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…いる!」を以下のとおり復元します。
*…いる!
【いる】
|ジャンル|アドベンチャー |&amazon(B000069S3X)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売元|タカラ|~|
|開発元|ソフトマシン|~|
|発売日|1998年3月26日|~|
|定価|5,800円|~|
|廉価版|THE BEST タカラモノ:1999年8月5日/2,940円|~|
|判定|なし|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
高校生である主人公が、自分の学校で起きた怪事件を解決するというホラーアドベンチャー。タイトルや舞台設定から、一見すると心霊モノの学園ホラーのようだが、実際はクトゥルー(クトゥルフ)神話をベースとしている。

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**ストーリー
>舞台はとある孤島にある高校。~
文化祭を翌日に控え、夜になっても準備のために何人かの生徒が残っていた。~
3年生の稲葉達也は自分のクラスの出し物の準備の最中にうたた寝をしてしまい、~
夢の中では校長の孫娘で後輩でもあった相川かおりが何者かに殺害されていた。~
そして相川は稲葉に「この学校で恐ろしいことが始まる。早く逃げて」と訴える。~
幼馴染の一ノ宮由麻に起こされ、準備をサボっているクラスメイトを探して学校を歩き回る稲葉だったが、~
突如として停電に見舞われ、学校は暗闇に包まれる。~
直後、後輩である女子生徒が豹変し、友人を惨殺して稲葉にも襲い掛かって来た。~
何とか隠れてやり過ごす稲葉だったが、学校は既に人ならざるモノがうろつく死の牢獄と化していた。
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**特徴
-フルポリゴンの校舎内を探索する。主人公の一人称視点で描かれている為、主人公自身の姿は一部のシーンを除いて基本的に表示されない。
--主人公は普通の男子高校生であり、超能力などは持っていない。その為モンスターに襲われたら、制限時間以内に隠れるか、特定のアイテムを使って敵を消し去るかしなければならない。
--逃走パート以外でも稀にだが、危険なものに近付いたり、誤った行動を取るなどでゲームオーバーになる事もある。

-シナリオは一応クトゥルー神話を下敷きにしているが、知らなくても支障はない。
--逆を言えば思わせ振りなだけで掘り下げられない描写もある。

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**問題点
-校舎内は広大なのだが、アイテムの入手方法がノーヒントである事が多い。
--更には、そもそもそれがアイテムであるとすら気付きにくい程のさりげない置かれ方をされている物まである。
--また、入れる教室は沢山あるが、何も無い場所が多い。学校である以上、教室の数は相応にあって然るべきだろうが、ゲームとしては何も無い所を手探りで探索するのは辛いものがある。
--ストーリーに何の関係もないただ入れるだけの教室に加え、開かずの間(入れない教室)も複数存在するため、ムダに広い校内を終始アテもなく彷徨っている感が強い。
---そのくせこの手のホラーゲームにしては何故か音楽室には入れない。

-敵に発見された時は、制限時間内に隠れなければならない。と言う『[[クロックタワー]]』を彷彿させるシステムがあるが、同作には程遠い完成度。
--初見こそ焦燥感と緊張感を味わう事が出来るが、逃げ込む部屋と隠れるべき場所は固定なので一度答えが判ってしまえばそれまで。正解が固定なので「隠れても発見される」と言った事も無い。
--この隠れてやり過ごすシチュエーションはストーリー中に強制的に発生するもののみで、しかも僅か三回しか無い。
---時間経過やランダムで敵と遭遇する事は無いし、主人公の行動によって発見されると言った事も無い。本当に学園内に敵が徘徊している設定なのか疑わしくなる仕様である。
---その為、やり過ごした追跡者はその後は一切登場しない。シナリオ上でも語られず、発狂して殺人鬼化した後輩や偽校長と言った追跡者は''完全に忘れ去られる''のである。
--他にも『ダークメサイア』などのような主観視点ならではの敵からの逃走パートも存在するが、終盤に一度しか無く、しかも真っ直ぐの一本道を逃げるだけなので普通なら捕まる事はまず有り得ない。

-一人称視点としての問題。
--移動すると実際に主人公の視点に合わせて揺れる。しかし近年のFPSのようなリアルなものではなく、波に乗っているかのような大げさな揺れ方なので、3D酔いを助長している。
--判定圏内に複数の選択オブジェが存在する場合、対象に対するカーソル表示がない上に優先順位が不明確なので、ムダなリトライの温床になっている。特に狭小空間では顕著で、非優先オブジェを選択候補から排除するための不自然な動きが強いられる。常時一人称視点のみの致命的な欠陥と言えよう。

-グラフィックの出来が悪い。
--モーションキャプチャを用いていないにしても不自然なキャラの動きに加え、多面体のポリゴンで粗い。まず見た目だけでプレイヤーのモチベーションが下がるであろう。
--女子生徒はまだ時代的相応にも見え、モーションもそこまで不自然でもなくローポリなりの可愛さも感じられなくもないのだが、男子生徒は全体的に不出来。
---特に「望月」という生徒は他のキャラと比べても明らかに顔の造形が拙く、人間というよりは不格好な人形にしか見えない。説明書のイラストではインテリ風のキャラに描かれているのだが、ポリゴンではまるで知性が感じられない。そのくせ全編を通して登場するキャラなのでとにかく目に付く。
---肥満体質の「広瀬」は、何故か歩くモーションがロボットのようなぎこちなさで非常に違和感が強い。

-ストーリーが全体的に投げっぱなし。
--上記の通り、クトゥルー神話をモチーフにしているのだが、要素の盛り込み方が中途半端で、思わせぶりなだけの演出や設定が多い。
---「エイボンの書」「妖虫(妖蛆)の秘密」などクトゥルー神話由来の書物が多数登場するが、どれも謎解きのヒントにしかなっておらず重要性は低い。それはまだ良いとしても、思わせぶりに配置されただけで何の意味も無いものもある。
---また、クトゥルー神話関連の単語もいくつか登場するが、特に説明も無く物語上の意味も無いものが少なくなく、「知らなくても支障はない」とは上述したがクトゥルー神話に明るくない人には意味不明な台詞もいくつか。
--本作は2つのルートが存在し、途中の展開や最終的な敵が変化するが、大まかな流れは変わらず結末は同じ。
---分岐条件も、ある生徒が殺された後に美術室に入るか美術準備室に入るかだけなので、情報なしではかなり解りにくい。
--重要キャラの女性教師「北条冴子」は盛り込まれた設定が今ひとつ活かせていない。
---一見、異常事態の中で生徒を無事に逃がそうと奮闘しているようだが、一方のルートでは北条が事件を起こした黒幕として主人公と敵対し、もう一方のルートでは主人公を庇ってフェードアウトする。この通り、ルートによって立場が全く変わるキャラである。
---しかし共通ルート時点で偽校長(殺人人形)に命令していたり、後者のルートでも生徒思いの先生として振る舞う傍らで露骨に怪しい行動を取ったりと、扱いが安定しない。
---そして下記のグッドエンド条件のイベントで北条の素性が語られるが、以降はそれを掘り下げるような展開が一切無い為、「だから何?」で終わってしまっているのが実情。~
敵対ルートではこれが事件を起こした動機であると察せられるが、肝心の北条自身がその事には触れないので憶測の域を出ない。そしてもう一方のルートではその時点で北条は既に退場しており、全てが有耶無耶で終わってしまう。
--もう一人の黒幕候補は両方のルートで暗躍するのだが、そこに至った経緯などは一切語られない。そして北条敵対ルートでは勝手に自滅する。
--上述した望月は、その境遇や別人格に憑依されたという設定からストーリーにも深く絡んで来るのだが、最終的はそれらを全て放り投げてあっさりと退場する。特に別人格については散々重要そうに語った割に投げっ放しで終わる。
--殺人鬼化した後輩が殺した女子生徒は後で殺害現場に行くと死体が消えており、しばらくは主人公は「夢を見ていたのかもしれず、殺人など起きていないのではないか」と考えて行動する。
---しかし後に本当に惨劇が起きた後も死体の行方は知れないままで、上述した通り殺した後輩も消息不明。何故死体が消えたのかも結局謎のまま。
---また、北条は上述の通り敵対しないルートでは主人公を庇い、怪物と共にシャッターの向こうに消えて嫌な音と断末魔が聞こえるのだが、''何の説明も無くシャッターが開いた''後に向こうに行っても女子生徒同様に死体は無い。実は生きているのかとも思わせるが、これも上述した通りそんな展開には進まない。
--足に怪我をしたヒロインのために治療道具を探しに保健室に行くも、敵と遭遇する。という展開があるのだが、敵から逃げた後に保健室を調べても何も無く、手ぶらでヒロインの元に戻る事に((戻ったらヒロインは攫われており、足の怪我云々はその後は一切触れられない。))。何をしに行ったのだろうか。
--エンディングはグッドとノーマルとバッドが存在する。しかし終盤の舞台ではセーブすると戻れなくなる上に、グッドエンドに必要な重要アイテムはそのポイントの少し前にある(しかも分かれ道の一方の先なので、気づかずスルーする確率は五分五分)。従って、重要アイテムを取らずに到達するとバッドorノーマルエンド直行となる。
--バッドエンドは主人公を含めて全員死亡。ノーマルエンドでは惨劇は終わるもののヒロインは廃人化してしまい、主人公は彼女の前から姿を消すという結末で事件は解決しても後味の悪い結末となる。グッドエンドではヒロインも回復し、2人は事件から無事に生還する。
#region(しかし…)
--その後のテロップで「''2人は事件のトラウマから時折錯乱状態に陥り、忌まわしい記憶を振り払うように別々の学校に転校していった''」で片付けられて終わる。作中では相思相愛に描かれ、最後は主人公もヒロインを救う為に奮闘していたにも関わらずこれであり、直前までの流れがブチ壊しである。
--また、事件は完全に終わったのかどうかもハッキリしない一文が流れる。クトゥルー神話関連はそういった話が多いのでそこに倣ったのだろうか。
#endregion
--なお、上記のメインルートの6つのエンディングの他に、分岐で黒幕にならなかった方が途中で死なず、黒幕になったキャラを殺害してしまうエンドがそれぞれ1つずつ存在する。分岐は意外と少なくない。
---しかしマルチルート、マルチエンドとは言ってもどのエンドでもスタッフロールは変わらず、エンディングリストも無いのでどのエンディングを迎えたのか、どんなエンディングが存在するのかも分からない。クリア後に解禁される特典も無い。

-舞台設定のちぐはぐ感。
--孤島の学校の割には一学年につき5~6クラスもあったり、学園祭も顔見知りの地域住民相手ではなく、明らかに不特定多数を呼び込もうという規模である。
--そもそも孤島というのもごく一部の台詞で語られるのと、タイトル画面のバックに''崖っぷちに建つ高校''が映っているくらいでしか分からず説得力が薄い。あとは説明書に小ネタが書かれている程度。一応、終盤に孤島であることの理由付けはあるものの、孤島と設定する必要性はあまり感じられない。無理に孤島設定でなくとも良かったのではないだろうか。

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**評価点
-雰囲気作りはよく出来ている。
--舞台となる学校は学園祭を控えており、主人公達は準備の為に遅くまで残っていると言う設定である。その為、当初こそ灯りが点いていて、生徒も何人か残っている状態だが、直に電気は全て消え、事件が始まる。
--暗く不気味な学校という雰囲気はよく出ており、あちこちに生徒の惨殺死体が転がっている事で恐怖感も煽られる。さっきまで話していた生徒が、少しストーリーのフラグを立てて戻った時には死体と化している、と言う事も。
--学園祭前日の為、各教室には屋台や迷路が設置されていたり椅子が並べられていたりと、それぞれのクラスの出し物が用意されている。その中で起こる惨劇とのギャップが不気味さを引き立てている。

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**総評
-学園祭前日の学校が舞台、主人公に戦闘能力が無い、などホラーゲームとしては面白くなりそうな材料は揃っていたものの、ゲームとしての作り込みの甘さや投げっ放しのストーリーと言った粗が目立つ。雰囲気ゲーとしてならそこそこ楽しめるかもしれない。

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**余談
-序盤に女子生徒(後にモンスター化する後輩)の首が体にめり込むというバグがある。
--その時点ではまだ惨劇が起きていないにもかかわらずプレイヤーを恐怖のどん底に叩き落とす。台詞が普通なだけに余計怖い。

-仮想空間内の表現はまだしも、取説に以下の主旨の編集後記がある。
--「このゲームを開発中、社内でも次々と不可思議な出来事が起こった」はよくある話だが、&bold(){「行方不明となったスタッフの一人が○○県の漁港で発見されたが、既に廃人同様だった」}((○○の部分は実在県名の為伏字))というものも。…流石に冗談だろうが、道徳的にこれはどうなのだろうか。

-終盤の時計塔の機械室では、ハンマーを使って先に進めるのだが、釘抜きを使っても進行可能。
--序盤で木箱を開けるシーンでは、釘抜きかハンマーが使用可能なのだが、ハンマーを使うと物音を聞きつけた怪物に殺されてゲームオーバーになってしまう。
--そのため、時計塔の機械室がハンマーの唯一の活用箇所なのだが、最初から釘抜きで進行したプレイヤーにはハンマーはただのトラップアイテムかダミーアイテムと思えてしまう。

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