ジェンナーロ・ガットゥーゾ

登録日:2010/06/11 (金) 17:20:02
更新日:2022/12/16 Fri 22:27:48
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ジェンナーロ・イヴァン・ガットゥーゾ(Gennaro Ivan Gattuso)は、イタリア出身の元サッカー選手で同国代表選手。
現在はナポリで監督をしている。

愛称は、リンギオ(イタリア語での闘犬の唸り声の意)、狂犬、ブレイブハート、リーノ、ガッツ。



●経歴

セリエC1(3部)のボローニャFCの誘いを蹴った後セリエB(2部)ASペルージャのプリマヴェーラ(下部組織)に入団する。
プリマヴェーラのリーグで優勝に貢献しアピール、U-18イタリア代表にも選出され1995-96シーズンに2部ながらも若干17才でデビュー。
翌年チームもセリエA(1部)昇格しセリエAでもデビューした。

その春彼に転機が訪れる。
意外にもスコットランドの強豪レンジャーズが、当時物議を醸したボスマン判決を利用し移籍金ゼロでガットゥーゾの獲得に乗り出す。
ガットゥーゾ曰わく今の30倍の給料を払うと言われたらしい。
勿論ペルージャ側も手塩にかけた逸材を手放すつもりも無く、
またイタリアのように自国にトップレベルのリーグがある選手が他国のマイナーリーグに移籍するのは稀だったが、
ガットゥーゾが移籍の意思を見せスコットランドリーグに挑戦する。

移籍証明の発行が遅れた為、翌1997-98からの出場となるがシーズンの間スタメンに名を連ねる。
巨躯なスコットランド人の中で小柄なイタリア人がプレーする姿と36試合に出場し7得点という結果などでファンの心を掴む。

しかしレンジャーズでの2シーズン目1998-99シーズン途中、突如イタリア復帰を決意し周囲を騒がせる。
これは新監督がガットゥーゾのポジション右SBに変更しようとしたこと、
またU-21イタリア代表に選出されていたガットゥーゾはA代表を強く志しており、
スコットランドでは目に留まり難いためイタリアに復帰するようイタリアサッカー連盟が助言したためと思われる。
1998年10月に当時セリエAに所属していたサレルニターナ・スポルトへ移籍する。
レンジャーズでの活躍は実にあっさりしたものだった。

サレルニターナ・スポルトでは最終節でセリエB降格という屈辱を味わうも、本人は高い評価を受けており、
ASローマへの移籍を保険にACミランからの納得するオファーを待つ、という状態だった。
その後ACミランではスクデットを2回(03-04、10-11)、チャンピオンズリーグ優勝2回(02-03、06-07)
代表、06年ドイツW杯優勝
このどれにも大きく貢献している。

一時期は大きな怪我や全力プレーを続けてきたことに起因する疲労で調子を落としていたが、その後はそれを帳消しにするハイパフォーマンスを披露している。

2010年南アフリカW杯でのプレーを最後に代表を引退。
さらに11-12シーズンを最後に、13年間所属したミランを退団。
ミランへのお別れのメッセージは以下の通りである。

俺の決断を告げた後、ガッリアーニ(CEO)はファウスト・レアーリの“Mi Manchi”*1を流してくれた。
明日、ミラネッロで行われるプレス・カンファレンスで話す事になると思う。
来年はカルチョから離れることになるだろう。
俺の旅立ちは『また、会おう』にすぎない。そして、来年また話し合う事になる。
今は何も計画がない。他の選手達に場所を譲るちょうど良いタイミングなんだ。

その後、スイスのシオンへ移籍、13年2月、選手兼任監督に就任したが、5月に解任。
そのまま現役引退の形となった。

監督業はどうなのかというと、パレルモ、OFIクレタ(ギリシャ)、いずれもシーズン途中で監督を辞めている。
15-16シーズンに就任したピサではチームを7年ぶりのセリエB昇格に導いたのも束の間、会長と契約の件で揉めて辞任……
したのだが、中東の投資会社に買収されたことで復帰することに。
次シーズンのピサは久々のセリエBでありながら、リーグ最少失点の36を誇った。
大健闘……かと思いきや、得点はわずか23という極端さで、たった1年でレガ・プロ(3部)に逆戻り。シーズン終了後に退任した。

17年11月、ミランの下部組織からトップチームの監督に昇格。
順位こそ前年度と同じ6位だったものの、コッパでは準優勝している。
18-19シーズンは、インテルに勝ち点1の差で及ばずCL出場権を逃し、その後退任が発表された。

19年12月にはナポリの監督に就任。コッパでナポリの宿敵ユベントスを破り、監督として初めてのタイトルを獲得したのであった。



●プレースタイル

闘争心に溢れた守備姿勢が最大の特徴。
ピッチを駆け回り、両手を振って観客を鼓舞し、時には相手選手の胸倉を掴みにかかる。
守備の役割が大きく一見地味な印象も与えるが、激情を迸らせたタックルに窮地を救うボール奪取、
仲間のピンチには、全力で駆けつけ、泥にまみれ鼻息荒く疾走する。

精神的にも体力的にもタフであり、1試合でも十分過ぎるほどハードワークするがそれを年間40試合こなす。
延長戦となり足をつる選手が多い中、相手ゴール前から自軍ゴール前まで全力疾走で守備に戻る彼の姿に、相手だけでなく味方選手まで驚かせることも多い。
さらに恐るべきことに、試合序盤で右膝十字じん帯を断裂しながらも、試合終了までプレーし続けたり、
その後の手術で骨が異常に硬すぎたため、専用器具の先が折れてしまったという、冗談のようなエピソードまであったりする。*2


初期は「アイロンを足に履いている」と評されるほどの足下の拙さが守備一辺倒のプレースタイルと際立って批判の的にもなった。
しかしACミランの戦術の成熟に伴う中盤での独自の機能がそれらをカバーするほど次第に評価されていった。

ACミランでは周囲の選手がほぼテクニシャンなだけに、一際浮いた存在ではあるが、当時の監督カルロ・アンチェロッティに
「私が攻撃的なサッカーを志向できるのはひとえに彼のおかげで、彼が汚い仕事をしてくれるから、我々は言ってみればバランスの悪いシステムを採用する事ができる」
と語らせるほど、重要な位置付けにある。


●ピルロとの関係

代表でもクラブでも中盤でコンビを組むアンドレア・ピルロとは、相乗効果が働く良き関係にあり、
互いの欠点を埋め合わせるシステム的な関係に止まらず、
ガットゥーゾは攻撃面での技術も(ガットゥーゾなりにではあるが)ピルロに感化されたかのような向上を見せており、
ピルロの中盤でのお株を奪うような、ラストパスやミドルシュートも時折り見せ、
またピルロも守備面でガットゥーゾの影響を受けていると思われる。


●ドイツでの奇行

彼は時折奇行で度々周囲を騒がす。
特にイタリア代表として優勝に貢献したドイツW杯ではそれが顕著だった。

GLチェコ戦
フィリッポ・インザーギがゴールを決める。

ガットゥーゾ
「あのボールは、俺が運んだんだーーー!!」

自分の事を世界一のボールトランスファーと言ってくれた、リッピ監督の元に走る。

そこで熱いハグかと思われたが、彼がチョイスしたのは何故か喉輪






ガットゥーゾ「彼ちょっと引いてたよ」

決勝T1回戦
オーストラリア戦の終了間際PK獲得。
ガットゥーゾは前回大会イタリア戦で疑惑のジャッジがあった韓国を率いていた因縁のあるオーストラリア代表監督ヒディングの前へ。
彼の前でチョロチョロして何度か小突かれたがシカト。
ゴールが入るとガッツポーズ







ガットゥーゾ
「彼と抱き合いながら、PKを見ていたんだ」

決勝前夜
ガットゥーゾ
それにしても、決勝の前夜は最悪だった。あんなことは生まれて初めてさ。
興奮して寝付けなかっただけでなく、28回もトイレに行く羽目になったんだ。
どうにもこうにもダメでな。
最後は氷を持ってきて、それをアソコにこう、どこだかは正確に言えないが、とにかくアソコにこうやってうまーくあてがって、
ヒンヤーリしたところで眠りについたってわけだ。それが朝の7時。
わずかな睡眠時間で、よくも決勝を走り切ったもんだぜ。

優勝後
実況「ガットゥーゾが芝生くってる」

更に同僚と相撲をとるためユニフォームパンツとスパイクを脱ぐ。
パンツだけど恥ずかしくないもん






そして決勝のインタビュー
フランスのような素晴らしいチームを破って優勝したことを誇りに思う。
僕らは、チャンピオンにふさわしいチームだ。
僕は(チームメートに)こう言ってきたんだ。
“フランスは五ツ星ホテルだ。僕たちは一ツ星ホテルかもしれない。
だけど、僕たちは海を持っている。自分たちだけの海を”とね。

格好いい事言ってるようだが、当然フランスも海に面している国です。


その後カンナバーロの奨めにより坊主に。


●エピソード

・特技は英語
レンジャーズ在籍時に覚えたもので、自身の申告によれば、イタリア人サッカー選手の中ではかなりうまい部類らしい。
しかしデイビッド・ベッカム曰く完全に自己流とのこと。

・女性ファンが多いイタリア代表の中でダントツの男性ファン数を誇るナイスミドル
それに反比例して女性ファンは少ないが 最近では女性ファンも増えつつある。

・イタリアのドッキリ番組でターゲットにされた事がある
内容はレストランの駐車場に止めたガットゥーゾの車を別の同じ車種、同じ色の車と入れ変え、その車の内装を大きな犬がボロボロにするというもの。
ボロボロにされた車を見て自分の車がやられたと思った彼は激怒し、駐車場の管理人(彼は犬の飼い主の役)を蹴りを入れながら激しく追いまわした。

・2006-07CL決勝進出を果たした喜びのあまりチームメイト全員対してキスをした
さすがにこの行為にはキャプテン、パオロ・マルディーニはじめ全員から大目玉を食らった。

・子供の頃周りは、翼くんのファン、GKは若林のファンだったが、彼だけ石崎ファンだった

・アンチェロッティ監督のACミランでの最終戦の後、別れを惜しんで声を出して泣いた




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最終更新:2022年12月16日 22:27

*1 タイトルは「あなたがいなくて寂しい」を意味する

*2 http://web.archive.org/web/20100511024008/http://news.livedoor.com:80/article/detail/3982084/