名鉄築港線

登録日:2022/10/28 Fri 18:41:04
更新日:2022/11/09 Wed 20:41:14
所要時間:約 8 分で読めます






*1

名鉄築港線(ちっこうせん)とは愛知県名古屋市に存在する名古屋鉄道の鉄道路線である。
路線記号はCH

概要

名鉄常滑線大江駅と東名古屋港駅を結ぶ1.5kmの路線で、全線電化されている。
旅客駅はたったの二駅だが、後述する理由から非常に存在意義の高い路線である。
昔は複線だったが伊勢湾台風の被害から復旧する際に単線になった。

運行形態

なんと言ってもこの路線の一番の特徴は旅客列車は朝と夕方~夜の時間にのみ運行され、日中は一切運行されていないという点だろう
平日の大江駅の場合朝7時に始発列車が出て、その後何本か列車が発着した後8時27分の列車が出るとその次の列車は16時44分まで来ない
その後夕方の時間帯は15分に一本ペース、19時以降は20分に一本ペースで終電が21時44分。
土曜日や休日では更に本数が減り午前は5本程度で午後も16時33分に一本目が出たら20分に一本ペースで運行され19時前には終電。日曜祝日では18時代もカットされ17時20分の便が終電。本数が多い日では19時以降も運行されるが21時には終電。

曜日に応じて確実に運行される列車以外は「臨時列車」と呼ばれており、運転日は名鉄の公式サイトやアプリでも見られず、大江駅か東名古屋港駅まで行かないと見られない。

何故このような運行形態なのかというと、この路線は通勤輸送特化の路線だからである。
東名古屋港周辺には工場が多く、工場への通勤客は非常に多い。しかしそれ以外の需要が殆ど無いが故に日中の利用者はまずいない。よって需要がある時間帯と無い時間帯がハッキリ別れており、それに合わせ需要があるタイミングにのみ運行しているのだ。
この「需要があるタイミングだけ運行する」という運行形態をとっている関係上実は名鉄屈指の黒字路線
他地区で言えば鶴見線和田岬線と同じような形態である。

非生活利用者の利用をほぼ考慮していないため、趣味で乗ってみたいという場合はスケジュールをしっかり調整しておこう。早朝に名古屋入りするのが厳しいなら午後が狙い目。確実に運行される列車を狙い、臨時列車は事前に情報が得られた場合を除きアテにしない方がいい。
ただバスはある程度出ているため周辺施設に用がある場合はバスの利用がいいかも。

列車は全列車ワンマン運転で、終日大江⇔東名古屋港間のピストン輸送となっているが、過去には名古屋方面から直通する列車も存在した。
行先表示器は種別表示部分に「普通」と表示するのみで、前面窓に「東名古屋港⇔大江」と書かれた系統板を掲示する。

築港線内はスタフ閉塞で信号が存在せず、代わりに乗務員がスタフ*2と呼ばれる棒状の物体を持っている列車のみが通行出来るというシステムになっている。旅客線で現在も棒状のスタフを使用しているのは築港線と津軽鉄道線しかない。

もう一つの役割

この路線は通勤利用の他、鉄道車両の輸送にも欠かせない存在なのである。
愛知県豊川市には日本車輌製造豊川工場が存在し、名古屋鉄道や名古屋市営地下鉄の車両の多くはそこで製造されている。
そうして製造された車両は甲種輸送により東海道本線を経由し笠寺駅まで運ばれる。そこで機関車を名古屋臨海鉄道のディーゼル機関車に付け替え、名古屋臨海鉄道東港線・東築線を経由し東築線と築港線の接続駅である名電築港駅(貨物駅)へ向かう。線路が下の図のようになっているため名電築港でバックして東名古屋港へ、東名古屋港でまた元の向きに戻ってから大江駅へ向かう。
大江駅からは名鉄の電気機関車であるEL120形の牽引か運ばれてきた車両自身が自走するかして*3それぞれの車両基地へ運ばれる。

名電築港付近簡略図

         名
         電
         築
         港
         ┃
        /┃
       / ┃
東名古屋港━/━━╋━築港線━大江方面
         ┃
         東
         港
         線
         ┃
         東
         港
         方
         面

上の図では築港線と東港線が交わっているが、この部分は高架による交差ではなく道路の交差点のように二つの路線が直接重なる「ダイヤモンドクロッシング」と呼ばれるかなり珍しい鉄道設備となっている。築港線の場合ほぼ直角に交わっている。

また、日本車輌製造で製造された海外向け車両やJR東海の海外向け中古車両の譲渡の輸送時は東名古屋港駅の西側に伸びる線路から大江埠頭まで運ばれて船積され、海外へ旅立って行く。逆に海外から輸入した車両の搬入のために使われることもある。

名鉄の廃車車両の輸送も行われ、その際は自走もしくはEL120形の牽引で東名古屋港駅まで運ばれた後軌陸車*4の牽引で名電築港駅の奥まで牽引され、そこからクレーンによって解体作業を行う線路の間のスペースに移される。その後は車体を半分にして大江駅近くのリサイクル工場へ搬出される。
かなり珍しいケースだが、会津鉄道へのキハ8500系の譲渡の際には新車納入時とは逆のルートで名古屋臨海鉄道線・JR線方面へ輸送したことがある。

使用車両

  • 5000系
全席ロングシートの通勤型車両で、パノラマスーパー1000系の機器を流用した界磁チョッパ制御車。
他系列と共通の運用が組めず独立した運用を持つため2009年の導入以降優先的に投入されるようになった。

過去には6000系を筆頭とした2両編成が使用され、吊りかけ車両など本線でお役御免となった車両が最後まで使用されていた。
その他団体専用列車としてミュースカイ用2000系の運用実績もある。

  • EL120形


*5

2015年導入の電気機関車。
廃車車両の牽引に使用される。
EL120形は二両ペアで牽引対象を挟み込んで運用するのが基本だが、廃車車両の牽引は行きだけでいいため大江駅で片方を切り離して一両だけで牽引する。EL120が単機で何かを牽引するのが見られるのは大江~東名古屋港の廃車回送ぐらい*6

  • ND552形
名古屋臨海鉄道のディーゼル機関車。
甲種輸送に使用され、大江駅までは乗り入れる。

利用方法

東名古屋港駅には券売機も改札機も無く、車内で精算や乗車券の販売を行っている訳でもないので運賃の精算や乗車券の回収は以下のよう方法で行っている。
manaca等全国相互利用可能な交通系ICカードにも対応している。

  • 東名古屋港駅から乗る場合
  1. きっぷも整理券も持たず列車に乗る。
  2. 大江駅に着いたら自動改札機手前の券売機で目的地までの乗車券を購入する。
  3. 乗車券を改札に通す。乗り換える場合はそのままホームに降り、乗り換え、下車駅で普通に改札を通る。大江駅で降りる場合はコンコースを通り出口改札へ行き、改札機を通って外へ出る(つまり大江駅で降りる場合は買ったばかりの乗車券を1分程で手放すことになる)。

  • 東名古屋港駅で降りる場合
  1. 現在いる駅から東名古屋港駅までの乗車券を購入。
  2. 大江駅へ行き、築港線用改札に乗車券を通す(やはり大江駅から乗る場合は買ったばかりの乗車券を数分で手放すことになる)。
  3. 列車に乗り、東名古屋港駅で降りる。精算や乗車券の回収は既に行われているためそのまま何もせず降り、駅を出て構わない。

と、他路線ではなかなか見られない独特の形態で、他では和田岬線、阪神武庫川線、東武大師線でしか見られない。

駅一覧

  • TA03 大江
常滑線は乗り換え。
築港線は5番線から発着。
築港線改札は列車が運行される時間帯しか開いていない。
近くに貯木場があるので木の臭いが凄い。

  • 名電築港
貨物駅。東名古屋港のすぐ東側にある。
貨物駅と言っても列車の向きを変えるための線路と分岐、中央の何もないスペースがあるだけ。
築港線としては大江駅と東名古屋港駅の中間駅という扱い。
前述の通り中央のスペースでは廃車車両の解体が行われる。
ここに搬入されてからトラックで搬出されるまではしばらく日数がかかるので最期の姿を見たい場合は行ってみよう。
日が合えば大江駅からの回送やクレーンでの吊り上げ、トラックでの搬出が見られる。

  • CH01 東名古屋港
終点。大江駅は築港線としてのナンバリングを持たないためCHの記号を持つ駅はここだけ。
名古屋市営地下鉄名港線の名古屋港駅とは川を挟んでかなり距離がある。
駅周辺は東レや三菱重工業の航空関連などの工場ばかりで、住居は無い。駅のすぐ近くを名古屋高速4号東海線が通っている。

駅の西側にも線路が伸び踏切もあるがホームのすぐ先で電化区間は終わっている。前述の通りこの先の線路は海外発着の車両輸送の時にしか使われないのでここを通る列車は滅多に見られない。2022年10月現在最後に使用されたのは2021年7月に行われたJR東海の海外向け中古マルチプルタイタンパー*7輸送。

周辺の見所はあのジブリ映画『風立ちぬ』にも登場した三菱重工業大江時計台。戦闘機関連の資料館も併設されている(要予約)。
時計台を見るだけならともかく資料館は9時開場なので資料館に行く場合築港線は使いにくい。

その他

過去には築港線に沿ってHSST(リニアモーターカー)の実験線が設置されており、1991年から2004年まで試験が行われた。
その試験の結果、愛知万博でも注目された愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)が開業したのである。


追記・修正は築港線ユーザーの方にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 名古屋鉄道
  • 5000系
  • 築港線
  • 電化
  • 単線
  • ワンマン運転
  • 路線シリーズ
  • HSST
  • 愛知県
  • 名古屋市
  • 甲種輸送
  • 名古屋臨海鉄道
  • ダイヤモンドクロッシング
  • 鉄道
  • 盲腸線

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年11月09日 20:41
添付ファイル

*1 項目作製者撮影。

*2 列車の停車時間や通過時刻等を表記した乗務員へ向けた時刻表である行路表としてのスタフとは関係無い。

*3 名古屋市営地下鉄の車両全てはEL120による牽引。名鉄の車両はその形式の第一編成と特別車のみ(先頭車1両と中間車1両)を追加製造した2200系30番台といった例外を除けば基本的に自走。

*4 線路も道路も走れるトラック。

*5 項目作製者撮影。

*6 廃車回送でも舞木検査場~大江まではペア運用。

*7 線路の砂利を突き固め、レールの歪みを直すための装置。