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*…いる! 【いる】 |ジャンル|アドベンチャー |&amazon(B000069S3X)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|タカラ|~| |開発元|ソフトマシン|~| |発売日|1998年3月26日|~| |定価|5,800円|~| |廉価版|THE BEST タカラモノ:1999年8月5日/2,940円|~| |判定|なし|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 高校生である主人公が、自分の学校で起きた怪事件を解決するというホラーアドベンチャー。タイトルや舞台設定から、一見すると心霊モノの学園ホラーのようだが、実際はクトゥルー(クトゥルフ)神話をベースとしている。 ---- **特徴 -フルポリゴンの校舎内を探索する。主人公の一人称視点で描かれている為、主人公自身の姿は一部のシーンを除いて基本的に表示されない。 -主人公は普通の男子高校生であり、超能力などは持っていない。その為モンスターに襲われたら、制限時間以内に隠れるか、特定のアイテムを使って敵を消し去るかしなければならない。 -シナリオは一応クトゥルー神話を下敷きにしているが、知らなくても支障はない。 --逆を言えば思わせ振りなだけで掘り下げられない描写もある。 ---- **問題点 -校舎内は広大なのだが、アイテムの入手方法がノーヒントである事が多い。 --更には、そもそもそれがアイテムであるとすら気付きにくい程のさりげない置かれ方をされている物まである。 --また、入れる教室は沢山あるが、何も無い場所が多い。学校である以上、教室の数は相応にあって然るべきだろうが、ゲームとしては何も無い所を手探りで探索するのは辛いものがある。 -敵に発見された時は、制限時間内に隠れなければならない。と言う『[[クロックタワー]]』を彷彿させるシステムがあるが、同作には程遠い完成度。 --初見こそ焦燥感と緊張感を味わう事が出来るが、逃げ込む部屋と隠れるべき場所は固定なので一度答えが判ってしまえばそれまで。正解が固定なので「隠れても発見される」と言った事も無い。 --この隠れてやり過ごすシチュエーションはストーリー中に強制的に発生するもののみで、しかも僅か三回しか無い。 ---時間経過やランダムで敵と遭遇する事は無いし、主人公の行動によって発見されると言った事も無い。本当に学園内に敵が徘徊している設定なのか疑わしくなる仕様である。 ---その為、やり過ごした追跡者はその後は一切登場しない。シナリオ上でも語られず、発狂して殺人鬼化した後輩や偽校長と言った追跡者は''完全に忘れ去られる''のである。 -一人称視点としての問題。 --移動すると実際に主人公の視点に合わせて揺れる。しかし近年のFPSのようなリアルなものではなく、波に乗っているかのような大げさな揺れ方なので、3D酔いを助長している。 -グラフィックの出来が悪い。 --モーションキャプチャを用いていないにしても不自然なキャラの動きに加え、多面体のポリゴンで粗い。まず見た目だけでプレイヤーのモチベーションが下がるであろう。 --アングル次第では時代相応に見えなくもないが、アップで映し出されるシーンも結構あるので粗さはやはり目に付く。特に男子生徒は顕著。 --一応、説明書に載っているイラストの特徴は捉えているので、誰が誰だか分からないと言う事は無いのが救い。 -ストーリーが全体的に投げっぱなし。 --上記の通り、クトゥルー神話をモチーフにしているのだが、要素の盛り込み方が中途半端で、思わせぶりなだけの演出や設定が多い。 --また、重要キャラであったはずの女性教師については、エンディングではまったく触れられずに終わってしまう。 ---ゲームの初期に、偽校長に何かを命令しているシーンがあるため、敵側の人間としか思えないのだが、その後は敵らしい行動は全く取らず、最後は主人公をモンスターから庇ってフェードアウトしてしまう。 --一応別ルートも存在し、そちらでは女性教師が黒幕として登場する((ちなみに悪役の男子生徒は発狂して自滅。))。しかしルート分岐の条件が曖昧過ぎる上、ストーリーもそこまで大きな違いはない。そして黒幕は違うが結末は同じ。 --尚、女性教師の素性については下記のグッドエンドルートで少し語られる。…が、以降はそれを掘り下げるような展開が一切無い為、「だから何?」で終わってしまっているのが実情。 -舞台設定も違和感がある。 --孤島の学校ゆえに外部に助けを呼ぶことができないという縛りは有効であるが、孤島の割には一学年につき5~6クラスもあったり、理科室等の特別教室も都会のそれと比べて遜色がない。学園祭も顔見知りの地域住民相手ではなく、明らかに不特定多数を呼び込もうという規模である。 --いわゆる学園恐怖モノかと思いきや最後の方はドラクエ並みのダンジョンが登場したりと、ゲームとは言え舞台自体にも無茶苦茶な所もある。 -仮想空間内の表現はまだしも、取説に以下の主旨の編集後記がある。いくらホラーゲームとはいえ、倫理的に問題があると思われる。→「このゲームを開発中、社内でも次々と不可思議な出来事が起こった」&bold(){「行方不明となったスタッフの一人が○○県の漁港で発見されたが、既に廃人同様だった」} -エンディングはグッドとノーマルとバッドが存在する。しかし終盤の舞台ではセーブすると戻れなくなる上に、グッドエンドに必要な重要アイテムはそのポイントの少し前にある(しかも分かれ道の一方の先なので、気づかずスルーする確率は五分五分)。従って、重要アイテムを取らずに到達するとバッドorノーマルエンド直行となる。 #region(ではそのグッドエンドはどうかと言うと…) -相思相愛のヒロインを助ける為に行動した主人公は、救出に成功するのだが、最後は''「その後2人は別々の学校に転校していった」の一言で片付けられて終わる''。 --また、事件は完全に終わったのかどうかもハッキリしない一文が流れる。とはいえクトゥルー神話をモチーフにした作品はそういった終わり方が多い。 #endregion //-その他 //--誤字脱字がある。「肖像画を''壁のフックに壁に掛けた!''」…意味不明。 //テキストゲームではさほど珍しくない。問題点にするには「多い」とかじゃないと。 ---- **評価点 -雰囲気作りはよく出来ている。 --舞台となる学校は学園祭を控えており、主人公達は準備の為に遅くまで残っていると言う設定である。その為、当初こそ灯りが点いていて、生徒も何人か残っている状態だが、直に電気は全て消え、事件が始まる。 --暗く不気味な学校という雰囲気はよく出ており、あちこちに生徒の惨殺死体が転がっている事で恐怖感も煽られる。さっきまで話していた生徒が、少しストーリーのフラグを立てて戻った時には死体と化している、と言う事も。 --学園祭前日の為、各教室には屋台や迷路が設置されていたり椅子が並べられていたりと、それぞれのクラスの出し物が用意されている。その中で起こる惨劇とのギャップが不気味さを引き立てている。 ---- **総評 -学園祭前日の学校が舞台、主人公に戦闘能力が無い、などホラーゲームとしては面白くなりそうな材料は揃っていたものの、ゲームとしての作り込みの甘さや投げっ放しのストーリーと言った粗が目立つ。雰囲気ゲーとしてならそこそこ楽しめるかもしれない。 ---- **その他 //-本作のBGMの作曲者は、後に『[[スーパーロボット大戦K]]』において盗作騒動を起こす事になる人物である。 //--本作が作られた当時は、盗作疑惑のあるソフトは出ていなかった。本作自体に関しても、そういった噂は特に出ていない。''ソフト自体がマイナーなので気付かれていないだけかも知れないが…''。 //調べればわかると思いますが、件の作曲者はこれの他にも数多くのゲームの作曲を務めており、このゲームだけを特別視するような書き方は不自然。 -序盤に女子生徒(後にモンスター化する後輩)の首が体にめり込むというバグがある。 --その時点ではまだ惨劇が起きていないにも関わらずプレイヤーを恐怖のどん底に叩き落とす。台詞が普通なだけに余計怖い。