デッカード/ジェイデッカー

登録日:2020/05/16 (土曜日) 16:22:59
更新日:2024/03/20 Wed 02:00:00
所要時間:約 25 分で読めます





ホールド・アーップ!

ブレイブポリス、デッカードだ!!




【概要】

デッカードジェイデッカーは、サンライズ・名古屋テレビ(現:メ〜テレ)制作のロボットアニメ『勇者シリーズ』第五作『勇者警察ジェイデッカー』の主役ロボ。

前作『勇者特急マイトガイン』のマイトガインに続く、純地球産の科学技術によって生み出された勇者ロボである。

CV:古澤徹


【基本データ】

形式番号:BP-110型
ロボットモード全長:5.12m
パトカーモード全長:4.49m
重量:2.15t
ロボットモード最高速度:87km/h
パトカーモード最高速度:427km/h
最高出力:3,200ps
通称:勇者刑事



【ロボット刑事登場】

技術の進歩によって多様化するハイテク犯罪や予期せぬ大災害から市民の平和を守るため、
警視庁警視総監冴島十三『ブレイブポリス・プロジェクト』を立ち上げる。
その依頼を受け、藤堂俊助ら警視庁科学技術部が開発したロボット警察官第一号こそが、BP-110型・『デッカード』である。

シボレー・コルベットタイプのパトカーからロボットモードに変形。
警視庁所属のため、警察帽に似たヘッドギアに明滅するパトライトが装備されており、ロボットモード変形後はそれを明滅させる。
また、パトカー形態におけるボンネット部および頭部に施されたブレイブポリスのマークには
そのシンボルとして桜の代紋が施されている。

頭部には最新鋭の人工知能(いわゆる超AI)を搭載されており、人間の言語を理解しその命令で動くようにできている。
しかし、デッカードはあくまでもロボットであり人間と同じような『心』までは持ち合わせていない。



……はずだった。



警視庁へ正式配備される半年前、七曲小学校に通う小学四年生友永勇太がデッカードに出会ったことですべてが動き出す。


電池切れになって草むらに落ちた飛行機のラジコンを探す際、偶然ダクトに足を滑らせて格納庫に飛び込んでしまった勇太は、
躓いた拍子でフレーム状態のデッカードを起動させてしまう。


ワタシ・ハ・デッカード……ワ・タ・シ・ハ・デッカード。

ボクは、勇太。友永勇太だよ。

トモナガ・ユ・ウ・タ……。


初めてデッカードの人工頭脳に記録されたのは、膨大な事件・事故に関するデータではなくごく普通の小学生の名前だった。
その日からデッカードと勇太は秘密の友達となり、デッカードは喜び、怒り、楽しみ……そして勇気を学び、やがて人間に近い『心』を持つようになる。

勇太との別れの日、デッカードは再フォーマットによりこれまでの勇太との記憶を消去され機能停止する。
だが、警視庁に運ばれる前に『磁力の悪魔』の異名を持つ死の商人ドクトル・ガウスが襲来。
ブレイブポリスに目を付け、愛機のデスマグネで強奪を図らんと目論む。

デッカードのコンテナ車が今にも奪われんとする中、勇太は勇気を振り絞り、デスマグネの前に立ちはだかる。


待てーっ!! デッカードは、ボクが渡さないぞ!

デッカード、ボクだ! 勇太だ! ボクの声が聞こえるだろう!?
目を覚ますんだ、デッカード!
目を覚まして戦うんだ!


デッカードぉぉぉぉぉ!!


勇太!!


勇太の叫びに応えるかのごとく再起動したデッカード。
コンテナを拳で突き破り、ドクトル・ガウスの操るデスマグネに立ち向かう。


間違いない。あの少年がデッカードに与えたデータが蘇ったのだ。
しかも運動性・反応性・攻撃能力、すべてが設定した数値を超えている……! いったい、なぜだ?

……『心』だ。デッカードに『心』が目覚めたのだ。

しかし、デッカードはロボットだ!
そんなバカな話はありえん!


ならば、『奇跡』が起きたのだ!!


藤堂が驚くほどの運動性でデスマグネの磁力攻撃をかわし、中央のメインコイルを撃破したデッカードは
ジャンプキックと的確な射撃で戦闘不能に追いやり、ついにドクトル・ガウスを逮捕した。
それは従来の警察に配備されているパトロイドでは決して成しえなかった出来事でもあった。

『奇跡』の一部始終を見届けた冴島総監は、勇太を世界初の少年警察官に任命。
デッカードもまた、友永家の一員として迎え入れられる。
この『奇跡』は、後に開発されたBP-300シリーズ(後のビルドチーム)にも彼のプログラムを基にした人格を授けられるほどで、
日本のみならず、世界中にもロボット警察官が配備されることになる。

だが超AIの技術は、カゲロウ事件で警視庁副総監・東一門の後輩にして親友である新庄健を介し、軍需企業のエクセレント社の手に行き渡ってしまう。
その事件は、後に『心』を持つロボットたちとの辛い戦いが訪れることも意味していた……。



【性格・武装】

性格は真面目で実直、それでいて気配り上手。
その一方で優柔不断でやや融通が利かない所があり、勇太が絡むと暴走しがちな傾向がある。
人造巨龍ガワン事件では防衛軍と衝突。
ガワンの体内にいる勇太ごと攻撃しようとするのを力づくで止めようとするがマクレーンに静止されている。
第13話のロボット強盗事件では半年ぶりに帰国し友永家に帰ってきた両親にして考古学者の勇一郎・亜真美夫妻との時間を優先する勇太に心無い言葉を受けて、
単独で主犯の幾何井田三兄弟を逮捕しようと単独行動に走ってしまった。

非番の際は間借りしている友永家の車庫で待機しており、ご近所の方々とも顔なじみになっている。
親方さんこと大工の大村さんからは、『パト吉』という愛称をつけられている。
デッカードも彼が愛用するワークボット・デンキチで腕相撲をする際には50回のローンが残っていることを考えてわざと負けたり、隕石生命体ガイゾナイトの怪電波で暴走した際にはなるべく破壊せずに動力パイプを狙って停止させた。
なお、『友永パト吉』の愛称は勇一郎・亜真美夫妻からも認められた模様。
勇太の姉であるあずき&くるみが学校に遅刻するのを防ぐためにタクシー代わりとして使われたこともある。

動力源は自動車と同じくガソリン
パトカーモード以外でも給油可能、その際はバックル部にも施された給油口を介する必要がある。
それを見た元・ハイウェイパトロールのBP-601型ガンマックスからは、「粋じゃねェなア。この方が美味いんだよ」と直接口から飲むことを勧められている。

武装は右腰部に内蔵されたリボルバー式拳銃
胸部にはブレイブポリスの証である勇者警察手帳が内蔵されており、
犯罪者と対峙する際には項目冒頭の名乗りと共にこれらを取り出し身構える。
この名乗りは勇太がデッカードに教えたものである。*1

拳銃は警視庁の警察官が所持する正式拳銃と同じ実弾式で、ガンマックスを除いた警視庁ブレイブポリスの共通装備として扱われている。
弾丸が切れた後は撃鉄部の安全装置を外して排莢、薬室に次弾を装填する必要がある。



ジェイローダー


全長:13.32m
重量:9.34t
最高速度:385㎞/h
最高出力:9,700ps

第2話にてお披露目のトレーラー型サポートメカ。
背部にはビームキャノンを装備しており、長距離移動時には後部コンテナにパトカー形態のデッカードを収納可能。

ハンドルによる運転だけでなく、警察手帳およびプロポ型コントローラーで遠隔操作されるが、
合体成功後はデッカードの任意で操作されている。



ブレイブアップ! ジェイデッカー!


ジェイ! デッカーッ!!



ジェイデッカー


全長:18.16m
重量:11.49t
最高走行速度:380km/h
最高飛行速度:3,750km/h
最高出力:12,900ps

デッカードとジェイローダーが合体した強化形態。
初陣は第2話の『闇の魔人』の異名を持つ陰陽師・キャトーノリヤス戦にて。

コンテナ上部からV字型飛行ブースターを展開させ、上空に飛び上がったジェイローダーが
コンテナ部を両脚部に、車両部を両肩・両腕部に変形。
そこからジョイント用ラックを起き上がらせパトカーモードに変形したデッカードが合体。
サイレン部から起き上がった頭部マスク内部にデッカードの頭部が移動後、それを覆う形でフェイスガードが閉じることで合体完了となる。

V字型ブースターで飛行し、空中戦にも対応可能となる。また、単独でも大気圏突破および木星への移動も可能。
警視庁科学技術部驚異のメカニズムとはこのことか。

本来なら自らの判断で合体する方式だが、勇太がデッカードに『心』を与えた影響で思考回路に変化が起き、
合体データが自動的に呼び出されなくなってしまっている。
変化した人工知能も下手に触れられないため、ジェイデッカーの合体は度重なるシミュレーションで新たなパターンを構築することになった。
だが、キャトーが強奪したエアマニア共和国から重爆撃機・バルバロッサの東京侵攻によってシミュレーションは中断。
バルバロッサの遠隔操作によるフライトバトラーの攻撃に苦戦する中、デッカードは勇太と呼吸を合わせ初合体を試みる。


勇太よ、私は君になったつもりで動く。
君は、私になったつもりでジェイローダーをコントロールしてくれ!

うん、わかったよ!


互いが互いの立場となって行動、フライトバトラーにも怯まずに作業を続行した末、ついにジェイデッカーは初合体に成功。
バルバロッサをジェイバスターで撃墜し、キャトーをついに逮捕したのだった。

以後、勇太が警察手帳で合体指令を送ることでジェイデッカーに合体可能となる。
ちなみに合体コードおよびポージングは冴島総監によるもので、勇太本人はポーズにかなり恥ずかしがっていた。
結果的に背中を捻る動きのみ採用され、冴島総監が提案していた足を広げて腰を落とす動きは採用されなかった。


武装・技

  • 電磁警棒
左腰部に内蔵された伸縮自在の警棒。
基本的に相手を叩き壊すものだが、先端部から電磁光線を放つこともできる。

  • ジェイバスター
右腿部に内蔵されたジェイデッカーの専用銃。
通常は速射性の高い実弾を発射するガンモードとして使われるが、
バレル下部に折り畳まれたロングバレルを展開することでライフルモードとなる。
ライフルモードからは強力なビームを発射するため、このモードがジェイデッカーにおける基本的な必殺技として扱われている。
発射シーン自体にバンクはなく、汎用性の高いライフルモードへの切り替えがバンクになっている。

  • タイガーファング
スーパービルドタイガーとの合体攻撃。
ライフルモードのジェイバスターをビルドタイガーの主装備でもあるタイガーキャノンの銃口に接続する形で発動。
二体の全エネルギーを結集することで、スーパービルドタイガーの必殺技であるタイガービームが強化される。
その分消耗も激しく、一度発射しただけでエネルギーを使い果たす。まさに一撃必殺の大技といえる。

  • マックスキャノンモード
ガンマックスとの合体形態。
ガンマックスが搭乗姿勢を保持したまま愛車のガンバイクごと変形。カウル部からロングバレルを展開し、座席をシャッターが覆うことでマックスキャノンとなる。
ジェイデッカーの右腰部と連結することで、ロングバレルから一点に収束したすさまじい威力のビームが発射される。
威力は抜群だが、その分チャージ時間もかかるのが難点。



サタンジェイデッカー

悪の『心』を持つエクセレント社製の超AI軍事ロボ・チーフテンIチーフテンIIの猛攻で殉職してしまったデッカードが、
ジェイローダーともどもビクティム・オーランドが強奪したガイゾナイトによって変貌した姿。
超AIを持つブレイブポリスは通常ガイゾナイトで操れないが、デッカードが完全に事切れたことから操れるようになっている。
ジェイデッカーが有機的かつ黒のカラーが多くなり、悪魔のようなおぞましい姿になっている。
額にはガイゾナイトも貼り付いており、その怪電波に操られるがまま勇太たちに襲い掛かる。

電磁警棒にジェイバスターとジェイデッカーとほぼ同じ武装だが、脚部からはジェイローダーが使用するキャノン砲が展開される。
また、電磁警棒も某白い悪魔よろしく先端部から三叉の槍がついた球体状のビームを生成し襲い掛かっている。
いずれの武器も殉職前のデッカードが使わない武装であり、『心』がなくなったがゆえに解き放たれたものといえる。

ビクティムはこれを利用し犯罪者収容地・海上プリズンNo.6を襲撃。
かつて、カゲロウの超AIを潜水空母アビスの人工頭脳に仕立て上げた新庄健を脱獄させ、利用しようとするが失敗に終わった。

後に、ガイゾナイトはビクティムの手で悪の超AIを施された魔剣『シンキングソード・断』に改造され、
わざわざ額に貼り付かなくてもサタンジェイデッカーを操るようになっている。

だが、貨物列車の警護任務にあたったブレイブポリスを襲撃した際に
デッカードの『心』は完全に死んではおらず、勇太の叫びに動きを止めている。
この隙にデュークファイヤーがチーフテンIにトドメを刺し、不利と見たシンキングソード断は自ら撤退したため、ガイゾナイトの影響がなくなり、倒された直後の状態へと戻った。
幸いにも超AIは無事だったため、チーフテンⅠを撃破後は貨物列車内にあったスペアボディに超AIを移植してデッカードは復帰するのだった。



ブレイブアップ! ファイヤージェイデッカー!


ファイヤージェイデッカー


全長:22.3m
重量:26.09t
最高走行速度:520㎞/h
最高飛行速度:6,000km/h
最高出力:39,800ps

今作におけるグレート合体。
日英の共同開発による『ファイヤージェイデッカー計画』の最終段階であり、
天才少女レジーナ・アルジーンが開発した二号ロボ・BP-119型デュークデュークファイヤーとジェイデッカーが合体する。

復帰したデッカードが記憶を取り戻した際、合体データに破損個所が発見。
合体成功確率は0.002%で、現状のまま合体するとデッカードとデュークのどちらかの超AIが破壊される可能性が高かった。
しかしアーマードチーフテンの猛攻によりブレイブポリス全滅の危機にさらされたため、
デッカードとデュークは「自分の心が失ったならどちらかが勇太とレジーナを守る」決意で合体に挑み、見事に成功。
どちらの超AIも破損せずにアーマードチーフテンに勝利し、超AIの回収とビクティムの逮捕を果たした。
このエピソードは片方を故意に犠牲にすることでパワーアップするチーフテンと、双方が力を合わせて心を一つにしてパワーアップするジェイデッカーという対比的な構図となっている。

デュークファイヤーがデュークとサポートメカのファイヤーローダーに分離、ジェイデッカーを中心にする形で合体。
デュークは両腕部に合体し左腕にドリル、右腕にマニュピレーターアームが展開。
ファイヤーローダーは両脚部とブレイブポリスのエンブレムを形作った胸部アーマーにデュークファイヤーの胸部はジェイデッカーの頭部に兜飾りとして装着され、合体完了となる。
デュークファイヤーの武器である長剣・ファイヤーソードを武器としている。
デュークファイヤーのときに比べると技のバリエーションが多い。
炎を纏わせたバーニングファイヤーソードはアーマードチーフテンを始めとする強敵に使用したほか、
第38話では電撃攻撃・ローリングサンダーを使用。科学の地上げ屋・マギー出門が生み出したプラズマ妖怪・ヌエを退けた。
他にも第42話冒頭ではエネルギーを纏わせた状態で飛び上がり、敵を一文字に切り裂いている。
マックスキャノンモードも引き続き使用可能。ファイヤージェイデッカーとして初使用となった31話では、射撃コントロールシステムを損傷していたため、頭を叩いて照準のズレを修正するという荒技で乗り切った。
この他レジーナがイギリスに帰国する第30話では地下都市の落下を防ぐため、左腕もマニュピレーターに変形させて天井を支え、人々を非難させている。

命名者は冴島総監。
総集編である第24話において、当初は『グレートジェイデッカー』と命名しようとしたが、ありきたりすぎて断念。
七人のブレイブポリスの活躍を振り返りながら、彼らの「燃えるような熱いハート」にちなんでこの名称をつけている。
とは言え、いわゆる脚部の「ゲタ」や両腕のパーツなど、合体フォーマットそのものは従来の「グレート合体」に忠実である。

通算登場回数は10回(11話)とやや少なめ。
更にこの形態で手に汗握る攻防を繰り広げたエピソードは第29話、第31話、第37話の3回のみ。
終盤では華のある展開も減っており、第38話・第39話は敵にトドメを刺す目的で合体、第42話は冒頭で前座を倒しただけとなっている。
最後の登場となった第45-46話のビクティム戦は一進一退の攻防を繰り広げながらも終始押され気味で、起死回生の一手として使った必殺のバーニングファイヤーソードすらも破られ、相手を勢い付ける結果となった。
前作のようにグレート合体の圧倒的なパワーに頼ったお約束が毎回続くのを避け、人命救助などの戦わない結末なども織り込んだ結果、どの形態でどうカタを付けるかというところにドラマ性を持たせることになったが、その分だけド派手な活躍も減ってしまった。
活躍の少なさはスタッフの怠慢というより、さじ加減の難しさにより生じたものだろう。

【ブレイブポリス パワーアップ計画】

ブレイブポリスの平均命中率は98.91%。
中でもデッカードの射撃の腕はブレイブポリス中一、二を争うが
エドガー・ポプキンス博士が開発した『ガンピュレーター・システム』を搭載することで100%に向上される。
しかし、実装するにはある程度のパーツの換装と制御システムに対応するために超AIにも改造が必要となる。

しかし、『心』の成長と共にジェイデッカーやファイヤージェイデッカーへの合体を果たしたデッカードは
これ以上自分の性能をアップさせたくないと勇太に言う。


私たちは、ロボットだ。

だから、部品を交換すれば性能は向上する。

けれど、私たちはそれが悲しいんだ。

人間のように努力して銃の腕が上がるなら、その方がどれだけ嬉しいか……。


まだ幼い勇太はデッカードたちの気持ちを省みず無邪気に喜んでしまったことを反省し、ガンピュレーターシステムの導入を拒否。
その後、ブレイブポリスは湾岸無人プラントでポプキンス博士との決闘に挑むことになる。
正確無比なガンピュレーターシステムを持つAIロボ・アームガンに苦戦する中、
一体でも破壊すると内蔵された爆弾が発動しプラントごと爆発することを知ったデッカードは、
シャドウ丸に確保したポプキンスと共に勇太を離脱させ、覚悟を決める。


たとえ心があっても人間ではない。

我々は、人間を守るために造られた、ブレイブポリスなのだ!


『心』あるロボットである以上、完璧なロボットに負けられない……デッカードの意地による一発が、ガンピュレーターシステムを凌駕した!
着弾と共に巻き起こる爆発……半壊状態でありながらも、ブレイブポリスはかろうじて命を取り留めた。
かくして、ポプキンス博士の逮捕と共にガンピュレーターシステムは見送られることになった。
案の定、命中率は98.91%のまま。しかし、100%にも満たない残りの1.09%は
完璧ではないがゆえに常に努力しようとするブレイブポリスの『人間』の部分なのかもしれない。


ハートtoハート

20年前、人間の脳を電子工学的に再現した第5世代コンピューター・『フォルツォイクロン』を生み出したエヴァ・フォルツォイク
『心』を持ったより高度なコンピューターの開発に着手した彼女は、研究に行き詰まった末に禁忌の人体実験にも手を出し、永久冷凍睡眠の刑に処されてしまう。
その息子であるノイバー・フォルツォイクは、母でさえ成し遂げられなかった『心を持ったコンピューター』を得た日本のブレイブポリスと、偶然それを生み出してしまった勇太の存在に嫉妬。
アンドロイドだったビクティムの超AIを戦闘ロボットに移植してブレイブポリスを制圧、エトニア共和国から冷凍睡眠カプセルを奪取する。

息子によって蘇生されたエヴァは、ロボット時代の『母』として君臨するために『ハーメルンシステム』を発動。
超AIに内蔵されたシークレットサーキットが暴走し、デッカードを除くブレイブポリスは機能停止を余儀なくされる。
超AIの機能を停止する代わりに勇太の心と共有化する改造を受けたジェイデッカーはシステムのコントロール波を無効化し、ビッグ・マザーの中枢に突入する。
しかし、中枢からのシステムの直撃でとうとうデッカードの超AIは大破してしまう。
涙をこらえて勇太は緊急用マニュアルモードに切り替えジェイデッカーを操縦するが、ビクティムの猛攻に追い詰められていった。

絶体絶命の危機に瀕した時、デッカードの超AIに光が……。



余談


●デッカードの名前はフィリップ・K・ディックによるSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』およびそれを原作とした映画『ブレードランナー』の主人公リック・デッカードから。
いずれも「アンドロイド/ロボットと人間を分けるものは何か?」を問う作品で、サイバーパンクの金字塔となっている。
見て分かる通り刑事(デカ)ともかかっており、極めて秀逸なネーミングといえるだろう。

●ファイヤージェイデッカーの戦闘スペックの数値は、意外にも前作のマイトガインとほぼ同じであり、勇者シリーズの最強合体の中では最も出力が低い設定となっている。
尤も、他のシリーズの連中がマイトガインを除き「宇宙の力」「伝説の力」等といった謎のパワーを原動力として侵略者と戦っているのに対し、完全に現実世界の技術力で作られて犯罪者の逮捕が目的のジェイデッカーが相対的に低スペックなのは必然とも言える。
他シリーズと比較したら低めのスペックではあるが、ジェイデッカー世界では申し分無い程の強さを持つ最強の存在には変わり無い。

●上述のように戦闘力では他シリーズに劣ってしまっているが、推進力に関してはシリーズ最大クラスの出力を誇っており、なんと木星圏まで自力で飛んで行き、往復分のエネルギーを考慮して戦い帰還可能なほどである。
勇者シリーズにおいて宇宙で活動するのは全作である展開だが、これほど遠くに単機で飛んだのはジェイデッカーを始めとするブレイブポリスの面々だけである。

●サタンジェイデッカーはゲーム『ブレイブサーガ2』にも登場。
ガイゾナイトは登場しないものの、ゾンダリアンによりゾンダーメタルを受けて変貌してしまうという、勇者ゲームならではのクロスオーバー的展開が見られた。
その後、GGG大河幸太郎長官がEIナンバー登録しようとするところに冴島総監が
「サタンジェイデッカーと、設定呼称するっ!!」ベイタワー基地に乱入する場面が映っているが、警視総監の権限もここまでくると感服ものといえる。
『新世紀勇者大戦』でも19~20話にかけて登場。20話では原作再現でサタンジェイデッカーからはブレイブポリスを攻撃できないという仕様になっている。ちなみに19話で倒しその場でデッカードを救出してしまうと、本来20話で加入するスーパービルドタイガーとガンマックスアーマーの加入が遅れるという謎のデメリットが存在する。
なお、『スーパーロボット大戦30』では超AIを上書き(要は洗脳)されて敵になるという形に変更されたため、オミットされた。

●PS2ゲーム『新世紀勇者大戦』ではデッカードが主人公機レイザーの親友になるなど、実質的にもう一人の主人公と言っていいほど大活躍するため、出番が非常に多く、原作再現イベントもダントツで多い。
その一方で最強武器がジェイバスター*2で威力も11000*3と主役機最弱どころかビルドタイガーをはじめとした下手なサブロボの方がよっぽど強い。ちなみに2号ロボであるデュークファイヤーもジェイデッカーと同等に火力がない、当然2号ロボ最弱である。
ファイヤージェイデッカーになれば10個もの強化パーツスロットによる拡張性と、ファイヤーソード・ローリングサンダーが31000とライジンオーよりは高火力*4になるものの、今度は気力増加の勇者コマンドがない事で、気力上げに苦労すると、戦闘面では難が多い。
本作では主役機同士の合体技があり、そのほとんどが既存の映像を組み合わせた手抜きになっている中で、グレートマイトガインとの合体技「フォビドン・クロス」のみ新規映像となっている。
ちなみにマッドマザー戦では勇太がファイヤージェイデッカーのメインパイロットになるものの、この時は必殺技が全て使用不可の代わりに気力増加を使用可能というなんとも勿体ない事に。

●玩具ではジェイデッカーのプロポーションはなかなか良好。だが、相方のデュークやデュークファイヤーは箱型の救急車とはしご車から変形する都合もあって胴体が太く、劇中のプロポーションとは程遠い設計になっている。これはジェイデッカーの玩具が全体的に警察車両としてのサウンドギミックや玩具としてのプレイバリューを優先しているためでもある。

そして、その影響でファイヤージェイデッカーもかなり残念なプロポーションとなっている。特に胸部はデッカードが収まっているところにサウンドギミックで分厚くなったデュークファイヤーの胴体を被せるため、正面に大きく張り出してしまっている。また、腕部についても、デュークファイヤーの腕全体を形成するデュークをそのままジェイデッカーの前腕部に装着しているため、かなりアンバランスな見た目である。

一方でプレイバリューとしてはサウンドギミックが非常に優秀で、デッカード、ジェイローダー、ファイヤーローダーのサウンドを一斉に鳴らせばビジュアル的には圧巻だけどめっちゃ五月蝿いという言葉に尽きる。マックスキャノンモードにすれば五月蝿い部分も含めて尚更である。

立体化時のビジュアルを度外視した無理な変形機構ということもあり、プラモ設計者泣かせであると言わざるを得ない。そのため、今のところ変形合体ギミックを再現したファイヤージェイデッカーの立体物は当時の玩具を除いで製造されていなかった。2024年にとうとうミニプラの販売が発表されたが、全体的な可動性とプロポーションは優秀ながらもデッカードのビジュアルは変形機構のしわ寄せもあって些か残念な仕上がりとなっている。

一方で非変形のプラモデルとしてジェイデッカー、デッカード、デューク&ファイヤージェイデッカー用合体パーツはコトブキヤから販売されている。これらは作中のプロポーションやアクション性を重視したものとなっている。

考察

初めに、デッカードに心が芽生えたことを『奇跡』と評しているが、実は必然である…とも考えられる。
何故なら、彼は、公的組織の機密施設への侵入者との取引による見逃し、及び国家機密の情報漏洩、並びにそれらの隠蔽を初っ端にぶちかましているのである。
法を遵守し、秩序の番人であらねばならぬ警察官としては致命的なレベルの不祥事である。

たとえ、その犯人が小学生で悪意はなく、結果的にお咎めなしになるとしても、『自分や周囲の都合・状況でルールを無視する』ということは「悪」と呼ばれることもある*5

つまり、デッカードは(やや乱暴な言い方になるが)「善として作られ、その善を遵守するロボット」ではなく「善を学んだ悪のロボット」だったと言える。
また、デッカードを基にして作られたあらゆる超AIたちは、合体などのブレイクスルーの際は特定の誰かへの自分の感情がまず大前提になっている。
『怒り、憎しみ』『愛』、『良い心』『悪い心』…… 作中で語られたそれらの要素をいまさら引き合いに出さずとも分かるだろう。

逆のことが、ビクティムが作り出した悪の超AIにも言える。
彼らは「○○が悪いことだからこれをやるように」と命令され、それに従っているだけ。
つまり、自ら悪心を持つロボットではなく「悪党の敷いたルールに従う善のロボット」である。某所で言うならDARK-LAW。
そして、フォルツォイクもハイジャス人も、全て自分のルールが至高と謳う存在、即ち暴力的なまでの善の意志*6であり、それら全てをはねのけた本作は、悪が勝利した作品であるともいえるのかもしれない。


デッカード、現場に急行せよ!


了解、ボス!


追記・修正は『心』と共にお願いします。

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最終更新:2024年03月20日 02:00

*1 当初は「ホールドアップ!」と普通に言うだけだったが、古澤氏の演技で項目冒頭のように伸ばすアドリブがつけられた。

*2 マックスキャノンも一応あるものの、使用できるステージが1つのみで、そのステージではファイヤージェイデッカーに即合体可能

*3 参考までに横一文字斬りが22000、ファイヤーライオソードが20000、タイガーキャノンが13000といったところ

*4 ゴッドサンダークラッシュが29000で、グレート合体とガオガイガーの最強技は40000越え

*5 道徳的な意味の悪ではなく、社会倫理的な意味での悪

*6 時にそれは「独善」とも呼ばれるが…