サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol(MtG)

登録日:2012/06/11 Mon 18:06:39
更新日:2023/08/19 Sat 07:29:09
所要時間:約 18 分で読めます





サルカン・ヴォルにとっては、ドラゴンは生命の野蛮な輝きの純然たる発現だ。


サルカン・ヴォルはドラゴン信者でドラゴンマニアなヤンデレドラゴンフェチである。











……だいたいそれで言い現せるんだけどそれじゃあんまりなので以下詳細な解説。


概要

サルカン・ヴォルはマジック:ザ・ギャザリングに登場するプレインズウォーカー
「アラーラ/Alara」の断片の一つである「ジャンド/Jund」在住。人間、男性。

一人称は「ヴォル」。可愛い。まぁ髪と髭伸ばしっぱなしの小汚いおっさんですけど。
黒髪の荒々しい外見をしており、良く見れば竜戦士、悪く見ればホームレスっぽい。

赤と緑のマナを操るドラゴン崇拝者にしてドラゴン魔術の使い手。
ドラゴンを召還・強化したり、自身がドラゴンに変身したり、ドラゴンのような炎のブレスを扱ったりととにかくドラゴン愛に満ち溢れている。

生来の次元ではドラゴンが絶滅してしまったため。究極の捕食者であるドラゴンを求めて次元を旅していた。そしてドラゴンを生態系の頂点とする弱肉強食の次元ジャンドに理想を見出し、そこを住処と定める。
ジャンドの酋長ラッカ・マーの紹介でニコル・ボーラスと出会い、彼こそが捜し求めていた究極のドラゴンであると絶対の忠誠を誓う。

「はい…ヴォルはご主人様の忠実な僕でございます(マジキチスマイルッ)」

アラーラ再誕にて偉大なるドラゴン、ボーラスの計略が敗れてから、心の平衡を失い多少頭がおかしくなっている。
…ほら解説ドラゴンばっかじゃねーか!

一応、正気を失う前はアジャニにプレインズウォーカーとしての簡単な指南をしたり常識が無い訳では無かった様子。

ストーリーにおいて

ゼンディカー

ゼンディカーではボーラスの命により、ウギンの目の守護を行っていた。探索に来たチャンドラをドラゴン変化により追い詰めるも、続けて現れたジェイスがチャンドラに無色の炎を使うことを教え、更にそれを双つ術によりコピーされてサルカンは敗北する。
但しこれがエルドラージを覚醒させる「3人のPWが集まり、無色の炎を放つ」にバッチリ該当してしまった為、ゼンディカーに殺戮生物エルドラージが解き放たれることになる。おいこら3バカ。
任務に失敗したとメソメソしながら帰ってくるサルカンにボーラス様は「計画通り」と告げるのであった。
あの、最初から教えてあげて下さい。この子メンタル紙なんです。

タルキール覇王譚

のちにタルキールの出身であったことが判明。なんと同ブロックの主人公に大抜擢された。
タルキールはプレインズウォーカー・ウギンが守護者として数多のドラゴンとともに支配していた次元であったが、人間・オーク・ジンにイフリートにその他大勢から成る五つの氏族たちとの激しい争いの末にウギンも含めドラゴンは絶滅。
サルカンが生まれた時代には五つの氏族の栄光と強大さを語るためのお伽話の存在と化していたが、何をどう思ったかそこから憧れが化学反応をおこしスパーク
上記ドラゴンヲタへの道を歩み始める。

タルキールブロックのストーリー直前、ニコル・ボーラスの老獪さと凶悪性は自身がドラゴンに求めていた気高き強靭さとは相容れないことに気付き、離反。
かつてタルキールにいた時から響いていた謎の声に導かれるまま故郷へと戻り、そこでジェスカイ氏族のカンである《悟った達人、ナーセット》の教えを受ける。
ナーセットとともに「ウギンのきずな」へ向かうのだが、マルドゥ氏族の長である《兜砕きのズルゴ》の追撃を受けた。
彼とは昔から非常に折り合いが悪く、サルカンはズルゴに「無意味な殺戮を強制する」ことに反感を持ち、ズルゴはサルカンを「氏族を裏切りたびたびどこかへ消えてしまう」ことを疎むと、相性は最悪の一語だった。
ズルゴはその後焦りからカンの座を失ってしまうのだが、それをサルカンのせいだと考えて復讐しにきたのだ。その際にナーセットを殺した。
自分を救ってくれたナーセットを目の前で殺されたサルカンの怒りは激しく、「絶対に復讐してやる」と心に誓って1280年前のタルキールへとタイムスリップした。

運命再編

サルカンは1280年前、ちょうどウギンとボーラスの決戦の場にタイムスリップする。そこには上空にドラゴンが飛び回る、サルカンにとっての理想郷だった。
テンションが上がったサルカンは大喜びで龍に変身して一緒に飛び回るのだが、その龍がティムールに狩られてしまう。サルカンは激怒するが同時にその手腕に感心し、その氏族の女族長についていく。
彼女こそが《龍爪のヤソヴァ》であり、勝手に自分の領土に侵入して自分をつけてきた不審者サルカンを捕えて詰問する。

普通は未来から来たという人物の言うことなど信じがたいものだが、ヤソヴァもまた龍のいないタルキールを幻視していたためにサルカンを信用。
空を飛ぶ指導者を失い滅びに向かう世界に生まれたサルカンと、現在進行形で空を飛ぶ暴君と戦うヤソヴァがその「龍のいない世界」に見るものはまったく違っていたが、ヤソヴァの心には疑念が生じる。
その後ボーラスとウギンの最終決戦に介入しようとするも、サルカンは何の役にも立てないまま瀕死の重傷を負う。それを助けたのは、やはりヤソヴァであった。
ヤソヴァからすれば、サルカンは意味不明なことばかりを言う変な未来人(自称)である。突然自分に幻視を与えた変なドラゴンも怪しいし、あからさまに異物であるサルカンが何か答えを持っているに違いないという一縷の望みから彼を助けたのだ。
サルカンはウギンを助けるべく行動し、ヤソヴァの制止を振り切ってウギンを持参した面晶体で救うことになる。その時にサルカンは確かに声を聴いたのだった。

お前ではない龍を求めている限り、決して自分の内なる龍にはなれない

こうしてウギンが死ぬという歴史は変わり、サルカンはヤソヴァに礼を述べて1280年後の時代に戻っていった。
そして「サルカン……偉大なるカン」と名乗る変なオッサンがウギンを助けた歴史は、ヤソヴァを通してひそかに語り継がれていくことになる。

タルキール龍紀伝

サルカンは元の世界に戻ってきた。なんと絶滅したタルキールの空はドラゴンが空を飛び回っており、彼にとって理想郷に変わっていた。
そしてマルドゥ時代の懐かしい顔とも出会う。しかし憎きズルゴは今やただのオッサンに落ちぶれており、かつて亡くした戦友「足首裂き」も名前が「薬瓶砕き」に変わっていて、2人とも自分のことを知らなかった。
サルカンはショックを受ける。今やズルゴは報復するべき相手ではない。そして足首裂きが生きているのだから、もしかしたら死んだナーセットも生きてるかも、と彼はジェスカイ氏族の領土を目指す。
そこには既にジェスカイという名前はなく、ナーセットをライバル視するテイガムに門前払いを食らう。ナーセットのいない世界になんて何の意味もない!と大憤慨して事情を知っていそうなウギンのもとに行くが、ウギンとしても目覚めたばかりで何が起きてるのかさっぱり分かっていない始末。

とりあえず理想の龍にはなれたがこの世界にとってサルカンは完全な「はぐれ者」、どこにも居場所のない男だと悟るのだった。
本当にこんな世界でいいのだろうか?と道を下るサルカンは偶然、ウギンに会いに行こうとするナーセットに出会う。
ナーセットは赤の色を失い、学究熱心でオジュタイからも非常に評価が高い存在になっていた。サルカンとは面識がなかったが、その名前は禁じられた歴史書の中でたびたび登場している。

あなたは誰だと尋ねるナーセットに、サルカンは自身がサルカンであることと今までの経緯を語る。
ナーセットは彼の名前と言葉が自分が読んだ歴史書とあまり違わないことに驚いて、歴史書もこの男の発言も真実だと知る。そしてその「偉大なるカン」にタルキールの外へ旅立とうとした体験を語る。
サルカンは「君もプレインズウォーカーなんだ」と他の次元の魅力を語るが、ナーセットは「とりあえずタルキールでの調べ物が終わったら行ってみる、今はこの世界の真実を知りたい」と答えた。
たとえ歴史が変わっても「学究熱心なナーセット」がそこにいることにサルカンは安心したのだった。
以降ナーセットは研究のために様々な次元を渡り歩いて、そこで本を買いまくっては読みまくるというブックワームっぷりを発揮している。背景ストーリーで登場するたびに本を読んでいるので、今後そういうキャラとして確立していくのかもしれない。

改変後の世界も人間を始めとした知的種族にとって住みやすいかは怪しい世界ではあるのだが、龍がいなくなったタルキール覇王譚においては各氏族が箍が外れてその盛衰によりとめどない戦乱に突入した結果タルキールが荒廃したとある一方で、龍が健在な龍紀伝では龍王という各領域を牛耳るトップがいるおかげで奇妙なバランスが保たれている状態であり、次元自体は救われたと言えるだろう。

タルキール龍紀伝で登場した《揺るぎないサルカン》は、ストーリー的にはティムールのヤソヴァ、オジュタイのナーセットの影響を受けているのだろう。
彼女たちと出会ったことで、彼は「他の存在によりどころ求める自分」を捨て、「揺るぎない」存在になったのだ。
ただしカード的には銀枠を除いて初の「色が4色にまたがった」プレインズウォーカーであり、色がやたら揺らぎまくっている。

その後

灯争大戦ではオブ・ニクシリス、カーン、放浪者などと顔なじみであることが発覚した。現実のカードのみならず、設定的にも割と古顔のようである。
アジャニから連絡を受けたサルカンは、ボーラスを倒すためにボーラスが支配していたアモンケットで手掛かりを集め、「ハゾレトの槍ならいけるんじゃないか」という助言を出した。
その後ラヴニカで永遠衆退治に力を貸し、放浪者とともに永遠衆を倒して挨拶するなど、今後の伏線を散々張るという大きな役割を果たした。
そしてボーラスの敗因を辿っていくと最終的に「サルカンを軽視しすぎた」につながるなど、なんやかんやでストーリーにめちゃくちゃ大きな影響を与えている。
基本セット2019では赤のプレインズウォーカーの顔として登場したが、2020以降ではチャンドラ・ナラーに戻ってしまっている。

新ファイレクシアの侵攻戦ではカードとしての登場は無かったが、タルキールでドラゴンと共に迎え撃っていた模様。
その後は多元宇宙の変化に伴いPWの灯を喪失。とはいえPWとしての旅路の中で自らの安住の地を見つけることができたため、これからもドラゴンと共に生きていくのだろう。


ゲームでの性能

Sarkhan Vol / サルカン・ヴォル (2)(赤)(緑)
プレインズウォーカー ― サルカン
[+1]:あなたがコントロールするクリーチャーは、ターン終了時まで+1/+1の修整を受けるとともに速攻を得る。
[-2]:クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時までそれのコントロールを得る。そのクリーチャーをアンタップする。それはターン終了時まで速攻を得る。
[-6]:飛行を持つ赤の4/4のドラゴン・クリーチャー・トークンを5体戦場に出す。
初期忠誠度:4

アラーラの断片にて登場した1枚目のサルカン。まだ正気だったときのヴォル。
かつてのヤヴィマヤの火を思い出す能力を持つ。攻撃偏重で汎用性が低く、同期のエルズペステゼレットと比べて評価は低めだが、前のめりに攻め込んでいくビートダウンで型にはまったときの爆発力は凄まじい。
ただし戦場に出してから使える2つの能力がどちらもクリーチャーありきなのが大問題。当時は後にモダンやレガシーで使われるレベルの除去カードが乱れ飛んでいたのである。
書いてあること自体は強いが同じく4マナの《野生語りのガラク》の方が安定性もあるため、あまり使われなかった。


Sarkhan the Mad / 狂乱のサルカン (3)(黒)(赤)
プレインズウォーカー ― サルカン
[0]:あなたのライブラリーの一番上のカードを公開し、それをあなたの手札に加える。狂乱のサルカンは自身に、そのカードの点数で見たマナ・コストに等しい点数のダメージを与える。
[-2]:クリーチャー1体を対象とする。それのコントローラーはそれを生け贄に捧げる。その後、そのプレイヤーは飛行を持つ赤の5/5のドラゴン(Dragon)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
[-4]:プレイヤー1人を対象とする。あなたがコントロールする各ドラゴン・クリーチャーは、そのパワーに等しい点数のダメージをそのプレイヤーに与える。
初期忠誠度:7

エルドラージ覚醒で登場した2枚目のサルカン。狂ってしまったヴォル。
史上初のプラス能力を持たないプレインズウォーカー。0能力ですら忠誠度を削るリスクがある。
初期のジャンドなどでは使用されていたが、5マナと重たいことと、0能力で瀝青波が捲れて一瞬で瀕死になったりしてたので結局使われなくなった。
クセの多いPWの中でも屈指のアクの強さを持つ上に、赤黒というクセの強いカラーリングであるためか、シングル価格はたぶんティボルトさんの次くらいに安い。むしろ発売直後であるのに狂乱サルカンより安いティボルトさんヤバい*1
一応スタンダードでサルカンの-6でドラゴン出して墓地送り、その後狂サル出して-4を使うとワンショットキルというネタはあった。
現在のモダンでも出来るけどそもそもサルカンが+6まで貯まらないよね、エルドラージと親和のせいで実質4キル祭りだし。

後に登場した《太陽の宿敵、エルズペス》もこれと同じく忠誠値がマイナスになる能力だけを持つプレインズウォーカー。
しかしあちらは「脱出」という能力で墓地から再利用できるため、完全に使い切りというわけではない。
そういう意味でも《狂乱のサルカン》は相当使いづらいカードであり、ジャンドがスタンダード落ちで消えてからは見向きもされなくなったのだった。


Sarkhan, the Dragonspeaker / 龍語りのサルカン (3)(赤)(赤)
プレインズウォーカー ― サルカン
[+1]:ターン終了時まで、龍語りのサルカンは飛行と破壊不能と速攻を持つ、赤の4/4の伝説のドラゴン・クリーチャーになる。(プレインズウォーカーでない間は、龍語りのサルカンは忠誠度を失わない。)
[-3]:クリーチャー1体を対象とする。龍語りのサルカンはそれに4点のダメージを与える。
[-6]:あなたは「あなたのドロー・ステップの開始時に、カードを追加で2枚引く。」と「あなたの終了ステップの開始時に、あなたは手札を捨てる。」を持つ紋章を得る。
初期忠誠度:4

タルキール覇王譚で登場した3枚目のサルカン。なんとかかんとか正気には戻ったらしい。
マジック史上初の、多色から刷られて単色に至ったプレインズウォーカーとなった。
憧れが高じた末のドラゴン変化術は、単体で運用しても5マナ4/4飛行速攻破壊不能と冗談のような性能。邪魔な生物がいれば焼いた上で場に残る選択肢もあるとかちょっとおかしい。
コントロール相手にもビートダウン相手にも腐ることがなく、使う側としてもコントロールデッキのフィニッシャーによしクリーチャーデッキ数多の打点候補兼生物火力にしてよし。
単色であることも手伝い、今までのサルカンの中でも飛び抜けて強力なものとなった。
元来、攻撃的で自身や自身の味方のことを顧みない赤という色と、「パーマネントとして残るほど強力」というプレインズウォーカーというカードは相性が悪かったのだが、これは赤ならではの攻撃性とプレインズウォーカーならではの小器用さが見事に両立した、カードデザインとしても非常に秀逸な一枚になっている。
…え、奥義?まぁ忘れていいです。

赤のプレインズウォーカーとしては登場当時はかなり強力で、《紅蓮の達人チャンドラ》とともにトーナメントシーンに明確な役割を持って参戦していた。そして赤もプレインズウォーカーが強い色になってきたという認識をプレイヤーに与えた。




「ならば、俺は今、はぐれ者だということ」

サルカンは言って、微笑んだ。

「時に置き去りにされた者。俺は取り憑かれていたのだとしても、狂っていたのだとしても、俺を導いた声は黙りました。俺の心は俺のもの、そしてタルキールは俺がずっと思い描いてきた世界です」


Sarkhan Unbroken / 揺るぎないサルカン (2)()()()
プレインズウォーカー — サルカン
[+1]:カードを1枚引く。その後、あなたのマナ・プールに好きな色のマナ1点を加える。
[-2]:飛行を持つ赤の4/4のドラゴン・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
[-8]:あなたのライブラリーから望む数のドラゴン・クリーチャー・カードを探し、それらを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
初期忠誠度:4

タルキール龍紀伝で登場した4枚目のサルカン。まさかのタルキールブロック内2枚目のサルカンである。
故郷であるタルキールが自分の理想の世界になったのと、頭の中に響く謎の声が止んだため完全に正気に戻ったようである。
ちなみに、同一ブロックで同じプレインズウォーカー・タイプを持つプレインズウォーカーが2種類登場したのはこれが初めてである。
3色PWが史上2例目だとか赤緑→赤黒→赤→緑青赤とか自分の色がコロコロ変わりすぎて「揺らいでるサルカン」の方が正しいんじゃないかと思ってしまう。
ちっとは退場まで白単色を貫いたペスを見習え、赤白→白→白緑と変わったアジャニも居るけどさ。

で、肝心のカード性能の方だが能力自体は非常に強力。
1番目のプラス能力はドローしつつマナプールに好きな色のマナを一つ追加する能力。
なんのデメリットもなしに忠誠度を上げながらアド+1に好きな色のマナ+1といいことづくめである。
2番目の小マイナス能力は4/4のドラゴントークンを生成する能力。
4/4の飛行持ちと中々質の高いトークンを生み出してくれる。
忠誠度を2つ下げるのでサルカン本体は脆くなるが、ドラゴントークンである程度カバーできる。
奥義はライブラリーから好きなだけドラゴンを呼べる能力。
まさかのドラゴンストームリスペクト。
ドラゴンが好きすぎて終にサルカン自身がかの伝説のデッキを体現してしまった。
本家ドラゴンストーム同様決まれば一瞬で勝負がつく。
モダン以下の環境でならボガーダンのヘルカイトやヴァルカスの災い魔などどうぞお好みのドラゴンで焼いてください。

このようにどれも非常に強力な能力だが現在の環境ではあまり活躍できていない。
理由は、楔3色を含む5マナという非常に重くてデッキを選ぶマナコストを含んでいながら、(奥義を除いて)単体での決定力に欠けているからである。
プラス能力も小マイナス能力も非常に強力だが、これが出る頃はすでに1ドロー・+1マナや何の耐性もない4/4のドラゴントークン1体では盤面を覆せないほどデュエルが進行している場合が多いのである。
上述の通りドラゴントークンである程度カバーできるとはいえ、返しのターンに2打点で沈むのはやはり心もとない
つまるところ、出しづらくて重いプレインズウォーカーにありがちな「出た時には手遅れ」という欠点をもろに抱えているのである。
ゲームの進行が遅いスタンダードでも緑青赤を介するティムールがトップメタに食い込むほどの力を持っていないことと相まって使われることは少ない。
しかし、奥義の派手さはドラゴンストームを使った人なら分かる通り非常に魅力的である。
ドラゴン好きの方やかつてドラゴンストームに魅了された方はこのカードの奥義を狙うデッキを一度作ってみてはいかが?


Sarkhan, Fireblood / 火の血脈、サルカン (1)(赤)(赤)
プレインズウォーカー - サルカン(Sarkhan)
[+1]:あなたはカード1枚を捨ててもよい。そうしたなら、カードを1枚引く。
[+1]:望む色の組み合わせのマナ2点を加える。このマナは、ドラゴン(Dragon)呪文を唱えるためにのみ使用できる。
[-7]:飛行を持つ赤の5/5のドラゴン・クリーチャー・トークンを4体生成する。
初期忠誠度:3

基本セット2019で登場したサルカン。赤単に戻った。
1つ目のプラス能力はルーティング。汎用性の高い能力だが、その分特筆すべき点もない。
2つ目のプラス能力はドラゴン限定のマナ加速。基本的にはこちらを有効に使えるデッキで採用したい。
奥義はドラゴンの生成で、計20打点のため威力は高いが全体除去に注意。

同じくドラゴンサポートである《ドラゴンの財宝》との相性がいいため多色のドラゴンデッキで採用された。また、《パルン、ニヴ=ミゼット》との相性もいい。


Sarkhan, Dragonsoul / 龍魂、サルカン (4)(赤)(赤)
伝説のプレインズウォーカー — サルカン(Sarkhan)
[+2]:龍魂、サルカンは各対戦相手と対戦相手がコントロールしている各クリーチャーにそれぞれ1点のダメージを与える。
[-3]:プレイヤー1人かプレインズウォーカー1体を対象とする。龍魂、サルカンはそれに4点のダメージを与える。
[-9]:あなたのライブラリーから望む数のドラゴン(Dragon)・クリーチャー・カードを探して戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
初期忠誠度:5

基本セット2019のPWデッキで登場したサルカン。
PWデッキ共通でパワーは低く調整されている…のだが、奥義については速攻を持つドラゴンを呼ぶことで即座に決められるだけの打点を形成できることが評価され、このデッキだけ売り切れるという事態が発生したとか。
実際《秘儀での順応》でライブラリーのクリーチャーをドラゴンにしてやりたい放題するデッキが開発されたことも。


Sarkhan the Masterless / 主無き者、サルカン (3)(赤)(赤)
プレインズウォーカー - サルカン(Sarkhan)
クリーチャーが1体、あなたかあなたがコントロールしているプレインズウォーカーを攻撃するたび、あなたがコントロールしている各ドラゴン(Dragon)はそのクリーチャーに1点のダメージを与える。
[+1]:ターン終了時まで、あなたがコントロールしている各プレインズウォーカーは赤の4/4のドラゴン・クリーチャーになり飛行を得る。
[-3]:飛行を持つ赤の4/4のドラゴン・クリーチャー・トークンを1体生成する。
初期忠誠度:5

灯争大戦のサルカン。龍の支配から解き放たれたサルカンは、ラヴニカでかつての主と対峙する。
常在型能力はサルカン自身ではなくドラゴンが相手にダメージを与えるため、接死持ちのドラゴンを出しておくと攻撃を封殺可能。

プラス能力はPWのクリーチャー化。クリーチャー化したPWの忠誠度能力はそのまま使用可能だが、PWではなくなっているためダメージで忠誠度カウンターが取り除かれることはない。単体でもソーサリーで処理されない飛行打点として優秀だが、PWが多めのデッキで真価を発揮する。

マイナス能力はドラゴンの生成で、常在型能力とシナジーを持つ。ただし、起動すると忠誠度が2となりショックで落ちるため過信はできない。

灯争大戦で登場した忠誠度能力を何回か使うと置物になるPWを打点に変換できるため、【ジェスカイ・フレンズ*2】などで一気に打点を形成する目的で採用されている。

Sarkhan, Wanderer to Shiv / シヴの放浪者、サルカン (3)(赤)
伝説のプレインズウォーカー — サルカン(Sarkhan)
[+1]:永久に、あなたの手札にあるすべてのドラゴン・カードは「この呪文を唱えるためのコストは(1)少なくなる。」と「あなたはこの呪文のマナ・コストではなく(X)を支払ってもよい。Xはこれのマナ総量である。」を得る。
[+1]:あなたの手札に「シヴ山のドラゴン」のカード1枚を創出する。
[-2]:クリーチャー1体を対象とする。シヴの放浪者、サルカンはそれに3点のダメージを与える。
初期忠誠度:4

MTGアリーナオリジナルカードのサルカン。ドミナリアのドラゴンの聖地・シヴ大陸にやってきてドラゴンダブルピースをキメている。
紙媒体では再現不可能な効果である「能力の永続変化」「無からのカードの創造」を有しており、派手な奥義は持たない代わりにドラゴンデッキのサポートに特化している。
構築では第一線を退き、初心者用デッキの赤のファッティ枠に納まって久しかった《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》であるが、無からいくらでも湧いてくるのであれば話は別。ましてやリミテッドであればこれ1枚で勝負を制するポテンシャルがある。虚空から手札が増やせるので手札コストを要求する呪文とも良相性。

燃える魂、サルカン/Sarkhan, Soul Aflame (1)()()
伝説のクリーチャー — 人間・シャーマン
あなたがドラゴン・呪文を唱えるためのコストは(1)少なくなる。
ドラゴン1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、あなたは「ターン終了時まで、燃える魂、サルカンは名前が《燃える魂、サルカン》であり、他のタイプに加えて伝説であることを除き、それのコピーになる。」を選んでもよい。
2/4}

「機械兵団の進軍:決戦の後に」で灯を失い、クリーチャーとなったサルカン。
1つ目の能力はドラゴンのコスト軽減。2/4と火力に比較的強いサイズだが、打ち消しなどでサポートすることも考慮したい。
2つ目の能力は戦場に出したドラゴンのコピーになるというもの。自身はすでに出ているはずなので、出したドラゴンに速攻を付与するようなものとして扱える。《炎の大口、ドラクセス》のような、攻撃で誘発する能力を持つドラゴンをコピーするといいだろう。


関連カード

  • 残酷な根本原理
プロモ版イラストが「サルカンを罰するボーラス」というもので、理想の上司だと思っていたボーラスに幻滅する理由がよく分かる。
背景ストーリーをよく知らなくても「ボーラスに幻滅したサルカン」という流れがよく分かる名イラストだ。

  • 暴力的な根本原理
パーマネント3つを対象として破壊する。種類は一切問わないのだが、7マナかつ色拘束が非常にきつく、やっていることは他の根本原理に比べると地味。そのため普通には使えない。
「土地が狙える万能パーマネント破壊」であり、マナ加速から相手の土地を攻めるデッキで用いられた。現在でもカジュアルモダンや統率者戦などで用いられることがあり、10種類ある根本原理の中でも評価は上から数えたほうが早い。
根本原理(最後通牒)ということもあってフレーバー・テキストは一見かなりさばさばとしたサルカンの哲学のように見えるが、その後の彼の態度を見るとこの時期から現在に至るまでに心境に何かの変化があったのかもしれない。

  • ドラゴン変化
カードにおいても実際にドラゴンに変身する能力も持っているわけで、プレイヤーの知識やキャラクターの宣伝にも合った絶妙なカードである。
部分的にドラゴンに変化する技も持ち合わせているのだが、このイラストが一番サルカンのイメージに合っているということもありたびたび採用される。
プレインズウォーカーとしての特徴も「ドラゴンに変身して相手を殴りにいく」というのがある。飛行と破壊不能を持つので攻撃を通しやすい。

  • サルカンの仔竜
サルカンのプレインズウォーカー・デッキ専用カード。サルカンの能力を起動するたびにダメージを飛ばす。サルカンとの併用が大前提になるため全然強くない……ぶっちゃけそれだけで終わるカード。
だがカードのイラストが「かわいらしい小型のドラゴンがマグマの中で遊んでいるのを、腕を組んで渋い顔で見守るサルカン」という妙に面白いイラストであり、
そして上述のドラゴンフェチおじさんっぷりや自分がドラゴンに変身する能力を持つこともあって「サルカンが生んだ子供なのでは」と小さな話題を呼んだ。

  • サルカンの浄化
インスタントのタイミングで撃てる《溶岩の斧》といった処だが、それより見るべきところはフレーバーテキスト。

「お前はかつて我が故郷を破壊し私の精神を蝕んだ。その礼をしにきたぞ、ボーラス。」

かつて自分が歯牙にもかけなかった矮小な存在が、その後奮起して企みを悉く妨害し追い詰めていったと知った時のボーラスの反応は想像するに面白いものがある。


その他小ネタ等

今ではプレインズウォーカーの灯がともったのは「マルドゥでの無益な戦いの中で怒りを見出し、周囲を焼き尽くしたときに精霊ドラゴンの声を聴いた」ことがきっかけとなっている。
しかしそれ以前、アラーラの断片時代は「ドラゴンを究極の捕食者として崇拝するシャーマン」「深い瞑想の中で、古きドラゴンの精霊を見出して灯がともる」という設定だった。
基本的に怒りや絶望で才能が目覚める彼らの中では「瞑想の果てにプレインズウォーカーになった」という理知性が見られるとかなり珍しい例だった。
ただしタルキール訪問に伴う設定の再編により、このことは無かったこととなっている。

浮浪者然としているし、色が赤だったり最初に出た2枚のカードがあまり活躍せずに終わったこと、ゾンビみたいな顔で「ヴォルはご主人様の忠実な僕でございます」という醜態をさらしたことなど、当初はネタキャラとして見る向きが強かった。
しかしストーリー上では先輩としてはかなりいい人らしく、目覚めたばかりでジャンドに迷い込んできたアジャニや、歴史改変後に目覚めて戸惑うナーセットにプレインズウォーカーとしての指南をしたりと、割と世話好きな性分らしい。
サルカン以降に登場した赤緑の男性プレインズウォーカーがゼナゴス・&ドムリ・ラーデ&ルーカと*3軒並み力への渇望とコミュ障で周囲との軋轢を生み破滅してゆくなか*4、ボーラスの悪意によって失意のどん底に落とされながらも周囲と交流しひたむきにドラゴンを求め続けた結果自らの望んだ理想郷を手に入れたサルカンの生きざまは際立っている。

また、タルキールのマルドゥ時代に友人だった「足首裂き」が歴史改変で「薬瓶砕き」として生まれ変わり生き残っている時は彼女を抱き上げて大喜びしたりと、実に赤らしい「友情に篤い」男だったりする*5
上述の《サルカンの仔竜》のイラストも相俟って、今は「理想の高いドラゴンフェチ」「めぐりめぐってボーラスを滅ぼした偉大なるカン」「そこそこ面倒見のいいオッサン」のように扱われており、おおむね評価は高い。



「追記・修正というものがあるのなら、それは間違いなくドラゴンの口の中にあるのだろうな。」――サルカン・ヴォル

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • MtG
  • サルカン
  • プレインズウォーカー
  • 赤緑
  • 赤黒
  • 緑青赤
  • ドラゴンマニア
  • ドラゴンフェチ
  • ドラゴンオタク
  • LoV
  • 猿缶
  • サルカン・ヴォル
  • Sarkhan Vol
  • 赤緑男性PW破滅フラグを回避した男

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年08月19日 07:29

*1 後にドビンやサムトなどが値段を更新した。

*2 PWを多数採用したデッキのこと

*3 はじめは赤だが赤緑として完成する。しかも完成化の過程でやらかしたことが大戦犯レベル

*4 ちなみに女性赤緑はというとアーリン・コード&サムト&レンと社交性は悪くなく味方側のPWとしてメインを張ることもある。

*5 赤は怒りの側面が強調されがちだが、感動や友情、愛情といったポジティブな感情も司る