炎槍と水剣の裁

登録日:2021/06/05 Sat 15:46:47
更新日:2024/03/14 Thu 22:17:37
所要時間:約 10 分で読めます






骨は大事に使ってあげるよ。



《炎槍と水剣の裁》はデュエル・マスターズの呪文である。


概要

炎槍と水剣の UC 水/火文明 (6)
呪文
パワー3000以下のクリーチャーをすべて破壊する。その後、破壊したクリーチャー1体につき1枚カードを引いてもよい。
DM-13 「聖拳編 第4弾 龍炎鳳神誕」で登場したの呪文。
この弾で初登場した敵対色呪文であり、わかりやすく火の火力と水のドローを組み合わせた呪文。

全体除去であるため自分のウィニーも焼いてしまうが、手札に置換できると考えればかなりお得ではある。
相手クリーチャーを一掃して自分だけアドバンテージを得ると考えれば実質追加ターンであるとも言える。

このカードの歴史は、DMにおける火力呪文の歴史とも言える。

歴史

このカードが登場したのは先述の通りDM-13。つまり聖拳編最終弾である。
聖拳編環境下ではパワー3000以下のカードはかなり採用された。
青銅の鎧》《シビレアシダケ》《アクア・ハルカス》《コッコ・ルピア》《鳴動するギガ・ホーン》
ラブ・エルフィン》《屑男》《雷鳴の守護者ミスト・リエス》《凶戦士ブレイズ・クロー》……。
挙げればきりが無いが、特にここで重要なのが「システムクリーチャーなどはコストが高くてもパワーが低い」点である。
すなわち、このカードを唱える段階で破壊対象はいくらでもいたのである。

当時の環境は踏み倒し手段が少なく*1
マナと手札を増やしてじっくりアドバンテージを稼いでいくというのが主流であったため、
相手の目論見を崩しながら、こちらは次のターンに向けたアドバンテージをごっそり得られるというのが強みになった。
そして、当時主流だった《無双竜機ボルバルザーク》を軸とした【ボルバルステロイド】は、
青を取り入れた【ボルバルブルー】として生まれ変わり、またその【ボルバルブルー】に対抗するために、
【ボルバルブルー】派生の【ボルバルブラック】から更に派生したコントロールデッキ【除去ボルバル】にも《炎槍と水剣の裁》は採用。
更にその【除去ボルバル】に対抗するために生まれた【カウンターボルバル】にも採用され、
【バジュラズブルー】【除去バジュラズ】といった派生ボルバル系デッキにまで採用された。
つまり《無双竜機ボルバルザーク》を陰に日向に支えたカードというわけである。
後の《蒼き団長 ドギラゴン剣》は《無双竜機ボルバルザーク》も真っ青になる(ボルバルブルー的な意味で)ほど多くのデッキタイプを生み出したが、「ボルバルと裁はズッ友だよ」のような関係と言えるカードは実は案外少ない。*2

でもって、その相棒たるボルバルが無事プレミアム殿堂したあとも暴れたため、その1ヶ月後にこちらも殿堂入り
というのも、《無双竜機ボルバルザーク》にとって最強のメタが自分も《無双竜機ボルバルザーク》を使い、先に出すことであるように、
このカードもまた、相手が《炎槍と水剣の裁》を撃つ前に自分が《炎槍と水剣の裁》を撃つのが最強のメタだったのである。
相棒ともども同じ難点を抱えていたわけだ。
現代デュエマではこのような「自分も同じカードを使わないと対抗できない」カードはせいぜい《ヘブンズ・フォース》くらいしかなく(あちらも無事プレ殿行きである)、
如何に聖拳編が歪な環境だったかわかるだろうか。
このカードを唱えることを「裁く」と表現することすらあった。

1枚だけになった後は、なおさら引いたもん勝ちの運ゲーと化していたためか、最終的には2007年にプレミアム殿堂に。

その後覚醒編ではリメイクカードとして《爆裂大河シルヴェスタ・V・ソード》が登場。

爆裂大河シルヴェスタ・V・ソード VR 水/火文明 (6)
進化クリーチャー:サイバー・コマンド/フレイム・コマンド 8000
M・ソウル
K・ソウル
進化:自分の(M)(M・ソウル)または(K)(K・ソウル)クリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のパワー3000以下のクリーチャーをすべて破壊する。その後、こうして破壊したクリーチャー1体につき1枚、カードを引く。
W・ブレイカー
このカードは発売前こそ、「裁の再来」だの「殿堂入り候補」と騒がれたものの、
ただでさえ重い進化クリーチャーであり、しかも進化元がよりにもよってソウル指定という汎用性のなさ*3
おまけに効果が相手にしか及ばないのがかなりの致命的。

エピソード2では《炎水剣オンセン・サバキ》が登場。
水剣オンセン・サバキ P 水/火文明 (4)
クロスギア
フリー・クロス:このカードをバトルゾーンに置く。このクロスギアを、コストを支払わずにクリーチャー1体にクロスしてもよい。そのクリーチャーがバトルゾーンを離れても、このカードはバトルゾーンに残る。
このクロスギアをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるクロスギアを1枚選び、持ち主の墓地に置く。
このクロスギアをクロスしたクリーチャーが相手のシールドをブレイクした時、相手のパワー3000以下のクリーチャーを1体破壊する。その後、カードを1枚引いてもよい。
黒箱出身ということもありほぼほぼネタカードだが、
一応クロスギアのデメリットを打ち消して、それなりに使えるカードにはなっている。
難点としてはバトルゾーンに他のクロスギアが存在しないとそのまま墓地送りになってしまうため安定して使うにはクロスギアを複数種類採用しないとならない点か。
ぶっちゃけると《炎槍と水剣の裁》よりも後述する元ネタの《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》の性能に近い。

そしてエピソード3では《演奏と真剣のLIVE》が登場。

演奏と真剣のLIVE(ヴァーミリオン・プレッシャー・ライブ) UC 水/火文明 (6)
呪文
相手のパワー3000以下のクリーチャーをすべて破壊する。その後、こうして破壊したクリーチャー1体につき1枚、カードを引いてもよい。
ソウル進化とかいう謎の何かとは違い本家同様の呪文であり、使い所は上がった上、当時は赤青色をフィーチャーしていた時期だが
それでも流行らなかった。というよりアウトレイジの戦略からしたらむしろスーサイドできたほうが良かったのはある。

この後2016年でプレミアム殿堂から解除された……のだが。

プレミアム殿堂解除と悲しい現実

このカードは過去に環境を大いに荒らし回ったカードであるにもかかわらず、
なんと《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》などとは異なり、プレミアム殿堂からの一発解除ということになった。
もっとも、このカードの殿堂期はむしろ無制限期よりも引いたもん勝ちの運ゲーと化していたため、
どうせやるなら無制限にしたほうがいいというのは理解はしやすい。

そして鳴り物入りで登場したはいいのだが……

  • そもそも現代環境はシステムクリーチャーなどでもバニラ並みのパワーはもはや標準
  • というか環境の高速化で悠長にアドバンテージを稼ぐデュエマ自体が概念として存在しない
  • 6マナでこんなもん唱えた所で返しにまっさらの大地からバイクやらバスターやらが走ってくる
  • 確かに軽いウィニーも存在はするが、だいたい出てきたら即殴ってくるので撃つ暇がなく、トリガーでもない限りキツイ
  • というかウィニー対策ならトリガー付きでより範囲の広い《テック団の波壊Go!》の方が良い
ということで4枚入れられるにもかかわらず、「話題には出るけど採用はまずありえない」という悲惨なことになってしまった。
火力呪文の栄枯盛衰を知らしめた殿堂解除であると言えよう。

一方で新章DMでは《炎乱と水幻の裁》が登場。
炎乱と水幻の P(R) 水/火文明 (8)
呪文
S・トリガー
相手のパワー3000以下のクリーチャーをすべて破壊する。その後、こうして破壊したクリーチャー1体につき、カードを1枚引いてもよい。
要はトリガー付きのLIVEだが、その分重くなってしまって使い所が下がってしまっている。
……が、トリガーのおかげで《異端流し オニカマス》やGRクリーチャーの流行への対抗策として
【5cバスター】や【ドルマゲドンジョリー】とかで採用実績はある。
《炎槍と水剣の裁》の一番の問題は唱えるタイミングがないことである、という残念な現実が改めて強調されてしまっている。

今このカードを使うとするなら、《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》から唱えるということになる。
これなら防御札としては一応使えなくはないので強化版《炎乱と水幻の裁》として強引に打ち込むことは可能。
しかしベガスから撃ち込むならそれこそ《超次元ガロウズ・ホール》《英知と追撃の宝剣》《テック団の波壊Go!》など、
競合は数多いが……。

デュエル・マスターズ プレイス

DCG『プレイス』ではDMPP-04で登場。

炎槍と水剣の SR 水/火文明 (6)
呪文
パワー3000以下のクリーチャーをすべて破壊する。その後、破壊したクリーチャー1体につき、自分の手札が4枚以下ならカードを1枚引く。
効果はTCG版より弱体化しており、手札が5枚以上になることがなくなってしまっているほか、
レアリティは逆にアンコモンから一気にスーパーレアにまで上がってしまっている。

しかしプレイス環境は低パワークリーチャーがまだまだ健在であることから、このカードパワーでも十分に活用されており、
再び『裁く』というスラングが流行るに至っている。
あと環境が遅いので普通に唱えるタイミングがあるのがTCG版との大きな違い

余談

元ネタ

上記でもちらっと言及しているが、元ネタはMtGの《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》。

Sword of Fire and Ice / 火と氷の剣 (3)
アーティファクト — 装備品
装備しているクリーチャーは+2/+2の修整を受けるとともに、プロテクション(赤)とプロテクション(青)を持つ。
装備しているクリーチャーがプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたび、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。火と氷の剣はそれに2点のダメージを与える。あなたはカードを1枚引く。
装備(2)

元ネタの方はクロスギアに近いうえ、そもそも青と赤をメタる効果である(効果自体は青と赤のそれなのだが)。
DMではクロスギアは現在失敗メカニズム扱いされている節*4があるため、
おそらくオンセン・サバキ以上の再現度のそれは出てこないであろう。
まずMtGの火力とDMの火力は効果内容そのものが異なる点も踏まえないと行けないが。

サイクル

実はTCG版とDCG版ではサイクル構成カードが異なる。

TCGでは
  • 天使と悪魔の墳墓》()
  • 《偶発と弾幕の要塞》&《炎槍と水剣の裁》(青赤)
  • 《生命と霊力の変換》(黒)
  • 《雷撃と火炎の城塞》(赤白)
  • 《霊鳥と水晶の楽園》(緑青)
となっており、青赤担当だけこのカードと弾幕の2枚というとんでもないことになっている。
弾幕は弾幕で使い所を選ぶものの【弾幕フェルナンド】や【悠久弾幕】【弾幕ガ・リュザーク】などデッキを組まれ続けている。
墳墓は言わずもがな。他三枚は時期によっては活躍したこともあるものの、墳墓・弾幕・裁には劣る。

DCGでは
  • 《天使と悪魔の審判》(白黒)
  • 《炎槍と水剣の裁》(青赤)
  • 《ダーク・ライフ》(黒緑)
  • 《雷撃と火炎の城塞》(赤白)
  • 《霊鳥と水晶の庭園》(緑青)
となる。青赤が5枚に減ったのは弾幕がテクニカルすぎることやサイクルをサイクルとわかりやすくしたかったこと、
そうした場合にプレイス的にネームバリューのある裁を優先したことがうかがえる*5
白黒と緑青は名前こそ元のカードに似ているものの完全に別物と化しており、
墳墓は現代のデュエマ開発陣が避けているランデス効果であること、楽園はそもそも微妙なカードであることが理由であろう。
そして黒緑は全く違う時代からまさかの《ダーク・ライフ》。ただし効果は弱体化しているが*6




全てを串刺しにする炎の追記と全てを斬り流す水の修正。今、裁きが下る。

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最終更新:2024年03月14日 22:17

*1 母なる大地とかいうぶっ壊れが見ない日はないレベルだったのは内緒。因みに同期の転生プログラムは登場からしばらくはそこまで暴れていなかった。

*2 《“龍装”チュリス》は登場以降【○○バスター】を名乗るデッキに必ずと言っても良いほど採用されているがそれでも採用しないデッキタイプも存在している。

*3 マイナー種族進化とかならまだ【ダーウィン】で使えたのだが。

*4 環境で名を残したクロスギアが《秘宝 オール・イエス》ぐらいな辺りで察して欲しい。

*5 プレイスでは《無双竜機ボルバルザーク》も鳴り物入りでPVで紹介した前例がある。

*6 TCG版:デッキトップから2枚を確認して好きな方をマナに置き残りを墓地送り。デュエプレ版:デッキトップのカードをマナに置き、2枚目を墓地送り、