グルール一族/The Gruul Clans(MtG)

登録日:2022/05/12 (木曜日) 22:32:00
更新日:2024/02/21 Wed 23:40:47
所要時間:約 10 分で読めます




そこには自然の憤怒の叫びと原初の力をもたらす野性の声がある。


グルール一族/The Gruul Clansとは、TCG、マジック・ザ・ギャザリングの背景世界に存在する組織である。

概要

次元、「ラヴニカ/Ravnica」を支配する10のギルドの一つ。配色は破壊のと野生の

文明社会であるラヴニカにおいて、文明を忌み嫌い略奪と破壊を繰り返す危険かつ野蛮なギルド。
指導者からの命令は"Crush them!(ぶっ潰せ!)""We eat!(みんな食え!)"だけという気持ち良いほどの蛮族っぷりであり、もはやギルドという体をなしていない。

元からこうだったわけではなく、ギルド発足当初はラヴニカの都市開発に追われる野生動物の保護を謳う高貴なギルドであった。
しかし、ギルド同士による魔法協定「ギルドパクト/Guildpact」の締結にて、自然保護の役目をセレズニア議事会/The Selesnya Conclaveシミック連合/The Simic Combineに奪われたことで、他のギルドは役目のない彼らを野蛮者として村八分にする。
その後、他ギルドの攻撃や弾圧で組織としてはほぼ瓦解してしまい、今や文明の報復を目的にしたギルドに成り下がってしまった。

「あいつらは、従えば幸せになれると言った。安全だと言った。でも俺たちは安全じゃない。幸せでもない。だから俺たちは従わない。」
――ドムリ・ラーデ (《街頭暴動》のフレーバー・テキストより)

一見ラヴニカ次元には貢献していないように思えるが、彼らの破壊行為が結果的にラヴニカの開拓に繋がっている面もある。また、都市生活に馴染めなかった者達の受け皿としての役目も持っている。

他ギルドの様な組織構造はなく、部族と呼ばれるグループが寄せ集めになっているのが特徴。
弱肉強食がグルールの信条であり、部族同士の争いはおろか部族内部でのいざこざも日常茶飯事。
部族が崩壊しては新設してを繰り返す中、下記の六部族だけは長い間存在している。

  • 炎樹族…グルール最大の部族。ギルドの紋章も元々は彼らのシンボル。
  • ゴーア族…ラヴニカでも特に人口の多い場所で破壊活動を行う部族であり、ラヴニカ市民からは特に恐れられている。
  • 瘡蓋族…様々な種族が集まった部族で、体を欠損した者が多いのが特徴。
  • ボーラク族…巨人やサイクロプスなどのデカブツで構成された種族。ボーラクは「重い槌」を意味する言葉で、その名の通りハンマーの扱いに長けている。
  • スリーツ族…トカゲ人間のヴィーアシーノを中心にした部族。
  • ザル=ター族…グルール本来の教義である「旧き道」に従う部族。ウトムングルと呼ばれる神々を信仰している。

当初はサイクロプスの戦士・腹音鳴らしが全部族を統率していたが、ドムリ・ラーデが彼を倒しギルドマスターとなった。

単なる「反体制的な野蛮人」という意味ではラクドスとキャラが被りがち*1だが、決して単なる反体制ではないのは「灯争大戦」のストーリーを見ればわかる通り。
どちらかというと「自分たちの教義を重んじ、それを軽んじてきた連中に報復をしている」のがグルール、
「楽しければそれでいい、ラクドス様が楽しめるならさらにいい」というのがラクドスと見分けておくといい。
カードのイラストやテキストでは実に蛮族らしいことをやっている彼らだが、ストーリーでは割と人間味にあふれた好漢が多かったりする。

グルールを語る際に忘れてはいけないのが、「ラヴニカへの回帰」時代のプレリリースイベントで配布された「ギルドからの手紙」。
これは各ギルドの窓口となっているキャラクターが、「うちのギルドに参加してくれたんだね、うちらはこういう団体だよ。これからもよろしくね」というのをギルドの特色たっぷりに伝えるというもの。
ディミーアならいかにもな秘密文章だし、アゾリウスは非常に堅苦しい官僚的な文章なのだが、グルールのものには壁画のような絵が描いてあるだけで文字が一切書かれていない
文明を敵視するグルールらしい「手紙」ということで、ギルドからの手紙のオチ担当としてプレイヤーたちの爆笑を誘った。
一応ギルド門には文字が刻まれているらしく、この手紙担当者とは別人であれば文字が使える可能性が高い。

主要人物

腹音鳴らし/Borborygmos
炎樹族の族長でありグルール全体を統率するサイクロプス。
パルンの子孫を自称する最強の戦士。
『ラヴニカへの回帰ブロック』のストーリーでも健在だったが、次第に強さに老いが見え始め、
『ラヴニカ3部作(ラヴニカのギルド~灯争大戦)』のストーリーでは、ドムリとの勝負に敗れ、ギルドマスターの座を奪われた。
その後は(当初は嫌がっていたが)他ギルドと共に、ボーラス軍との戦いに協力する。

登場カード
  • 腹音鳴らし/Borborygmos
  • 怒れる腹音鳴らし/Borborygmos Enraged

Cisarzim, Lord of Chaos
グルールの初代ギルドマスター兼パルン(創始者)。故人。
腹音鳴らしと同じサイクロプスだが、本当に血族関係かは不明。
現在と違いシャーマンとドルイド中心で「過剰な都市文明を否定」「原生物と自然保護をスローガン」を擁していたグルール時代であり、また本人も他パルンから注目された事がうかがえる。
現在では設定のみの存在であり、カード化はしていない。

登場カード
  • (無し)

ドムリ・ラーデ/Domri Rade
グルールに所属する青年。
ラヴニカの都市社会をすべて破壊し自然回帰することを夢見ている。

グルールの成人の儀式にて、プレインズウォーカーとして目覚める。
その力をボーラスに利用され、彼に唆されたことで腹音鳴らしを倒し、ギルドマスターの座を奪った。
ボーラスを「自然回帰を実現できる救世主」と妄信した彼は、ボーラス側へ寝返りラヴニカ全土で破壊活動を繰り返す。

しかし腹音鳴らしを含む大半のグルールのメンバーはボーラス軍と戦う姿勢を取り、事実上ギルドマスターの座を追いやられる。
周囲の説得を無視し一人でもボーラスの為に戦うドムリだったが、結局は彼もボーラスの力を取り戻すためのピースに過ぎず、永遠衆にプレインズウォーカーの灯を奪われて死亡。
手下として動いていた彼は皮肉にも「ニコル・ボーラスは手下と犠牲者を区別しない。」というフレーバー・テキスト*2を体現してしまったのである。
その浅はかさから『灯争大戦』ストーリーの語り部であるラットからは「Dumb Domri(馬鹿ドムリ)」と見下されていた。

ちなみに彼のプレインズウォーカーとしての能力は…
  • 野獣召喚
  • 野獣への命令や意志伝達
  • 野獣の本能や野生を刺激した、凶暴化や能力強化

…お分かり頂けただろうか。裏を返すと 彼自身には大した戦闘力が無い ことを。*3単なる一兵隊の永遠衆にあっさり捕まったのもボーラスの事を知らなかった以外に、彼個人の戦闘力の低さと使役出来る獣がいなかった=詰んでたのもある。
同じく野獣を使役出来るが、自身の戦闘力も桁違いなガラクとは真逆である。*4

登場カード
  • ドムリ・ラーデ/Domri Rade
  • 混沌をもたらす者、ドムリ/Domri, Chaos Bringer
  • 街潰し、ドムリ/Domri, City Smasher
  • ボーラスの壊乱者、ドムリ/Domri, Anarch of Bolas

ルーリク・サー/Ruric Thar
ゴーア族の族長を務めるオーガ。双頭であり、「ルーリク」と「サー」の人格に分かれている。
『ドラゴンの迷路』ストーリーでは迷路走者を務めた。
単純な算数ができずに記憶違いを起こしてジェイスを困惑させたり、《障害排除》のフレーバー・テキストで通行料をせびってきたオルゾフの護衛をぶん殴ったりと、ストーリーでは「バカで豪快な好漢」といった得な役回り。
カードの方は統率者戦の貧乏デッキなどで定番。

登場カード
  • 自由なる者ルーリク・サー/Ruric Thar, the Unbowed

ニーキャ/Nikya
ザル=ター族の族長であるケンタウルスの女性。
部族の赤子をラクドス教団/The Cult of Rakdosに殺されたことから、彼らに報復を始める。
『ラヴニカ3部作』のストーリーでは、ギルドマスターの座に就いたドムリをイルハグの帰還の前触れと予見していた。
蛮族のイメージが強いグルールだが、どちらかというと「旧き道」という古い信仰に従っている古老といった趣のキャラ。
『ラヴニカへの回帰ブロック』の背景ストーリーで登場したときは乗騎の獣から下りてあぐらをかいて座る描写があったので、種族がケンタウルスなのは後付け設定と思われる。

登場カード
  • 旧き道のニーキャ/Nikya of the Old Ways

イルハグ/Ilharg
ウトムングルと呼ばれる神々の一柱である猪神。
文明化された世界を破壊する神として信仰されていたが、灯争大戦にて顕現した。
Secret Lairにおいて解剖図が描かれている。体内に「Divine Power」と注釈が書かれた核らしきものがあり、尋常のイノシシではないことは間違いない。

登場カード
  • 猪の祟神、イルハグ/Ilharg, the Raze-Boar

ラット/Rat
グルール出身の少女、本名はアレイシャ・ショクタ。「他者に認識されづらい」という特殊能力を持つ。
グルールの考えにはなじめずに門無しをしているが、腹音鳴らしとの仲は悪くない。自分を認識してくれる人が少ないため、そういう人の前ではとてもおしゃべりになる。
テヨやケイヤと仲良くなり、他の次元にプレインズウォークさせてもらったりと何かと得な役回り。一方でその特異性からラザーヴに目をつけられている。
カード化はされていない。


ゲーム内での特徴

赤緑らしくクリーチャーを中心とした攻撃的なカードが目立つのが特徴。一方で、湧血や暴動などのように意外と柔軟性のあるカードも多い。
クリーチャー以外の呪文を唱えたり起動型能力を起動するとペナルティを与えるようなカードがあるのも特徴。
文明全否定ということで大量破壊系のカードも多く、特に赤緑のカードが再録される場合はグルールのものにイラストやフレーバー・テキストを変えて再録されることもある(《大量破壊》など)。
スタンダードではかなりの存在感を発揮するものの、クリーチャーの存在を前提にするカードの多さから、下環境では華々しい活躍をできていない。3つの能力すべてが忘れられがちなオルゾフよりはマシではあるのだが……。

固有メカニズム

狂喜/Bloodthirst

Scab-Clan Mauler / 瘡蓋族のやっかい者 (赤)(緑)
クリーチャー — 人間(Human) 狂戦士(Berserker)
狂喜2(このターン、対戦相手1人にダメージが与えられている場合、このクリーチャーはその上に+1/+1カウンターが2個置かれた状態で戦場に出る。)
トランプル
1/1

『ラヴニカ・ブロック』におけるメカニズム。
クリーチャーが持つ能力で、対戦相手にダメージを与えていた場合、指定された個数の+1/+1カウンターが置かれた状態で出てくる。
一見地味に見えるのだが、条件を満たしたときのサイズアップはかなり魅力的。特に「ラヴニカ:ギルドの都」の頃はクリーチャーのサイズがまだインフレしていなかったため、相対的にも強力な能力だった。
環境も比較的ゆっくりした速度だったのでステロイド戦略が強く、各種印鑑のような展開補佐や《喧噪の貧霊》《世慣れたドライアド》のような強力なサポートカードがあったので条件も満たしやすく、当時の赤緑デッキにおいて渋い活躍を見せた。
他TCGを中心にプレイしている人がやりがちなプレイミス「クリーチャーを出してから攻撃する*5」を矯正するのにも役立つという、なかなか便利な能力である。
基本セット2012でも再登場し、ケツ王《ヴァーズゴスの血王》など黒のクリーチャーにも実装された。
しかしこちらは当時がクリーチャー除去がやたら強すぎた時代での再登場であり、狂喜の条件を満たしにくい・満たせても返しであっさり除去される・そもそも普通のデカブツが強い時代だったと三拍子そろっており、まったく活躍できなかった*6
実はデュエル・マスターズ「ターボラッシュ」が逆輸入された能力。

湧血/Bloodrush

Ghor-Clan Rampager / ゴーア族の暴行者 (2)(赤)(緑)
クリーチャー — ビースト(Beast)
トランプル
湧血 ― (赤)(緑),ゴーア族の暴行者を捨てる:攻撃クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+4/+4の修整を受けるとともにトランプルを得る。
4/4

『ラヴニカへの回帰ブロック』におけるメカニズム。
狂喜同様クリーチャーが持つ能力で、攻撃クリーチャーに自身のパワー・タフネス、そして自身の能力を付与するメカニズム。
攻撃クリーチャーしか対象にできないものの、クリーチャーとしてもコンバット・トリックとしても使える便利さが利点で、
「呪文を唱える」訳ではないため、打ち消されにくいメリットもある。
当時は青白コントロールの全盛期だったが、通常の打ち消しが効かない強化手段としてグルール・ビートやスライ、バーンなどで活躍した。
クリーチャーを1体でも通してしまうと途端に相手に圧がかかるので便利だったのである。

暴動/Riot

Zhur-Taa Goblin / ザル=ターのゴブリン (赤)(緑)
クリーチャー — ゴブリン(Goblin) 狂戦士(Berserker)
暴動(このクリーチャーは+1/+1カウンター1個か速攻のうち、あなたが選んだ1つを持った状態で戦場に出る。)
2/2

『ラヴニカの献身』におけるメカニズム。
こちらもクリーチャーが持つ能力であり、+1/+1カウンター1個か速攻のどちらかを持った状態で戦場に出てくる。
とにかく攻めていくなら速攻を、着実に戦力を増やしたいなら+1/+1カウンター…という具合に、状況に応じて好きな強化を得られる。
ちなみに、何らかの理由で複数の暴動を有しているとその数だけ選ぶことができる。意味はないが速攻を複数付与することもできる。
速攻の純粋な上位互換というとんでもないインフレ能力だったが、下馬評ほどの活躍はなかった。

主なカード


Burning-Tree Shaman / 炎樹族のシャーマン (1)(赤)(緑)
クリーチャー — ケンタウルス(Centaur) シャーマン(Shaman)
プレイヤーがマナ能力でない起動型能力を起動するたび、炎樹族のシャーマンはそのプレイヤーに1点のダメージを与える。
3/4

グルールを代表するクリーチャーの一体。
優れたマナレシオに加えて、(マナの能力以外の)起動型能力を起動したプレイヤーにダメージを与える。
当時のスタンダードで大活躍していた《師範の占い独楽》などに対して、特に高い効果を発揮する。
皮肉にも後のグルールのメカニズムである湧血とはディスシナジーだったりする。

Giant Solifuge / 巨大ヒヨケムシ (2)(赤/緑)(赤/緑)
クリーチャー — 昆虫(Insect)
((赤/緑)は(赤)でも(緑)でも支払うことができる。)
トランプル、速攻、被覆(このクリーチャーは呪文や能力の対象にならない。)
4/1

いわゆる「歩く火力」カード。
《ボール・ライトニング》から生け贄能力が消え被覆がついたことでより攻撃的な性能となった。
被覆とトランプルとスタッツが噛み合っているのが本当に偉い。詳細は個別項目を参照。

Tin Street Hooligan / ブリキ通りの悪党 (1)(赤)
クリーチャー — ゴブリン(Goblin) ならず者(Rogue)
ブリキ通りの悪党が戦場に出たとき、それを唱えるために(緑)が支払われていたなら、アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する。
2/1

緑を支払って戦場に出した場合、ETBでアーティファクトを破壊できるゴブリン。緑マナを安定して生み出せるデッキの場合、メインデッキから違和感なく入れられる置物破壊である。
2マナ2/1という性能はぶっちゃけお話にならないのだが、「ラヴニカ:ギルドの都」時代のクリーチャーということを考えればそこそこのやり手ではあった。
スタンダードには印鑑が溢れかえっていた上にアーティファクトに依存したデッキも多かったため、それらを対策するべく赤緑系のデッキで盛んに用いられた。
レガシーでは初期にゴブリンがトップメタだったこともあり、タッチ緑のゴブリンデッキにアーティファクト対策として用いられた。
ただしこちらは《霊気の薬瓶》や《ゴブリンの戦長》といったゴブリンデッキの中核をなすカードとの相性が非常に悪く、赤単に比べるとマナ基盤が脆くなりやすいという欠点もあった。
当時は《ゴブリン修繕屋》派、時代が下ると《タクタクの潰し屋》派など様々な派閥が存在していたという、一筋縄ではいかない名カードである。

Burning-Tree Emissary / 炎樹族の使者 (赤/緑)(赤/緑)
クリーチャー — 人間(Human) シャーマン(Shaman)
炎樹族の使者が戦場に出たとき、(赤)(緑)を加える。
2/2

『ラヴニカへの回帰ブロック』時代におけるグルールの優良クリーチャー。
事実上0マナ2/2のクリーチャーとして現れ、生み出したマナから後続のカードも出せる。
人間であるため前期の『イニストラード・ブロック』の人間サポートも受けられ、後期の『テーロス・ブロック』の信心ギミックの相性も抜群。
後続のカードを展開しながら《ゴブリンの奇襲隊》などで一気にダメージを持っていく「奇襲隊レッド(8Whack)」から、
赤や緑の信心を2点も稼げるうえに展開もしやすい点から各種信心デッキまで幅広い活躍を見せた名カード。
スタンダードだけでなく現在でもモダンやパウパーで活躍している。一時期は人間デッキの展開力の潤滑剤としても役に立った。

Domri Rade / ドムリ・ラーデ (1)(赤)(緑)
伝説のプレインズウォーカー — ドムリ(Domri)
[+1]:あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。それがクリーチャー・カードである場合、あなたはそれを公開してあなたの手札に加えてもよい。
[-2]:あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とし、他のクリーチャー1体を対象とする。その前者はその後者と格闘を行う。
[-7]:あなたは「あなたがコントロールするクリーチャーは二段攻撃、トランプル、呪禁、速攻を持つ。」を持つ紋章を得る。
3

グルール出身のプレインズウォーカー、ドムリの初登場カード。
「手札が必ず増えるわけじゃないプラスに、クリーチャーが盤面にいないと機能しないマイナス、遠すぎる奥義」という点から下馬評がかなり低いカードだったが、環境の研究が進むにつれて「こいつ実は強いのではないか」ということがささやかれるようになった。
クリーチャーが主体のデッキなら、3マナにもかかわらずプラス能力なら盤面を選ばない手札増強、マイナス能力なら格闘を介したクリーチャー除去を使えるという点ががっちり噛み合ったかなり万能なカードだったのだ。
書いてあること自体は地味ながら強力であり、赤緑を含む様々なデッキで活躍した。現在もパイオニアのウィノータデッキやモダンのカスケードデッキなどで用いられているようである。
奥義が無理なく勝ちにつなげられる能力というのも、このカードを定着させたらまずい理由づけになる(ただし奥義はほとんど使われない)。

さらにこのカードは、その後のスタンダードにひとつの珍談をもたらした。
「タルキール龍紀伝」の時期のこと。《卓絶のナーセット》がスポイラーで公開された当初、とんでもない値段がつけられていた。
プラス能力が「クリーチャーでも土地でもないカード」を手札に加えるドムリ互換だったため、青白という色もあって「ドムリより強いことが青白でできるのなら強いに決まってる」と期待されたのである。
「タルキール覇王譚」時代にほぼノンクリーチャーのコントロールデッキが存在していたこともこの下馬評に拍車をかけた。ストーリーでも鳴り物入りだし、これは間違いなく強いカードだと誰もが思っていた。
しかしドムリの3マナとナーセットの4マナの差はあまりにも大きすぎた。さらにクリーチャーの質が高い時代にノンクリーチャーデッキをなかば強いられること、合うデッキが見つからなかったことから値段は暴落。
当時のプレイヤーは改めて、ドムリの3マナという点が、そして最近のクリーチャーがいかに強かったかということを味わったのである。そして遥か先の時代でドムリの地位と好感度が爆下がりになるなど知る筈もなかった。

Wilderness Reclamation / 荒野の再生 (3)(緑)
エンチャント
あなたの終了ステップの開始時に、あなたがコントロールしている土地をすべてアンタップする。

一見すると「対戦相手のターンにも土地を立てた状態で行動できる」カードなのだが、終了ステップの開始時という独特のタイミングが特徴。
自分の終了ステップのみに限るが「アンタップ状態の土地からさらに1マナを追加で引き出す」ことができるようになり、インスタントや各種起動型能力を使う際に非常に役立った。
有名なカードが土地4枚から7マナのインスタント《運命のきずな》を唱えて追加ターンを始める「ターボネクサス」であり、これを皮切りに様々なデッキが研究されていくことになる。
このカードを軸にした各種デッキは「○○再生」と呼ばれ、当時のスタンダード環境を大きく定義。最終的にスタン落ちを前にした最後の1ヶ月で、再生デッキの抑止力とされていた《時を解す者、テフェリー》とともに禁止カードに指定された。遅すぎない?
一見するとグルールのカードではないが、フレーバー・テキストや建物の崩れているイラスト、「荒野」という部分からそれとなくグルールのカードだと分かるようになっている。

Gruul Spellbreaker / グルールの呪文砕き (1)(赤)(緑)
クリーチャー — オーガ(Ogre) 戦士(Warrior)
暴動(このクリーチャーは+1/+1カウンター1個か速攻のうち、あなたが選んだ1つを持った状態で戦場に出る。)
トランプル
あなたのターンであるかぎり、あなたとグルールの呪文砕きは呪禁を持つ。
3/3

3マナ3/3速攻あるいは、3マナ4/4という優れたマナレシオに加えて、自ターン中に呪禁を持たせることで安全に攻撃を可能にしてくれる。
こちらもスタン落ちしてなお、モダンやパイオニアで活躍している。

Rhythm of the Wild / 野生の律動 (1)(赤)(緑)
エンチャント
あなたがコントロールしているクリーチャー呪文は打ち消されない。
あなたがコントロールしていてトークンでないクリーチャーは暴動を持つ。(それらは+1/+1カウンター1個か速攻のうち、あなたが選んだ1つを持った状態で戦場に出る。)

かの《ヤヴィマヤの火》を彷彿させるクリーチャーのサポートエンチャント。
後続のクリーチャーすべてが+1/+1カウンターか速攻のどちらかで強化される上、打ち消されなくなるのだから相手からすればたまったものではない。
最初から速攻持ってるクリーチャーには+1/+1カウンターを付与すればいいので、効果が無駄になりにくいのも利点。
当時はインベイジョン時代を思わせるほど個性的な動きをするデッキの梁山泊であり、それこそファイアーズのようなデッキが復権することを夢見られた。
…だが、書いてあることそのものは確かに強いのだが、いかんせん時代が悪すぎた。《荒野の再生》《幸運のクローバー》《魔女のかまど》《創案の火》《サメ台風》などより凶悪な置物が環境にひしめいていたため、それらの対策で一緒に処理され、速度では《エンバレスの宝剣》擁する赤単に追いつけなかったのである。
挙げられているカードのうち半数以上がエルドレイン産なのは密に密に……


Ilharg, the Raze-Boar / 猪の祟神、イルハグ (3)(赤)(赤)
伝説のクリーチャー — 猪(Boar) 神(God)
トランプル
猪の祟神、イルハグが攻撃するたび、あなたはあなたの手札からクリーチャー・カード1枚を、タップ状態で攻撃している状態で戦場に出してもよい。次の終了ステップの開始時に、そのクリーチャーをあなたの手札に戻す。
猪の祟神、イルハグが死亡するか戦場から追放領域に置かれたとき、あなたはこれをオーナーのライブラリーの一番上から3枚目に置いてもよい。
6/6

「灯争大戦」で突然登場したグルールの神様。イラストを見比べてみると分かるがまんま乙事主。まぁ猪正面から見たら似ちゃうよね
赤単なのに5マナ6/6でトランプルまでついてデメリットなし、死亡どころか追放にすら対応した自己再生能力とこれでもかというほどに性能が盛られているとんでもないカード。
攻撃するたびに手札から《騙し討ち》のような能力が誘発するため、スニークアタック系のデッキをはじめ、《変身》系やシュート系のデッキで用いられることがある。
追加のシュート役にするもよし、このカード自体を踏み倒してさらに別のデカブツを出してしまうもよし、素出しも視野に入るとこの手のデッキなら言うことなしの性能である。《変身》亜種なら手札に来てしまった変身先を出したりもできる。
このように意外と柔軟に動ける、まさに救世主的なカードだったのだが、結局5マナを出さなければならず除去耐性もない。さらに実際に動くまでに1ターンのラグが存在する。このように弱点も多いため、そこまで強いカードというわけではなかった。この環境やっぱ頭おかしいのでは

ラヴニカに突然出てきた「神」だが、メタいことを言うと灯争大戦で登場したアモンケットの神の成れの果て「永遠神」サイクルに赤がないことから作られたカード。
赤の神ハゾレトはストーリーで生き残っている ため、不公平感を出さないようにするためとも考えられる。その甲斐あって他の永遠神にも劣らぬ大活躍を見せた。
またどこかの誰かみたく本当に突然出てきたわけでもなく、様々なカードのフレーバー・テキストなどで登場が(存在が、ではなく)示唆されていた。
中でも《終末の祟りの先陣》は名前からして分かりやすい例で、「灯争大戦」のプレビュー期間には「先陣しかいないけど、もしや終末の祟りの本陣も出るのでは?」などとささやかれていた。

Decimate / 大量破壊 (2)(赤)(緑)
ソーサリー
アーティファクト1つと、クリーチャー1体と、エンチャント1つと、土地1つを対象とし、それらを破壊する。

脅威の1:4交換を狙えるカード。しかし4つすべてを対象に取らなければならないため、対戦相手がエンチャントやアーティファクトを使わないデッキの場合は完全に腐る。
結果「小回りの利くカードの方がいい」と判断されることの方が圧倒的に多く、サイドボードにも使いづらいカードだったが、統率者戦をはじめとした多人数戦だと狙える対象が非常に多くなることからそれなりに強力なカードになる。
元々はオデッセイで登場したカードだったが、コンスピラシーで再録された際に新イラストと新フレーバー・テキストで収録されている。
無秩序とはさまざまな形態で存在する。社会、個人、グルール、……。
グルールにはこの手の大量破壊系のカードが割と多い。《一族の誇示》《一族の暴行》、再録カードだと《大竜巻》などもグルールのイラストにされている。

Goblin Anarchomancer / ゴブリンの壊乱術士 (赤)(緑)
クリーチャー — ゴブリン(Goblin) シャーマン(Shaman)
あなたが赤か緑の各呪文を唱えるコストはそれぞれ(1)少なくなる。
2/2
「モダンホライゾン2」で登場したゴブリン。赤か緑の呪文コストを少なくする2マナのゴブリンというのは、イゼットの《ゴブリンの電術師》を思い出させる性能。
ヒストリックのシャーマンデッキで用いられている他、他環境でも部族デッキの展開補佐係として活躍している。特に部族のお供《集合した中隊》を軽くできるのは嬉しいところ。コモンなのでパウパーでも使用可能。
一見するともっと活躍してもよさそうな性能ではあるが、あまり派手な活躍は見せていない。




ピカピカじゃねえか! 追記修正してやろうぜ。 ――アニヲタwikiの編集者の最期の言葉

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最終更新:2024年02月21日 23:40

*1 メカニズムも若干似ているところがある

*2 初出はアラーラ再誕エキスパンションの《ボーラスの奴隷/Slave of Bolas》。その後デュエマの《ニコル・ボーラス》でも採用。

*3 グルール加入前から既に低身長+もやし体格で馬鹿にされた事が、根底的な文明コンプレックスと人間不信に繋がっていた。

*4 ちなみにガラクもドムリと同じ獣好き+人間不信な傾向があるが、ドムリとは違い身を案じるジェイスに情けを掛けたり、エルドレインで呪いを解いてくれたウィルに恩を返そうとするなど筋を通す面がある。

*5 MTGには召喚酔いが存在する上、クリーチャーの展開にもマナがかかるので手札を構えられなくなってしまう。特別な事情がない限り先にクリーチャーを展開するのはよろしくない行為とされている。

*6 冗談抜きでケツ王が一番話題になったカードである。