医学部

登録日:2020/06/12 Fri 22:19:35
更新日:2023/08/29 Tue 15:53:27
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医学部(いがくぶ)は、大学の学部の一つ。
この項目では、主に医療科学に関して専門的な教育や研究を行う医学部 医学科に関して解説する。

【医学科の概要】

医学科(いがくか)は医学部に設置されている学科の一つ。
国公立大学医学部は国医、私立医学部・私立医科大学は私立医と略されることが多い。
他の4年制の学部学科とは異なり、6年制で、基本的には医師(医者)を養成する学科。
時々医師にならず研究者や官僚を目指す者や、稀に「適性がないと悟った」「他にやりたい仕事ができた」「メンタルを病んだ」などで医療と離れる者もいるが。

現在は47都道府県すべてに医学部が設置されている。
ちなみに私立医学部は富裕層の多い都市部(東京都など)に集中しているのが特徴で、岩手県栃木県埼玉県には国公立大学医学部が存在せず、私大医学部のみが存在し、北海道、四国地方、沖縄県には私立医学部が存在しない。

ちなみに歯科医師(歯医者)を養成するのは6年制の歯学部なので注意。
入試難易度は医学部医学科よりはずっと低く、私立大学は定員割れのところも少なくない。なお東大京大には歯学部が設置されていない。


【難易度】

医師免許さえあれば不況・不景気でも食べていける!」との認識が強いためか、入学試験の難易度はほぼ全ての大学で非常に高い
総合大学では他の学部*1よりも共通テストのボーダーラインや、二次試験の偏差値が高いのが普通。
難易度は下位の数校を除き、早稲田慶應の理工学部並みかそれ以上、旧帝国大学など上位校では東大の理工系よりも難しいと言われることも少なくない。

ちなみに難易度の順番に並べる*2と、

東大理三京大医学部上位国医慶應医学部東大(理三以外)>中堅国医上位私立医(慶應以外)京大工学部≧東工大下位国医中堅私立医≧早慶理工学部>下位私立医>上智理工、理科大同志社理工

下位の数校でも早慶の理工学部よりも少しだけ簡単程度であり、上智大学や東京理科大学同志社大学などの理工学部よりは難関に変わりない。

近年は地方における医師不足への危機感から国公立大学では地域枠*3を設けたり、私立大学では「どうしても自分の息子または娘を医者にさせたい」開業医向けの推薦枠などの裏技が使えれば一般入試よりは簡単になることもあるが難関には変わりない。

◆入試

入試ではセンター試験が課されるため、私立医学部は数学、理科2科目、英語の3教科4科目受験が基本*4
数学は3Cまで課される大学と、1A2BまででOKな大学がある。
理科は物理または化学から2科目選択するのが基本(ただし、生物は一部の学科でしか選択できず、地学に至っては使えるところが皆無に等しい)。
かつては一部の国公立大学で理科3科目を課していたところもあった*5
大学によっては英語が課されないこともある。*6
国公立医学部では数学、理科2科目は勿論、英語、国語、地歴公民でも優秀な成績を修める必要がある。

さらに、医師としての適性がない受験生(マッドサイエンティスト)を落としたい…のkは不明だが、面接試験が必須*7で、場合によっては学業優秀でも不合格になる
また、小論文まで課されるケースも。

なお「医学部は数学や物理を入学後はほとんど使わない」というイメージがあるが、それは誤解である。
そもそも放射線医学や薬について学ぶ際は物理がもろ絡み、生物学は化学で、生化学という生物学と化学が融合した学問も存在する。その化学は物理学である

高校の理系クラスでは必修の化学、加えて物理または生物なわけだが、
  • 物理は暗記量が生物に比べて圧倒的に少ない。
  • 数学が得意な受験生は物理でも高得点を狙いやすい傾向がある。特に微分、積分は物理との関連が深い分野である。
  • 物理や化学に比べて最先端の項目を取り扱うことが多く、暗記する項目がとても多い生物は、高得点を狙いにくく、難関大学ほど恐ろしく難化する。
  • 物理は高校である程度基礎力を養っていないと厳しい。
などがある物理がオススメ


◆学費

国公立大学は学費が安い。…というか他の国公立大の学部学科とほとんど変わらない。
私立医学部は一部を除いて学費が非常に高額なため注意が必要(6年間で3000万円程度ならまだ安い方で、5000万円近くかかる大学もある。さらに留年のリスクも考慮する必要がある。)。
一応、奨学金を借りる(特待生なら返還義務なしで貰える場合もある)という手もあるが、そもそも一般家庭出身者お断りなのだろうか?


◆大学生活

医学部は歯学部や薬学部と同じく通信制の大学が存在しない。
講義だけでなく実習も大きなウエイトを占めていて、中には人体解剖などもあるが、苦手な人ははっきり言って入学しない方が良いだろう。

理系学部は一般的に文系学部と比べて卒業が大変と言われることが多いが、成績不振=国家試験に受かりそうになければ即留年*8と、歯学部や薬学部、特に医学部は別格と言われるほど判定は厳しい。

卒業論文は存在しない代わりに医師国家試験の模擬試験のためと思われる卒業試験が存在する。

特に私立医学部は医師国家試験の合格率≒大学評価
進級、卒業するのも大変な定期考査や、本番よりも難しい卒業試験で容赦なく留年させ、受験者の分母を減らして合格率を上げるスパルタ式を医療系が取る*9のは卒業時に国家試験が絡んでくるのでそうせざるを得ないのである。


◆大学院

医学部を有する大学には、研究者養成が目的とする医学研究科が大学院に設置されていることが多い。

入学条件は限定されず、6年制医学部医学科の卒業生だけではなく薬学部や工学部など他の理系学部出身者等でも論文を執筆して高い評価を得ると医学博士の学位を取得することができる。
ただし、医学博士の博士号は医師免許の代わりにはならない(=医師として働くことはできない)ので注意。



【医師国家試験】

医師免許取得のためには、当然、医学科卒業だけでなく、毎年2月実施の合格率90%超医師国家試験合格(パス)しなければならない。
ちなみに薬剤師国家試験や歯科医師国家試験などと同じ。
司法試験や公認会計士試験電験一種、高度情報処理技術者試験英検1級と並ぶ最難関級の資格試験の一つ

医師国家試験のための予備校も存在するほど暗記量がとてつもなく多い。
しかも、たとえ総合評価が基準点を超えていたとしても、生命倫理に関する絶対に間違ってはならない禁忌肢を間違えると、不合格
ただし医師国家試験はマークシート形式であり、禁忌肢でも1問程度のケアレスミスなら支障ないので安心してほしい。
スパルタを乗り越えてきた受験者がそもそも一般常識に毛が生えた程度の禁忌肢を選ぶことは極めて少ないが。


【医学部を有する大学の一覧】

◆北海道

  • 国公立大学:北海道大学、札幌医科大学、旭川医科大学

◆東北地方(青森県、秋田県、岩手県、山形県、宮城県、福島県)

  • 国公立大学:弘前大学、秋田大学、山形大学、東北大学、福島県立医科大学
  • 私立大学:岩手医科大学、東北医科薬科大学
※岩手県には国公立医学部が存在しない。
※東北医科薬科大学は2016年(平成28年)度に東北薬科大学に医学部を新設して改称した。

◆北関東(群馬県、栃木県、茨城県)、信越地方(新潟県、長野県)

  • 国公立大学:群馬大学、筑波大学、新潟大学、信州大学
  • 私立大学:自治医科大学、獨協医科大学
※栃木県には国公立医学部が存在しない。代わりに私立医学部が2校(自治医大、獨協医大)ある。獨協医大は獨協大学の姉妹校である。
※自治医大は私立大学であるが、実際には当時の自治省(のちの総務省)が設置した事実上の国公立大学。
 学費は事実上無料(というより貸してくれて、条件を満たせば返済が不要になる)。
 だが、卒業後9年間は自分の出身都道府県の僻地の病院に勤務する義務がある(出身地によっては離島勤務になることもある。また、義務を果たせない場合は学費を返さなければならない。)。
 各都道府県ごとに定員枠が振り分けられているため、一般的には栃木県のための大学とは認識されない。

◆南関東(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、山梨県)


※東大理三は日本で最も入試難易度が高い大学の学部として名高い。
 一応、理科一類および理科二類に入学した場合でも、進級振り分けで東大医学部に行ける可能性はある(ただし枠はとても少ないので、入学後はマジで勉強頑張ろう。)
※埼玉県には国立医学部が存在しない。私立の埼玉医大と、特殊な防衛医大がある。
※山梨大学は国立医学部で唯一、入試で前期日程が設けられていない大学。後期入試のみとなるため、前期で他の国立医学部受験に失敗した受験生が殺到するため激戦となる。
※慶應、慈恵医大、日本医大の3校は名門私立医学部と名高い。御三家と呼ばれることも多い。
※国際医療福祉大学医学部は千葉県成田市にある。大学本部は栃木県にある。
※防衛医大は厳密には(学校教育法で定められた)大学ではない。学生は国家公務員扱いであり学費が無料であるどころか給料が支払われる。
 ただし、公務員として学んでいるため無断の遅刻、欠席は厳禁であるほか、カリキュラムに軍事教練が含まれる。
 卒業後9年間は自衛隊に勤務する義務がある。義務を果たせなかった場合は9年に満たなかった期間の割合分だけ学費を返済しなければならない。
国家試験に受からずに退学した場合は返さなくていいが当然医師にはなれない
 ちなみに防衛医大設立前の一時期は自衛隊が学費を負担して学生を医大に通わせ医師にしていたが 医師免許を取ってから自衛隊に行かなくてもペナルティが無かったため学費借りパクする医師が続出した。 当たり前だ。

◆東海地方(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)、北陸地方(富山県、石川県、福井県)

  • 国公立大学:名古屋大学、名古屋市立大学、岐阜大学、三重大学、浜松医科大学、富山大学、金沢大学、福井大学
  • 私立大学:愛知医科大学、藤田医科大学、金沢医科大学

※藤田医科大学は藤田保健衛生大学から改称。

◆近畿地方(京都府、大阪府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)

  • 国公立大学:京都大学、京都府立医科大学、大阪大学、大阪市立大学、神戸大学、滋賀医科大学、奈良県立医科大学、和歌山県立医科大学
  • 私立大学:大阪医科大学、関西医科大学、近畿大学、兵庫医科大学

◆中国地方(岡山県、広島県、山口県、鳥取県、島根県)

  • 国公立大学:岡山大学、広島大学、山口大学、鳥取大学、島根大学
  • 私立大学:川崎医科大学
※岡山県にある川崎医大は全国の単科医大の中で(総合大学を除く)唯一、附属高校を有する大学である。
 校名の川崎は創設者の名前に由来するものであり、神奈川県川崎市にあるわけではない。

◆四国(香川県、徳島県、愛媛県、高知県)

  • 国公立大学:香川大学、徳島大学、愛媛大学、高知大学

◆九州(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県、宮崎県)

  • 国公立大学:九州大学、佐賀大学、長崎大学、熊本大学、大分大学、鹿児島大学、宮崎大学
  • 私立大学:産業医科大学、福岡大学久留米大学
※産業医大は厚生労働省から助成を受けており、事実上の国公立大学と言われることも多い。
 学費の一部を大学側が負担してくれるが、卒業後9年間は産業医として働く義務がある(果たせなかった場合は学費を全額支払う必要がある。)。

◆沖縄県

  • 国公立大学:琉球大学


【その他の学科】

医学部には医学科以外にも以下のような学科が置かれている場合がある。
医学科以外は他の学部と同様に4年制である。

・看護学科

看護師を養成する。
医学部や理工系ほど高度な勉強は必要ないが(ただしそれでもある程度は勉強しないと留年退学になってしまう可能性はある)、その代わり体力が重要となる。

・保健学科

保健師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士などを養成する。
大学によっては看護師の養成課程があったり、独立した学部として存在したりする。

・生命科学科

医師免許は取得できないが、医学の研究者を養成するための学科。
理学部の生物系学科と何が違うの?とか言ってはいけない。


【その他】

  • アメリカには日本のような医学部は存在せず、大学院扱いとなっている。
    アメリカで医師免許を取りたければ一度4年制大学を卒業してから、4年制のメディカルスクールに進学して修了する必要がある。
    そのため、高校を卒業してから医師になるまで最短でも8年掛かる。ちなみにアメリカでこうなっているのは、「医者は医学だけでなく幅広い教養を持っているのが当たり前だ」という考え方から。

  • 部活動(主に体育会系)は意外と活発。
    これは先輩から定期試験の過去問を頂くためである。
    国立大学の場合、かつて医学部が他の学部とは別の大学だったというところも多いため、他の学部とは別枠で部活動が設置されているところも多い。
    そもそも医学部生って金銭感覚が他の学部とズレている人も多いから、仕方ないね。

  • 私立は言うまでも無いが、国公立医学科も裕福な学生が多い。
    国医の合格者も裕福な家庭の子供が多く、そのような家庭では子供を中高一貫校や大手予備校に入れるなど教育熱心なケースが多いからである。
    とはいえ、ごく稀にあまり裕福とは言えない家庭の子供でも国医に合格する場合もあるのだが…。

  • どの大学も一学年あたりの人数が100人程度と少ない。そのため恋愛などの噂はすぐに広まります。
    あと医学科は進学校やおぼっちゃま学校、お嬢様学校の出身者が多いため、自分達の出身高校の話題が盛り上がりやすいのも特徴です。


追記、修正お願いします。



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最終更新:2023年08月29日 15:53

*1 薬学部工学部、理学部、農学部など

*2 ※理工系と区別するため医学部医学科は太字にしてある

*3 一般入試よりも合格しやすい代わりに、卒業後にその大学が設置されている県に勤務することを義務付ける制度

*4 ちなみに私大の理工系は数学、理科1科目、英語の3教科3科目が基本である

*5 例えばセンター試験で化学と生物を選択した場合、二次試験では物理が必要になる

*6 ただし早稲田、慶應の理工学部は医学部と同様の重量入試で、数学3C、理科2科目、英語の3教科4科目受験となる。理科は物理、化学両方とも解答しなければならない。

*7 ちょっと前までは東大理三では面接がなかった

*8 学費が高いため、中退する者も少なくない

*9 特に私立医科大学に多い