疑似科学

登録日:2019/07/25 Thu 22:57:38
更新日:2024/04/24 Wed 12:28:44
所要時間:約 52 分で読めます




疑似科学とは、既存の科学的事実を否定できるかのように詐称している何かのこと。
「エセ(似非)科学」「ニセ科学」「トンデモ科学」とも呼び、英語では「pseudoscience」と書く。



概要

教養が無い者が騙されやすいと言われるが、高学歴の人物や社会的な地位がある人物であっても、疑似科学を信奉してしまう者もいる。
酷い時には、知ってか知らずか学者や医者など、専門家が金儲けに利用している/されていることすらある。
詐欺や陰謀論同様に「自分は絶対に引っかからない」と思う人も注意が必要

「海外の〇〇大学の△△教授が××には□□が有効だと発表した!」なんてものが拡散されたりするが、安易に鵜吞みにはせずにまずは「周りの情報」をきちんと取捨選択すること。
よくよく調べていくと、実際は大学教授ではない人物の発言であったり、その人物すら存在しないでっち上げのこともある。
例えば「Royal Veterinary College , University of London ~」とだけ見て、「ロンドン大学の偉い人が何かやったのかな?」と思った貴方はちょっと待った方が良い。
「ロンドン大学」は確かに存在するが独立した17のカレッジと10の研究機関が加盟する連合を総称して「ロンドン大学」と呼ばれており、1つだけの大学のみを指して言うものではない。
更に「Royal Veterinary College」は「王立獣医学」、獣医学部である。

人間は普段使わない言語や知らない国・文化・用語に対しては意外と無頓着で特に英語などは前後の単語で意味が変わったりすることもままある*1のだから猶更気を付けるべきである。

時折、ニュースのソースとして使われる新聞「ワシントン・タイムズ」と「ワシントン・ポスト」はどこがどう違うのか説明できるだろうか?
+ 答え
「ワシントン・タイムズ」は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)系が発行している新聞。
「ワシントン・ポスト」はワシントン都市圏で多く発行されている新聞。


科学とは何ぞや

1982年にアメリカのアーカンソー州で行われた進化論裁判で、裁判官は判決文で科学の定義をこう書いた(まとめ)。

「科学とは、自然界を分析する事で、自然界の法則について大勢相手に説明するものである(超自然の存在を差し込んで分析のしようがない状態に持ち込んではいけない)」
「科学法則は論文という形で公開される。これに異論のある人はいつでも再検証してよいし、するべきである(超自然の存在を差し込んで再検証(疑う事)をためらわせてはいけない)。」
科学法則に絶対はない。科学法則は常に「現時点での仮説」である。新しい発見や技術によっていつでも反証されるし、されるべきである(「絶対」とか「真実」とかいうものは科学ではない)。

つまり、科学の定義は「個人の主観に頼らず大勢の検証を経て、理論的に自然界の物事を解析・理解する試み」であるとされる。

よく「科学的に否定された~」みたいな文があるが、これは「科学的に矛盾している」という表現が正しい。
再検証で反証される事はあっても、「科学」自体には立証する機能はあっても否定する機能はないのだ。
疑似科学というのはこの否定しない性質を悪用しているものも多い。


未科学・宗教・スピリチュアル・占い・オカルトとの違い


  • 未科学
「現在の科学で実証するのは困難だが、明確に矛盾を指摘するのもまた難しい」もの。
ただし、実際の科学的論議の場で使われる事はほとんど無い。論じようにも立証できず、不毛なためである。
疑似科学の信奉者が「あくまで立証されていないだけでこれは未科学です!」と主張することもままあるので注意。


本来は「人間はどう生きるのが幸せか?」「どうすれば社会の平穏・秩序が保たれるか?」を解き明かすのが目的なので「土俵が違う」。
とはいえ「ノアの大洪水は実際にあった歴史的事実であり、地質学的にも立証されている」「物理学による魂の立証」なんて事を論じ始めると疑似科学になる。


  • スピリチュアル、占い
QOL向上や自己啓発に重きを置くこれも、基本的には宗教同様に科学と対立する立場ではない。
しかしこれも「オーラは科学的に実証された」「科学に基づく占い」なんて事を実際の科学的証拠を無視して論じ始めるとそれは疑似科学になる。


  • オカルト
ラテン語の過去分詞「 occulta(隠されたもの)」を語源とする、視覚や触覚で感じることができない事を意味する言葉。
神秘的な物や超自然的な物を指し、「錬金術」「魔術」「UMA」「超能力」などがオカルトの代表格に挙げられる。
そこから転じて、科学で実証されていない・矛盾している分野を総称するので、上記のスピリチュアルや疑似科学も纏めてオカルトと呼ばれる。
明確な線引きは難しいが、「超能力の科学的トレーニング」「科学に基づく未来予知」を語ればそれは疑似科学と言える。


疑似科学の特徴


そもそも「まっさらな状態から実験・観察で得られた証拠・事実を互いに照らし合わせ、どのような考え方をすれば最も矛盾が少ないか」を探すのが科学。
しかし……

  • 1.自分に都合のいい証拠はどれだけ怪しくても採用、不利な証拠はどれだけ信頼性が高くても無視

「この仮説が正しいことを前提にすれば、こうなるはず」という考えの元で実験や観察を行う場合はあるが、それはあくまでも思考実験。
しかし、「まず信じる」ということが前提にあり、逆に言えば結論ありきのかけ離れている有様なので、自分の都合のいいものだけをピックアップし、自説を否定する論拠は無視するか、論破できるものだけを採用して反論し、自説の補強に使ってしまう。


  • 2.自説に反証可能性がない

科学に絶対という概念を持ち込もうとするため、当然ながら反証可能性*2を用意するという発想すら出てこない。
正しいかどうかとは次元の異なるこれが許されると、どんなトンデモ理論でも立証可能になってしまう。
断定的な見方を避けたがる本来の科学よりもインパクトがあり、無知な人ほど「エコーチェンバー現象*3」を引き起こしてしまう可能性もある。


  • 3.相関関係と因果関係の区別がつかない

例えば、「テレビの普及率が増えるとガンで死ぬ人が増える!テレビにはガンを増やす作用がある!」というような論調。

この例の場合、テレビの普及がガンの死亡率に影響を与えると言い切るには、何かしらの証拠の提示が必要になるのだが、疑似科学者にはこの区別がついておらず、「相関関係を示せた=説を立証できた」という理屈に走りがち。

この理屈を応用すると「美少女フィギュアの普及率と若者の自動車購入率の間には負の相関関係がある → 美少女フィギュアを普及させたのは、自動車を買わせまいとするフィギュア業界の陰謀だったんだよ!」という論文もどきも割と簡単*4だが、日本の場合、フィギュアの値段は車よりはるかに安いし、ガンで死ぬ人が増えているのではなく、ガン以外で死ぬ人が減っている*5
また、他の応用例としては「米花町にはガンで死ぬ人がほぼいない!米花町に引っ越すとガン予防になる!」という町おこしも出来てしまう*6事になる。やたら引っ越しや旅行を拒むあたり実際にそんな町おこしをやりかねない町ではあるのだが…


  • 4.事実ではなく感情や信念、不可視で検証困難な概念を重視

反証などに対して「そんなことは我々の信念から認められない」「高次元からのエネルギー」「従来の科学で説明不可能なエネルギー」などと
宗教系・スピリチュアル系・イデオロギー系に多い自身の感情や信念を「定説」「〇〇では常識」とお粗末すぎてツッコミ所満載な理論を掲げる。
宗教やスピリチュアル自体は科学と対立する物ではないことは先述した通りだが、疑似科学に説得力を持たせるために悪用されやすい。



認められない原因が自身の説の検証不足に由来することを認めない。
政府・大企業・学界、医療機関、製薬会社、大富豪、極端な例になると秘密結社などから「自分たちの製品・献金している企業の製品が売れなくなるから」「学者の頭が固いから」中には「秘密結社による計画の達成が困難になるから」等という理由で目の敵にされていると思い込む。


  • 6.自分たちをガリレオやパスツールに例えたがる
いずれも画期的な科学的理論を構築しながらも、当時の異端として批判に晒された ガリレオやパスツール のように「批判されているのだから自分も正しい」という謎の理論に走りたがる。*7
彼らが再評価されたのは科学的姿勢のもとに他の科学者を納得させるだけの証拠を提示できたか、後日別の人物が根拠を提示したからなので、疑似科学が正しいということにはならない


  • 7.根拠となる論文が無い/論文を書かない
科学の世界においては論文を書いたかどうかが何より重要な実績であり、どんな論文を書いてどんな学術誌に掲載されたかが非常に強力な武器になり得るのだが、何故かそれを全くしない。
「論文を書くだけの時間的余裕がない」「頭の固い科学者に論文の学術誌掲載を阻止される」などと返ってくる。
しかし、前者の主張をする人は大抵一般向けの書籍執筆やテレビ出演はしっかりやっていたりするので何をかいわんや。
後者については、「大抵のまともな学術誌には論文の査読*8がある」というのが真の原因と思われる。

+ 査読について
学術誌の世界では、非常に厳しい査読に耐える論文だけが生き残れる
明らかな間違いや、検証の進んでいない仮説が正しいものとして前提になっていたりすると容赦なくボツを食らうのである

何故なら科学の世界はこうした論文の成果を前提に新たな研究を進めていくので、こうした査読に耐えられないような論文が研究の土台になっていると、
せっかく多大な労力を支払った新たな研究が崩れ去ってしまう徒労が起きることがあるからである。
そのため「とりあえず載せる」と言うような緩い対応が取れないのだ。
査読をする科学者の人選も厳格だ。公平・厳正を期するために論文投稿者と個人的な面識がない査読者が選ばれ*9、査読者は投稿者に伏せられる*10

そして、初回から「そのままで可」「軽微な修正が必要」となることは少なく、大抵は「大幅な修正が必要」「掲載拒否」の判定とともに厳しいコメントが返ってくる
それに加えて(きちんと査定する価値があると判断された上で)難解な物ともなれば数カ月~年単位の査読の時間が必要になる場合だってある。
査読者だって論文を理解するには相応の時間が必要だし、自分の研究もある以上、他人の論文の評価にだけ時間は割けないのだ。
もちろん査読者だって人間なので、意見が変わることも当然ある。
酷いときには投稿論文の審査を遅らせ、その間に投稿論文のアイデアを盗用して自分の論文として発表する査読者すらもいる。
しかし、科学の世界ではこれだけのリスクを飲んででも科学の健全性を保っているのだ。

とはいえ、論文の掲載数で評価が定まることの多い研究者たちは、掲載してもらえないと今後大学院に在籍することすらできず、研究の継続どころか明日の生活さえままならない。
そうでなくても、本人なりに真面目に行った研究成果を否定されるというのは精神的にかなり来るものがある。
そういう研究者の論文掲載点数稼ぎに協力および学術誌の儲けの*11ために、ろくに査読をしない学術誌が「捕食出版」「ハゲタカジャーナル(英:predatory journal)」として現在学会で極めて深刻な問題になっている。
「ハゲタカジャーナルに論文が掲載された」ことでその後のキャリアが閉ざされるケース*12、ハゲタカジャーナルのリストを作ったところ掲載されたジャーナル側が訴訟も辞さないと抗議してくるケース、ちゃんと査読しているのかということを確かめるためのあからさまな釣り論文を送って掲載された際に査読をしなかった学術誌より釣り論文を送った学者側が強く批判されるなど、非常に根の深い問題なのだ。
また何より、疑似科学が掲載されてしまう危険性を孕んでおり、実際に怪しい論文が掲載されているという指摘もある。

更に言えば「送ってくれたら載せます!」状態のハゲタカジャーナルに載せる論文すら書いてない物は、そんなスタートラインにすら立っていないのだ。

論文は無いが学会発表はしている!!という主張をするケースもあるが、これも注意が必要
例えそれが本当であっても、学会発表の権威は論文とは比較にならないのである。

+ 学会発表について
そもそも学会発表は「こういう考えがあるんだけど知ってほしい&手伝ってほしい」アピールをする、「こういう考えがあってこの考えを補填する意見が欲しい」という議論の場であって、割と疑似科学も素通りだったりする
特に立証ができない(真っ当な)未科学分野に対して厳密にやると科学の権威化として批判されてしまうので、この手のトンデモ発表は初日の早い時間にまとめられて、本来の真面目な発表を邪魔しないようにスケジュールを組みながらバランスを取っているようである。

さらに酷い例になると、YouTubeなどの動画、ブログやSNSの記事、タブロイド紙などの情報が根拠として挙げられることもある。
時には、これらも論文の一種だと勘違いして「根拠となる論文を出してください」という問いに対して「○○さんのブログに書かれています」と頓珍漢な返答をする者もいる。


  • 8.特許や採用実績を強調する
特許・実用新案は「新規性(既存技術と被っていないか)」「進歩性(既存技術から簡単に思い付くものでないか)」のある技術を保護するだけで、永久機関など明らかに自然法則に反したものでない限りは技術の検証では却下されない。
そもそも特許庁に科学論文を審査できる様な仕組み・能力などないのである。

また、「有名な大学が研究している成分」といった謳い文句も見かけるが、大学で研究されているからといって人体への有用性が実証されているとは限らない。


  • 9.有効範囲が異様に広い
単純に「顧客」の数を増やすために、疑似科学商品は「これ一つで何にでも効く!」という宣伝文句がおなじみである
医療系なら、風邪からガンや糖尿病、果てはエイズまで何にでも効くと言ったり、中には人間の調子を整えるだけでなく、ペットや機械などにも効果があると謳う。人間・ペット・機械では言うまでもないが「構造」はそれぞれ違っている。そんなゲームのような「万能薬」が存在するのであれば世の薬局や病院は全て更地になっていてもおかしくない。
だからこそ、先述した陰謀論が絡められることが多いのである。

中には何も考えていないのか、腐敗を防ぐ」と「発酵を促進する」の矛盾した効果が一度に現れるなどと宣伝している商品もある*13
科学的には、例えば「○○という新薬は××という病気の平均生存期間を△か月伸ばす」ということを証明するだけでも、長い時間と多額の費用が必要になる*14ので、「何にでも効く」と宣伝した時点で疑似科学、百歩譲って検証不足と見て間違いない*15


  • 10.でも言質は取られないように気を付ける
ハッキリと「病気が治る!」と断言してしまうと薬機法その他に引っかかってしまう(=摘発される)ため、大抵の販売業者は「 ※個人の感想です 」「(ダイエットマシーンなら)通常の運動と組み合わせています」などと小さく注意書きをしたりして摘発のリスクを回避している。
「健やかな日々を過ごすために!」といった抽象的な表現のみが用いている場合も、医薬品としての効能が認められている訳ではない*16
また、「100%治る!」ではなく、 「100%完治への挑戦」 という謳い文句なら、「あくまで挑戦しているだけですよ」と言い訳できる。
後述のホメオパシーも、現在は「ほかの医療と併用して効果が出るものだ」という趣旨の文章を掲載している。ガンガンガン速かな?
何にせよ、根拠のあるデータを示さず、使用者の体験談や抽象的な表現ばかり載せているならば注意した方がいいだろう。


疑似科学の問題点

  • 1.科学的に正しい説まで疑似科学扱いされてしまう
科学的に正しいと認められるまでは、相当多くのプロセスを踏まなければならない。
そして、そのプロセスの過程を読みこなすのも、決して片手間にできる作業ではない。査読は長期間かかることもあることは前記した通りである。
結果として、読む側も「どーせまた疑似科学でしょ」と科学的な検証を踏まえた説まで見向きもしなくなってしまう。
決めつける側の態度にも問題はあるが、多くの疑似科学が読む側にオオカミ少年現象を起こさせているのである。
実際に日本では、2018年にWHOが「ゲーム障害*17」を新たな病気と認定した際、名前が似ているからか後述する「ゲーム脳」と混同する人が非常に多かった。
また「疑似科学者の主張している内容は間違いだが別な科学的視点・論点では正しい内容だった」というケースも有りこれらでは疑似科学のレッテルを貼られたせいで検証や正しい知識の流布が遅れてしまうという問題点が生じる。


  • 2.悪徳商法に使われる
人々は効果が期待できると考えるからこそ、もしくは不安を拭いさりたいために高い金を出して効果のある商品を買うのである。
だが、実際には効果が全くない品物を疑似科学の理論でもって効果があると誤信させるなら、それは悪徳商売に他ならない。
消費者庁も、しばしば「こんなのは疑似科学だ。科学的な面して商品を売るな」と命令を出している。


  • 3.健康被害が起きる
疑似科学を信じた人々は、医者による標準治療(一般的な医薬品や手術など)*18を拒絶して疑似科学によるトンデモ医療に頼ろうとすることが少なくない。
どんな名医も、自分の言うことを聞かない患者を治すことはできない。
結果として、疑似科学は信じさせることで人を殺すことができてしまうのである。
アメリカでは、新型コロナウイルスについて「タダの風邪」「ワクチンは危険」と言った疑似科学言説を信じてワクチンを拒否した人々が結局コロナに罹患してワクチンを懇願するも、医者も「もう手遅れです」と絶望的な宣告しかできないまま患者が死んでいくという例が報告されている。
自分が被害を受けるだけならまだしも、日本でも後述するように「助産師がホメオパシーを信奉していたせいで赤ちゃんに必要な栄養を与えられずに死亡する」という大事故が起きている。
人の命を預かる立場の人間、たとえば「子供の保護者や教師」「老人や重病人の介護者」「医療関係者」が疑似科学にかぶれてしまうと、それはもはや先述のコロナワクチンの例とは比べ物にならない実害を及ぼすのだ。
また、こうしたトンデモ医療に傾倒してしまう人(やその家族など)は、医療などへの不信感があったり、現代医学では完治が難しい疾患などを抱えており、藁にも縋る思いで治療方法を模索している場合が多い。
トンデモ医療は、そうした人を狙っているのである。


  • 4.国家的な取締が困難
上記のような問題点があっても、こうした疑似科学の主張を取り締まることは非常に困難である。
多くの国では表現の自由を認めている為、個別的な商売などを詐欺だと認定することはできても*19、多くの国家において疑似科学に基づく主張自体は取り締まれない。
と言うのも、ルイセンコ主義やEM菌のように政府や為政者が疑似科学を本物と認め、認めることを強いてしまったという正反対のケースがあったため、政府の取締を認めるのは危険極まるのである。
また、仮説と疑似科学の区別は難しく、そんな仮説すらも取り締られるリスクがあるとなれば、真っ当な科学の発展を阻害する恐れもある。


代表的な疑似科学

  • ルイセンコ主義
数少ない国家主導の疑似科学にしてソ連崩壊の一因、そして疑似科学の危険性を一発で理解できる悪例。

1930~60年代にソ連の生物学者トロフィム・ルイセンコが提唱した学説だが、
その内容は「低温処理によって春まき(秋まき)小麦を秋まき(春まき)小麦に変質させられるように、遺伝的性質は後天的に変化させられる」というもの。
一見すると画期的であるが、ぶっちゃけ科学的には不細工な人に整形を施せば子孫は皆生まれつき美形になるというレベル。
こんな戯言は獲得形質の遺伝を是とするラマルクの学説に基づくものであると同時に、現代遺伝学の定説にして資本主義国の主流であるメンデル遺伝学に真っ向から反するものである。

普通の国なら科学的に否定されるはずだが、ここはソ連。
「努力すれば必ず向上する」「革命によって人類は急速に進化する」という、共産主義のイデオロギーと合致した理論が時の最高指導者にいたく気に入られ、あろうことか国策として用いられてしまった
その最高指導者とは?ルイセンコが活動した年代で想像がつくだろう。そう、スターリンである。
スターリンの庇護を得たルイセンコは、反対する他の科学者を「反動的なメンデル主義者」として片っ端から粛清。
邪魔者を一掃した彼は自身の学説に基づく農法を推し進めたが、その方法は「雪の上に種を撒く」といった斜め上のものばかり。
当然のように失敗して深刻な凶作をもたらしても、「富農が私の理論を歪めた」とイデオロギーの話にすり替えるばかりで一切反省しなかった*20
DNAが解明された今となってはルイセンコの学説を支持する者は消えたが、彼に弄ばれて失った資源や人材は最早戻ることは無い。
こうしてロシアの農業・生物学は今日に至るまで他国に大きく後れを取る羽目になった。

ちなみに、「実験室におけるデータ上は」ルイセンコの主張に沿った実験結果はちゃんと得られていたのだが、現在はそのカラクリもほぼ解き明かされている。間違ってもスターリンお墨付きの理論に反するような結果を提出したら自分が粛清の対象になるので、研究員がデータを弄っていたのである。

ロシアに限らず、当時の東側共産陣営にもルイセンコ農法は広まり、受け入れる国が続出してしまった。
日本にもルイセンコ主義に基づく農法は入ってきたが肝心の効果を疑問視する声が大きく、影響は比較的軽微であった。
ただし、ルイセンコ主義は徹頭徹尾間違っていたかというと実はそうではなく、「小麦を低温にさらしておくと開花時期が変わる」という経験が現在でも春化という処理として出荷時期をずらす技術として活用されている他、
日本では「後天的に獲得した性質が遺伝する」という点を立証するためにルイセンコ支持者が接木キメラを研究し、その成果として新しい野菜を開発するなど良い意味での影響ももたらしている。
部分的に正しかったからこそそこをとっかかりにして信じる者が出てしまった上、大多数を占める間違っていた部分がすさまじい被害を及ぼしてしまったのである。


  • 打麻雀運動(Dǎ Máquè Yùndòng)
上記ルイセンコ主義と同じく、安直な発想での環境改造がいかに災厄をもたらすかのわかりやすい例。
あの大躍進政策中に毛沢東が主導して行った四害排除運動の一つで、言うまでもないが麻雀を禁止するわけではなく「農作物を食い荒らすスズメを全て根絶すれば、農作物生産量大幅アップだぜ!」というもの。
→結果、スズメが減ったせいで、害虫が大発生、史上稀に見るレベルの超大凶作に

……そもそもスズメは「害虫を食べる春は益鳥、米を食べる秋は害鳥」と時期によってその立場が180度変わる鳥であり、人間の勝手な都合で「益鳥・害鳥」という側面しか見ずにこんなことをやらかせばどうなるかは火を見るより明らかであった。スズメは単に自分の生活をしていただけである。
仮に完全な害鳥だったとしても、1950年代ともなれば既に食物連鎖の概念も普通に定着しており、それを安易に断ち切ることがどんな結果に繋がるかは想像されてしかるべきであった。
単純な擬似科学というよりは、基礎的な科学概念が指導者に根付いていないとどうなるか、の実例と言える。
この事件のマンガの雀のコマを火の鳥に差し替えたコラも有名。


  • ホメオパシー
疑似科学の代表格にして、トンデモ医療の代表格。
「極端に薄めた毒物(レメディ)を摂取する(大抵は砂糖に染み込ませた状態で)と、そので発症する病気が治る」という、ワクチンとは似て非なる謎理論によって成り立っている。
希釈の度合いはあまりに極端であり、計算上、レメディには元になった毒物が 一分子も含まれていない ため、単なる砂糖玉としか言いようがない。
しかも、ホメオパシーでは 薄めれば薄めるほど薬効は高くなる とのことで、この方がよく効くらしい。何度聞いても理解に苦しむ理屈である。
後述する「水の記憶」云々と結び付けて語られることも多い。

もちろん細菌論や分子論の基礎に真っ向から反しており、「ホメオパシーの薬効はプラシーボ*21を超えるものではない」と確認されている。
現代では二重盲検法*22による検証も重ねられているが、その度にブラシーボを超えるものではないという結論に拍車がかかる。

ちなみに、プラシーボ効果自体は症状によってはある程度有効ではある*23
そうした患者の不安を解消し、医療への信頼を保つ*24という視点からは偽薬にも一定の有効性はあり、実際薬が少ないと苦情を言う患者に合わせた「まったく効果のない薬」というのも開発されている。
ただし、このこと自体はホメオパシーの正しさとは一切無関係。むしろレメディに関して言えば宣伝する人がいなければ最初から効果があると信じる人も出ない言わばマッチポンプである。
医者が患者の要望に応えてレメディを投与することがあったとしても、それは医者が効果がないと知りながら宣伝者の尻拭いをさせられている状況であることに注意しなければならない。


ここまででも結構な問題なのだが、まだましなところで終わっていただろう。
ホメオパシー始めトンデモ医療は 標準医療を否定して全てトンデモ医療に頼りましょう! と言い出してしまい、問題が更に深刻化してしまった*28

近年のホメオパシー業者はレメディを売りつけるために他の疑似科学や陰謀論を組み合わせたり、市民運動系に食い込んだり騙されやすい性格の芸能人を利用したりと銭ゲバっぷりが露わになっている。
また、現代の日本のホメオパシーは元になった理論とはかけ離れたところに向かっている。通販サイトでは1,000~3,000種類ものレメディがあるとされ、なんと 般若心経のレメディ とか ベルリンの壁のレメディ まで売っている。もはや完全にオカルトである。
とりあえず、「般若心経をどうやって希釈するのか?」「ベルリンの壁を摂取する事に何の意味があるのか?」ということをご教授いただきたい。


  • バッチフラワー
フラワーレメディ、フラワーエッセンスとも言う。ホメオパシー信奉者の1人だった欧州の医者が編み出したもの。
花の癒しのエネルギーを転写したと称する水を飲み物に垂らしていただくことで心に作用すると称している。
作り方は「花を水に浮かべる」「花を煮出す」とかほとんど子供のおまじないかハーブティのレシピレベルであり、当然のことながら科学的にはただの水である*30
アロマテラピー用のエッセンシャルオイルは植物の成分は入っているが、こっちはまるっきり有用成分はない*31
結構その辺の店でもアロマグッズに混じって売られているので要注意。
上述のホメオパシー含め、検索してみると通販ショップや病院などが宣伝しているのがよくわかる。


  • 偽放射能医療
放射能に関する知識が今ほど確立されていない時代(大体戦前である)に主にヨーロッパで起きたもの。
放射性物質が発見されてX線などの革新的な医療技術が開発され、人々はそのブームにあやかろうと色んなものに放射性物質を使い始めた。
なんせ青白く光っているのである、昨今のゲーミングパソコンみたく付加価値が生まれて一大ブームを引き起こした。

蛍光塗料、歯磨き粉、化粧品…あらゆる消耗品や医療に放射能が使われ、ラジウム水を薬品として薦める者まで現れる。
これを薦められた裕福な資産家は、飲んでみると一時的に体調が良くなった。
…が、放射能に対する防御反応によるものであり、それに気付くことはないままに飲み続けた。
気が付いた時には手遅れなほどに放射能に蝕まれており、骨が溶けるなど被曝による様々な疾患を併発し死亡、センセーショナルに報道され大きなショックを与えることとなる。
後に虚偽の成分表示をした包装が禁止されて放射性物質を含む商品は販売できなくなり、ブームに終止符が打たれることとなった。

現代でも放射線照射をがんの治療に使ったり、放射性ヨウ素を内服する甲状腺疾患の治療(アイソトープ治療)などがあるが、ドリンクを飲むなどと言うような大雑把な方法ではなく、厳密な管理の元で行われる。
放射性物質が含まれた水や医薬品も厳密に検査を受けた上で供給・販売されており、間違った用法をしなければ人体に被害を与えることはない。
ただ、日本の場合は偽放射能医療より遙かに悲惨な放射能被害の実例があるため、放射能の脅威の例としては陰に隠れがちである。


日本で最もメジャーなトンデモ。詳細は項目参照。
そもそも何なのかすらろくな説明のない正体不明の謎物質。
健康増進などに効果があるとされたが、現在では否定的な意見が多い。
かつては大手メーカーも関連商品を販売しており、家電などにマイナスイオン発生機能が付いているのを見た人もいるだろう。


  • ピラミッドパワー
ピラミッドの中ではエネルギーが活性化だかなんだかするというアレ。
食品が腐らないだとか、生命にエネルギーを与えるだとか、錆びたナマクラ刃物がまた切れるようになるだとか言われるが、実際にピラミッド型のオブジェを作ってもそのような効果は実証されていない
まして毒素が抜けてビームになって飛んでいくなんてことはまずない。
結局のところ、形状より地理的要因の方が高いとされる。


ゲームをすると脳の機能が衰えるとする脳科学理論(?)
ゲームに否定的な層からもてはやされたが、計測の方法などに問題点も多く疑似科学とされる。
当時は多くのゲーム好きを恐怖させ、ゲーム業界にも悪影響を与えた。詳細は項目参照。
なお、 近年問題視される「ゲーム依存症」とは全くの別物


A型は○○、AB型は○○というアレ。
単なるバーナム効果*32やラベリング効果*33
星座占いと同じような感じで話題のタネにするぐらいはいいかもしれないが、深入り無用。……なんだけど、大体周囲のアレな人が信じちゃってるヤツ。
そもそも人間の性質を血液型や星座だけで、四種類やら十二種類にわけられると考えること自体がおかしいのだが。

戦後日本で流行した原因となる能見親子の本のスカスカぶりも凄まじい*34
現代の若年層の世代だとかなり否定的に捉えられているが、一時期は教育の現場でもまことしやかに語られ、企業でも上司や人事がこれを性格分類に取り入れてしまうこともあるなど非常に根強い影響を持っていた。
学校の先生が「だいたいお前はAB型だから~」と叱りつけるなんてのも割とあったとか。今同じことをしたら不祥事炎上コースだろう。

かつてはテレビ番組でもこの血液型性格診断を取り上げることは日常茶飯事であった。しかしBPO(放送倫理・番組向上機構)が2004年12月に血液型による性格診断は科学的根拠はない上に差別を招くとして問題視しており、それ以降健康番組で題材とされることはなくなった。
ただ、2009年には「4夜連続ドラマ血液型別オンナが結婚する方法♪」というドラマが放映され、BPOの審議の対象となった。情報番組ではなくドラマでの表現ならば問題はないという判断をBPOが下しているが、審議入りの時点で視聴者からの抗議が殺到したことは明らかなので今後はこのようなドラマが作られる可能性も低いと思われる。

なお血液型による占いや性格診断が日本で流行しているのは、日本人はABO式4種で血液型が満遍なく分かれている点が大きい。*35
アメリカ合衆国など諸外国では血液型が1~2種に偏りがちなため占いのベースにする事自体が難しい事から、血液型に因む占いや性格診断へ信頼度、ひいては馴染み自体が薄いとされる。
それどころか血液型を聞くと「なんでそんなこと聞くんだ?」と、個人情報でも尋ねられたかのようにものすごく嫌な顔をする人も多いとか。

この理論にナチス起源説が存在すること、大抵はA型が「真面目」「綺麗好き」と持ち上げられてB型が「マイペース」「傷つきやすい」などと貶されていること、そしてドイツ人にA型が多く、ユダヤ人にB型が多いという事を踏まえると……もう皆まで言うまい。

以前ある政治家が失言の釈明をする際に「私はちょっとB型で短絡的なところがある」と発言したことがあったが、実はこれは国内よりも海外(アイルランド、南アフリカ、イギリスなど)で「遺伝的形質のせいにするのか」という方面で話題になった。
こうして考えてみるとマイナスイオンや反ワクチンのような疑似科学というよりも、ある種の日本独自の文化なのかもしれない。江戸しぐさ?なんのこったよ。


  • ゲルマニウム
未だに多く販売されている謎健康金属。特に健康に影響があるという証拠は存在しない*36
まぁ着けている分には単なる金属のブレスレットなので、それだけなら害はないが、これを信じて効果のない品物に高額な金銭を出してしまう消費者被害にはつながってしまう。
ちゃんとした大学・研究機関・政府機関がゲルマニウムに注目するとしたらほとんどは半導体関連だ。


  • 右脳左脳
「左脳に言語野がある人が多い」というのは事実だが、「創造力の右脳」「理論力の左脳」のような極端な差は基本的に存在しないとされる。
残念ながら(?)「左利きは右脳が活発なので天才が多い」というのも単なる俗説


  • 反ワクチン論
ワクチンを否定し、接種を拒む言論のこと。
「事情があってワクチンが打てない」「副作用に遭ったことがあるためワクチンはなるべく避けたい」という人ではなく、極端な自然主義者や医療機関などの反対派たちが「ワクチンは有害」としてワクチンの効果自体を否定するようなことを指す。

しかし多くは統計の取り方がおかしかったり理論がおかしかったり根拠がデマだったりすることがよく見受けられるパターンであるため、論ずるに値しないものがほとんど。
確かに体内に異物を取り入れて免疫を作るためにワクチンを打つ事で重篤な副作用が現れる人も稀にいるが、それでも副作用の確率などを参考にして計算した場合、確率的にワクチンを打った方が良い事が立証されている。

もっとぶっ飛んだ方面では「ワクチンにマイクロチップが仕込まれていて大企業や政府に操られている」「ワクチンは人類を減らすための毒薬」「表向きは効果あるけど裏では人間を徐々に怪物化させるバイオハザードを目論んでいる」というほぼ妄想の域になっている。マイクロチップの製造費とか行きわたらせるためのコストとか考えたのだろうか。
フィクションならよくある設定だが、現実にそんな高性能チップがあればどこの企業も政府も苦労しない
後者もゲームとかではあり得る話だが、現実でバイオハザードなんて割に合わないどころか、企業にとってはリスクしかない。そもそも、人間を怪物化させた所で何をするつもりなのだろうか……。
この理論の危険な点は、ワクチンを拒む人が増えることで感染症も拡大することが懸念されること。これに関してはWHOも本気で危惧している。近年では週刊誌やWEBニュースメディアの台頭により、過激な言葉で反ワクチン論を推し進めるメディアが出てきている。分かりやすい「危険な言葉」は人々を簡単に扇動できてしまうのだ。

また母親の乳児の健康や「子供に痛い思いをさせるのは可哀想」という不安に付け入って持論を展開し、誤った各種処置で乳児の生命を脅かしていることも危険点の一つである。
ちなみに上記のホメオパシーなんかとも相性が良い。

反ワクチンの厄介な点は、ほとんどの疑似科学と異なり論拠とされる論文が存在しているという点。
少し前の話になるが、一時期アンドリュー・ウェイクフィールドの「ワクチンを投与すると自閉症になる」という論文(否定済み)がよく取り上げられていた。
ウェイクフィールドが事前に記者会見をしたせいもあって反ワクチン派にセンセーショナルに取り上げられてしまい、これが否定されるまでの12年の間で麻しん感染者が増えてしまうというすさまじい実害をもたらしたのである。

従来はHPV(子宮頸がん)ワクチンの陰謀論が勢いが良く、極右思想や自然派左翼の間で「民族根絶やしワクチン」などという風説がばらまかれていた。近年では市民団体や医師が積極的勧奨再開や情報の発信などを行っている。

COVID-19(新型コロナウイルス)対応のmRNAワクチン*37では「打った直後に死亡し、関係者が金一封と「口外しないでくれ」と言ってきた。だからワクチンは危険だ」…なんていうものがある。当然ながらこんな事件は存在しない。
また、「遺伝子組み換えワクチン」「マイクロチップが埋め込まれ5G接続」「身体が磁石のようになり金属が引っ付く」「ワクチン接種者に近づいたら体調を崩した」などという珍論も跋扈。
なお、「5G接続」の論拠と称して出回った回路の画像はギター・エフェクターの電気回路図であるため、ギターキッズやミュージシャンの間から失笑を買った。
また、ワクチンを接種した際に「遺伝子組み換えで(美男、美女タレントの名)になれると思ったのにならないぞ!」「5G接続できないぞ!」というジョークも定番となった。

実はアメリカで反ワクチンが流行するのには「医療費がやたら高い」という経済的な理由もある。子供にワクチンなんて打たせていたら金がいくらあっても足りなくなるのだ。
そういった貧困や、高額をせびられる医療への反感が反ワクチンの温床となっているという考え方も存在している。
実際ワクチンをかたくなに受けさせない親の中には「周囲の子供がワクチンを打っておけばその子たちが病気にかからないので病気を運んでこない、結果的に自分の子供を守ることができる」という「集団免疫」の考えを悪用するために反ワクチンを掲げる人もいるんだとか。
早い話がタダ乗りしたいがために狂人の真似をするというわけ。
他にも反ワクチンを掲げれば反ワクチン派から支持(=資金)を集められるため、医者や看護師の肩書を掲げて反ワクチンを理論面からサポートすることで名を馳せて自分の病院に通ってもらったり、胡散臭い商材を売りつけたりということにもつながっている。
儲けという字は信者で作られる、なんて話があったがまさにそれである。
このような反ワクチンを掲げる医療関係者や業者の中には「自分や家族は陰でワクチンを打っている」「ワクチン接種会場のバイトをしていた」ことが発覚する例*38もある。

昨今はインターネットの発展により「エコーチェンバー現象」「確証バイアス」「フィルターバブル」といった問題が広く知られるようになり、この手の問題はそれを好む層が政治・民族問題ひいては他の陰謀論などを好む傾向もあるということで、そういった燃えやすい話題と結びついてたやすく燃え広がるようになっている。
最近では「有名なYouTuberなどのコンテンツインフルエンサーを使えば、教養が無い人にでもワクチンが受け入れられるのではないか」ということもかなり真面目に検討されているようである。
コロナ禍時代には日夜デマが喧伝されて情報戦の様相を呈してきており、さらに反ワクチンが陰謀論の旗印になっていたりする始末*39
2022年3月にはツイッターに「ベネッセのチラシに反ワクチンのビラが入っていた」とするデマが流れてベネッセ側が否定と謝罪に奔走し、ビラの製作者ですら「そういう嘘はやめようよ」と諫めるという一幕があった。
果てには反ワクチンに端を発したカルト宗教紛いの物のまで出てきており、単なる医療絡みの思想や疑似科学とは完全に異なるひとつの文化を形成してしまっている。
これを読んでいる人の中には「反ワクチン」という言葉で反薬害や自閉症、集団免疫ではなく「予防接種会場の襲撃」「光の戦士」「地震兵器」のような言葉を連想する人もいるのではないだろうか。


  • 千島学説
「赤血球から細胞が作られる」「血液は腸でつくられる」「細菌で病気が発症するのは間違いで、汚れた血液が原因」などとするトンデモ理論。
この理論が正しいとすると、生物体内での血液の細胞分裂を観測している多くの科学者、医療従事者、学生は、全員重大な事実に気づいていない大馬鹿者か、気づいていながら陰謀に加担して黙っていることになるのだが……。


特殊相対性理論は中学生でもわかるほどに平易な理論であるためか、攻撃対象にされることが多い*40
あまりにも攻撃者が多いため、と学会では反相対性理論に関する書籍は「 相ま *41」という独立したジャンルとして扱われている。
「物体の長さや時間が自由自在に変化するなんて明らかに感覚的に信じられない!」という感覚的な観点からの批判が多い*42
「相ま」系の論客にありがちなものとしては「既存の学術用語を使わずに造語を作る」「実験(特にマイケルソン・モーリーの実験)の解釈がそもそも間違っている」「何らかの事象を自分のトンデモ論を補佐する超便利アイテムだと思い込んでいる」、もっとひどいものだと「舌を出しているアインシュタインの肖像は『俺はペテン師だ』というあっかんべーの意味」「そもそもアインシュタインは日本の天皇制を支持したような奴だから信じるに値しない*43」なんてものまであり種々様々。最後の方は単なる人格攻撃はおろかデマを頭から信じている時点でお察しください。

また「宇宙の果てからUFOが来ている」派の人には「物体は決して光速を上回れない」とする相対性理論は邪魔なためか批判されやすい。
なお、SF諸作品に登場する超光速粒子「タキオン」は「もしも相対性理論に反せずに超光速で運動するものが存在したら」という仮説上の存在であり、反相対性理論とは無関係。
タキオンの存在は現在でも確認されていないが、こちらはこちらで「タキオン靴下」などの疑似科学グッズとして商品化がなされている。
もっともタキオンは光速以下の速度になることはできないのだが。

ただし、一部の物理学者(トンデモ系ではなくホーキング博士などと肩を並べるレベルの超一流)の間では「相対性理論でうまく説明できない事象」を説明できる新しい物理学モデルが必要な時代が来ていると説く人もいる。
相対性理論は「それまでのニュートン力学でうまく説明できなかった『水星の近日点移動』を矛盾なく説明できた」という話が有名だが、これと同じように相対性理論でうまく説明できないものを説明できる新しいモデルが必要なのではないか、という観点による意見である。
しかし、間違えないでいただきたいのは、こういった新モデルが必要だという意見を出している学者は{決して「だから相対性理論は間違っている」なんて一言も言ってないという点。
だいたい「相対性理論は間違っている」と言っている人は最初から「間違いだ!間違いなんだ!」と結論ありきでまくしたて、かつ論点がどんどんずれていくためこの手の学者とはすぐに見分けがつく。
……っていうか「相ま」系の人って水星の近日点移動とかどうやって説明するのだろうか?


  • 反進化論
進化論はアインシュタインと並んで攻撃されがちな理論。特にキリスト教系の原理論者からは聖書の記述と真っ向から反するために攻撃されやすい。
中には『種の起源』を読みもせずにダーウィンを批判している人すらいる*44
一部では宗教色を薄めて科学を装った「創造論」「インテリジェント・デザイン(ID)論」などの理論に化けて身近に迫ることもあり、
アメリカではキリスト教保守派が強い州で「進化論とID論はどっちもどっちなので学校では両方教えるべき」という頭が痛い状況になった事も。
実際に成立したとしても我々を創造した存在を創造した存在を創造した…無限ループになってしまう。
それを皮肉って「ならこういうのもアリになるよな?」と生まれたのが、かの有名な空飛ぶスパゲティモンスター教である。

ただし、歴史的な進化論の反対者が必ずしも疑似科学の結果とは限らない。
進化論の反対論者として有名なキュヴィエが「同種の身体の基本構造や食性・生態に関する特徴は親から安定して子に受け継がれる*45」と言う自身の得意とする比較解剖学の研究結果、ファーブルが「狩り蜂が本能的に正確に獲物の弱点を狙い撃つ技術を習得している*46」と言う昆虫観察の結果を基に、進化論に疑念を表しており、自身の研究手順と再検証の方法も提示している。
彼等は自身の得意分野で可能な限り科学的な研究を行った結果、進化論に疑念を抱き、キュヴィエやファーブルの研究を再検証した科学者達も同じ結果が得られたので彼等の意見に賛同したのだが、重要な情報が当時は解明されていなかった*47、視点が長期になる事から進化論の実証が比較解剖学や昆虫学の観察の実証より難しかったのが災いした。
因みに、ファーブルとダーウィンは動物の観察者としてはお互いに高く評価し合っており、ファーブルは「ダーウィン程の研究や観察をしてデータを積み重ねていない」若手がダーウィン以上に進化論を推す事に不快感を露わにしていた。


  • EM菌
EMとは「Effective Microorganisms(有用微生物群)」の略で、「有用微生物群」の意。人間にとって有益な多種多様の効果を持つとされている。

元々は農業用語であり、ぼかし肥*48の精製に役立つような微生物の総称を指す言葉だった。
ところが、ぼかし肥の持つナチュラルかつファジー、そして汎用性の高いイメージからどんどん変な方向に拡大解釈されていったらしく、いつしか土壌改善のみならず川やの水質改善など全く別の用途に転用されるようになっていった。

特に問題なのは、行政や政治家への汚染が酷いという点。
学校教育などで取り上げられた例もあり、「EM菌を川にまく」とか訳の分からない行事をやっている自治体も結構ある*49
さらに水質改善などは一見よさげに見えるのだが、自然環境とはかなり繊細かつ複雑なもの。一見害に見えるものを無造作に取り除いたらもっとひどいことになった、というのは中国の「四害駆除運動」の大失敗によって立証されている。
つまり行政や、その許可すらとっていない市民団体による活動が環境破壊を引き起こしかねないのだが、このEM菌に大した能力がないので逆に平和な結果をもたらしているという皮肉にもつながっている。
「EMは神様だと考えることです」「いいことはすべてEMのおかげ、悪いことが起きたのはEMの極め方が足りないから」「重力波で元素転換」など宗教じみた主張を繰り広げる団体も存在し*50、もはや和製ルイセンコ主義一歩手前である。


  • 外気功
東洋医術、気功法(気功療法)の用語のひとつで、軟気功から派生した概念。対義語に「内気功」がある。
内気功は動的・静的な特有のフォームにより体内の“気”を練り、自らの活力を高めるというもので、言ってしまえば瞑想や体操に近いものなので、よっぽど過度にやらない限り健康に悪いわけもない*51
そして、内気功によって発生した“気”を相対した他人に分け与える術のことを外気功と呼ぶ……のだが、これは各種気功法の中でもかなり古い時代に提唱されたものであり、科学的に立証はされておらず、現代となってはオカルトの域を出ないとする意見のほうが圧倒的に多い。
ドラゴンボール北斗の拳じゃないんだから、十中八九プラシーボや催眠の範疇と思って良いだろう。中には「遠隔気功」という商売をやっている人までいる。


エネルギー問題の解決を夢見させ、資金調達がやりやすい部類のため多くの疑似科学者が提唱している。
ただ、大抵は機械が動かないか理論の構築が間違っている。
例として「動的作用反作用の法則」を挙げると加加速度運動の式の導出途中に等加速度運動の項がなぜか表れているのでエネルギー保存則が成り立たなくなるように見えるトリックがある。
また永久機関というのはちゃんと定義された言葉なのだが、この点をわざと曲解して論点をずらすというトリックも存在する。
たとえば「アニヲタエネルギーが存在していれば最初にそれを受け取ることでずっと動き続ける。つまりこれは永久機関だ」という理論を説いた時、「いや、アニヲタエネルギーなんて存在してないしそもそも永久機関っていうのは~」という反論が来ることは自明である。
この時に永久機関の解釈という方向に論点を持っていくことで、肝心のアニヲタエネルギーという根幹部のガバ理論をうやむやにしてしまうのだ。
もちろん実際にはそんな一目でお遊びと分かるような名前ではなく、もっとそれっぽい名前にしたり、ガバが存在するのが機械や理論の方だったりするわけで、こういうところで騙されてしまう人が出てくるというわけ。
いずれにせよ永久機関を自称するものは例外なくフェイクと見て間違いない。逆に言えばどこにガバがあるのかを探すという性格の悪い楽しみ方もできる。
ネットなどで「永久機関」を彷彿させる動画が流れていることもあるが、実際にはCGだったり、見えない部分に仕掛けを施した偽物である。


「真空に触れると肌がスパッと切れる」という、創作物ではおなじみの現象。
だが現在では真空に触れても皮膚は切れないと完全に否定されており、実際はただのあかぎれ・ひび割れや、高速で飛んでくる砂粒などで切れるだけであることが判明している。


  • 経皮毒
皮膚から有害物質が体の中に入るという説。
もちろん明らかな有害物質やアレルギー持ちの人が触ってどうにかなるという話で収まる範囲なら問題はないのだが、シャンプーや合成樹脂の成分まで体内に浸透するかのように言い出す物は疑似科学である
インチキ商法への取っ掛かりとして多用されており「デトックス」を称するもの、生理用の「布ナプキン」販売業者で経皮毒ネタを使っている店舗がとにかく多い。
普通に売れ。


  • 酒は少量であれば悪影響が一切無い
  • 酒に弱い人も飲み続ければ酒に強くなる
過去の研究では「全く飲まない人よりも少量飲む人の方が死亡率が低い」というが定説であったのだが、癌や心血管疾患に関しては少量であってもリスクが上がることが明らかになっている。
従って、現在では「あらゆるリスクを考慮するのであれば飲酒をしない」のが最善とされる。

特にお酒に弱い(お酒を飲めない)人*52は飲酒によるリスクがより高まるので注意が必要。

また、経験則的に信じられている事が多いが「酒を飲み続けたら強くなる」というのもガセ
実際には強くなっているのではなく「麻痺している」のであり、単に反応が鈍くなっているだけであってリスクが低下している訳では無い。
これは未だに過度な飲酒やアルハラの言い訳に使われやすい面がある。

もっとも、(体質にもよるが)飲酒にはストレス解消の効果などの恩恵もあり、リスクを理解した上で「好きだから飲む」という人の飲酒を否定するものではない。
飲酒は成人が自己責任で行う物であり、他人への強要は立派な犯罪であり、無理な飲酒は直接的にも間接的にも自殺行為である。
お酒はほどほどに。


  • タバコは人体に対して然程の有害性はない
  • タバコは人体に対して激甚な有害性がある
真逆の主張が同時に存在するという珍しい例。
特徴的なのは「然程の有害性はない派」「激甚な有害性がある派」両方とも極論が極めて多いこと。
また、科学とは直接関係が無い喫煙マナーや悪臭、ゴミ(吸い殻)などの公衆衛生といった問題も絡んだ熾烈な論争になりやすく、感情論めいた主張になっている事もしばしば。

まず第一にタバコの煙には有害物質が多数含まれており、これが様々な病を発症する要因の1つとなる事は間違いない
しかし、病にかかる要因はタバコ以外にも様々な要因があり、タバコが原因と断定する事もまた難しい。
更に、タバコの悪影響が現れるまで数十年以上のタイムラグがある事も珍しくなく、タバコの悪影響が出やすい人も出にくい人もいる。
このタバコの特異な性質が上述した真逆の主張が生まれる背景といえる。

「然程の有害性はない派」は、「タバコと肺癌の因果関係」のような、ほぼ事実とされていることすら乏しい根拠から否定したりする。
代表的なのは、「喫煙率は下がっているのに肺癌発生率は上がっている!」という理屈だが、
喫煙の影響が実際に肺癌発生率として反映されるのに数十年単位の時間がかかることをスッポリ忘れている事が指摘される。
タバコと肺癌の因果関係に懐疑的な専門家すら、「(タバコのせいで肺癌にならなくとも)いざ肺癌になった時、喫煙者である事を理由に最新治療を受けられず、今や治せる癌をみすみす助からない段階まで悪化させねばならない場合もある」と、
そして「(タバコのせいで肺癌にならなくとも)タバコの有害成分によって罹患しうる病気は肺がんだけではない」と、
喫煙には直接的にも間接的にも健康リスクがある事、肺癌以外の健康被害が無い訳ではない事を指摘している。
また、「煙草無害論」というものもあり、特に「タバコ葉の煙は無害であって有害なのは巻紙とフィルターと添加物である!」という主張はよく見られる。
確かに市販されている紙巻きタバコの多くには、香料、保存料、燃焼材などが添加されており、紙巻きタバコは無添加の葉巻よりも毒性が強いとされる。
しかし、葉巻であってもニコチンやタールなどの有害物質は含まれており*53、決して無害な物ではない。
いずれにしても、喫煙は一時的なストレス解消といった効果は見込めるものの、
長期的なリスクを考慮した場合は一切吸わないに越したことはない(あらゆるタバコ製品を含む)。

逆に「激甚な有害性がある派」は「副流煙は主流煙より有害物質が多く、喫煙中の人物の側を通るだけでも致命的な影響を与える!」などと主張することがある。
確かに煙それ自体の有害物質量はフィルターを通している主流煙より副流煙の方が多いのは事実であり、長期的な受動喫煙に曝された非喫煙者にも悪影響が出やすい事はよく知られている。
しかし、そもそも煙自体を直接体内に入れる主流煙と違い、副流煙は空気で希釈されるので直接害を比較することはできない
健康体の人間が喫煙者(タバコの煙)の側を通ってしまった程度であれば、致命的な悪影響が出る可能性は低い(悪影響が出ないとも言い切れないが)。
もちろん、臭いやゴミなどの問題はあるし副流煙が有害なのは間違いないので、「副流煙を一切気にするな!」というのもまた極論ではあるが、
だからと言ってまるでサリンでも垂れ流しているかのように扱うのも違うだろう。
受動喫煙を気にしすぎてストレスを溜めてしまっては、それはそれで健康に良くないのではないだろうか。
また、「妊婦がタバコを吸ったら赤ちゃんの肺がタールで真っ黒になって死んでしまった!」というショッキングな話もあるが、
そもそも胎児は肺呼吸をしておらず、肺にタールが蓄積するわけがないのでこれもタバコの害を過大宣伝する作り話である。
もちろん妊婦や胎児に対するタバコの害に関する議論は別途するべきであるが、そのためにデマをばら撒いていいという理屈はない

これに関しては「タバコ=悪」という社会的な風潮が、タバコを攻撃するための旗印となっていじめや疑似科学の温床になっているところがある。
いずれにしてもタバコに有害性がある事は間違いなく、喘息持ちの人間など煙を吸うだけで冗談抜きにその場で命に関わる事もあるため、
タバコを吸う場合は周囲への配慮が必要であり、成人が自己責任で吸う物である
喫煙マナーは守りましょう。


  • バーストラウマ
「妊娠中や出産時に母親がストレスを抱えると子供の成長後もトラウマになる」と称する言説。
「順調な自然分娩至上主義、帝王切開や陣痛促進剤、無痛分娩はトラウマになる」という売り文句が主。
一部の産科クリニックや助産院で取り扱われており、要注意医療機関を見分けるキーワード。
元ネタは精神分析における『出生時の』心理的外傷、赤ん坊側のトラウマだと思われるが、なぜか入れ替わっている。民間資格商法的な業者にも使われている。

似たようなものに「胎教」というものがある。
「私がママよ、俺がパパだぞ」とささやくなどの我々が想像するような素朴なものではなく、「歌にのせて日本の山脈や都道府県を教え、生まれる前から英才教育を施す」というもの。
これ自体は否定も立証もされていないそうだが、一番分かりやすいのは胎教を受けてきたことをアピールしている成功者がほとんどいないこと。特に日本や韓国は儒教精神の濃い国だから、母親への感謝アピールにも使えてちょうどいいはずなのだが……。
ただし、これは「母体へのストレスを軽減する」「母親が趣味を持つことでマタニティブルーを乗り切る」という意味では割と合理的ではある。


  • 水からの伝言
「名勝の水や「ありがとう」等のいい言葉を見せた水からは綺麗な結晶ができ、水道水や「ばかやろう」等の悪い言葉を見せた水からはいびつな結晶ができる」と称するトンデモ。
いわゆる「波動ビジネス」の実業家の著書で創作されたものである。
何より問題なのが、「いい話だからいいじゃん!」なノリの教育関係者が道徳の授業などで使っている事*54
普通に「きれいな言葉を使いましょう」と言えばいいだけなのだが……。


  • 角の三等分線の作図
定木*55とコンパスを用いて与えられた角を三等分できるかという幾何学の問題。どんな大きさの角でも有限回でできる方法、である。
角の二等分線は非常に簡単であるため、これも可能ではないかと古代ギリシャ時代から考えられ続けてきた。
これと「与えられた立方体の2倍の体積の立方体(立方倍積問題)」「与えられた円と等しい面積の正方形(円積問題)」は「ギリシャ三大作図問題」などと呼ばれ、いずれも古代から人類を悩ませた……が、19世紀になって、3つとも作図不可能であることが証明された*56

しかし、その中でも三等分については未だに諦めない人が多く、できもしない作図に取り組み続けている。
そして彼らは数学者たちにいくら「方法」を送り付けても「どうせ不備があるから見るだけ無駄、不備を指摘しても懲りずに直してまた送り付けられるだろう」と相手にされず、やはり「自分は理解されない」と思うのだ。
彼らに「三等分が不可能であることの証明を読む、およびその背景知識を学ぶ」という発想はおそらくない。
もっと言えば、無理と言われたものを根気で何とかできるケースとそうでないケースがあることもおそらく知らないのだろう。

ちなみに、定規の目盛りや折り紙など最初に挙げた以外の道具を用いた方法、定木とコンパスを用いて近似的に三等分する方法はある。
また90度や180度といった特定の角であれば、定規・コンパスのみで作図が可能。
そしてこの問題は「どんな角でも三等分できる」という点がキモなのだが、「一つでも三等分できる角があればいい」と履き違えた、あるいは勝手に解釈を歪めた者がこういった「特定の角の三等分」によって解けたと主張することもある。言うまでもなくこれは証明の根拠にはなっていない。
また「否定的に解決」「不可能であると証明」ということは数学的な見地では立派な解決なのだが、これが一般的な考え方だと「解決や証明を諦められた」と捉えられやすいのも原因のひとつだろう。


  • O-リングテスト
人差し指と親指で丸を作り、それを両方から引っ張って診断するという偽医療。
体の異常がある方から指が開くとされているが、ほとんど指相撲である
これの信奉者をやりこめた指相撲の強者による笑い話もちらほら。
なお、人体の構造上人差し指を引っ張ると開く、親指は開かないのでいんちきも簡単である。


  • ズンズン運動
アトピーが治るなどと称して行われた健康法。
ズンズンという名の通り乳幼児を激しく縦に揺さぶる他、ロシアのサンボ使いが白目を剥いて気絶するほどの角度にまで首を曲げるといった行為が行われた。
乳幼児虐待としか言いようがない光景であるが、当然のように乳幼児が死亡するという痛ましい事件が起き、その名は一躍全国区となった。
検索するとかなりショッキングな画像がヒットするので注意。
なお、この健康法の主催者は既に検挙され団体も解散した。あろうことか主催者はとある地方都市の議員だったため信じた人も少なくなく、地元の名前で風評被害を被った市民からは「町の恥」などと盛大に叩かれてしまったのだった。


  • フードファディズム
簡単に言うと、「食物の人体への影響を過大なほどに信奉する」考え方のこと。
もちろん食べ物が人間にとって重要なファクターであることは言うまでもないが、フードファディズムと揶揄されるような考え方の人々はその度合いが極めて極端なところに行っている。

ごくわずかにしか使用されていない食品添加物の悪影響を指摘して「食べてはいけない食品」と針小棒大に騒ぎ立てる一方、有害性があるエタノールの危険性にはノータッチだったりする輩もいる。
基本的に極端な自然主義傾向が強く、砂糖や塩*57、加工食品や食品添加物を過剰なまでに忌避することが多い。
「マクロビオティック」といった健康法や「人口削減計画」といった陰謀論などと絡めて紹介されることも。
他には「発掘あるある大辞典Ⅱ」の「納豆ダイエット事件」などもフードファディズムの考え方に近いと言えるか。

また、「カップラーメンや清涼飲料水の消費量が多いと少年犯罪が起きやすくなる」など、明らかに健康とは関係ないところまで食物が影響していると考える*58場合もある。

ただこれにかこつけて昔から言われている食べ合わせ等の「『身体が温まる食材』は物理的に体温が上がってないからこれは疑似科学!」と主張する疑似科学者が居るのも問題点。
そもそも人体の『体が温まる』というのは単純に人体の物理的温度が上がるだけではなく循環器類の血行が良くなって体の温度分布と代謝が均質になる事*59などでも『温まる』事になるので「体温が上がってないから温まってない」という主張は単なる偏った視野狭窄論理を振りかざしているに過ぎない。

また、何より問題なのが、こうした内容がSNS・ブログでは盛んに情報発信されていること。
「医者が絶対に食べない酒・タバコより危険な食品」「マスメディアが絶対に報道しない添加物の真実」といった、センセーショナルな見出しを付けて加工食品や食品添加物を非難する投稿は、ネット上のあらゆる所で目にすることができる。
SNSや動画サイトにも多く出てくるため、注意が必要だろう。


  • 副腎疲労
フードファディズムの派生形のような事態を引き起こす可能性のある、近年台頭してきた概念。
体内時計の調整、炎症の抑制、抗ストレス作用など多種多様な働きを持つ重要なホルモン、コルチゾール*60を分泌している臓器・副腎(副腎皮質)が、長期間の度重なる酷使により疲弊し、コルチゾールを正常に分泌できなくなり、慢性的かつ重篤な疲労感や、うつ病に近い症状を発症する…というもの。

コルチゾールが人間の体内において重要な役割を持っているのは事実であるし、もし慢性的に欠乏すると上述したような症状が起こるのも事実であるが*61、この説を唱えている専門家は、大抵の場合「副腎がコルチゾールを分泌するのは脳下垂体が指令を出しているから」という事実を見落としているのか言及していないことが多い。
主体的に動いているわけではないこともあってか、副腎も別に「疲労」したりすることはない臓器である、という説が主流である。
もしも患者の症状の原因が副腎ではなく脳下垂体にあった場合、いくら副腎にアプローチを掛けても当然改善することはない。

そして、この副腎疲労の真の恐ろしさはそれだけではなく、メチャクチャが掛かるということである。
副腎疲労を取り扱っている医療機関は意外と沢山あるが*62、診察代は全て保険適用外の完全自己負担であり、万全を期そうとすると、最初の健康診断だけでも軽く10万円単位の金額がフッ飛ぶことも。
更にこの副腎疲労、どういうワケか「糖質制限*63」「分子栄養学*64」「遅延型アレルギー*65」「リーキーガット症候群*66」などの特殊かつ前衛的な健康法とセットで語られることが多く、それらの知識をコツコツと勉強しながら大量のサプリメントを服用し、厳しい食事制限をし*67、腸内環境の改善の為にプロバイオティクスに励み*68、それだけやっても症状が改善するかは完全に運次第*69

ちなみに、こんな概念が日本にもたらされたのは、どうやら現職の医師が当該の症状に罹患し、海外から仕入れた情報を元にして見事独力での克服に成功し、その体験を手記にまとめて出版したのがきっかけのようであり*70、その事から「日本人の9割は知らない」が売り文句となっているが、副腎疲労を明確に否定している海外の論文が存在する
この事は、NMRパイプテクターの項でも名前が出てきたRikatanでも言及されており、むしろ「(既に海外で否定されていることを)日本人の9割が知らない」とでもいうべき皮肉な事態が発生している。

なお、「副腎疲労」は極めて疑わしい概念であるが、それとよく似た名前の「副腎不全」という疾患は確かに実在しており、その症状は、内科の一部門である“内分泌内科”に行けば診てもらう事が出来る*71
「内分泌内科がマイナーだから副腎疲労の台頭を許してしまったんじゃ…」という主張も有るがそうだとすればそれは所謂「白い巨塔」的な医療学閥問題の一種(マイナー診療科の論理的な内容が軽んじられ、メジャー診療科所属者のトンデモ発言は真実であるかのように流布され易い状態)でもあるということである。


  • 宿便
よくネットの美容広告で見かけるアレ。
医学用語では類似用語として滞留便や便秘という言葉も存在するが、宿便は「人間には誰しも腸内に排出されない便のカスが何キロも溜まっている」というもの。
腸は蠕動運動によって中の物は常に前進していく上に、古い細胞などの老廃物も便として排出されるため滞留するなどということはあり得ない
特に小腸の上皮細胞は24時間程度で剥がれ落ちる、非常に入れ替わりの激しいところである。もしそんなものがあるならX線検査などではっきりと見える。

厳密にはないわけではないが、それは腸閉塞、盲腸炎、痔瘻といったはっきりと人体に悪影響を及ぼす病が発生している時だけである。
健康や美容に関わることから、フードファディズムに通ずることがある。


  • 素粒子の名を冠する商品
クォークと電子以外の素粒子は物質への干渉力が非常に小さく、食品や雑貨などのサイズではまず体に影響を与えないのだが、素粒子による効能を謳う商品は多い。
とくにタキオンとグラビトン(重力)は観測が現在の理論では不可能であるにもかかわらず、サジェストに「野菜」「セラミック」などの商品が出てくるほどに販売されている。


  • NMRパイプテクター
日本システム企画が鉄パイプ内の赤錆を抑える・黒錆に変えるという効能で売り込んでいる商品。
動力源の説明がころころ変わる上に、そのすべては論破されてからの後手対応という始末。そのうえどの説明でも必要なエネルギーが出せない。
ただ、疑似科学組織のご多分にもれず盤外戦術が非常に得意で、
  • マンションや病院に売り込むのは常套手段
  • 批評を潰したことを検索時の広告に出す
  • 行政の報告書を引用したフリの捏造発言
  • ラジオ、テレビ番組に出る
  • 電車や空港に広告を大量に出す
  • 途上国支援に名を挙げる
ただ、RikaTanを潰したときはそれが拡散され大いに逆効果となった。


  • 生来性犯罪人説
イタリアの犯罪学者であるチェーザレ・ロンブローゾ(1835年~1909年)が唱えた、「犯罪者は隔世遺伝による先祖返りである。犯罪者の7割は生来性だ」という学説。
ロンブローゾ自身が処刑された受刑者の頭蓋骨などを集めて導いた説であり、科学の場に一度は現れた学説である。
それまでの犯罪学の大半が机上の学問でしかなかった中で、学問的知見を集めて実証的に犯罪を検証しようとしたと言う点で、現代の犯罪学につながる先駆者でもあった。

しかし、現在では更なる研究が進められており、生来性犯罪人説は疑似科学の域を出ないと結論付けられている*72
特に犯罪にまつわる疑似科学による犯罪者・犯罪者予備軍扱いはしばしば激烈な差別の発生を伴うため、科学の場に現わすためにより慎重さが求められる。

なお、これを「人道上の観点、そして為政者によって恣意的な運用がなされるリスクから、この手の学説は疑似科学や迷信であるということにしなければならない」などと言ってしまうと「陰謀論」に発展してしまうため注意。

それ自体はれっきとした科学理論であるダーウィンの進化論が濫用され優生学という疑似科学の母体となり、ナチスのT4作戦や日本の優生保護法といった悲劇を引き起こしたという前例もある。
人類史で度々発生した大虐殺の原因究明も、「究明できるとは思われないばかりか虐殺の正当化につながりかねない」として究明そのものを批判する立場も存在するほどなのだ。
「科学を社会に適用することには危険が伴う」ということは、弁えておかなければならない視点である。ましてや疑似科学となれば何をかいわんや。*73


  • YAP遺伝子
最近ホットな疑似科学……というかオカルトというかスピリチュアルというかナショナリズムというか都市伝説というか、そんな感じのもの。
現在地球上に70億ほどいるとされるホモ・サピエンスの遺伝子を調べた場合、地域や民族ごとに遺伝子的な特徴をもってグループ化することが可能である。
このグループ化のことを「ハプログループ」といい、日本人が所属するハプログループDおよびEを特徴づける遺伝子が「YAP遺伝子」である。
要は「日本人にはYAP遺伝子ってのが多いんだよ」って程度の話で、ここまでなら立派な遺伝学、つまり本物の科学の範疇。

しかしGoogleで調べてみると分かるがとにかく怪しいサイトがやたらヒットする。
たとえばスピリチュアル界隈では「YAP遺伝子は宇宙人や神に由来する遺伝子」「覚醒することで超能力を得られる」のように喧伝されている。

さらに「ハプログループD」に特殊な性格付けをしている記事も見受けられる。ONE PIECEの「Dの一族」に無理やりこじつけることで特別感を煽ろうというものだろうか。
「日本人はDの一族だった!」なんて言えばどこからどう見てもふざけているが、これを「Dの一族のモデルはハプログループD」なんて風に紹介すると途端に信憑性を帯びるように見えてしまう
ここからさらに「ONE PIECEは現代世界を高度に表現している」「尾田先生は日本人の特別な遺伝子に気づいていた」なんていう愛国論的かつ尾田先生に迷惑極まりない話につないでいく論もある。ONE PIECEは考察が非常にさかんな漫画であり、再生数や閲覧数欲しさにこういう論に手をつける人も増えている。最近ルフィアレになったんでますますこの理屈が活気づきそうである
当然だがONE PIECEがそんな漫画ではないことはファンの皆さんの方がよくご存知だろう。もちろんここまでの話程度で終わるものなら、分別ある大人なら笑い話にできてしまう。

ここまで大げさでなくとも、誰しも「日本人は他とは違った特徴を持つ民族である」という考え方には飛びつきやすい
たとえば「日本人の文化である温厚・利他性・礼儀正しさなどを司っている」「日本人が兼ね備えている優しさの証拠となる遺伝子」のように喧伝するものがあるし、ハプログループの分布から大雑把に「お米が好き!?」「冒険好き!?」といういいかげんな類型をしているサイトもある。完全にラベリング効果やバーナム効果の範疇であり、やっていることが血液型性格診断と変わらない*74
さらにこのYAP遺伝子が中国大陸や朝鮮半島の人々には備わっていないというところから「日本人のみが持つ特別な遺伝子」と位置付けるものもあり、差別感情との相性も抜群にいいという始末。
しかもそのために「YAP遺伝子を持つ著名人物一覧」という記事があり、だいたい世界中の都合のいい偉人が何の裏付けもなく載っている。なんと2022年4月14日の時点ではwikipediaにすら載っていた始末(当然ながら要出典がつけられ、2023年現在は削除されている)。

民族や地域に特有の遺伝子的な特徴というものは、「○○は特別な民族である」という自尊心的な部分をくすぐりやすいため非常に好まれやすい。
実際にはハプログループがどこに属しているからといって、それは「先祖をたどると有名な人に行きつく」「生まれつきどこにほくろがある」といった話とそんなに変わらない。
だが遺伝子は生物を特徴づける要素であるため、白人至上主義やネオナチ、移民差別やツチ・フツの対立など、人種差別を正当化する理由としてたやすく結びついてしまう。
生まれながらにして嫌いな相手と異なっている、そして自分の方が実は優れているという安心感は、日常生活で劣等感に苛まれる人間には非常に好まれる話題である。
だからこそナチスは政権を取ったし、昔の貴族は庶民と自分を同じ生き物と見做していなかったし、今でも白人至上主義や民族主義が活発だし、日本では血液型性格診断が大流行したのだ。
このままだとレイシズムなどにもつながっていきかねない上にスピリチュアルやオカルト以外の方向でも有名になりつつある、ちょっとヤバげな疑似科学である。


  • 補完代替療法
読んで字のごとく「通常の医療行為を置き換える療法」。
これだけ書いても意味不明だが、要は「まだ効果を実証するエビデンスが足りない伝統医療などで通常の医療行為を代替する」というものだと思っていい。
「鍼灸療法」や「漢方薬」など、「長い経験の蓄積により医学的効果があること自体は証明されている」伝統医療は存在する。
これらは副作用や薬品アレルギーの問題で通常の医療が受けられない人に、代替措置として施術されることもあるなどこれ自体は(きちんと扱えばだが)普通に有用である。

問題は「明らかに科学的におかしい理論が補完代替療法として横行している」点だ。
きちんとした医療を受ければ治癒するのに胡散臭い代替医療にばかり傾倒して結果死亡してしまうケースも後を断たない。
挙げ句効果がないことを分かった上で患者から高額な治療費を巻き上げる*75詐欺行為を働く悪徳医師まで存在し社会問題となっている。
上記のホメオパシーもこの一種。

有名どころで言えば「血液クレンジング療法」がこの「トンデモ代替医療」に該当する。
これは「採取した血にオゾンガスを混ぜ体に戻す」一種の自己輸血法とでも言うべき療法。
これを提唱する団体では「血液がサラサラになる」「HIV、肝炎、白血病、アレルギーに効果」「糖尿病の合併症、子供の注意欠陥多動性障害、抗がん剤治療の副作用に有効」など
素人でも詐欺だと分かるような胡散臭いフレーズが掲げられているが、信じられない事に芸能人などが実践し宣伝したため大炎上した。

施術前に採取した血液にオゾンを通すと赤黒い血液が真っ赤になり「血液が綺麗になった」などというパフォーマンスが行われることもあるが、これはオゾンにより血中に含まれている鉄分が酸化されただけ
むしろ赤黒い血液が本来の正常な血液なのだが、手っ取り早く嘘を信用させるためにこのようなインチキが行われている。
オゾンガスは酸素原子が3つ連なった酸素の同素体だが、フッ素並みの非常に強い酸化力を持った猛毒である。
いずれ酸素に分解され無毒化するとはいえ、体内に侵入すれば酸化作用で細胞を破壊し、人体に重篤な影響を及ぼす可能性すらある。
ただ、太陽の過剰な紫外線から地球上生命を守っているのはこのオゾンで構成された大気圏の「オゾン層」なのでクリーンなイメージも有って騙され易いというのも有るのだろう。


地球は岩で出来た球体だが、中は空洞で、中心には小さな太陽があり、生物が生息しているというもの。詳細は項目参照。


  • 地球平面説
地球は球体ではなく周りを氷の壁に囲まれた円盤というもの。極端な場合は、南極大陸や重力、宇宙空間は存在しないと付け加えられることもある。
アメリカを中心に信じている人が増えているという。
実際には球体でないと重力は発生せず、プレート運動も起こらないため、この説は当然誤り……なのだが、平面説派は基本的に「後出しじゃんけん」で球体説派を論破しにかかるので、信じている人を引き戻すのは難しい。


  • 放射線ホルミシス
微量の放射線は人体に有益であるという理論。
放射線が活性酸素*76の分解を促進させるという言い分が用いられているが、客観的なデータが存在せず、研究をしていた電力中央研究所も「ホルミシスを低線量放射線の影響として一般化することは難しい」と声明。
そもそもこの「微量」「低線量」というものが問題で、提唱者のトーマス・ラッキーはこの値を年間100ミリシーベルトとしているが、これは国際放射線防護委員会が定める平常時の被爆限度の100倍である。そして被爆の方法が「廃炉した原発を教室や会議に利用する」…もはや何も言うまい。


  • 東洋医学の誤解
疑似科学ではなく、疑似科学の被害者
本来は「人体への負担の大きい薬や手術に頼る前に、人体の調子を普段から整え病気の際にも自己免疫を促すことで人体への負担を減らす」のを主眼にしているため、野菜(や漢方)を中心とした生活を推奨しているのだが、
そこへ健康ブームや動物愛護運動による極端な菜食主義が結び付けられてしばし誤解を招いている。

そもそもこれらは病気になる前に病気にならない健康な体を作るための医学面で優れているのであって、
ガンのような難病に侵されても治療せずに克服できるわけではないし、肉食を否定しているわけではない。
特に肉食については本来の東洋医学でもむしろ適度な量摂取する、それができないなら別途でタンパク質を意識して確保するのを推奨しているくらいである。

ところが東洋医療の知名度を利用する詐欺師を信じた結果、治療が必要な難病発覚後も手術しないばかりか、野菜をより沢山取れば治ると踏んで放置してしまい手遅れになったケースが散見される。
これはアメリカなどでもかなり問題になってきている。医学をリードする西洋医学界において、東洋医学は非常に神秘的かつ伝統的なもののように喧伝しやすいため。
また実際東洋医学の解説には五行や易学的視点などで比喩を行って解説している書籍類が多いのでその辺りからオカルトの方向に逸脱し易いのも問題点と言えるだろう。
しかも悪いことに、かつての超先進国である中国と現在の技術大国である日本が取り入れている上に、アメリカはとにかく医療費が高くつくので「飯を工夫するだけで病気が治る」という俗説は飛びつきやすいのである。


疑似科学かどうか未知数な理論

  • 化学物質過敏症
化学物質に長く晒され続けると、化学物質に対する耐性が低下してしまいわずかな化学物質に対しても過剰な反応を示してしまう……とされる病気。
ただし、医学的にその実在が確認されたことはない*77
決してありえない病気と言うわけではないが、問題なのはこの病気が「精神的な疾患」である可能性が否定できない点である。
特に実際に化学物質が含まれているかどうか、よりも患者本人が化学物質が含まれていると認識しているかの方が症状に強い影響を与えているケースが散見されるのだ。
例として「天然木材のアロマで症状が改善される」という患者の報告もあるが、天然の木材でもダイオキシンなどの有害な化学物質は発生しうる。
むしろ、「自分は化学物質過敏症なのだ」と認識してしまい過剰に化学物質から距離を置こうとすることが、余計に強迫的に症状を悪化させてしまっている可能性すらある。
精神科にかかれば改善されうる患者が、病名そのものによって不利益をもたらされているとすら指摘されている。

なお、意図的にかあるいは提唱者ですらわかっていないのか定かではないが、しばしば並列して語られるいわゆる「香害」とは全くもって別の概念である。
香害は「香りの強すぎる柔軟剤で気分が悪くなる」「付けすぎた香水で吐き気を催す」などの「本来良い香りのはずの成分が強すぎて体調不良を起こす」現象であり、「嗅いでわかるような強い香りで気分が悪くなる」のは個人差はあれど人間としてごく当たり前の反応である。
一方、化学物質過敏症は「本来人体では感知できないような微量の化学物質ですら体調不良を起こす」病気であるため、「化学物質過敏症患者は香害にも敏感」のような相関性はあるかもしれないが原理的には全く別の話である。
そのため、「化学物質過敏症患者はどの程度いるのか?」のような話に、「柔軟剤の香りで気分が悪くなる人は大勢いる」のような反論が持ち出されたら怪しいと判断してもいいだろう。

  • 水素水
その商品展開の非科学さから一部で嘲笑と共に話題になった商品。
ただ、「水素が体に与える影響」についてはいまだ検証段階であり、実際のところ本当に健康にいい可能性は否定できない。
水素水にとって不幸だったのは、その効果がハッキリしない内からメーカーによる過剰な宣伝がされてしまい「インチキ健康食品」のイメージが世の中に広まってしまったことだろう。
今となっては「水素吸入施設に通ってます!」という意識高い系と、それを物笑いの種にする層とではっきりと対立状態を起こしている始末。
もはや新たに検証しなおすのも困難なのが現状であり、検証は次の世代に託すことになりそうだ。

一つハッキリしているのは、水素は水にほぼ溶けない事。
なので仮に水素が体にいい影響をもたらすとしても『水素水』では効果が極めて薄いぶっちゃけ普通の水と大して変わらないため「水素水がインチキ健康食品」という部分は合ってるようなもの。
牛乳を体内で発酵させた方がよっぽど水素が出るので、どうしても水素で健康になりたいと思っている人は牛乳を飲む方がマシだろう。


  • 健康食品/サプリメント
現在では様々な物が販売されており、いまや多くの人物に欠かせない物となっている健康食品。
「医薬品」として販売されている物*78もある一方で、中には臨床研究が不十分なまま販売されている物も少なくない。

「特定保健用食品」や「機能性表示食品」など効能を謳った食品・サプリメントもあるが、これらについても賛否両論がある。
「特定保健用食品」の審査基準や「機能性表示食品」のエビデンスの甘さを指摘する声も多く、疑似科学扱いされることもしばしば。

いずれにしても、2022年現在(サプリメントを飲むだけで)極端なダイエットができたり、大病や難病を治癒する効果が認められた物は無い*79

また、健康体できちんとした食生活と生活習慣を心掛けている人であれば、サプリメント自体が必要無いとする意見も根強い*80
サプリメントに頼るだけでなく、自身の生活習慣を見直し、定期的な健康診断と必要であれば病院を受診することが大事である

ただし、極度の偏食による栄養失調などでサプリメントに頼った方が良い状況でも、高価で調理などに手間の掛かる自然食材だけを勧める者にも要注意。
そういった者は自然崇拝主義や反科学産物主義者、懐古主義者という別ベクトルの疑似科学的主張者であるケースも少なくない*81


  • 「ゲーム脳」以外の脳科学
上述の通り「ゲーム脳」「右脳左脳論」はほぼほぼ似非科学と見て間違いないが、
そもそも脳科学自体が「何が言えて、何が言えないのか。証明されているところはどこまでなのか、どこまでが有効利用できて、どこからが意味希薄な解釈なのか」曖昧すぎるのである。
人間の神経が最も複雑に絡まった器官なので研究が捗らないのは当然のことだが、「分かりにくい研究をしているすごい人物」ということで「ビジネス」として扱う脳科学者が非常に多いのである。
中には学術誌に出してない、論文を発表したというだけで「ノーベル賞に最も近い」など大口叩いてテレビに出演したり、
数多く存在する、心理学的な悩み事解消本から寄せ集めたものを「脳科学的に見た悩み事解消本」として出版してしまう人間がいるのだ。*82
勿論、脳を科学的に研究・解明しようと日々汗水垂らして研究する人間は沢山いるのだが、その手の人間があまりに口を大きくしてしまうせいで、もといネットで高頻度で過激な発言をしてなにかと話題になるとある脳科学者のせいで、彼等の心象まで悪くなっているのが現実であり、マスコミや社会学者など別方面の専門家から「脳科学」そのものを批判されてしまう始末である。
*83


  • PATM
People (are) Allergic To Me」の略で、「他人にアレルギー症状を引き起こす病気」とされる。
ただし、こちらも化学物質過敏症同様に医学的には認められていない。
やはり医学的にありえない病気というわけではなく、「PATM患者は皮膚から有害ガスを多く発生させている」とする報告もあるのだが、患者の症状の多くが統合失調症の「自臭症*84」と酷似していることが指摘されている。

PATM患者と自臭症患者を明確に区別する方法論は確立されておらず、これもやはり「自分はPATMなのだ」と思って精神科を避けてしまうことが症状の悪化を招く危険性がある。
また、何よりこの病気が疑わしいのは実際にPATMがあるなら、PATM患者に数十倍するアレルギー患者が出るはずなのに「自分の周囲にいる人がアレルギー症状を起こしている」とする患者は多くいるのに、「特定の人に近づくとアレルギーが起きる」とする実際にアレルギーに苦しんでいる患者がほとんどいないことだろう。


  • 地震予知
大地震をある程度の精度で予知できれば被害を大きく軽減できるのは間違いないため、多くの研究者が取り組んでいるテーマ。
地震の初期微動を検知することで数秒後の地震を予知し、緊急地震速報として流して咄嗟に身を守ることができるというレベルの地震予知であれば既に行われているが、
それ以上の予知と言えるものになると、現状は科学と呼べるか疑わしいレベルのものがほとんど。
Twitterでも「当たる地震予知」をしている有名なアカウントがあるが、その理論は学会では冷笑され、地震予知のトリックも暴かれ、それらを黙殺して信者を集めている……とやっていることが完全にカルト宗教と同じ。
そりゃ毎日「地震が起こる確率が高くなりました!」なんて言ってたらいつか起きるに決まってる。

例えば「地震の直前には地震雲という特殊な雲が発生する(地震雲)」というのは有名な話である。
これは「地震が起きる直前には地下深くで地盤が崩壊するためその電波が雲の形成に異常な作用をもたらす」と説明されることが大半。
原理的に考えてありえないと断言できるわけではないが、現状「どういう雲が地震雲なのか」という具体的な定義が全くなされていない
ごく普通のうろこ雲(空にびっしり浮かんでるとちょっと気持ち悪い)なこともあれば、俗にラピュタ雲と呼ばれる積乱雲の塊だったり、地面から立っているように見えるまっすぐな雲(単なる飛行機雲が角度の都合でそう見えるもの)、
ひどい場合は露骨に合成した写真や、うろこ雲ですらないごくごく普通の雲に地震雲論者や統合失調症の患者が「地震雲だ」と言っているだけのものが当たり前のようにヒットする。

というか、「地震雲」とされる写真の大半は、雲を見慣れた人からするとごく当たり前の雲だったりする*85
雲は毎日のようにその姿を変えているため、場合によっては不気味に見える雲も観察され得る。
そう言った雲がたまたま地震が起きる直前に撮影されたりすると地震雲と騒がれたりするわけだ。仮にそんな雲が毎日観測されれば=毎日どこかしらで大地震が発生し、日本は木っ端微塵になっている。
実際、地震雲の投稿サイトもあるが、大地震の直前に特に投稿数が増えたりすることはなかったりする。

また「地震の前に動物が騒ぐ」というのもよくある話だが、実際動物だって毎日同じ行動をとっているわけではないだろうし、大地震ならばその被害範囲で飼育されているペットの数も大きくなる。
「たまたま地震の直前にペットが騒いだから記憶に残った」という可能性も十分ありそうである。
他にも地震の直後に空を見上げたら奇妙な形の雲が浮かんでいたというのを曲解してしまった可能性なんかもあるだろう。
「受験の日に起きた印象的な出来事」「好きだった親類の葬儀の時に出た食事」みたいなものをまざまざと覚えているような感じ。

いずれにせよ、「地震の直前にこんな異常な現象が起きた!」という事例だけをどれだけ集めても、それは無駄である
大事なのは「異常な現象が起きて地震が起きた割合」と「異常な現象が起きたが地震が起きなかった割合」をキチンと比較し、前者の方が有意に高い、と証明することなのだ。
これは他の科学的検証の際にも共通する考え方なので覚えておくといいかもしれない。


  • 副腎疲労の項で言及した一部の健康法
副腎疲労と縁の深い用語では、「遅延型アレルギー」など学会が明確に存在を否定したものもあるが、全てのものが完全に否定されているわけではない*86
また、副腎疲労が科学的に解明された疾患ではないことは研究している専門家も重々承知している事が多く、自身が運営している医療施設のパンフレットにその旨をキチンと明記し、現代医学との折り合いを建設的に考えて模索していたり、患者の金銭的・肉体的な負担を憂いたり*87、自分の研究が周囲には理解されないのを承知のうえで、何とかして現代医学の発展に役立てたいと闘志を燃やしている殊勝な心掛けを持った研究者も少なくない。
副腎疲労にまつわる各種健康法は、精神病・慢性疲労・挙げ句は発達障害など、現代医学で綺麗に割り切れるような問題ではない疾患を何でもかんでも請け負わされているような側面があるが、裏を返せば、これらに何とか解決の糸口を見出したいという希望が収束しているということでもあり、研究が進んだ結果、本当に突破口となる可能性もないとは言い切れない。
21世紀の錬金術とでも呼べるものである。


  • 磁気治療器
エレキバンと言った方が分かりやすいかもしれない。
磁気の力でコリを取るという商品で、割と長年生産されている。
シール型のだけでなく、ネックレス型とかブレスレット型とか種類も豊富。
しかしこれ、明確なエビデンスがある訳では無い
コリというのがどういうものかという定義自体が無い上、実際貼って治ったからというって、コレの効果で治ったのか、自然治療したのかがわかりにくいというのも問題。
貼るタイプの場合、コリの部分に貼り付ける事により、プラシボもしくは指圧効果(これも疑似科学に近いけど)が発生して治る、なので別に貼るものは磁石でなくとも小石とかで良いという説も。
もっと強い磁気に頻繁に当たるMRI技師や、MRIに頻繁に入る治験者が「私は肩こりが酷い、故に磁気なんて効果が無い」という発言をすることもある。
ただ効果がある人も居るので「弱くても至近距離で長時間磁気を当てる」に何かしらの影響があるのではないだろうか…と思いたい。


貧乳に悩む人が一度は聞いたことがあるかもしれない話。実際に揉んで大きくなったという話はあるものの、科学的に有意と言える根拠や理論が不十分で疑似科学の疑いが強い。
ただ強い好意を抱く相手に揉まれると女性ホルモンの分泌が活性化され、結果として胸が大きくなるという話もあるため、有意な根拠や理論が整えば疑似科学から正規の科学へと昇格する…かもしれない。
類似ケースとして「精液を飲むとおっぱいが大きくなる、美肌にいい」という話もあるが、こちらも科学的根拠はない。


余談

ここでは医学や生物学等の自然科学ばかりを取り扱ったが、人文科学や社会科学にも疑似科学は存在している。
前者は歴史関係の偽書がこの範疇であるが、当Wikiの利用者には江戸しぐさが最もなじみ深いであろう。




追記・修正は疑似科学に騙されない方にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 疑似科学
  • トンデモ科学
  • アニヲタ理科教室
  • オカルト
  • 未科学
  • ニセ科学
  • 詐欺
  • 相対性理論
  • 迷信
  • 陰謀論
  • デマ
  • 科学
  • ミーム
  • 一覧項目
  • 所要時間30分以上の項目
  • 危険
  • 社会問題
  • スピリチュアル
  • 偽物
  • エセ科学
  • pseudoscience
  • でっち上げ
  • トンデモ医療

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月24日 12:28

*1 新型コロナウイルス発生当初、中国にて「日本新型冠状病毒肺炎疫情」という表現が出た当時、『「日本新型コロナウイルス肺炎」と読むに違いない!中国は日本を侮辱している!』と一般ユーザーのみならず、著名人や政治家までもが沸き立った。因みにこの単語は「日本に於ける新型コロナウイルス肺炎」という意味であり、google翻訳にかけてもほぼ同じ意味の訳が出てくる。

*2 仮説が実験や観測で覆される可能性。例えば特殊相対性理論なら、静止しているか光速未満の速度で運動しているものを光速以上に加速できたか、加速の痕跡を発見できれば誤りを発見できたことになる。

*3 自分と似たような考えを持った人たちが集まる閉鎖的な空間でやり取りが繰り返され、自分の意見や思想が肯定されることで、自身の主張する意見や思想があたかも世の中における正解であるかのごとく勘違いしてしまう現象のことで、特にSNSのように本来開けているイメージのある場所で陥りやすいとされている。これ自体はどこでも起こりうる可能性があり、特にアニヲタwikiでもやたら項目の多いジャンルなどで普通に起こっている可能性はある。

*4 社会学などでは割と定番で「ポストモダニズム・ジェネレーター」というポストモダン論者にありがちな文章を自動生成するテキストサイトが存在する。

*5 ガンによる死者が増えているのは事実であるが、昔ならガンで死ぬ前に死んでいた人がガンにかかるまで生きるようになっている。

*6 もちろん人為的にガンを起こせば「殺人被害者(どう考えても米花町の死因第1位)」と「ガン」の両方が死因になるが、作中現実問わずそんな技術はないだろうし、今後も恐らくそんな技術は出来ないだろう。なお、死因2位として候補に挙がる「死刑執行」もガンが死刑に用いられればガンが死因になるが、これも人為的にガンを起こせまい。そもそも絞首刑以外で死亡させたら正当行為が適用されない為「殺人被害者」が死因になる。

*7 疑似科学に限らず、何かしらの騒動に於いて「自分たちが攻撃されている」=「自分たちの検証は正しい」=「だから相手が隠蔽しようと攻撃する」、という謎理論はよく構築される。ある意味に於いては上述の陰謀論・エコーチェンバー現象と同じ。

*8 掲載に相応しいかをチェックすること。

*9 高度な論文の場合、査読できる学者自体限られているため、この論文を査読できるのは世界中でも何人もいないので絞れてしまう、ということはある。

*10 逆に投稿者の権威に惑わされないよう査読者に投稿者を伏せるケースもある。

*11 研究者に掲載料を払わせるケースが多い。

*12 知らずにハゲタカジャーナルに論文を送ってしまうケースもある。

*13 言うまでもないが、「腐敗」と「発酵」は科学的には全く同じ現象であり、人にとって有用な否かで区別されているだけである。

*14 多数の患者を集めて投与するグループと投与しないグループを分け、更に元々の病気の進行度合や自然治癒などの影響を排除し、それに協力してくれる多数の信頼できる医者を集め…なんてことができるくらいなら最初から厚労省の承認を取りに行くだろう。

*15 「○○にも効く可能性が示唆されている」などと検証不足であることを認めている場合もある。

*16 ただし、これは医薬品ではない栄養食品やエナジードリンクでも同様である。

*17 いわゆる依存症であり、知能が低下するとされる「ゲーム脳」とは全く別。ただし、こちらはこちらで別の批判が無くもないが。

*18 「並以下の治療」と勘違いされがちだが、現代の医学において根拠のある最善の治療方法を指す。

*19 それも、詐欺は基本的に財産を奪い取ってやろうという悪意のあるものが前提なので、本人たちまで信じ切っているようなケースだと詐欺にも問えないケースも少なくない。

*20 そして理論を歪めたとされた農業技師たちはもちろんシベリア送りになった。おそロシア。

*21 精神的な思い込みが身体に影響を与える現象。特に「薬だと信じて無益無害なものを摂取すると実際に効果がある」という現象のこと。偽薬効果とも。)不眠や痛みの緩和などに対して有効な場合はある。

*22 どの薬にどの成分が入っているのかテスト作成者のみ知っており、患者にも、投与・分析する医師にも伏せられる。そのためテスト参加者の思い込み・バイアス・ブラシーボ効果が極力排除される

*23 理由の存在しない頭痛、腹痛、倦怠感など。

*24 。医師がどれほど適切な医療を行っても、自分の状態が不安な患者はしばしば医師に対して不信を抱き、結果として医療が効果を発揮しなかったり、医療関係者へのハラスメントにつながってしまうことがある。

*25 マラリアの治療薬で、大量投与するとマラリアに似た症状が出る。

*26 逆に言うと、ナイチンゲールの活躍した19世紀末の時点で、医師でなく看護師のナイチンゲールからしても既にただの砂糖玉扱いされていたという事でもあるが。

*27 ナイチンゲールのこうした文章を「ナイチンゲールがホメオパシーを肯定している!」と言う理屈に使う者もいる。実際のナイチンゲールは周囲にも上層部と言わず協力者と言わず正論を叩きつけ毒を吐きまくる女傑であり、この文章も得意の皮肉である。

*28 ただし、「ほかの医療と組み合わせて初めて効果が実証できる」という説明をしている団体もあり注意が必要。本当に標準医療の効果を増幅させたり欠けているところをプラシーボ効果以外で補えるような代物なら、医学界でも歓迎されるだろうが、今の所そうした評価はない。

*29 「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」。ホメオパシー医学協会に所属している助産師が担当医師らに気づかれないように、母子手帳に「ビタミンK投与」と書きながら実際は「ビタミンKの「記憶」「波動」「オーラ」、ビタミンKと同程度の効果を持つ」と主張する砂糖を舐めさせていたことにより起こった新生児の死亡事件。この件は民事裁判となり、結果は公表されていないものの和解となった。しかし助産師の所属する団体の親玉が被害者遺族を中傷するなど後を引いている。

*30 商品として並ぶ場合には防腐用のアルコール類なども含まれていることも。

*31 勿論いい匂いならリラックス効果はあるが、体に取り入れてもなんの意味もない。

*32 「あなたは何か悩みを抱えていますね?」「真面目でしっかり者だけど実は寂しがり屋じゃないですか?」など「何にでも当てはまる様な例を挙げただけで真理を言い当てた様に見える」事。血液型占い含めインチキめいた占いの正体はこれとされる。

*33 バーナム効果の逆で「男なのにこれも出来ないのか?」「女にこれが出来るわけがない」など「あなたはこうであると強く断定する(ラベルを貼る)ことでそのように行動してしまう、あるいはそう行動しているように見える」事。これも占いの正体とされる。

*34 主に統計的な意味。「母集団の偏り」などの顕著な例として、統計学や社会学、疑似科学批判の文脈で頻繁に挙げられている。

*35 正しくは「一部の血液型の比率が多数派に比して有意に少ない程度には偏っている」こと。日本の場合はA型4割、O型3割に対してB型2割、AB型1割。多くの人間が信じるようなことを言えば流行として成立するため、この場合ならAB型やB型を否定的にすることでA型やO型の人々、つまり7割の人から支持を集められる。

*36 有機ゲルマニウムの場合。無機ゲルマニウムの場合は影響がないどころか有毒ですらある。

*37 2022年現在日本国内で出回っている物はファイザー社、モデルナ社のワクチンが該当。

*38 「ワクチン接種証明がないと入国できない国に我が子を留学させていた」などの自慢話でバレたケースもある。

*39 デマ検証系のアカウントも、反ワクチンの話題は簡単に裏を取って否定できるので非常に好む傾向がある。たとえばロシアのウクライナ侵攻などはデマの検証が非常に難しい上に政治がらみの話になってしまい、藪をつついて蛇を出しかねないのだ。

*40 一方、一般相対性理論はあまりに難解なためか滅多に攻撃されない。

*41 「相対性理論はまちがっている」の略

*42 中には学校で生徒に向けてこのトンデモを展開する教師なんかもいたらしい。だが、大体相対性理論とニュートン力学を混同した独自理論を展開するのですぐに分かる。

*43 「アインシュタインの予言」というインターネット上で流布している怪文書のこと。詳しくは偽書の項目でどうぞ。

*44 『種の起源』に思いっきり答えが書いてあるのに、「書かれていない」と批判している類のもの。

*45 例えば犬は同種内や親子間でも外見に差が有るが、「肉類を主食として、デンプンや糖分を副食にする」食性や「獲物を集団追跡して波状攻撃を掛ける」生態は共通しており、身体の基本構造もその食性や生態に最適化されている点は共通している

*46 「正確に弱点に麻酔針を打ち込まないと返り討ちにされる危険性が高いのに、進化途中の中途半端な存在が繁殖出来るか?しかも、人間やそれに近い知性を持つ動物みたいに親・仲間からの指導や試行錯誤による学習が出来る生態じゃないんだぞ?」

*47 例えば、キュヴィエは化石研究にも功績を残しているが、絶滅した年代の判定方法が当時は開発されていなかったので、「何らかの大災害で一帯の動植物が大量絶滅して、他の地域から現生生物が流入したのでは?」と言う生物史上では比較的稀な事象を主な絶滅理由として想定してしまった。

*48 有機物が微生物によって発酵・分解されたもので、堆肥と肥料の境目のような存在

*49 そもそも詳細が不明確な細菌を放り込むことが果たして本当に水質改善をもたらすのかは限りなく怪しい。

*50 EM菌自体はかなり真面目に研究されているようだが、ここにこの手のカルト系が噛んでしまったようである。

*51 もちろん劇的な効果は期待できないだろうが。

*52 日本人の40%が酒に弱い体質で、4%が全く飲めない体質(いわゆる下戸)と言われる。

*53 一本のサイズが大きく喫煙時間が長くなりがちな葉巻の方がニコチンやタールの量は多いとされる。ただし、紙巻きタバコと違って一日に大量消費する物ではなく吸い方も異なるため、一概に紙巻きタバコとの比較はできない。

*54 これは批判が殺到したことで教科書からは取り下げられているようである。

*55 目盛りの無い定規のこと。

*56 定木とコンパスで解ける問題は二次方程式までだが、三等分と倍積には三次方程式が必要。また円積については整数次の代数方程式(有理数係数の方程式)で解けない。というか任意の五次以上の方程式を代数的に(四則演算+n乗根の作業)解く方法についても存在しないと証明されている。

*57 特に精製された物を忌避する傾向が強く、少量の含蜜糖や天然塩であれば許容する人もいる。

*58 実際そういう傾向があったとしても、食べ物そのものよりも「少年時代からジャンクフードばかり食べているような荒んだ家庭環境」の影響の方が遥かに大きいだろう。

*59 この真逆の状態が「冷え性」だったりする、冷え性では体幹や脳などだけに熱が籠って滞り手足などの末梢が低体温という状態も入る。

*60 これを人工的に精製したものが、アトピーの治療でお馴染みの「ステロイド」である

*61 最悪の場合は死に至る事だってある

*62 実は全国区レベルの大病院でも取り扱っていたりする

*63 血糖値の急激な乱高下を抑えるための健康法であるが、副腎疲労の場合は悪質な腸内細菌の増殖を防ぐ目的で用いられる。

*64 特定の栄養素を意図的に過剰摂取することによって裏ワザ的な作用を発生させることが出来るという「メガビタミン主義」が発展・拡大して生まれたもので、オーソモレキュラーとも呼ぶ。

*65 通常のアレルギーとは違い、水面下でジワジワと発生していくとされる食物アレルギー反応で、主に内臓に炎症を起こして働きを低下させるといわれる。なお、この症状について、日本アレルギー学会は完全に否定する立場を取っている。

*66 主に遅延型アレルギーの結果発症するとされるもので、ダメージを受けた腸に微細な穴が開き、感染症に非常に弱くなるとされる。

*67 いわゆるジャンクフードを食べてはいけないばかりか、「果物も穀物も芋類も食べてはいけない」と主張する専門家もいる。しかし、こんな症状に陥っている人は胃腸が弱っている事が多く、「タンパク質中心の食生活に耐えられない」というジレンマがある

*68 特に腸内カンジダ菌の根絶が厄介。しかも、遅延型アレルギーの結果によっては酵母がアレルギーだったりして発酵食品全般の摂取を禁じられることもある

*69 もっとも、プロバイオティクスのサプリメント等は、何が誰に効くのかは個人差が非常に激しく断定が出来ないことは真っ当な専門家の間でも共通の見解である。

*70 やはりと云うべきか、当該の医師は副腎疲労の外来を受け付けている。もちろん、診察は完全自己負担である。

*71 もちろん保険も適応される。

*72 ただし、犯罪と親和的な生物的要因があることは確かである。人を殴って大怪我をさせるなら、ある程度体格がたくましくなければ力が出せない為(筋肉が付きやすい)男性が加害者になりやすいだろうし、脳機能の低さが(思考を制御できず)犯罪につながってしまう例があることは認められている。

*73 この辺は「今日はカレー食ってもいいのか!?」で有名な漫画「狂四郎2030」あたりでもテーマになっているので、アニヲタ的には読んでみるといいだろう。

*74 一昔前に「日本は農耕民族、西洋人は狩猟民族」というところに論拠を求めた性格診断があったが、それに似ている。そちらも現在は完全に否定されている。

*75 医療費が健康保険で一部公費負担になる関係で公定価格が決められている通常医療に対し、補完代替療法は健康保険の利かない自由診療のためその気になれば施術側がどんなぼったくり価格でも付けられてしまうのだ。

*76 DNAを損傷させる化合物の総称。ガンの原因の1つ。

*77 特定の物質にアレルギー疾患が起きる場合はある。

*78 もっとも一部のマルチビタミン剤などに限られる。

*79 将来、そのような薬品が開発されたとしても、医薬品に区分されて厳しい管理下に置かれる可能性が高い。

*80 むしろ過剰摂取が身体に悪いとされる成分もある。

*81 政治世界では「シャンパンリベラル」と揶揄される様な「自分達は快適な研究室と自宅で自由で贅沢な生活を送り、貧しい生活に苦しく自由な時間の確保すらままならない労働者の視点を全く持っていない」者達だったりするからだ。

*82 脳科学言いながら結局中身は心理学的や精神学の本と大差が無い、酷いものだと著名な読書家から「脳科学について知ろうと思ったら、この本はただのエッセイだった」と断じられたものもある

*83 実際、脳科学を批判する本は「暴走する脳科学」「脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか」など沢山出ている

*84 自分が臭いのではないか?と思ってしまい周囲の人の些細な反応まで自分の臭いに対する反応と思い込んでしまう病気。

*85 雲の研究者である荒木健太郎氏がTwitterで頻繁に啓蒙している。

*86 だからこそ、副腎疲労に翻弄される患者の負担が増え、事態がややこしくなっているともいえる。

*87 中には「諦めてください(意訳)」の一言でアッサリ突き放すような冷血漢もいる