ガンダムタイプ・モビルスーツ

登録日:2023/08/31 Thu 17:29:14
更新日:2024/04/07 Sun 01:10:42
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目が二つついててアンテナはえてりゃ
マスコミがみんなガンダムにしちまうのさ!
バカのひとつおぼえだよ
監督が、こういうセリフにしろって言ったんだあ


「いや あれはガンダムだ」
「なぜでしょう」
「私がそう判断したからだ」

機動戦士ガンダム 水星の魔女
第2話 『呪いのモビルスーツ』より

ガンダムシリーズといえば、その名の通り「ガンダム」をはじめとした機動兵器「モビルスーツ」達が活躍するロボットアニメである。
シリーズとして長い歴史を重ねる中で、作品世界観も単一のものに留まらず、様々な世界で「それぞれの世界の『ガンダム』」が形作られていった。
……そんな経緯の中で、こんな疑問が出てくるのは必然だろう。


──世界観が違うのに、なんで『ガンダム』という同じ名前がいくつも出てくるの?──


『ガンダム』シリーズなのだからガンダムが出なくては始まらない、というメタ的な事情で説明はつくだろうが、そんな身も蓋もない話でファンは納得しないだろう。

なんでもかんでもガンダムの冠さえ付けりゃあ売れると思いおって……!


という訳で、特にアナザーガンダムにおいてはその世界における「ガンダム」の定義が作品毎に設定され、その定義に沿った機体を「ガンダム」と呼ぶことになっている。
それと同時に、その定義にはガンダムという「特別な名前」が付けられるに値する理由──すなわちどうして「ガンダム」は強いのか?を説明する役割も含まれていることが多い。
新シリーズが誕生する度、「この世界のガンダムはどんな存在なのか?」を考察するのはシリーズファンの楽しみのひとつである。


この項目では、作品毎に存在する「ガンダムタイプ」について、その特徴を定義に視点を向けて解説していく。
なお、作品数が膨大なため本項では【映像化した作品が存在する世界観】を取り上げるものとするが、
例外として既存作品のガンダムタイプをデザインモチーフとしている『SDガンダム』『ガンダムビルドシリーズ』については「引用元の定義に則る」ものとして除外する。

ところで。
「【目が2つついててツノが2本生えてりゃみんなガンダム】なんじゃないの?トミノだってそう言ってたし」と思ったそこのあなた。
まあぶっちゃけ大体その通りなのだが、近年はそうもいかなくなってきている。
というのも、「あの顔」をしていてもガンダムではなかったり、どう見てもガンダムの顔じゃないのに名前にガンダムを冠していたりする例が増えてきているのだ。
もちろん彼らもその世界観の定義に照らし合わせれば紛うことなき「ガンダム」なので、そのあたりも含めて解説していく。


主な分類

①過去に「ガンダム」という名のMSが存在し、以降はそれにあやかった

現状では宇宙世紀シリーズ各作品と『∀』『AGE』が該当する。
「かつて『ガンダム』という名前の強いMSがいたらしい。今我々が作っているMSも、そのガンダムとやらに負けない活躍をするはずだ」と、
いわば願掛けのような形で「過去存在したガンダム」と同じ名前と姿を持たせた、というケース。
あるいは、新造したMSの容姿がたまたま「ガンダム」に似ていて、それを見た人物が愛称として「ガンダム」と名付ける、というケースも。

特に前者は「強さの理由付け」としてもわかりやすく、
「伝説として語り継がれるほどのMSならさぞ強かったのだろうし、伝説の存在に肖る以上はそれだけの自信・自負が開発陣にはあるはず」ということになるため、
細かく「強い理由」を説明しなくてもいい、という点で便利でもある。
事実、扱いの特殊な『∀』を除けばアナザーで現状唯一の採用例である『AGE』が全体的に「わかりやすさ」を重視した作風となっていることもこのパターンを採用した理由のひとつだろう。

②一定の規格に則って作られたMSを「ガンダム」と呼んでいる

アナザーガンダムでは最も一般的な定義。
同じ技術体系や規格を指して、「この特徴を持った機体をガンダムと呼びますよ」と予め決めておくもの。
分類①が機体の「外観」に着目した分類とするならば、こちらは「技術面」に視点を向けた分類といえ、
上述した「ガンダム顔なのにガンダムじゃない」「どう見てもガンダムには見えないけどガンダム」が発生するパターンである。

複数のガンダムを作品内に登場させる際に便利なパターンで、
普通の技術では敵わないような特殊性をこの規格に組み込むことで「強さの理由付け」にもそのまま繋げることができるため、
「新たなガンダムタイプだ!…ということは、コイツも同じシステムを?」と詳しく説明せずとも視聴者に予想させることで「強キャラ感」を演出できるのだ。

ただ、「ガンダムの『定義』」に関しては明確に定められている一方で「ガンダムという単語の『語源』」には触れられないなんてことが多いため、
「で、結局のところなんで『ガンダム』って名前なの?」と訊かれると答えに窮してしまうことが多いタイプでもある。

③世界観設定上「機体名称としてのガンダム」は存在しない

現状では『SEED』シリーズのみが該当。
作中設定としては「ガンダム」という名称が付いたモビルスーツも規格も存在しておらず、劇中でも基本的に「ガンダム」と呼ばれることはない。

……が、それだとグッズ展開や商標関連で困るので一部登場人物が愛機に付けるニックネームとして「ガンダム」が出てきたり、
「ガンダム」と呼べる何かが存在しており、作中世界の外ではそうした機体を「ガンダム」と呼んでいる。「結局定義あるじゃねーか」は禁句
というわけで、実質的には分類②の特殊パターンとも解釈できる。



世界観毎の具体例

特に分類②タイプでは作品によってガンダムタイプの定義に幅があり、「広義ではガンダムタイプに含まれる」が「狭義のガンダムタイプには含まれない」機体が度々存在する。
ここでは、作中での一般的な定義のうち最も広義であるものをまず解説し、その後必要に応じて「狭義における『ガンダム』」について紹介する。

宇宙世紀シリーズ

分類:①RX-78-2の伝説的な活躍に肖って製造されたフラッグシップ機、およびRX-78シリーズに似た意匠を有する機体に付けられる愛称】

一年戦争にて「伝説のニュータイプ」ことアムロ・レイが搭乗し、鬼神の如き活躍で地球連邦軍を勝利に導いた機体「ガンダム」を始祖とし、
主に地球連邦軍側にて様々な勢力がガンダムタイプを開発・運用した。
そもそもシリーズの原点である『機動戦士ガンダム』からして「ガンダムという名前のロボットが活躍するアニメ」だったのだから、
そこから発展した作品がこのような定義になるのは必然とも言える。

基本的にはその時代における技術の粋を集めた技術実証機やスペシャル機が「ガンダム」として作られる傾向にあるものの、身も蓋もない言い方をすれば名付けた者次第。
そのため実質的には量産機のバリエーション機だったりボールにガンダムのお面を付けただけだったりと必ずしも最新鋭機だけの特権というわけでもなかったりする。
一応、作中では強化人間外観がRX-78-2とは似ても似つかない機体をガンダム判定させられる程度には具体的な定義づけができていた様子。

センチネルの頃には「General purpose Utility Non Discontinuity Augmentation Maneuvering weapon System(全領域汎用連続強化型機動兵器機構)」なるバクロニムが設定され、
一部ガンプラのデカールに使われたこともあるが、作中設定ですら後付けと言う微妙さやSEEDシリーズの展開もあり完全に黒歴史となっている。

他シリーズと比較しても、特にその象徴的な一面が強調される事が多く、
友軍はガンダムの登場に士気を高められ、逆に敵軍はガンダムを恐れ戦意を委縮させられてしまうといった、
単機で戦場に大きな影響を与える「ガンダム効果」とでも言うべき力を持つ特別な機体として扱われている。
それ故か連邦軍内ではガンダムタイプのMSは非常に機密性の高い機体とされ、上層部の許可が下りない限り無断でガンダムを開発する事は固く禁じられている。
連邦軍のMSパイロットにとって一種の憧れの的で、乗機がガンダムに似ている(特に頭部)というだけで頼もしさや誇らしさを覚える者も少なくない。
自力でガンダムそっくりの作業機をデッチあげた一般人や緊急時に頭だけガンダムに換装して自分だけの憧れのガンダムに乗った軍人もいる
逆にジオン系軍人にとっては幾度となくジオンに敗北を与えた最大の仇敵であり、怯むどころか執拗に付け狙う者もいる。

「ガンダムの顔をしている」という特徴そのものが連邦を鼓舞しジオンのトラウマを刺激するという事は双方の共通認識であり、ガンダムの名を持たずとも「ガンダム顔」をした試作機や改修機がちょくちょく作られている。
水中型ガンダムガンダムTR-1という「ガンダム顔で名前もガンダムな上に性能も高いが、出自や中身的にはあくまでジム」というものすら存在する。
ジム・スナイパーⅡがベースのペイルライダーレッドライダー等の「黙示録の四騎士」や、ジム・ストライカーがベースのストライカー・カスタムも「ガンダム顔だがあくまで物凄く強いジム」である。
シナンジュの原型機であるシナンジュ・スタインや、ネオ・ジオンから接収したドーベン・ウルフを近代化改修したシルヴァ・バレトもガンダム顔だがガンダム扱いをされない。

宇宙世紀自体が(基本的には)全て同一の世界観であり、代替わりや兵器の更新も普通に行われているため、型落ち・旧式として登場する場合も少数ながらある。*1
しかしそれでもパイロット(多くは主人公)と人機一体となり、旧式となっても他機とは違う特性を持たされている事も多いため、時には機体性能の限界を超えた強さすら発揮して強敵を撃破する例も往々にして存在する。
このように「運命じみた何かを宿している」とも受け止められており、

もガンダムに選ばれたのだと思いたい。いつもそれは結果的に必然だった。…良くも悪くも、だがな」
「ガンダムには、ふさわしい乗り手が自然と現れる」
「機体の頭部をガンダムのものにした瞬間、不思議な事が起きるんだ」

ガンダムとそのパイロットと共に戦ってきた人物は、多少たりともこのような言葉を残している。

「ガンダム神話」は一年戦争〜『閃光のハサウェイ』辺りの時代までは熱心に信奉されていたものの、
一年戦争時代の軍人がほぼ現役を退いた『F91』以降の時代になると「ああ、そういえばそんなMSがあったらしいね」程度の認識にまで印象が薄れていった。
そのためか、これ以降は最初から正式名称に「ガンダム」を付けることは減っていく。おかげでフォーミュラ系はガンダムか?というややこしい議論が生じる
また、一企業の個人が趣味で新開発したMSをガンダムっぽくしてもお咎め無く、また約一名を除いてそれが「ガンダム」という事にこだわらなかった事例もある。
一方でその後の戦いを描いた「フォーミュラー戦記0122」では主人公ベルフをはじめクルー達や本来のパイロットらもしっかり「ガンダム」と呼び、
ジェガン等他のMSとは違う機体として少なからず特別扱いされており、「F91」のフロンティアⅣの面々が良くも悪くも偏っていたことを考えると、
派閥や所属部隊などによって「ガンダム」に対する認識に温度差があったのかも知れない。*2
しかし『F91』より後の時代の『Vガンダム』ではガンダムタイプは「反抗のシンボル」と解釈されており、
ヴィクトリーガンダムを見たザンスカール兵が「真のガンダムなら(連邦の支配体制に反抗している)我らの側に立つはずだろうに!」と憤慨したり*3
「敵にガンダムがいることを認めると部下の士気に関わる」という理由で「ガンダム」と呼ぶことを命令で禁じた者まで現れるなど、
「ガンダムという名前にある重み」はまだまだ風化していないことがわかる。

…が、流石に時の流れには勝てなかったか、宇宙世紀200年代を舞台とする『ガイア・ギア』や『G-SAVIOUR』ではガンダムの名は最早完全に風化してしまったらしく、
劇中どころか文書設定や商品名を含めても「ガンダム」の名を冠するMSは存在しない。*4
見た目は典型的なガンダム顔である「Gセイバー」の「G」も、「Fセイバー」「Jセイバー」等と同様に単に「セイバーシリーズMSの開発順に応じたアルファベット」に過ぎない。
ガイア・ギアαはガンダムではないが、ツインアイタイプの顔と言うこともあってか試作機はRX-78-2に寄せたデザインになっており、
少なくとも設計者はガンダムの存在を覚えていた可能性が示唆されている。*5

なおどうしてRX-78が「ガンダム」という名前になったのかは前述の通り不明
メタ的には「ガンボーイ」「フリーダム」を組み合わせた造語であるが、宇宙世紀の人間が何を思ってその名前を名付けたかが一切明かされていない。
他のRXシリーズの名前が「ガンキャノン」「ガンタンク」と意味のある言葉である事からも、尚更何を思ってガンダムと名付けたかがわからないのである。
一説には脚のふくらはぎのくびれこそが「ダム」であるとされている。
とはいえ「ザク」「グフ」等の敵MSに対抗し単なる響き重視でつけられた名前くらいの印象でも良いかもしれないが。


未来世紀(『機動武闘伝Gガンダム』)

分類:②【ガンダムファイト参戦用モビルファイター】

前提として、この世界における「主役」であるモビルファイターは軍用機のモビルスーツとは似て非なる存在であり、
「モビルトレースシステム」というマスタースレイブ方式に近い操縦系統を採用している点で区別される。
そして、4年に1度開催される、コロニー国家間の主導権争いを兼ねた代理戦争「ガンダムファイト」に参戦するための機体として、
各国家が威信を賭けて建造するモビルファイターが、この世界における「ガンダム」である。
劇中では例外的なアルティメットガンダムも、当初はメンテナンスフリーを目指したガンダムファイト用ガンダムとして造られた。
作中におけるモビルファイターの用途自体がガンダムファイト用以外にほぼ存在していないため、基本的には「モビルファイター=ガンダム」と考えて差し支えない。*6
国家の象徴という面の強さから、ガンダムファイト国際条約のいくつかに「国家、ないし代表の保有するガンダム」について触れているものが存在する。
乱暴な例えをすると野球で言うバットやグローブ、フェンシングで言う鎧や剣と言った「競技に使う個人所有の武具、道具」の様な扱いと言っていいだろう。

世界の覇権を手にするために国を挙げて開発するだけあってその性能は折り紙付きで、
基本的にどの国のガンダムも一般的な軍用量産機程度なら軽く蹴散らせる程度の実力を備えており、
また「それだけの性能を備えたスペシャル機をロボットプロレス競技のみに使用する」という状況そのものによって、
各国の軍事予算を圧迫させ、軍拡競争に歯止めを掛ける役割も担っている。


アフター・コロニー(『新機動戦記ガンダムW』)

分類:②【ガンダニュウム合金を採用したMS】

「電気的に中性」という特性を持ち、作中における標準的な装甲材であるチタニュウム合金とは比較にならないほど高い破壊係数が特徴の素材「ガンダニュウム合金」。
もちろん装甲材として用いれば非常識なまでに堅牢な機体に仕上げられるが、武装にも用いることでビームの出力を強化できるなど、
攻守両面を支える万能素材としてのポテンシャルを誇るが、加工が難しく相応に高コストという難点も併せ持っている。

『W』ではこの素材を装甲材などに採用していることが「ガンダム」の条件であり、
この定義に照らし合わせればメリクリウス、ヴァイエイト、ビルゴ系など(小説版のみトールギス)もガンダムタイプとなる。
が、狭義においてはこの条件にウイングガンダムゼロおよび同機にルーツを持つ機体】が加わり、
本編ではオペレーション・メテオ実行用に建造された5MSとその改修機及び、ガンダムエピオンがこれに該当する。
小説版では「ガンダム」と言う単語自体、史上初のガンダニュウム合金多用MSであるトールギスの開発中の愛称であった。


アフター・ウォー(『機動新世紀ガンダムX』)

分類:②【フラッシュシステムを搭載した、地球連邦軍の決戦用MS】

元々は第一次宇宙戦争時に「フラッシュシステム」を搭載した試験機のMS名が「ガンダム」であり、
この機体に搭乗したパイロットが『X』世界において最初のニュータイプに覚醒したことから、同様のシステムを搭載するMSに「ガンダム」の名が冠されたとされる。
ちなみに、この「フラッシュシステム」とは、ニュータイプのみが使用できる特殊システムであり、
ニュータイプのパイロットが搭乗することで、ビットモビルスーツの操作やサテライトシステムの起動などが可能になる。
本作は基本的に宇宙世紀シリーズの世界観や設定を踏襲した内容となっており、アナザー系ながら宇宙世紀と共通点が多い作品なのだが、
その「『X』世界におけるファースト・ガンダム」は上述の「フラッシュシステム」を内蔵した事実上のニュータイプ用MSであるため、
本作においてガンダムタイプは、「RX-78-2の時点でΖのバイオセンサー、あるいはνのサイコミュ相当の機構を持ったハイスペックMS」だったりする。

尤も、『X』の物語は第一次どころか第七次宇宙戦争終結後の15年後の世界で、残るガンダムタイプもその第七次戦争時に開発・生産された機体だけであり、
その多くが旧連邦の手を離れていて、民間の「バルチャー」や傭兵的な「MS乗り」等が「ガンダムを手に入れれば伝説的なMS乗りになれる」とその所在を巡り、争っているが、
そもそもとして、「フラッシュシステムを搭載した旧連邦軍の決戦用MS」というガンダムの定義自体が広まっていないことに加え、
フラッシュシステムは適性が無ければ扱えない上に、使えたところでビット系の武装がほとんど失われているという現状から、
戦後世界においては、旧連邦の元NT部隊所属者や高官でもなければ、フラッシュシステムそのものを知らない者が大半であり、
「ガンダム」の名前も、「連邦製の高品質・高性能モビルスーツブランド名の一種」としか見ていない者が多い。
一方、密かに生き残っていた旧連邦の高官達は「政府再建委員会」を組織し、新たに2機のガンダムを建造。
その後、彼らが樹立した「新地球連邦政府」軍でも、この2機の「ガンダム」を運用している。
この2機は「搭乗者の問題で作中でフラッシュシステムを作動・使用する事こそなかった」ものの、フラッシュシステム自体は搭載されている。


正暦(『∀ガンダム』)

分類:①【黒歴史にたびたび登場する『白い機械人形』】

全てのガンダムシリーズが行き着く先として制作された『∀』の世界において、
「月光蝶」によって文明がリセットされる以前の歴史=黒歴史とは過去のガンダム世界の歴史である。
となれば当然「過去のガンダム」も黒歴史を知る者達によって言い伝えられており、
特に月側の民族であるムーンレィスには「宇宙移民の迫害の象徴」と認識されていた。

そんな中で現れた∀ガンダムは当初ガンダムの存在を知らなかった地球側によって「ホワイトドール」などと呼ばれていたが、
その姿を見たコレン・ナンダーが黒歴史の記憶を刺激され「ガンダム」と呼んだのが同機が作中で初めて「ガンダム」と認識された例である。
しかし当初はその奇抜すぎるデザインから月側の人間であっても∀をガンダムとするかには賛否別れていたようで、
ディアナ・ソレル「ガンダムにお髭はありますか?ありません!」とハッキリ否定している。ガンダムDX「えっ」


コズミック・イラ(『機動戦士ガンダムSEED』シリーズ)

分類:③【MSの正式名称としての「ガンダム」は存在しない。一部人物が私的に付けた愛称】

作中における設定としては、MSの正式名称に「ガンダム」が付いた機体は存在せず、
例えば主人公機であるストライクガンダムフリーダムガンダムは、作中では単に「ストライク」「フリーダム」とのみ呼称される。
ただし、主人公であり両機のパイロットであるキラ・ヤマトは、ストライクの起動時にサブモニターに表示されたOS名の頭文字「G.U.N.D.A.M.」を繋げて「ガンダム」と読んで以降、
ストライクを度々「ガンダム」というあだ名で呼ぶようになった(あくまであだ名の為、「ストライク」と普通に呼ぶシーンもある)他、
後に乗り換えたフリーダムも、ザフト製ながらストライクやその兄弟機である5機の”G”の意匠を色濃く受け継いだビジュアルをしていたため、
初めてフリーダムを見た際にストライクを連想したらしきキラは「ガンダム…?」と呟き、隣にいたラクスに「『ガンダム』の方が強そうでいいですわね」と返されている*7
同様に作中でガンダムと呼んだのはカガリ・ユラ・アスハスティング・オークレーのみで、どれほどガンダム呼びが広まっているかは不明。

このような事情があるため、プラモデルにおける商標といった作品外ではこの経緯に則って、
劇中において「『GUNDAM』と略すことのできるOSを搭載した機体」に「ガンダム」が付けられる。一部かなり無理のある略し方になっている奴もいるのは密に。
そのため、キラが搭乗したことのないMSであっても、OSが「G.U.N.D.A.M.」であれば「機体名+ガンダム」(「イージス」なら「イージスガンダム」)となる一方、
「あの顔」をしていても、劇中においてオーブ製故に搭載OSが異なるM1アストレイ等は、「ガンダム」が付かずに正式名称がそのまま用いられる。
ただし、「あの顔」をしているなど見るからにガンダム然とした風貌のMSは設定上の開発した陣営がどこであれ、概ね『GUNDAM』OSが搭載されている設定になっており、
M1アストレイやその派生機・後継機を除いて、『SEED』シリーズに登場するMSで「ガンダムっぽいのに商標上でも名前に『ガンダム』が付かない」機体はほとんどない。



ちなみに、外伝作品である『ASTRAY』シリーズでは、『X ASTRAY』から登場するキラを追うカナード・パルスがストライクと似た外観のMSを「ガンダム」と呼称しているが、
それを聞いた『ASTRAY』無印の主人公でジャンク屋のロウ・ギュールは「ガンダム?」と訊き返しており、やはり一般的には浸透していない様子。

西暦(『機動戦士ガンダム00』)

分類:②…?【GNドライヴ搭載型MS】

イオリア・シュヘンベルグが基礎理論を提唱した機関「GNドライヴ」。
稼働時にGN粒子と呼ばれる特殊粒子を生成するこの機関は、GN粒子自体が持つ通信阻害効果に加え、
質量操作による機体制御、装甲表面に散布することで防御力の向上、高濃度圧縮すればビーム兵器として使用可能……と、
機動・攻撃・防御あらゆる面で私設武装組織 ソレスタルビーイングの所有する機動兵器「ガンダム」の圧倒的な戦闘能力を支え続けた。

イオリアの真の目的などを考慮すると、元々の定義は「GNドライヴ」…正式名称「Gundam Nucleus DRIVE(ガンダムの中核のドライヴ)(以下『太陽炉』)を搭載する機動兵器」。
つまり戦闘機だろうと太陽炉さえ搭載していればガンダムであり、MSになったのは後世の開発の結果である。
更に補完として、「GNドライヴ[T(タウ)](『疑似太陽炉』)」や「大型GNコンデンサー(粒子貯蔵タンク)」が開発され、1stシーズン中盤以降に世間に普及した結果、
ガンダムの実質的な定義は「太陽炉またはその代替品を搭載したMS・MA」という形に収まった。
事実、GN-Xの登場により太陽炉搭載機同士の戦闘が発生するようになった状況を指して「ガンダム同士の戦争」と言及する場面があったり、
劇場版にてGN-X IVに擬態したELSと対峙したグラハム・エーカーが「相手がガンダムタイプとは…!」と発する場面が確認されている*10
加えてGN-X IVは開発陣が「この機体はもはやガンダムと呼ぶべきだ」と胸を張って発表する程に高性能となっており、
その主張に沿ってか見た目もガンダムに似せている(V字アンテナ、ツインアイ風の顔など)という特徴がある。*11

ただ、TVシリーズにおいては「ガンダム」は「ソレスタルビーイングが武力介入に使用する機体=テロ組織のモビルスーツ」という認識が一般的であるため、
地球の各国家群としては、ガンダムの名前はもちろん、それを彷彿とさせる姿を自軍のMSに与えるのは市民感情を考慮しても非常によろしくなかった。
そのため、2ndシーズンで発足した地球連邦は、GN-X系列に代わる新たな主力機としてガンダムらしい特徴を意図的に覆い隠したアヘッド系列を開発するなど、
自軍の太陽炉搭載MSの外見・名称から「ガンダムらしさ」をなるべく排除しようとしている描写が見られた。
事実、疑似太陽炉が普及した2ndシーズンにおいても、ガンダムにトラウマを持つルイス・ハレヴィが初めてその記憶を掘り返されたのは半壊したガンダムエクシアを見た時である。

こうした点から、00世界における「狭義の『ガンダム』の定義」としては、
【CBが武力介入用途で所有する太陽炉搭載機、あるいは武力介入仕様機のプロトタイプとなるか。

…といったように、広義・狭義のいずれを見てもかなり明確に「ガンダムの要件」が定められている世界となっているのだが、
約一名妙に話をややこしくしている*12


アドバンスド・ジェネレーション(『機動戦士ガンダムAGE』)

分類:①【伝説上のMS「ガンダム」を模して製造したMS】

MS鍛冶の名門・アスノ家に代々伝わる「救世主ガンダム」の伝説とそれをもとにした絵画が存在しており、
フリット・アスノが最初に開発したMSガンダムAGE-1は「UEを打ち倒す”救世主”」となることを願い、伝説上のガンダムを模して建造されたもの。
ある意味では宇宙世紀の定義に似ている。

その後ガンダムは何度か「代替わり」を経るものの、それらは全て「アスノ家がAGEシステムを使用して組み上げた地球連邦軍側に属するMS」であった。
しかし時代は流れ、UEことヴェイガンがガンダムAGE-3の鹵獲に成功し、そのデータを元にガンダムレギルスを建造。
同機は機体のディテールこそ従来のヴェイガン機の特徴を受け継いでいたが、頭部やカラーリングはガンダムらしい意匠で、初の「アスノ家以外が建造したガンダム」となった。
しかし、これは見方を変えれば「ヴェイガンも"救世主ガンダム”の偶像を求めていた」と考えることができ、
カラーリングがTV版のトリコロールから「火星の赤」に変更されているMOE版のレギルスは、よりその印象が強くなっている。

なお、アスノ家に代々伝わる「伝説の救世主ガンダム」そのものについては、地球とヴェイガンの戦争が完全に終結した後年に、
件の絵画を基に、フリットによって「ザ・ガンダム」という名称で建造再現されている。
但し、絵画から読み取れた情報には不鮮明な部分も多く、その不足分の情報をガンダムAGE-1等から補い置き換えているため、
フリットが再現した「ザ・ガンダム」が絵画の救世主ガンダムと完全にイコールというわけではないらしい。

また、AGE世界に伝わる「伝説の救世主ガンダム」とは、『AGE』の舞台となる「アドバンスド・ジェネレーション」以前の歴史において、
幾度となく繰り返し起こった戦争で活躍した「白いMS」のことであるとされる。
ガンダムを含めたそれらの戦争や兵器のデータはEXA-DBという巨大データベースに封印されたため、軍にも民間にも表向きは残っていないのだが、
アスノ家に伝わるAGEデバイス内にはかつてのデータが残っており、それが元になって生まれたのがAGE-1であるという。


リギルド・センチュリー(『ガンダム Gのレコンギスタ』)

分類:②?【「ヘルメスの薔薇の設計図」のうち「G系統」に属する設計図に沿って製造されたMS】

RC世界の前身である宇宙世紀時代の技術が遺されているという資料が「ヘルメスの薔薇」であり、
そこに記された設計図のうち「G系統」に属する機体は「G系」と称され、同設計図から産み出された機体の中でも特別な位置付けとして認識されている。

「ヘルメスの薔薇」が宇宙世紀の技術であるならば、「G系」の「G」とはすなわちガンダムを指していると考察でき、劇中でもG-セルフを指して「ガンダム」と呼ぶ場面が存在している。
実際にG系MSはその多くが商品展開時に「ガンダム」の名を与えられている。モノアイ顔で誰がどう見てもガンダムの顔ではないG-ルシファーも商品展開上では「ガンダム」である。
ただし、ガンダム顔かつ型番もG系なカバカーリーはなぜか「ガンダム」と呼ばれない。そのくせ、作中の概念的にはれっきとした「ガンダム」なので本当にややこしい。

……が、設定上では「G系」と「ガンダム」を結びつける記述は存在しておらず
商品展開上で「ガンダム」が関されているMSも作中設定としては一貫して「ガンダム」を外した名称で存在している。
ジット団の機体に至っては、「G-アイオーン」なら「ジャイオーン」と言った具合に「ガンダム」を意味する「G-○○」がそのまま発音の中に溶け込んだネーミングがなされており、
ジロッドやジーラッハのような見た目も名前も全くガンダムに見えないが、ガンダムタイプの定義は何故か満たしているというパターンさえある。
こうした事情から、上記の分類パターン全てに該当する可能性があるというシリーズでもトップクラスにややこしい事態となっている。


ポスト・ディザスター(『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』)

分類:②【厄祭戦時に製造されたMSフレーム「ガンダム・フレーム」を採用した機体】

作中時間より300年前に勃発した、モビルアーマーとの人類の存亡を掛けた戦い「厄祭戦」。
その最中に誕生したMSフレームのひとつ「ガンダム・フレーム」は、
この世界におけるMSの主動力炉「エイハブ・リアクター」を2基並列同期稼働することで規格外の出力を獲得。
人機一体の機動を可能とする制御システム「阿頼耶識システム」と共に鬼神の如き活躍を残し、後の統治機構ギャラルホルンの礎となった。
とはいえ本質的には旧式のワンオフモデルに近い機種でかつ複雑な構造で整備性などには劣る機体であり、グレイズ系などには構造簡略化や統合などによる整備性や兵站的分野において劣る部分も有る。
だが自慢のパワーは今なお現行機を凌駕しており、鉄華団が劇中の躍進劇を見せた背景にはガンダムを3機も入手出来た幸運が要因のひとつであることは疑いようがないだろう。

しかし、「エイハブ・リアクターの2基並列同期稼働」は技術的な制約が非常に多く、戦後はその生産性の問題から全く生産されなくなる。
結果としてガンダム・フレームの総生産数は72機と少数に留まり、物語開始時点で残存が確認できているのは僅か26機。
その残った機体もギャラルホルン各家が保管している機体を除けば散り散りになってしまっており、厄祭戦で活躍を終えた時のまま太陽系のどこかに埋もれたままだったり、
あらゆる宇宙海賊や民兵団を渡り歩く内に改造を繰り返され原型を留めない姿に変わり果てたりと、数奇な運命を辿った機体も少なくない。
ガンダムフレームはすべてがソロモン72柱の名を冠しているが、追加武装で名称が付け加えられたり、偽装のために別名を付けられていることもある。


アド・ステラ(『機動戦士ガンダム 水星の魔女』)


作中世界に存在する情報元素「PMET(パーメット)」を用いて機械義肢と人体を神経接続し、
もとの肉体と同じように扱えるようにする人体拡張技術「GUND」。
それを軍事転用し「GUNDフォーマット」に発展させようという動きがすべての始まりである。
GUNDをMSに適用する……すなわちMSを人体の延長として、意のままに操れるというメリットに目をつけたのだ。
果たしてGUNDフォーマット採用機=GUND-ARMはまるで人間そのままのような動きを実現するに留まらず、
ドローン兵器「GUNDビット」に従来とは比較にならない機動性を与えることにも成功した。

しかし、18m級の機械巨人をそのまま人体と直接接続することには構造上無理があり
要求される膨大なPMETの流入により、稼働状況によってはパイロットが廃人化、最悪死に至るという重大な欠陥が生まれてしまった。
かくして、『水星』世界におけるガンダムは『死の呪い』と引き換えに絶大な性能をもたらす『魔女のモビルスーツ』という烙印を押され、
「禁忌の技術」と呼ばれ、呪われたMSとして扱われてしまうのだった……。
作中でも「ガンダムに乗り続ければ戦死しなくとも遅からずPMET流入で死ぬ」という扱い・認識であり、
強化人士5号は「全力出したら死ぬんだよ、こっちは」とガンダムに乗るリスクについてノレアに語り、
終盤にとある人物がシュバルゼッテでグエルを襲撃した際にも、グエルは相手の身を案じて「ガンダムなんてもう乗るな…」と言っている。
何故か上記の欠陥がみられないエアリアルを除けば、ほぼ全てのガンダムがそういう機体という事なのだろう。

メタ的な観点では「GUND」は魔術にまつわる言葉である「Gandr(ガンド)」の捩りであり、
そして、GUNDが兵器(ARM)になって「ガンド・アーム」、縮めて「ガンダム」……と、「ガンダム」という名称に(メタ・作中両面で)特有の意味付けを行っているのも特徴。




追記・修正は過去存在したガンダムにリスペクトを表し、「G系統」の設計図に沿ってガンダム・フレームとGUNDフォーマットを採用し、
主機関にはGNドライヴを、制御機構にはモビルトレースシステムとフラッシュシステムと「G.U.N.D.A.M.」OSを搭載し、
装甲材にはガンダニュウム合金を採用した「ガンダムとは付かない機体」を建造してからお願いします。

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最終更新:2024年04月07日 01:10

*1 旧式化のイメージを持たせないためか、ガンダムタイプは短命である事が多い

*2 敵であるオールズモビル=旧ジオン系の末裔は旧公国軍やネオ・ジオンらと同様ガンダムに対し激しい敵意を見せており、彼らのガンダム像はこの時代においても変わっていない事がうかがえる

*3 無論開発側のリガ・ミリティアからすればギロチンをちらつかせる祭政一致体制の強要への反抗であり噴飯ものの言い草だが

*4 『G-SAVIOUR』は作品自体の特殊性を鑑みてか、企画書制作と小説版執筆を担当した河原よしえ氏は、小説版のあとがきにおいて同作を「ガンダムワールドに属してはいるが、シリーズからは独立した『モビルスーツ作品』」とする見解を語っている

*5 ガイア・ギアαは作中でガンダムと散々戦ってきたシャア自らが機体の命名を行ったことが示唆されている。メタ的な事情としては、原作者である富野は『ガイア・ギア』が連載当時はサンライズと著作権で揉めていたことからガンダムというワードが使えなかったが主役機には「ガ」と付く単語は使いたかったことから代わりに「ガイア・ギア」というワードになったことを明かしている

*6 技術的には「ディマリウム合金という素材を用いた機体をガンダムと呼ぶ」と定義されている。そのため、「MFではないガンダム」も世界観上は存在しうる

*7 ただし、これ以降は正式名称である「フリーダム」の名で呼んでおり、キラの中では「ガンダム=ストライク」の認識であると思われる。

*8 この機体は例外的に、他の機体がガンダム表記される媒体であっても「アカツキ」となっていることが多い。

*9 デュートリオンビーム伝送装置による電源供給システム搭載のため。

*10 元々はダブルオーライザーに擬態したELSを見ての台詞で、結局その展開は劇場版では採用されなかったが、GN-Xも「ガンダム」なので台詞変更はされなかったとも。

*11 西暦のMS工学では「理想的なセンサー配置を追及するとガンダムヘッドのそれに行きつく」と設定されており、アルヴァアロンやイノベイターの使うガ系の機体も素の頭部はガンダムフェイスと言われている

*12 もっとも、彼もきちんと『彼なりの定義』に沿ってガンダムという言葉を使っているのだが、肝心の定義がかなり突飛なので……。詳しくはそれぞれのリンク先を参照のこと。