においてはジャングル=熱帯雨林で通用するほどに浸透している。

気候・環境

平均して気温は低くても18度以上、雨量は少ない月でも600mmと乾燥することはまずなく、上で書いた通り高温多湿な土地である。
後述するように生態系は豊かであるが土壌の方は意外にも痩せているようでジャングルそのままでは実は農耕に適していない。
これは気温が高く湿気も多いが故に分解速度が凄まじく速い為であり、更に降水量が多く養分が蓄積される前に流れて行ってしまうという事情がある。
その為、場所によっては落ち葉から溶けだして流れ出した成分によってまるで紅茶のような色をした水域が存在し珍しい魚が生息していたりする。
これがブラックウォーターと呼ばれる特殊な水域である。

しかし上手く開拓すれば作物…特にバナナやパイナップルといった南方系かつ高温多湿な環境を好む果物の農耕や栽培にも適していることから人口も多くなりやすいが、実は人間にとっては意外に危険かつ過酷な環境でもある。

理由は色々あるがまず一つ目は雨が降りやすく植物が鬱蒼と生い茂る関係で高い気温も籠りやすく、また雨を原因とする湿気の関係で体感温度も高くなりがちで熱中症になりやすいからである。
しかも見通しが悪く、遭難しやすいので闇雲に動き回るとそれだけで体力を消費してしまう。
例えるならジャングルという環境自体が天然のスチームサウナにして迷路のようなものであり、その湿気と高温、そして生い茂った木々や植物で見通しの悪い環境によって遭難者を迷わせ、体力をじわじわと奪っていくのだ。
なので湿気が多いのに水を得られず脱水で死んでしまったり、迷いに迷って更に奥へ行ってしまい、脱出できずに体力を使い果たしてそのまま衰弱死したと思わしき事例も珍しくない。

他にも多湿故に乾燥した土地に比べて伝染病が発生し流行しやすいのも大きい。
何故なら多湿で温暖な環境というのはや虻などの吸血生物が好む上、それらの生物は病気を媒介する危険な一面を持ち、刺されるリスクも増すからである。
例えばマラリアやデング熱も熱帯地域でよく発生する感染症であり、上で挙げた蚊が媒介する病気として有名である。
時に暑い環境なのにジャングルで長袖を着る必要があるのは、こうした虫を防ぐ為なのだ。

また食物も湿気によって長持ちしない事が多く、腐り易くもなるし食中毒を起こすリスクも高まる。
加えて水はけが悪い環境なのも相まって、衛生状態が悪化し易いのも忘れてはいけない。

更に国にもよるが、危険生物の割合も普通の森林に比べて多い傾向にある。
例えば東南アジア~南アジア地域では毒蛇や毒虫といったを持った生物は勿論のこと、茂みにはトラヒョウなどの猛獣が潜み、川や沼といった水辺に行けば今度はニシキヘビやワニといった獰猛な巨大爬虫類が生息しており、ジャングルに入った人間が襲われ死傷する事例も後を絶たない。
なので研究者がこれらの猛獣の生息地で調査を行う際は、ライフルなどの銃火器で武装したレンジャーが同伴するケースも珍しくないという。

そして木々や植物が生い茂り見通しが悪いその環境は、ゲリラなどが潜伏し敵を翻弄するにもうってつけであり、上手く利用すれば天然の要塞となる。
対峙する側からすればどこから敵が襲ってくるかわからない為、軍事においても恐ろしい環境の一つになり得る。
事実、ベトナムは1288年当時最強の大国であったモンゴル帝国をジャングルの環境を利用したゲリラ戦法で翻弄した末に撃退、現代においてもベトナム戦争時に同じ戦法でアメリカをも撃退しているのだ。

一方、何度も述べる通り温暖かつ閉鎖的な土地なので生物多様性に富んでおり、この環境特有の他ではまず見られないような奇妙な形をした生物や植物が多いのも忘れてはいけない。
更に人の手が及びにくい奥地となれば生きた化石や生物の進化史に深く関わるような生物学上貴重な種が発見されることもある。
現にゴリラやオカピ、コビトカバといった珍獣や生きた化石に分類される生物も
元々は人の手が及びにくいジャングルの奥地で発見された生物なのだ。

人間も例外ではなく、アマゾンやパプアニューギニアの森林の奥地には文明社会への参加を拒み現在も石器時代の生活を続けている部族が存在する。
現地の政府は彼らの意思を尊重し不干渉の方針を取っているが、違法伐採や資源を目当てに彼らの領域を侵す人々との衝突が問題となっている。

そんなジャングルだが問題点もある。
それは上で述べたように痩せた土壌であることから一度環境が破壊されると急速に荒廃しやすく、
再生もしにくくなってしまうという点である。
実際アマゾン熱帯雨林は後述の通り焼き畑農法や木々の伐採によって環境が破壊されてしまい、再生に極めて長い年月を必要とすると言われることから問題視されているのだ。



世界のジャングルとそれに関係する地域

上述した通りジャングル=熱帯雨林という意味合いとして使われているため、当項目でもジャングル=熱帯雨林として挙げていく。

アマゾン熱帯雨林

南米大陸に存在する有名なジャングルの一つでなんとその面積は約550万km2と世界最大規模を誇る。
南米諸国の中に限定しても最大の規模で中でもブラジルは国土の大部分を占めている。
生物の宝庫としても有名でアナコンダやジャガーといった南米を代表する生物もここに生息している。
しかし焼畑農業や木々の伐採といった環境破壊が問題視されており、実際にそのせいで絶滅が危惧される生物や植物も少なくないのが現状である。

ヴィルンガ国立公園

アフリカ大陸に位置する国立公園にして保護区。
ルワンダ共和国、コンゴ民主共和国、ウガンダ共和国といった東アフリカ地域に存在しており、標高の高い位置にあるためジャングルとしては比較的涼しい環境である。
マウンテンゴリラの生息地としても有名だが悲しいことに近年発見された石油を目的とした環境破壊や密猟によって絶滅が危惧されており、保護活動が進められている。

西表石垣国立公園


沖縄県の八重山諸島に存在する島の一つの西表島に存在する国立公園。
日本が誇るジャングルが存在し、この島にしかいなかったり他の島には少ない珍しい種や固有種も数多く生息しており、あのイリオモテヤマネコが生息していることでも有名。




フィクションにおけるジャングル

ジャングルといえば温暖で木々や植物が鬱蒼と生い茂ったイメージが強いので、ゲームにおいては迷いやすい迷路のようなステージで、民族音楽風のエキゾチックで陽気なBGMが流れる傾向にある。

特にアクション系ゲームでは特有のギミックとしてターザンよろしくロープのように使える蔓や一度ハマるとなかなか抜け出せない底なし沼といったものが存在することが多く、登場するモンスターもジャングルのイメージを反映してか派手な色をした毒虫や熱帯植物といったトロピカルな姿をしている傾向にある。
属性も毒虫や毒蛇が多い環境というイメージから毒属性であったり、熱帯植物のイメージから植物属性であることが多いかもしれない。
そうでなくとも見通しの悪い環境を利用して隠れながらこちらを翻弄してくるような敵も定番か。

かつて栄えたマヤ文明の影響からか、ジャングルの中にそびえ立つ遺跡のようなダンジョンもよくある。

ペルシダーシリーズ等をはじめとする地底世界の作品においても、地下の大空洞にはしばしば広大なジャングルが広がっており、絶滅したはずの古代生物が闊歩していたり、独自の進化を遂げた恐竜人等が固有の文明を築いている事も。

また、誤解を招き差別に繋がりかねないという配慮なのか最近では少ないものの、や弓矢、吹き矢などで武装した原住民のような姿の敵が登場することも一昔前の作品ではよくあった。

ジャングルが舞台の作品

ここで、ジャングルが主な舞台となる作品を紹介。

小説・映画

  • ターザン
「ジャングルといえば」でまず思い浮かぶ人も多いであろう作品。
海難事故に遭った英国貴族の赤子が類人猿に育てられ、ジャングルに適応した野生児になるというのが粗筋。

後のジャングルを舞台にした作品群に多大な影響を及ぼした名作であり、この作品の影響からか、ジャングルが舞台の作品では動物に育てられた野生児が登場する事もよくある(日本では『狼少年ケン』など)。

とくに有名なのはディズニーの映画作品「ターザン」だが、原初は小説作品。
他会社にも幾度も映像化されており、派生作品群は今やジャングルの蔦の数ほども存在するであろう。

  • ジャングル・ブック
イギリスの小説で、ジャングルに暮らす動物たちの物語。
第1話~第3話は黒豹 バギーラ に育てられた人間の子 モーグリ の冒険の物語で、動物に育てられた野生児という主題の原点でもある。
上記のターザンもこの小説から着想を得て生まれた。

何度か映像作品化されているが、有名なのはやはりディズニーの「ジャングル・ブック」。
上記の第1話~第3話をベースとした、モーグリが主人公の物語。
巨匠ウォルト・ディズニーが手掛けた最後の作品である。

ご存じエイリアンシリーズと並び有名なSF映画の一つ、プレデターシリーズの記念すべき一作目。
主人公 ダッチ・シェイファー を筆頭とする特殊部隊が南米某国のジャングルを舞台に、見えない殺人宇宙人・プレデターに襲われて一人、また一人と仲間を殺されていき、たった一人生き残ったダッチは装備も限られた中でプレデターとの戦いを挑む…といったあらすじ。

上で述べたエイリアンシリーズ同様、全体的に流血表現人体欠損などグロい演出が多く、見る人を選ぶ作品でもあるが忍者や侍を思わせるプレデターの武骨なデザインや未知のテクノロジーを駆使するプレデターと主人公の駆け引きやクライマックスの肉弾戦のシーンから人気は高く、以降も複数が作られているほど。
しかし明確にジャングルをメインの舞台としているのはこの一作目ぐらいである。

「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト」
「なんだいそりゃ」
アフリカの秘境を舞台にしたドラえもんの大長編コミックおよび映画作品。
コンゴのジャングル奥地、ヘビー・スモーカーズ・フォレストは衛星写真すら撮影できない濃霧の密林。
ドラえもん一行は、そんな過酷な環境をひみつ道具縛りで冒険していく。

わさドラ版のリメイクも制作されている。
ドラえもん新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜

漫画

  • ジャングル大帝
漫画の神様こと手塚治虫の作品の1つ。
人間の手で育てられた白ライオンがジャングルへ戻り、銃弾に倒れた父に代わってジャングルの平和を守るべく奮闘する物語。
自然界における弱肉強食や、動物と人間の関係および葛藤が描かれている。

幾度となく映像化されており、また主人公レオが埼玉西武ライオンズの球団マスコットに採用されていることから、世代を超えた知名度を持つ。

すさまじいテンポの良さと怒涛の下ネタで知られるギャグバトル漫画。
類人猿に育てられた赤子という設定は上記のターザンの系譜というかターちゃんの存在自体がターザンのパロディである。

ギャグマンガである故にジャングルの描写の忠実さなどは何とも言えないが、
蔦渡りなどジャングルという環境についての刷り込みという意味では、日本のサブカルに少なからず影響を与えた作品ともいえる。
ただ、物語の舞台の半分くらいはジャングルではなくサバンナが舞台だったりするので、ジャングルの王者というよりサバンナの王者っぽい

後続作品「新ジャングルの王者ターちゃん」はジャングルを飛び出して世界が舞台になる。


ゲーム

ご存知マリオファミリーのドンキーコングが主役の作品群。
ジャングルが登場するのは「スーパードンキーコングシリーズ」。
DKアイランド」という架空の南島が舞台。「コンゴジャングル」という地形が確認できるほか、島全体でジャングルが占める割合が広いことが確認できる。もちろん、ドンキーコングにとってはホームグラウンド。

余談だが、ジャングルの背景描写というのはSFC時代のスペックでは難題であったという(暗めの色遣いが多く、8割以上が緑色。細部まで描写しないとただの草林になる。しかし細かくし過ぎると肝心の主人公が見えづらくなる)。
その点、スーパードンキーコングはゲームグラフィック黎明期にしてジャングルを見事に描き「これ実写のジャングルじゃん」と、当時は評価されていたこともあるそうである。

ジャングルを舞台にしたクラフトサバイバルゲームで、
危険な場所故か、
ジャガー、毒蜘蛛、毒蠍、ワニ、ピューマ、蛇、ピラニア等の危険生物や、出会うと襲ってくる原住民【ワラハ族】など複数登場の他

風邪や食中毒、湿疹などの複数の病気も実装されており、プレイヤーを文字通り「緑の地獄」が襲いかかってくる。

その他

  • ジャングルクルーズ
ディズニーランドのアトラクションの1つ。
ボートに乗ってジャングルを巡っていく水上アトラクション。
過激な演出は一切ないため、老若男女あらゆる層にお楽しみいただける。

東京ディズニーランドだけではなく、アメリカと香港のディズニーランドにもある。
特にアメリカの本家ディズニーランドのジャングルクルーズはオープン当初から今なお人気を博し続けている由緒正しいアトラクションである(東京のほうもランドオープン当初からあるよ!)。

ウォルト・ディズニーが南米コロンビアの川を旅した経験を基に構成されている。
ウォルトはジャングルの様子を忠実にアトラクションに落とし込みたかったそうで、当初は本物の動物を使ったアトラクションにするつもりだったらしい。
それは現実的に難しかったので、当時の最先端技術 オーディオアニマトロニクス をフル活用したアトラクションに仕上げたのだとか。
その甲斐あって、ジャングルクルーズは今日も世界中の人々にジャングル体験を浸透させている。

2021年にはジャングルクルーズを題材にした映画「ジャングル・クルーズ」も制作された。




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最終更新:2024年02月12日 20:24