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ファイナルファンタジーUSA ミスティッククエスト - (2020/09/07 (月) 04:06:52) の編集履歴(バックアップ)


ファイナルファンタジーUSA ミスティッククエスト

【ふぁいなるふぁんたじーゆーえすえー みすてぃっくくえすと】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 4MbitROMカートリッジ
発売元 スクウェア
開発元 スクウェア大阪
発売日 1993年9月10日
定価 7,900円
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2010年12月21日/800Wiiポイント
【WiiU】2014年4月16日/823円
判定 なし
ポイント FFとしてはかなり異端、というよりサガ3?
ストーリー・システム・ネーミング全てが単純明快
ファイナルファンタジーシリーズ関連作品リンク


概要

  • 1992年にアメリカにおいて発売された『Final Fantasy Mystic Quest』を和訳し、逆輸入した作品。
    • 後に『Mystic Quest Legend』名義でヨーロッパでも販売された。
  • タイトルに『USA』と付いているが、開発自体はスクウェアUSAではなく、『Sa・Ga3』と同じスクウェア大阪が開発したもの。
    • 戦闘画面の構成、フィールドでのジャンプなど同作との共通点が多い。
  • FFシリーズとしては独特なシステムが多いが評価は芳しくない。
    • ただし『Sa・Ga3』を手掛けた笹井隆司氏による激しいロック調の戦闘BGMやラストダンジョンBGMの評価は高く、「音楽は最高なゲーム」としばしば評される。

特徴

  • ストーリーは一言で言うと「予言の勇者に選ばれた少年が4つのクリスタルの輝きを復活させ、悪の魔王を倒す」という分かりやすい勧善懲悪ものであり、当時のFFとしては珍しいシンプルなストーリーとなっている。
    • シンプルな展開のわりに突っ込みどころ満載な強引な流れも多く、開発的には国産ゲーなのだが、そこはかとないアメリカンなノリを感じさせる。
  • 尚、これより前にアメリカでは既に『FFII(※当時ナンバリングがズレており、日本でいうところのFF4イージータイプに相当)』が出ていた。
    • アメリカではこの『FFII(IV)』がヒットしなかったことから、ヒットしなかった原因をシリーズ特有の「高すぎる難易度」にあると考え、難易度の低い作品として作られた経緯がある。
  • クリスタルを復活させると、その恩恵によって土地が豊かになる。ある意味、『FFV』の逆パターンである。
  • ネーミングもシンプル。ラストダンジョンが「さいごのしろ」であったり、ラスボスが「ダークキング」であったり。

システム

フィールド

  • フィールド移動は、町やダンジョンを線でつないだポイント移動方式となっており、行ける場所が分かりやすく迷うこともない。
  • 町やダンジョンでは概要に書かれたとおり、ジャンプなどのアクションを取ることが出来る。
    • 持っている武器を用いて木を切ったり、スイッチを押したり、爆弾で壁を破壊したり、爪を使って壁を上ったりするといったダンジョン攻略要素もある。
  • フィールドにはバトルポイントと呼ばれるポイントが存在し、10回まで戦闘を行うことが出来る。
    • バトルポイントで10回戦闘するとご褒美としてアイテムなどがもらえる。テレポなどの魔法がもらえるポイントも。
    • ちなみにバトルポイントを除いてフィールドで敵と戦闘は一切発生しない。

戦闘

  • 戦闘はシンボルエンカウントであり、マップ内のモンスターに接触することで発生する。
    • 但しモンスターは動くことはないため、事実上戦闘はプレイヤーが望まなければ発生しない。
    • もっとも、モンスターの出現箇所は固定であり、道を塞いで配置されていることも多いため戦闘を避けることが出来ない場面が多い。
  • 戦闘はターン制。味方は主人公とパートナー1人の最大2人となる。
    • 登場する仲間は累計で4人いるが、イベント毎に入れ替わるため、同時に行動を共にする仲間は1人である。加入タイミングも固定なので、プレイヤーが任意にメンバーを選べる場面はない。
  • 魔法は回数制であり、レベルを上げると利用回数が増える。
    • 白魔法・黒魔法・封印魔法の3系統でそれぞれ使用回数が設定されており、例えば白魔法はケアル・レイズ等のどれを使っても白魔法のポイントが1回分減少する。
    • 状態異常回復魔法の「エスナ」は敵に使うと逆に状態異常効果を与えるという珍しい仕様。この味方と敵で効果が反転する仕様は『Sa・Ga3』の一部の状態回復/異常魔法(ストーン・ポイズン等)が同様の反転効果を持っていたことに由来する*1
  • 敵にダメージを与えると残り体力に応じて敵のグラフィックが変化していく。ものによってはコミカルなものもある。
  • 全滅した場合にはやり直すか諦めるかの選択肢が表示され、その戦闘の開始時点からやり直すことが出来る。

その他

  • キャラクターは細かいジェスチャーをする。これは後のスクウェア製のRPGに通ずるものがある。
  • ストーリーはシンプルだが、会話もシンプル。テキスト量そのものが少なく、ノリも軽い。
    • 最近のRPGでよくあるような「主人公の葛藤」や「仲間の死」といった重いイベントもない。
  • セーブはダンジョン内も含めどこでも行うことが可能。特定のセーブポイント等は存在しない。
    • このためか、Xボタンで直接セーブメニューが開くようになっており、普通にメニュー画面を開きたい時はスタートボタンになっている。

評価点

非常にわかりやすい世界観

  • 本作の舞台は「地・水・火・風」をイメージした4つの地方に分かれており、それぞれわかりやすい特徴を備えている。
    物語開始時点でその地方のクリスタルが敵の手に落ちており、クリスタルの恩恵を無くした地域に悪影響を与えていて、例えば「地」のクリスタルがある「フォレスタ地方」は本来は自然豊かな地域なのだが、クリスタルを失った影響で木々が枯れ、砂漠が広がり、子供達ですら生気を失って老人みたいになってしまうという状態である。
    その地方のボスを倒すことでクリスタルが復活し、本来の姿に戻ることにより、世界を確実に救っているというモチベーションに繋がりやすい。
    • 各地方には街が一つしかないといえ、その街の作りから地方の特色を想像しやすく、BGMが同じ曲のアレンジで統一されていることにより、拠点としての安心感を与えてくれる。
    • 世界の中心には「フォーカスタワー」という敵の根城があり、他地方に向かう際にはほぼ必ず通ることになるのだが、各地方のボスを倒すことで入手できるアイテム*2を使って先に進むことになるため、BGMと相まって敵の本拠地を攻略している気分を手軽に味わえる。

キャラクター

  • 上記のようにストーリーはシンプルでテキスト量も少ないのだが、そんな中においてメインキャラクター達はやたらと個性が強い。アメリカンなノリの成せる業か。

BGM

  • 良曲が多く、通常の戦闘曲ですら他作品のボス戦と遜色ない盛り上がりを見せる。
    • ボス戦やラストボス戦の曲もそれに負けず劣らずの出来。特にラスボス戦前の会話シーンに前奏がシームレスで流れ、戦闘に入ると同時に盛り上がる旋律となるる演出が光る。
  • フィールド曲やダンジョンの曲は冒険心を沸き立たせてくれる。
  • 上記でも触れたが、街のBGMは同じ曲のアレンジであり、各地方の特色が出ている。穏やかな「フォレスタ」、激しい曲調の「フェイリア」等。

賛否両論点

簡単すぎる難易度

  • 特徴で述べた通り、難易度は非常に低い。
  • 移動しないシンボルエンカウントである関係上、プレイヤーが任意のタイミングで戦闘を起こせるため、準備不足によるピンチといったこともまず起きない。どこでもセーブでき、全滅してもやり直せるため尚更。
  • ダンジョンには武器を使ったりジャンプを使った仕掛けはあるものの、さほど難しくない。壊せる壁はひびが入っていたり、上れる壁は痕がついていたりなど、ヒントもある。
  • ストーリーそのものも一本道なので迷うこともない。レベルさえ上げて進んでいけば戦闘面で躓くこともない。
    • 日本版はオリジナルの北米版よりも敵から得られる経験値が全体的に減少しているが、それでも難易度は低い。
    • 強さに不安がある場合も、各地のバトルポイントを一通り回っていれば充分に育つため、詰むこともまずない。不要ならバトルポイントを無視しても充分クリアできるバランス。
  • 回復アイテムの入った木箱は町やダンジョンを出入りすることで復活するため、ポーションなどはすぐに99個まで貯められる。
  • 本来戦闘不能を回復する白魔法「レイズ」は、生存者に使った場合もHPを完全回復でき、さらに戦闘中ならそれに加えて状態異常も回復できるという非常に便利な魔法になっている。
    • さらに、ゲーム中で加入するパートナー全員が最初からレイズを修得している。
    • レイズは強力ではあるが、回数を共有する他の白魔法についても、全体回復できる「ケアル」、敵に状態異常攻撃できる「エスナ」、ダンジョン脱出&敵を消し去る「テレポ」と、レイズには無い効果をそれぞれ持っているため白魔法の使い分けもきちんと生きている。

問題点

全体的にチープなグラフィック

  • マップや攻撃魔法のエフェクトなど貧相なところが目立ち、1991年に発売された『FF4』と比較しても、見劣りしてしまう。
    • 先述されているように、敵のグラフィックが残り体力に応じて変化すると言った工夫はされている。
    • 一部敵キャラクターはドラクエの敵のように目がしっかり描かれているなど、やや子供向けな感じを受けさせるところがある。(難易度が易しいあたり意図的にそうしているのだと思われる)子供向けであること自体は悪い点ではないのだが、従来のFFシリーズとは趣の異なるデザインであったために賛否を生むこととなった。

イベントが簡素

  • 難易度が低い点も含めて、FFという名前を冠している作品であることを考えるとストーリー、システム共に簡素すぎる。
    • 物語の盛り上がりにも欠け、テンポ自体は良いものの稚拙と取られることもある。取り敢えずゲームをしていたら、ラスボスまで辿り着きました、といった展開。
      • テキスト量自体があまり多くなく、「私は○○よ」「よし、行こうぜ!」といった感じのかなり軽いノリでどんどん話が進んでいく。

移動が面倒

  • フィールドマップでは目的地に向かってすごろくのように一マスづつ進んでいく形式のため、街で準備を整えてダンジョンに向かおうとすると、テンポがやや悪い。クリア後のバトルポイント(つまり入れない)場所ですらご丁寧に止まる上、移動自体も決して早くない速度なのも問題。
  • 更に地方間の移動もやや面倒で、ショートカットが開通するまで「フォーカスタワー」を通らなくてはいけない。ダンジョンも兼ねているため、やや長い道のりである。
    • そのショートカットも最序盤の「フォレスタ」地方には存在しない。ショートカットの内訳は「フィールドマップで「フォーカスタワー」を経由しない道がストーリー進行によって出来る」「「紋章」を持っていれば使えるワープゾーンで「街」と「街」を行き来できる」というものだが、「フォレスタ」にはどちらもない。
      • 「フォレスタ」に戻らないというのであれば問題はない仕様だが、ストーリー中(流れ的に)戻る事が必要であることと、無料回復ポイントが「フォレスタ」にしか無いため、プレイスタイルによっては何度も戻ることになるのが問題である。
  • また、街やダンジョン内での移動についても、古い作品のため所謂「ダッシュ」はない。その代わりに人物や一部障害物を飛び越える「ジャンプ」があるわけだが、連打するとなると、着地後のラグのせいで微妙にもどかしい。
    最近のゲームに慣れているプレイヤーからすれば煩わしい仕様であろう。

少人数制による戦闘のバランス

  • 戦闘の難易度は上記のように低く、ターン制であることもあって緊張感はあまりないが、一方で味方側がたった2人しか居ないことにより、敵の状態異常攻撃(特に石化・即死攻撃・混乱・麻痺等)がかなりの脅威となる。
    • 戦闘の全滅理由としては「状態異常や即死攻撃によって2人とも行動不能になる」か「混乱状態にされて同士討ちになる」のどちらかが主となる。

解消は容易だが確実に発生する仲間の弱体化バグの存在

  • 新しく加わった仲間の能力値データが、そのキャラ本来の装備品ではなく、直前の仲間の装備品を付けた状態の能力値データになってしまう。
    • セーブ後に、リセットするか電源を入れなおしてのロードで本来の値になる。解消方法は極めて簡単だが、確実に発生してしまうのが難点。
    • 特に初めての仲間であるカレンは他のセーブデータが存在しない初プレイの状況だと防具無し、回避率0として扱われてしまう。
    • 逆に、他のセーブデータがある場合にニューゲームを始めるとそちらの装備品が参照されるため、仲間が最初から強い防具を装備したのと同じ状態になったりと有利になる場合もある(こちらもセーブ→リセットで本来の値に戻されるが)。
  • 他にもバグはあるが意図しないかぎりまず起こらないものが多いので割愛。

総評

難易度を下げるというコンセプトで作られたことからも分かるように超低難易度な作品である。
小学生などでRPG初心者というプレイヤーには向いているかもしれないが、既に他のFF作品をプレイしているプレイヤーにとっては戦闘はただの作業と化してしまうだろう。
ストーリーもシンプルな一本道であり、心を揺り動かす展開もない。よく言えば鬱展開などに悩まされないが、悪く言えば拙い物語となってしまっている。
システムそのものの破綻はなく、クリスタルと物語をしっかりとリンクさせた世界観は評価出来るし、難しい世界観などを理解しなくてもストーリーが飲み込めるといえる。
ただ『FF』シリーズという名前を冠したため、プレイヤーの目が厳しくなり、結果としてクソゲーの評価をされることも多い作品である。
売上は国内で30万本程度と当時のFFシリーズとしては非常に少なく、あまり話題にされることも多くない作品となっている。

なお、肝心のアメリカでも内容が稚拙だったことで批判を受けてしまい、あまり評価はされなかった。
これを受け、続く『FFIII(日本のFFVIに相当)』は日本版の内容ほぼそのままでリリースされることとなった。


余談

  • ラスボスに対して、主人公がシリーズお馴染みの回復魔法である「ケアル」をかけると5桁の大ダメージを弾き出すというバグがあり、よくネタにされる。
    • これはケアルの回復量がマイナスに反転してしまうバグ。ラスボスのHPは4万なので、容易に倒すことが可能。ただしフェイは魔力の関係でダメージが反転せず、また主人公の場合もレベルやダークキングの残りHPによってはダメージが反転せず普通の回復になって失敗する場合もある。
    • このバグは後のVC(バーチャルコンソール)版でも修正されなかった。もっとも、VCでは致命的な不具合以外は修正されないことが多いので別段珍しい話ではない。
  • 後に『サガ3』や本作を手掛けた藤岡千尋氏がスクウェア東京本社に異動し、同じくジャンプシステムを搭載した『スーパーマリオRPG』にも携わるのだが、こちらは稀に見る名作となった。
  • また、藤岡氏以外の主なスタッフは『ルドラの秘宝』を製作。こちらもコアなファンが多い良作である。
    • ボスのHPが減ると体の色が変わる点や様々な神話を雑多に取り込んだ設定など、本作や『Sa・Ga3』との共通点がいくつか見受けられる。
  • 主人公の設定上のデフォルト名は一応「ザッシュ」(パッケージ写真に記載されている)だが、ゲーム中の名前入力欄は空欄で、デモ画面の表示も「しゅじんこう」になっている他、攻略本やVC公式サイト他でもこの名前はほとんど使用されていない。この点では『FFV』のバッツにも近い。
    • その後『ディシディア ファイナルファンタジー』では小ネタとして、モーグリの1匹の名前に本作の主人公のデフォ名「ザッシュ」が使われている(ご丁寧に海外版でも向こうのデフォ名「Benjamin」になっている)。
      • あくまでもモーグリなので名前が同じだけの別キャラだが。ちなみに他のモーグリの元ネタは、OVA版FFのヒロイン、『FFXI』のモーグリ、『FFT』のサウンドノベルの主人公など。
    • シリーズ集大成の音楽ゲーム『シアトリズム ファイナルファンタジー カーテンコール』には本作の主人公が「ザッシュ」名義で参戦し、本作の戦闘BGM「バトル1」「バトル2」も収録されている(ラスボス曲「バトル3」は残念ながら未収録)。
  • 仲間キャラなどには日本版で名前が変更された者もいる。25歳でトレジャーハンターのロック(元の名前はTristam)は、当時開発が始まったばかりの『FF6』の同名キャラと年齢・職業まで完全一緒。
  • 本作で最初に戦うモンスターがなんとベヒーモスである。おそらく、シリーズ通して最序盤でベヒーモスが出現する唯一の作品。
    • さらに、チュートリアル的な強制イベント戦闘であるにもかかわらず、ベヒーモスがクリティカルを出してきていきなり全滅することすらあり得る。
    • もっとも本作では全滅直後に戦闘をやり直せるため、運悪く全滅してしまったとしてもすぐに無かったことにしてやり直せるのだが。