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*サイキックフォース 【さいきっくふぉーす】 |ジャンル|対戦アクション| |対応機種|アーケード(FX-1A)| |販売・開発元|タイトー| |稼働開始日|1996年4月(無印)((コピーライトではロケテスト版も含めた初出年として1995表記。))&br()1996年7月(EX)| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''| 本項では調整を行ったアッパーバージョン((システムの調整、回避バリアの追加、ラスボスの「キース」を最初から使用可))の『''サイキックフォースEX''』も適宜解説する。判定は共に良作。 ---- #contents ---- **概要 キャラクターを「飛行能力を持つ超能力者」と設定し、格闘ゲームから「重力」の概念を取り払った斬新な対戦アクションゲームである。~ 全方位のフィールドとゲージ制の技で従来の対戦格闘とは全く仕組みの異なる駆け引きのルールを持つ。 美形キャラクターと悲劇的なストーリー設定も魅力で、当時の格闘ゲームとしては珍しく多くの女性ファンを獲得した。 **特徴 ***ルール 他のゲームには見られない、非常に独特なシステムを持つ。 -''フィールド'' --ゲームの舞台は四方を「結界(以下「壁」)」と呼ばれる正方形の壁に囲まれたエリアで、この中をプレイヤーは重力の制限なく360°自由に飛び回りながら相手を攻撃する。 --奥行きは無いため、俯瞰視点の2D形式と捉えると分かりやすい。 --相手の攻撃ではね飛ばされたキャラは壁に叩き付けられることがあり、叩き付けられたキャラはダメージを受け、一瞬無防備に硬直する。この状態からさらに壁にぶつかるとダウン状態になり落下する。落下中は無敵である。((この時のみ全キャラ共通で重力が影響する)) -''超能力技'' --格闘ゲームにおける必殺技のようにコマンド入力で発生するが、入力方向に対する縛りがなく、例えば「←→→」というコマンドであれば「↓↑↑」でも「→←←」でも発生するし、「レバー一回転」という入力であれば、始点がどこであろうと一回転さえさせれば発生する。 --技ごとに「サイコゲージ」というゲージを一定量消費し、サイコゲージの回復には時間がかかるため無制限に連発することは出来ない。 --一部の技は発動後に特定のコマンドを入力することによって性質を変化させることが出来る。 -''サドンデス'' --本ゲームはタイムアップや相討ちした場合、対戦時には強制的に「サドンデス」へ突入する。CPU戦のみ体力の多いほうが勝ちとなる。 --サドンデス時は結界が狭まり、体力・サイコゲージが0という状態で再スタートする。わずか10秒間のカウントの中、先に攻撃を決めたほうがラウンドを取ることになる。緊迫感あふれる勝負であり、「このまま逃げ切りで勝ちだな」という安直なことはできない。 --「どれだけ体力差があろうがサドンデスでワンパン食らって負け」という可能性があるので、タイムアップが近づくと体力勝ちしているほうこそ積極的に攻めて相手を仕留めないと安心できない。逆に負けている側は「逃げ切ってサドンデスに賭ける」か「攻めにくる相手を返り討ちにする」かの判断が重要になる。 --このため、本作の対戦では「勝っているほうが追いかける」「負けているほうが逃げる」という真逆の光景がたびたび見られる((ほとんどの格闘ゲームではタイムアップが近付くと「勝っているほうが逃げる」「負けているほうが追いかける」図式になる。))。 --サドンデスでもタイムアップになった場合、または相討ちになった場合は両者ともにラウンドを取った扱いになる。このため、先にラウンドを取得していたプレイヤーが絶対有利。 ***操作・システム -''基本操作'' --レバー+弱攻撃(以下「弱」)、強攻撃(以下「強」)、ガード(以下「ガ」)の三ボタン制。 --弱、強ボタンは接近戦中は打撃攻撃に、距離が離れるとノーマルショット攻撃になる。 --ノーマルショットは発生が早いが、後述するクイックダッシュにはじかれる弱点がある。 --無印では真正面にしか撃てないが、EXからはレバー操作と同時に行う事で撃つ方向を変える事ができる。 //強ショットが遠距離時にボタン一つで打てるようになったのは2012から、レバー操作で任意の方向に発射できるのはEXからです。 -''打撃・コンボ'' --キャラクターが接近すると攻撃ボタンが打撃攻撃に変わり、規定のボタン組み合わせでコンボが発生する。 --コンボは全キャラ共通で「コンボクイック(弱、弱、弱、弱)」「コンボロング(弱、弱、弱、強)」「コンボショート(弱、強)」「コンボミドル(弱、弱、強)」の四種類。 --後者2つは、締めの強攻撃をキャンセルし超能力技を繰り出す「コンボスペシャル」に派生可能。これを利用し、打撃コンボで壁に叩き付けてから超能力技を当てる、という行動を習得するのがダメージ効率を高める第一歩となる。 -''ダッシュ'' --''クイックダッシュ'' ---弱+強で発動。相手に向かって一直線に突進する。 ---発生中はノーマルショットをはじける他、打撃、超能力技、投げで任意のタイミングで停止できる。隙をついた接近手段として強力だが、クイックダッシュ中に攻撃を受けると常時カウンター扱いとなるため、リスクも高い。 --''ノーマルダッシュ'' ---弱+強+任意のレバー方向で、入力方向に向かってダッシュする。 ---クイックダッシュよりも遅いが通常移動よりは遙かに速い。主に相手の攻撃を回避するのに使用する。ただし、途中で止まることが出来ず、そこが相手にとって絶好の攻撃チャンスとなる。 -''ガード'' --''ノーマルガード'' ---ガードボタン単独押しで発動。普通の格ゲーのガードとほぼ同じ性能で、背中が無防備であるほか超能力技を受けると半分のダメージを食らって吹き飛ぶ。 --''バリアガード'' ---ガードボタンを押しながらレバー一回転で発動。自機の周囲をボール状のバリアで包み、全ての方向からの攻撃を完全にガードする。バリアを崩す方法は基本的に存在せず、完全に無敵((ウォンの超能力技「完全な世界」で時を止められている最中のみ、バリアガードを無効化される。))。ただしサイコゲージを急速に消費する。もちろん、サイコゲージがなければバリアを発動することができない。 ---触れた相手をはじくこともでき、はじいた側が先に動ける。バリアで一度はじいてから攻めに行く、という戦術も有効。 --''回避バリア'' ---EXから追加。敵の攻撃を受けて吹き飛ばされている最中に←→+ガで発動。 ---他の格ゲーでいう「受け身」動作に緊急回避を足したもので、普通のバリアガードよりも早く展開し、コンボスペシャルを含む様々な追い打ちを未然に防ぐ事ができる。 ---代償として発動するためにはサイコゲージを一定量必要とし、足りなければ発動しない。そのため、常に回避バリアを展開できるだけのサイコゲージを残す立ち回りが要求される。 -''つかみ技'' --弱+ガで発生。いわゆる投げ技。 --ノーマルガードを無視して投げられる他、判定が自機を中心とした円形であるため、相手が自分の背後にいても投げることが出来る。 -''サイコチャージ'' --弱+強+ガで発動、ボタンを離すと中断。 --サイコゲージを急速に回復する。ボタンを放せば直ちに操作可能になるためスキこそ無いが、空っぽからフルチャージには数秒かかるため回復させるタイミングは吟味する必要がある。 ---- **評価点 ***独特の駆け引き -「''フィールドはぶつかると無防備になる壁に囲まれている''」「''キャラクターは攻撃を避けやすい360°移動''」「''超能力技は出す前も出した後もスキが非常に大きい''」「''攻撃を完全に防ぐバリアガードの存在''」 これらを考慮に入れるなら、プレイヤーがとるべき行動は一つしかない。即ち、「''相手を壁に叩きつけて、追加ダメージを狙う''」である。 --そこで多用されるのが、クイックダッシュからの打撃コンボである。ボタン連打で容易に出すことが出来、一気に相手を壁まで運ぶ。組み合わせによっては超能力技に繋げることも可能。普通ならこのコンボは回避バリアに防がれてしまうが、壁にぶつかる距離であれば、回避バリアも間に合わない。 --従って、このゲームは壁を背負った側が圧倒的に不利である。当然、背負った側はダッシュで逃げようとするが、方向の自由が利くノーマルダッシュは中断することが出来ない。すなわちノーマルダッシュはそれ自体がスキであるが、通常移動では逃げることなど不可能である。しかし、逃げる側は無理に壁から離れなくても相手のクイックダッシュ一回分の距離さえとれればそれでいいわけで……。 -このように、壁や相手との距離を常に意識した、「間合い・位置の奪い合い」が本作の駆け引きのキモである。「壁に連続でぶつかると気絶し、無敵状態になる」という仕様のおかげで常に攻守は入れ替わり、一方的に叩きのめされるという状況も少ない。プレイヤーは自キャラの有利な間合いを保てるよう、常に移動し続けなければならず、その移動が時として決定的なスキとなる。壁と自機との距離を正確につかめないとそもそもコンボがつながらないキャラもおり、的確な距離認識が要求される。 ***多彩な技 -上下の区別無く360°自由に動ける平面空間、というフィールド構成を最大限に生かした多様な超能力技が存在する。 --特に、設置型キャラの存在感の強さが特徴的。接触するとダメージを受ける機雷、うまく配置すればお手玉のように連続ヒットする光線を反射させるビットなど。光を操るキャラ「エミリオ」は性能的にも人気的にもこのゲームを象徴するキャラの一人である。 --他にも、重力場や風を起こして相手の移動を制限する、任意の方向に一直線に炸裂する等の技を駆使し、プレイヤーは自分の戦術を自在に編み出すことが可能。 ***差し合い・読みあい重視の面白さ -前述の通り、追い打ちを防ぐ回避バリア、気絶状態では無敵という仕様の存在により、コンボはどこかのタイミングで必ず途切れ、ハメ技はシステム上絶対に存在しない。 --実は『無印』のみ、背面からバリアで相手を弾くことによって非常に危険なコンボができたが、『EX』からはきっちりと修正されている。 -また、このゲームはコンボによるマイナスのダメージ補正が非常に大きい。打撃コンボは攻撃ボタン連打で容易に出せるが、あくまで超能力技を確実に当てるための補助でしかない。超能力技は"生で当てる"…コンボを介さず直に当てる方がダメージ効率は良いのだが、超能力技の隙は全体的に大きく、大技ほどその方向は顕著になる。 --そのためには1フレーム単位での技やモーションの研究が必須であり、かつ相手がスキを見せるよう誘導する技術・試合状況を絡めた心理面の駆け引きなど、様々な要因を考慮しなければならない。リスクを背負いつつも高い壁を乗り越え、威力の高い超能力技を生でたたき込んだときの快感は何物にも代え難い。 ***魅力的なキャラ -「迫害される超能力者」という暗い舞台設定を背景に、90年代のタイトーらしい悲劇的なストーリーが展開される。倒した相手は殺したものとするなど、その路線は徹底されている。 --登場するキャラはアニメ的な美男美女であるが、特に主人公バーンとその親友にしてラスボスのキースの、「かつての親友同士が道を違えて対立する」という設定や、エミリオの「悲劇的な過去を背負ったショタ系美少年」という設定が、王道ながらも特に婦女子の心を直撃した。 --結果、このゲームは当時の格闘ゲームとしては異例なほどの女性人気を獲得し、女性プレイヤーも多く見られた。 ---- **賛否両論点 -キャラクターバランスは極端に悪いわけではないが、良いとも言えない。本作はコンボ補正・壁補正が弱く、打撃威力が安定して高いためワンチャンスを作れるキャラクターが圧倒的に有利。 --バーン ---平均以上のダッシュ性能・ショットを兼ね備え、その上で打撃(発生・判定面・隙などの総合面)が全キャラ中でも一二を争うほど強い。ダメージ効率からロマンコンボまで幅広くカバーし、安定した強さで主人公らしくそつなく戦える。 --玄真 ---2012の玄信と同様、設置型の超能力技である連炎符が凶悪。呪縛殺も高誘導かつスピードが速く、本作ではバリアガード以外の避け手段が貧弱なこともあり、結果として火力が高い。 ---ダッシュ性能が悪いため無条件に強いキャラではないのだが、空間を制する立ち回りにおいて連炎符は極めて有能で、これに対策できないとひたすら一方的に嬲られる事になる。 --ウォン ---機動力に劣る火力偏重の性能で上級者向けのキャラクターではあるが、それを補ってあまりある超能力技…というより戒めの洗礼が高火力・巨大な判定で非常に強力。実は打撃もバーンと並べるぐらい性能が良く、正面切っての殴り合いもかなりのもの。 ---サイコゲージの調整に失敗すると上記のキャラにズタボロにされる等弱点も強烈だが、攻めている間は滅法強い。 --ウェンディー ---軽量級筆頭。上級者同士の対戦であればリーチの短さや打撃力の低さ、遠距離戦の対応力の低さといった弱点が表面化するのだが、そうではないマッチングでは猛威を振るう。 ---特に通常ダッシュが機敏で、それを更に加速させるシルフィードダンスを纏うとフィールドを縦横無尽に駆け回る。こうなるとよしんば勝利までの手数が1つ2つ増えたところで大したデメリットにならない。 -上記の裏を返すと、チャンスを作れないキャラはとことん不利である。 --ブラド ---最弱候補筆頭。ダッシュ性能が平均以下、火力は普通、超能力技は火力も立ち回りにも使い難いという三重苦を背負ったキャラ。 ---基本戦術がアステロイドベルトをまとった突撃しかないのに、この技自体、隙だらけ・サイコゲージ消費が多すぎる・解除条件が緩すぎるといった難点を抱えている。技の中では使いやすい部類のメガプレッシャーもバーンが似たような技を持っている他、ヒット後には攻めの圧をかけられず(一応結界の上の方で決めれば、「アステロイドベルトを装着する」プレッシャーを与えることができるが)仕切り直しになってしまう難点がある。 ---唯一つかみ技から打撃コンボに繋げられる特性も回避バリアが間に合ってしまうため大した長所に成り得ず(そもそもキャラ性能のせいでつかみ技を決める事自体が…)、さらにはつかみ技が2ヒット構成になっているため、壁を挟むと1ヒットしかせずダメージが落ちる等とにかく不利ばかりが目立つ。 --ゲイツ ---火力はあるがデカい・遅いという重量級らしい性能だが、機動力の低さは立ち回りの弱さに直結し、さらに耐久力があるわけではないので受け身になると一方的に狩られてしまう。 ---切り札となる「パイルバンカー」は追加入力タイミングこそ難しいものの、確かに高威力なのだが…飛び道具としては高誘導だが遅い・外すと隙が膨大なために迂闊には使えず、結局「プラズマカノン」を当ててからのコンボとして使うのがメインとなってしまう。そして、「プラズマカノン」は当てるだけでコンボ補正がかかってしまう((80%の基底補正がかかる。))ので、折角のパイルバンカーも威力減しやすい。 ---- **問題点 -''システムを理解するまでの壁が高い。''それは上記の説明を読んでいる内に納得させられるだろう。 --インストカードの限られた情報では「そもそも何をすればいいか」など分かるはずもなく、レバガチャでは相手に攻撃を当てること自体が困難。「'''遠くから弾をぺしぺし撃つだけのゲーム'''」と誤解したプレイヤーの多くが即座に席を立った。 ---ある雑誌のレビューでは、「シューティング的な対戦ゲーム。格ゲーマーには合わない」「大味で駆け引きが感じられない」と、見事に全く理解されなかった。 ---実際には接近戦主体で、突き詰めると駆け引き、読み合いが9割のゲームである。その点を理解して紹介していた雑誌は、かの『ゲーメスト』をはじめごく少数であった。 --とりあえずコンボと「とにかく壁に叩きつけろ」を理解したプレイヤーに対しても、「駆け引きの内容が地味で分かりづらい」というシステム自体の欠点が足を引っ張った。他のプレイヤーを手本にしようとしても、プレイヤーたちが必死に有利な位置を確保しようと移動を繰り返す様は、「フラフラと無駄に動き回っている」としか理解されなかったのである……。 -余談のキャラクター人気の弊害も少々含まれるが、PS互換基板で勝利時の顔面アップは『[[FIST]]』程ではないにしろかなり違和感がある。特に、アップ度の大きいウエンディは引いてしまう程の破壊力。 --当時は対戦ツールであるという認識が薄かったので新製品はプロジェクター仕様の50インチに入れられる事も多く、ドアップの粗さが際立つ場合も。 -当時の3D格闘の「物語やエンディングは多く語らない」風潮があったが、その中でも本作はアッサリ具合が頭二つ飛び抜けている。 --『[[バーチャファイター]]』や『[[鉄拳>鉄拳シリーズ]]』等は物語が語れていなくとも「格闘技の大会」と割り切れるため割と受け入れられるが、本作は大会では無い「命を取るか、取られるか」の世界観であるため、エンディングまで行ってもモヤモヤ感が残る。((後に戦う順番までストーリーがある事がプレステ移植版以降で発覚するので、アーケード版のアッサリさが目立つ。そのストーリーも下記の通り割と稚拙。)) ---- **総評 システムの解りづらさ、当時のゲーマーの価値観とのずれといったハンデを背負いながらも、このゲームの独自性は今なお色褪せることがない。~ 特に、システムを引き継いだ続編『[[サイキックフォース2012]]』は対戦の盛んな店舗では少なくとも2001年頃まで大会が度々開かれ、長期に渡って支持されるゲームとなった。~ 勿論、続編が出なかったことも理由の一つではあるのだろうが、元のゲームの完成度が高くなければこれほど長い期間の研究に堪えることなどできなかっただろう。~ 亜流作品の発生にはほとんど繋がらなかったことが惜しまれる。~ ---- **余談 -キャラクター人気を押し出した故の弊害 --前述の通りこのゲームは女性プレイヤーを多く獲得した、が、同時に「キャラだけが目当てで実際のゲームをプレイしないファン」も数多く発生してしまった。とある目撃証言によると、「サイキックフォースは好きで同人活動やってますがゲームの方はプレイしてません。だってクソゲーじゃないですか」と堂々と語るファンもいたそうである((ここまで来るとファン活動としてのモラルにも関わる問題である。))。 ---その結果、続編の『2012』はロケテストした店舗が導入を控えるなど商業的に失敗、また導入した店舗においても、乱入禁止のストーリーモードを搭載したことや、新設計された基板の壊れやすさが仇となりインカムも低迷。シリーズは三作で打ち切られることとなった。 ---この「キャラだけが目当てで実際のゲームをプレイしないファン」問題については、後の『式神の城』シリーズ((開発は『ガンパレード・マーチ』などを手がけたアルファ・システムだが、販売は同じくタイトー))でも再発してしまった。 --まだまだ萌えが市民権を得ていなかった当時、アニメ絵のキャラクターデザインは格ゲーマーにそっぽを向かれ、女性はなかなかプレイヤーになってくれず、システムも解りづらい。結局このゲームの魅力は「解る人にだけ解る」代物になってしまったのであった。 ---アニメ色が強く、外連味が効きすぎているキャラクターデザインは現在でもネタにされる時があるが、当時はなおさら風当たりが強かったのである。 ---キースは聖悠紀の「超人ロック」と見た目が思い切りかぶっている。とあるインタビューで、聖悠紀がサイキックフォースとの関係を聞かれ(質問者の意図は不明だが)「何も関係は無い」と否定する始末であった。 --尤も、同時期に女性人気を獲得した『[[THE KING OF FIGHTERSシリーズ]]』はゲームとしても人気だったわけだが…。 ---- *移植 **サイキックフォース |対応機種|プレイステーション|&amazon(B00005OURW)| |発売日|1996年10月4日|~| |定価|6,090円|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| -PS版はタイトルこそ『無印』準拠だが、ゲーム内容は『EX』をベースにアレンジしており、家庭用オリジナル要素として新規にOPとED、ストーリーモードを追加した作品になっている。 --AC版は元々PS互換基板なので遜色のない移植になっている。『EX』からの新システム・新技もきちんと収録。 --OPは主題歌付きのアニメとなっているが、歌詞に盗作が発覚しCD収録時に差し替えられてしまった。((盗作の被害にあった曲は明言されていないが、おそらくBUCK-TICKの「悪の華」だと思われる。歌詞に全く同じ箇所が数カ所あるのが確認できる)) -キャラクター性、ストーリー性を前面に押し出したゲームにもかかわらず、ストーリーモードのテキストは今見ると全体的に稚拙。 ---- **サイキックフォース COMPLETE |対応機種|プレイステーション2|&amazon(B000BVUY4U)| |発売日|2005年12月29日|~| |定価|7,140円|~| |判定|BGCOLOR(khaki):''劣化ゲー''|~| //↑2015/03/21で「劣化移植・劣化リメイク・劣化ローカライズ」が「劣化ゲー」に統一とのことのため、判定表記を「劣化移植」→「劣化ゲー」に変更 //基本情報表があると「良作wiki掲載作品=良作」とみなされる面があるので、本文ではっきり「劣化移植」と書かれている本項の表はCOします。もし復帰させるなら、分類(良作・劣化移植・分類なし)を明確にしてください。 -PS2対応。PS版サイキックフォース、DC版『サイキックフォース2012』およびその調整版『2012EX』をまとめて収録した完全版。~ ……という触れ込みだったが、実際には''不具合だらけの劣化移植''である。~ 以下はこのうち『初代』に限定した問題点について述べる。[[同時収録の『2012』関連については別項を参照>サイキックフォース2012#id_afd2aa2b]]。 --特に致命的なのが''基本中の基本であるコンボスペシャルが使用できなくなっている''、という点である。~ コンボキャンセル超能力技が不可能なため、やれる事は単発で超能力技をぶっぱなすか、コンボで1セット殴るかのみと、戦略が大幅に狭まった。 ---タイトーに苦情を申し入れる者、署名運動を起こす者も現れたが、タイトー側の返事は、「マニュアルの間違いであり仕様である」とのことであった。他の格ゲーで言えば、「''ジャンプ飛び込みから攻撃を出せません''」と言っているようなものなのだが、どうしろと?~ 仮にその返答通り意図的に仕様変更したのだとしても、オリジナルから戦略を大幅に変えてしまう行為であり、「完全版」を謳う作品なのにどういう意図で変更したのか説明がつかない。 --グラフィックについてもPS版より光源がきつくなっており、プレイに支障が出るほどではないものの白飛びが酷くなっている。 -PS版のOP曲については盗作騒動の影響で修正後のCD版のものに差し替わっている他、アニメOPムービーだけは唯一PS版よりも滑らかになっており、一応は本作でしか見られないものとなっている。 -上記の件から、少なくとも初代については''同じPS2上で遊ぶなら過去のPS版を直接遊んだほうが大幅に良い''という状態になっている。 -スクエニによる子会社化直前で色々な意味で末期だった当時のタイトーを象徴する移植であった。 ---- *その後の展開 -『2012』以降、シリーズ展開は完全に打ち切られており、システムを流用した版権ゲームがいくつか出ているだけである。PS3で三作目の企画もあったそうだが、タイトーのスクエニ吸収に伴って消滅してしまったようである((Twitterより。情報そのものの真偽は不明。))。 --システム上アニメとの相性が良く、CLAMPの『X』、PEACH-PITの『ローゼンメイデン』のキャラゲーがテレビアニメと並行して発売されている。が、出来はお察しといったところである。 -派生作品として『&b(){サイキックフォース パズル大戦}』が出ている。ゲーム内容は『[[パズルボブル]]』そのままで、それをサイキックフォースのキャラに置き換えたもの。 --ストーリーは本編の陰鬱さとは真逆の和やかなものにパロディアレンジされており、イラストなども多く収録されたファンディスク的な作品。 --さらに本作限定の隠しキャラとして、本編では没となった設定を再利用した「鈴木正人(仮)」というキャラが登場している。ただしオマケであるため彼にストーリーは無く、クリアすると没案イラストの設定資料が解禁される。 -前述の女性向けを意識してか、OVAもリリースされた。ストーリーは本作の数年前を舞台にしたもの。 -亜流作品にも後継作にも同人のクローンゲームにも、対戦動画にすら恵まれない不幸なゲームである。もはや完全に忘れられつつあるが、このまま消滅させるには実に惜しい作品である。今ならばゲームアーカイブスで移植版が遊べるので、一度経験してみてはいかがだろうか。ツボにさえはまればグイグイ引き込まれていくはずである。問題は、対戦相手が見つかる可能性が著しく低いことであるが……。 *余談 -360度レンジでは無いが、サイキックフォースの先駆けの様なゲームとして、かのコブラチームの「バスタード」がある。こちらはサイキックフォースがよく「遠距離でペチペチ」と誤解されている物そのもののクソゲーであるが…。 -PS版の主題歌とは別に、ソニアステージのテーマに歌詞を乗せた楽曲がある。((ゲームミュージックCDに収録。))70年代アニメ風の歌詞でソニアの立場を巧く取り入れているが、いかんせんダサい。 --なお、この曲はDAMで配信されているのでカラオケでも歌える。 --この歌詞のダサさは後のマイトステージのテーマに歌詞を乗せた楽曲にも通じる。 -バーチャファイター等の格闘ゲームは最初からそうなのだが横方向からの視点であまり目立たない所で、サイキックフォースは常に相手をロックオンしているシステム。プレイヤーが自発的では無いが、「ゼルダの伝説」のZ注目の「見えない鎖で繋がっている」考え方を先取りしている。 -サイキックフォース稼働時に論争というか話題になったのは''「店舗によってボタン配置が違う」''。 --厳密には並び自体は「ガード・弱・強」で同じであるが、ストⅡで言うところの「弱P中P強P並び」(インスト並び、横一直線)か、「弱K弱P中P並び」(バーチャ並び、Gが一段下)の2種類が主な配置。~ インスト通りに導入した店は前者、ゲーム好き又はゲーマー側に配慮できる店は後者が多い傾向。 ---バーチャ並びは『[[バーチャファイター]]』シリーズ等に慣れたプレイヤーからすると「直感的に遊べる」と好評だったが、一方で特に絵柄から入った女性プレイヤー等の初心者はインスト通りでないとやりにくい等の声もあった。 --この配置割れは『2012』まで続き、直営店の一部ではインスト並びに直させられている店がある等混乱があったが、後々の2012全国大会のレギュレーションに後者の''バーチャ並び徹底''がしっかりと明記された事により、「インストは前者だがオフィシャルでは後者」という捻れ状態となった。 ----
*サイキックフォース 【さいきっくふぉーす】 |ジャンル|対戦アクション| |対応機種|アーケード(FX-1A)| |販売・開発元|タイトー| |稼働開始日|1996年4月(無印)((コピーライトではロケテスト版も含めた初出年として1995表記。))&br()1996年7月(EX)| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''| |>|CENTER:''サイキックフォースシリーズ''&br; ''1/EX'' / [[2012>サイキックフォース2012]] / [[COMPLETE>サイキックフォース COMPLETE]] | 本項では調整を行ったアッパーバージョン((システムの調整、回避バリアの追加、ラスボスの「キース」を最初から使用可))の『''サイキックフォースEX''』も適宜解説する。判定は共に良作。 ---- #contents ---- **概要 キャラクターを「飛行能力を持つ超能力者」と設定し、格闘ゲームから「重力」の概念を取り払った斬新な対戦アクションゲームである。~ 全方位のフィールドとゲージ制の技で従来の対戦格闘とは全く仕組みの異なる駆け引きのルールを持つ。 美形キャラクターと悲劇的なストーリー設定も魅力で、当時の格闘ゲームとしては珍しく多くの女性ファンを獲得した。 **特徴 ***ルール 他のゲームには見られない、非常に独特なシステムを持つ。 -''フィールド'' --ゲームの舞台は四方を「結界(以下「壁」)」と呼ばれる正方形の壁に囲まれたエリアで、この中をプレイヤーは重力の制限なく360°自由に飛び回りながら相手を攻撃する。 --奥行きは無いため、俯瞰視点の2D形式と捉えると分かりやすい。 --相手の攻撃ではね飛ばされたキャラは壁に叩き付けられることがあり、叩き付けられたキャラはダメージを受け、一瞬無防備に硬直する。この状態からさらに壁にぶつかるとダウン状態になり落下する。落下中は無敵である。((この時のみ全キャラ共通で重力が影響する)) -''超能力技'' --格闘ゲームにおける必殺技のようにコマンド入力で発生するが、入力方向に対する縛りがなく、例えば「←→→」というコマンドであれば「↓↑↑」でも「→←←」でも成立するし、「レバー一回転」という入力であれば、始点がどこであろうと一回転さえさせれば成立する。 --技ごとに「サイコゲージ」というゲージを一定量消費し、サイコゲージの回復には時間がかかるため無制限に連発することは出来ない。 --一部の技は発動後に特定のコマンドを入力することによって性質を変化させることが出来る。 -''サドンデス'' --本ゲームはタイムアップや相討ちした場合、対戦時には強制的に「サドンデス」へ突入する。CPU戦のみ体力の多いほうが勝ちとなる。 --サドンデス時は結界が狭まり、体力・サイコゲージが0という状態で再スタートする。わずか10秒間のカウントの中、先に攻撃を決めたほうがラウンドを取ることになる。緊迫感あふれる勝負であり、「このまま逃げ切りで勝ちだな」という安直なことはできない。 --「どれだけ体力差があろうがサドンデスでワンパン食らって負け」という可能性があるので、タイムアップが近づくと体力勝ちしているほうこそ積極的に攻めて相手を仕留めないと安心できない。逆に負けている側は「逃げ切ってサドンデスに賭ける」か「攻めにくる相手を返り討ちにする」かの判断が重要になる。 --このため、本作の対戦では「勝っているほうが追いかける」「負けているほうが逃げる」という真逆の光景がたびたび見られる((ほとんどの格闘ゲームではタイムアップが近付くと「勝っているほうが逃げる」「負けているほうが追いかける」図式になる。))。 --サドンデスでもタイムアップになった場合、または相討ちになった場合は両者ともにラウンドを取った扱いになる。このため、先にラウンドを取得していたプレイヤーが絶対有利。 ***操作・システム -''基本操作'' --レバー+弱攻撃(以下「弱」)、強攻撃(以下「強」)、ガード(以下「ガ」)の三ボタン制。 --弱、強ボタンは接近戦中は打撃攻撃に、距離が離れるとノーマルショット攻撃になる。 --ノーマルショットは発生が早いが、後述するクイックダッシュにはじかれる弱点がある。 --無印では真正面にしか撃てないが、EXからはレバー操作と同時に行う事で撃つ方向を変える事ができる。 //強ショットが遠距離時にボタン一つで打てるようになったのは2012から、レバー操作で任意の方向に発射できるのはEXからです。 -''打撃・コンボ'' --キャラクターが接近すると攻撃ボタンが打撃攻撃に変わり、規定のボタン組み合わせでコンボが発生する。 --コンボは全キャラ共通で「コンボクイック(弱、弱、弱、弱)」「コンボロング(弱、弱、弱、強)」「コンボショート(弱、強)」「コンボミドル(弱、弱、強)」の四種類。 --後者2つは、締めの強攻撃をキャンセルし超能力技を繰り出す「コンボスペシャル」に派生可能。これを利用し、打撃コンボで壁に叩き付けてから超能力技を当てる、という行動を習得するのがダメージ効率を高める第一歩となる。 -''ダッシュ'' --''クイックダッシュ'' ---弱+強で発動。相手に向かって一直線に突進する。 ---発生中はノーマルショットをはじける他、打撃、超能力技、投げで任意のタイミングで停止できる。隙をついた接近手段として強力だが、クイックダッシュ中に攻撃を受けると常時カウンター扱いとなるため、リスクも高い。 ---EXでは性能が強化され、若干ながら移動した相手を追尾する事が可能。 --''ノーマルダッシュ'' ---弱+強+任意のレバー方向で、入力方向に向かってダッシュする。 ---クイックダッシュよりも遅いが通常移動よりは遙かに速い。主に相手の攻撃を回避するのに使用する。ただし、途中で止まることが出来ず、そこが相手にとって絶好の攻撃チャンスとなる。 -''ガード'' --''ノーマルガード'' ---ガードボタン単独押しで発動。普通の格ゲーのガードとほぼ同じ性能で、背中が無防備であるほか超能力技を受けると半分のダメージを食らって吹き飛ぶ。 --''バリアガード'' ---ガードボタンを押しながらレバー一回転で発動。自機の周囲をボール状のバリアで包み、全ての方向からの攻撃を完全にガードする。バリアを崩す方法は基本的に存在せず、完全に無敵((ウォンの超能力技「完全な世界」で時を止められている最中のみ、バリアガードを無効化される。))。ただしサイコゲージを急速に消費する。もちろん、サイコゲージがなければバリアを発動することができない。 ---触れた相手をはじくこともでき、はじいた側が先に動ける。バリアで一度はじいてから攻めに行く、という戦術も有効。 ---超能力技を防いでいる間はサイコゲージの消費が停止するので、多段ヒットする技を防いでも途中から食らってしまうということはない。「EX」ではガード中もサイコゲージが減るようになったが、残り1%の状態で停止する。 --''回避バリア'' ---EXから追加。敵の攻撃を受けて吹き飛ばされている最中に←→+ガで発動。 ---他の格ゲーでいう「受け身」動作に緊急回避を足したもので、普通のバリアガードよりも早く展開し、コンボスペシャルを含む様々な追い打ちを未然に防ぐ事ができる。 ---代償として発動するためにはサイコゲージを一定量必要とし、足りなければ発動しない。そのため、常に回避バリアを展開できるだけのサイコゲージを残す立ち回りが要求される。 -''つかみ技'' --弱+ガで発生。いわゆる投げ技。 --ノーマルガードを無視して投げられる他、判定が自機を中心とした円形であるため、相手が自分の背後にいても投げることが出来る。 --EXでは通常投げの間合いが広くなった。 -''サイコチャージ'' --弱+強+ガで発動、ボタンを離すと中断。 --サイコゲージを急速に回復する。ボタンを放せば直ちに操作可能になるためスキこそ無いが、空っぽからフルチャージには数秒かかるため回復させるタイミングは吟味する必要がある。 ---- **評価点 ***独特の駆け引き -「''フィールドはぶつかると無防備になる壁に囲まれている''」「''キャラクターは攻撃を避けやすい360°移動''」「''超能力技は出す前も出した後もスキが非常に大きい''」「''攻撃を完全に防ぐバリアガードの存在''」 これらを考慮に入れるなら、プレイヤーがとるべき行動は一つしかない。即ち、「''相手を壁に叩きつけて、追加ダメージを狙う''」である。 --そこで多用されるのが、クイックダッシュからの打撃コンボである。ボタン連打で容易に出すことが出来、一気に相手を壁まで運ぶ。組み合わせによっては超能力技に繋げることも可能。普通ならこのコンボは回避バリアに防がれてしまうが、壁にぶつかる距離であれば、回避バリアも間に合わない。 --従って、このゲームは壁を背負った側が圧倒的に不利である。当然、背負った側はダッシュで逃げようとするが、方向の自由が利くノーマルダッシュは中断することが出来ない。すなわちノーマルダッシュはそれ自体がスキであるが、通常移動では逃げることなど不可能である。しかし、逃げる側は無理に壁から離れなくても相手のクイックダッシュ一回分の距離さえとれればそれでいいわけで……。 -このように、壁や相手との距離を常に意識した、「間合い・位置の奪い合い」が本作の駆け引きのキモである。「壁に連続でぶつかると気絶し、無敵状態になる」という仕様のおかげで常に攻守は入れ替わり、一方的に叩きのめされるという状況も少ない。プレイヤーは自キャラの有利な間合いを保てるよう、常に移動し続けなければならず、その移動が時として決定的なスキとなる。壁と自機との距離を正確につかめないとそもそもコンボがつながらないキャラもおり、的確な距離認識が要求される。 ***多彩な技 -上下の区別無く360°自由に動ける平面空間、というフィールド構成を最大限に生かした多様な超能力技が存在する。 --特に、設置型キャラの存在感の強さが特徴的。接触するとダメージを受ける機雷、うまく配置すればお手玉のように連続ヒットする光線を反射させるビットなど。光を操るキャラ「エミリオ」は性能的にも人気的にもこのゲームを象徴するキャラの一人である。 --他にも、重力場や風を起こして相手の移動を制限する、任意の方向に一直線に炸裂する等の技を駆使し、プレイヤーは自分の戦術を自在に編み出すことが可能。 ***差し合い・読みあい重視の面白さ -前述の通り、追い打ちを防ぐ回避バリア、気絶状態では無敵という仕様の存在により、コンボはどこかのタイミングで必ず途切れ、ハメ技はシステム上絶対に存在しない。 --実は『無印』のみ、背面からバリアで相手を弾くことによって非常に危険なコンボができたが、『EX』からはきっちりと修正されている。 -また、このゲームはコンボによるマイナスのダメージ補正が非常に大きい。打撃コンボは攻撃ボタン連打で容易に出せるが、あくまで超能力技を確実に当てるための補助でしかない。超能力技は"生で当てる"…コンボを介さず直に当てる方がダメージ効率は良いのだが、超能力技の隙は全体的に大きく、大技ほどその方向は顕著になる。 --そのためには1フレーム単位での技やモーションの研究が必須であり、かつ相手がスキを見せるよう誘導する技術・試合状況を絡めた心理面の駆け引きなど、様々な要因を考慮しなければならない。リスクを背負いつつも高い壁を乗り越え、威力の高い超能力技を生でたたき込んだときの快感は何物にも代え難い。 ***魅力的なキャラ -「迫害される超能力者」という暗い舞台設定を背景に、90年代のタイトーらしい悲劇的なストーリーが展開される。倒した相手は殺したものとするなど、その路線は徹底されている。 --登場するキャラはアニメ的な美男美女であるが、特に主人公バーンとその親友にしてラスボスのキースの、「かつての親友同士が道を違えて対立する」という設定や、エミリオの「悲劇的な過去を背負ったショタ系美少年」という設定が、王道ながらも特に婦女子の心を直撃した。 --結果、このゲームは当時の格闘ゲームとしては異例なほどの女性人気を獲得し、女性プレイヤーも多く見られた。 ---- **賛否両論点 -キャラクターバランスは極端に悪いわけではないが、良いとも言えない。本作はコンボ補正・壁補正が弱く、打撃威力が安定して高いためワンチャンスを作れるキャラクターが圧倒的に有利。 --バーン ---平均以上のダッシュ性能・ショットを兼ね備え、その上で打撃(発生・判定面・隙などの総合面)が全キャラ中でも一二を争うほど強い。ダメージ効率からロマンコンボまで幅広くカバーし、安定した強さで主人公らしくそつなく戦える。 --玄真 ---2012の玄信と同様、設置型の超能力技である連炎符が凶悪。呪縛殺も高誘導かつスピードが速く、本作ではバリアガード以外の避け手段が貧弱なこともあり、結果として火力が高い。 ---ダッシュ性能が悪いため無条件に強いキャラではないのだが、空間を制する立ち回りにおいて連炎符は極めて有能で、これに対策できないとひたすら一方的に嬲られる事になる。 --ウォン ---機動力に劣る火力偏重の性能で上級者向けのキャラクターではあるが、それを補ってあまりある超能力技…というより戒めの洗礼が高火力・巨大な判定で非常に強力。実は打撃もバーンと並べるぐらい性能が良く、正面切っての殴り合いもかなりのもの。 ---サイコゲージの調整に失敗すると上記のキャラにズタボロにされる等弱点も強烈だが、攻めている間は滅法強い。 --ウェンディー ---軽量級筆頭。上級者同士の対戦であればリーチの短さや打撃力の低さ、遠距離戦の対応力の低さといった弱点が表面化するのだが、そうではないマッチングでは猛威を振るう。 ---特に通常ダッシュが機敏で、それを更に加速させるシルフィードダンスを纏うとフィールドを縦横無尽に駆け回る。こうなるとよしんば勝利までの手数が1つ2つ増えたところで大したデメリットにならない。 -上記の裏を返すと、チャンスを作れないキャラはとことん不利である。 --ブラド ---最弱候補筆頭。ダッシュ性能が平均以下、火力は普通、超能力技は火力も立ち回りにも使い難いという三重苦を背負ったキャラ。 ---基本戦術がアステロイドベルトをまとった突撃しかないのに、この技自体、隙だらけ・サイコゲージ消費が多すぎる・解除条件が緩すぎるといった難点を抱えている。技の中では使いやすい部類のメガプレッシャーもバーンが似たような技を持っている他、ヒット後には攻めの圧をかけられず(一応結界の上の方で決めれば、「アステロイドベルトを装着する」プレッシャーを与えることができるが)仕切り直しになってしまう難点がある。 ---唯一つかみ技から打撃コンボに繋げられる特性も回避バリアが間に合ってしまうため大した長所に成り得ず(そもそもキャラ性能のせいでつかみ技を決める事自体が…)、さらにはつかみ技が2ヒット構成になっているため、壁を挟むと1ヒットしかせずダメージが落ちる等とにかく不利ばかりが目立つ。 --ゲイツ ---火力はあるがデカい・遅いという重量級らしい性能だが、機動力の低さは立ち回りの弱さに直結し、さらに耐久力があるわけではないので受け身になると一方的に狩られてしまう。 ---切り札となる「パイルバンカー」は追加入力タイミングこそ難しいものの、確かに高威力なのだが…飛び道具としては高誘導だが遅い・外すと隙が膨大なために迂闊には使えず、結局「プラズマカノン」を当ててからのコンボとして使うのがメインとなってしまう。そして、「プラズマカノン」は当てるだけでコンボ補正がかかってしまう((80%の基底補正がかかる。))ので、折角のパイルバンカーも威力減しやすい。 ---- **問題点 -''システムを理解するまでの壁が高い。''それは上記の説明を読んでいる内に納得させられるだろう。 --インストカードの限られた情報では「そもそも何をすればいいか」など分かるはずもなく、レバガチャでは相手に攻撃を当てること自体が困難。「'''遠くから弾をぺしぺし撃つだけのゲーム'''」と誤解したプレイヤーの多くが即座に席を立った。 ---ある雑誌のレビューでは、「シューティング的な対戦ゲーム。格ゲーマーには合わない」「大味で駆け引きが感じられない」と、見事に全く理解されなかった。 ---実際には接近戦主体で、突き詰めると駆け引き、読み合いが9割のゲームである。その点を理解して紹介していた雑誌は、かの『ゲーメスト』をはじめごく少数であった。 --とりあえずコンボと「とにかく壁に叩きつけろ」を理解したプレイヤーに対しても、「駆け引きの内容が地味で分かりづらい」というシステム自体の欠点が足を引っ張った。他のプレイヤーを手本にしようとしても、プレイヤーたちが必死に有利な位置を確保しようと移動を繰り返す様は、「フラフラと無駄に動き回っている」としか理解されなかったのである……。 -余談のキャラクター人気の弊害も少々含まれるが、PS互換基板で勝利時の顔面アップは『[[FIST]]』程ではないにしろかなり違和感がある。特に、アップ度の大きいウエンディは引いてしまう程の破壊力。 --当時は対戦ツールであるという認識が薄かったので新製品はプロジェクター仕様の50インチに入れられる事も多く、ドアップの粗さが際立つ場合も。 -当時の3D格闘の「物語やエンディングは多く語らない」風潮があったが、その中でも本作はアッサリ具合が頭二つ飛び抜けている。 --『[[バーチャファイター]]』や『[[鉄拳>鉄拳シリーズ]]』等は物語が語れていなくとも「格闘技の大会」と割り切れるため割と受け入れられるが、本作は大会では無い「命を取るか、取られるか」の世界観であるため、エンディングまで行ってもモヤモヤ感が残る。((後に戦う順番までストーリーがある事がプレステ移植版以降で発覚するので、アーケード版のアッサリさが目立つ。そのストーリーも下記の通り割と稚拙。)) ---- **総評 システムの解りづらさ、当時のゲーマーの価値観とのずれといったハンデを背負いながらも、このゲームの独自性は今なお色褪せることがない。~ 特に、システムを引き継いだ続編『[[サイキックフォース2012]]』は対戦の盛んな店舗では少なくとも2001年頃まで大会が度々開かれ、長期に渡って支持されるゲームとなった。~ 勿論、続編が出なかったことも理由の一つではあるのだろうが、元のゲームの完成度が高くなければこれほど長い期間の研究に堪えることなどできなかっただろう。~ 亜流作品の発生にはほとんど繋がらなかったことが惜しまれる。~ ---- **余談 -キャラクター人気を押し出した故の弊害 --前述の通りこのゲームは女性プレイヤーを多く獲得した、が、同時に「キャラだけが目当てで実際のゲームをプレイしないファン」も数多く発生してしまった。とある目撃証言によると、「サイキックフォースは好きで同人活動やってますがゲームの方はプレイしてません。だってクソゲーじゃないですか」と堂々と語るファンもいたそうである((ここまで来るとファン活動としてのモラルにも関わる問題である。))。 ---その結果、続編の『2012』はロケテストした店舗が導入を控えるなど商業的に失敗、また導入した店舗においても、乱入禁止のストーリーモードを搭載したことや、新設計された基板の壊れやすさが仇となりインカムも低迷。シリーズは三作で打ち切られることとなった。 ---この「キャラだけが目当てで実際のゲームをプレイしないファン」問題については、後の『式神の城』シリーズ((開発は『ガンパレード・マーチ』などを手がけたアルファ・システムだが、販売は同じくタイトー))でも再発してしまった。 --まだまだ萌えが市民権を得ていなかった当時、アニメ絵のキャラクターデザインは格ゲーマーにそっぽを向かれ、女性はなかなかプレイヤーになってくれず、システムも解りづらい。結局このゲームの魅力は「解る人にだけ解る」代物になってしまったのであった。 ---アニメ色が強く、外連味が効きすぎているキャラクターデザインは現在でもネタにされる時があるが、当時はなおさら風当たりが強かったのである。 ---キースは聖悠紀の「超人ロック」と見た目が思い切りかぶっている。とあるインタビューで、聖悠紀がサイキックフォースとの関係を聞かれ(質問者の意図は不明だが)「何も関係は無い」と否定する始末であった。 --尤も、同時期に女性人気を獲得した『[[THE KING OF FIGHTERSシリーズ]]』はゲームとしても人気だったわけだが…。 -本作より以前の1992年に稼働した同じタイトーのアクションゲーム『ライディングファイト』の主人公の名前が「バーン(1P)」と「キース(2P)」。外見は本作とは全く異なるが。 ---- *サイキックフォース(PS) |対応機種|プレイステーション|&amazon(B00005OURW)| |発売日|1996年10月4日|~| |定価|6,090円|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| -タイトルこそ『無印』のままだが、ゲーム内容は『EX』をベースにアレンジされており、家庭用オリジナル要素として新規にOPとED、ストーリーモードを追加した作品になっている。但し、キースは無印と同じく隠しキャラ扱い。 --AC版は元々PS互換基板なので遜色のない移植になっている。『EX』からの新システム・新技もきちんと収録。 --OPは主題歌付きのアニメとなっているが、歌詞に盗作が発覚しCD収録時に差し替えられてしまった。((盗作の被害にあった曲は明言されていないが、おそらくBUCK-TICKの「悪の華」だと思われる。歌詞に全く同じ箇所が数カ所あるのが確認できる)) -キャラクター性、ストーリー性を前面に押し出したゲームにもかかわらず、ストーリーモードのテキストは今見ると全体的に稚拙。 ---- *その後の展開 -2005年にPS2にて『[[サイキックフォース COMPLETE]]』として続編とともに移植されているが、本作に関しては劣化移植となっている。 --詳細は同項目を参照。 -『2012』以降、シリーズ展開は完全に打ち切られており、システムを流用した版権ゲームがいくつか出ているだけである。PS3で三作目の企画もあったそうだが、タイトーのスクエニ吸収に伴って消滅してしまったようである((Twitterより。情報そのものの真偽は不明。))。 --システム上アニメとの相性が良く、CLAMPの『X』、PEACH-PITの『ローゼンメイデン』のキャラゲーがテレビアニメと並行して発売されている。が、出来はお察しといったところである。 -派生作品として『&b(){サイキックフォース パズル大戦}』が出ている。ゲーム内容は同社のパズルゲーム『[[パズルボブル2]]』のシステムを流用しており、それを本作のキャラクターに置き換えたもの。 --初代の9人全員がデフォルメ姿で参戦。ストーリーは本編の陰鬱さとは真逆の和やかなものにパロディアレンジされており、パズルモードをクリアすると解禁されていく多数の描き下ろしイラスト、おまけディスクには目覚まし・留守電等のキャラクターボイス、次回作や他タイトーゲームの特典ムービーなども収録されたファンディスク的な作品。 --さらに本作限定の隠しキャラクターとして、本編では没となった設定を再利用した京都の次元刀使いの「鈴木正人(仮)」が登場している。ただしオマケであるため彼にストーリーは無く、パズルモードをクリアすると彼を含む3名の没キャラクター((鈴木の他、鎧を纏った巨体の分子分解使い、イケメンのダークフォース使い。どちらも名前は設定されていない。))の描き下ろしイラストが解禁される。 -前述の女性向けを意識してか、OVAもリリースされた。ストーリーは本作の数年前を舞台にしたもの。 -亜流作品にも後継作にも同人のクローンゲームにも、対戦動画にすら恵まれない不幸なゲームである。もはや完全に忘れられつつあるが、このまま消滅させるには実に惜しい作品である。今ならばゲームアーカイブスで移植版が遊べるので、一度経験してみてはいかがだろうか。ツボにさえはまればグイグイ引き込まれていくはずである。問題は、対戦相手が見つかる可能性が著しく低いことであるが……。 *余談 -360度レンジでは無いが、サイキックフォースの先駆けの様なゲームとして、かのコブラチームの「バスタード」がある。こちらはサイキックフォースがよく「遠距離でペチペチ」と誤解されている物そのもののクソゲーであるが…。 -PS版の主題歌とは別に、ソニアステージのテーマに歌詞を乗せたボーカルアレンジ楽曲がゲームミュージックCDに収録されている。70年代アニメ風の歌詞でソニアの立場を巧く取り入れているが、いかんせんダサい。 --なお、この曲はDAMで配信されているのでカラオケでも歌える。 --この歌詞のダサさは後のマイトステージのテーマに歌詞を乗せた楽曲にも通じる。 -バーチャファイター等の格闘ゲームは最初からそうなのだが横方向からの視点であまり目立たない所で、サイキックフォースは常に相手をロックオンしているシステム。プレイヤーが自発的では無いが、「ゼルダの伝説」のZ注目の「見えない鎖で繋がっている」考え方を先取りしている。 -サイキックフォース稼働時に論争というか話題になったのは''「店舗によってボタン配置が違う」''。 --厳密には並び自体は「ガード・弱・強」で同じであるが、『[[ストリートファイターII]]』で言うところの「弱P中P強P並び」(インスト並び、横一直線)か、「弱K弱P中P並び」(バーチャ並び、Gが一段下)の2種類が主な配置。~ インスト通りに導入した店は前者、ゲーム好き又はゲーマー側に配慮できる店は後者が多い傾向。両者を折衷したような「弱K中P強P並び」(Gだけ一段下、弱P部分が空)も一部見られた。 ---バーチャ並びは『[[バーチャファイター]]』シリーズ等に慣れたプレイヤーからすると「直感的に遊べる」と好評だったが、一方で特に絵柄から入った女性プレイヤー等の初心者はインスト通りでないとやりにくい等の声もあった。 --この配置割れは『2012』まで続き、直営店の一部ではインスト並びに直させられている店がある等混乱があったが、後々の2012全国大会のレギュレーションに後者の''バーチャ並び徹底''がしっかりと明記された事により、「インストは前者だがオフィシャルでは後者」という捻れ状態となった。

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