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アーマード・コア ネクサス - (2014/04/06 (日) 07:46:43) の編集履歴(バックアップ)


アーマード・コア ネクサス

【あーまーど・こあ ねくさす】

ジャンル 3D戦闘メカアクション
対応機種 プレイステーション2
発売・開発元 フロム・ソフトウェア
発売日 2004年3月18日
定価 8,190円
廉価版 PlayStation2 the Best:2004年8月5日/3,990円
分類 黒歴史
ポイント 熱管理シミュレータ
調整不足な新要素と仕様変更でファン離れが発生
続投の多いデザイン、不便になった各システムetc
OPムービーは相変わらず高品質
アーマード・コア シリーズ 作品リンク


概要

アーマード・コアとは、様々なパーツを組み替えて作り上げた自分だけのオリジナルロボット=アーマード・コアを乗りこなすレイヴン(傭兵)となり、企業からの依頼を引き受けて資金を稼ぎ、時には他のACと衝突しながら、荒廃した世界を生き抜く3Dアクション・シューティングである。

各作品において様々な問題が発生しつつも、どの作品もゲームとしての完成度は比較的高く、クソゲーとは明らかに一線を画す良作であることは確かであった。しかし、前作『3サイレントライン』では大量のパーツ増加に伴って対戦でのバランスが悪化し、一部のファンから批判の声が上がっていた。

そして2004年。タイトルにナンバーが付いておらず、プロデューサも名作『2アナザーエイジ』を担当した鍋島氏に変更される事となった『アーマード・コア ネクサス(NX)』の発表である。多くのレイヴンが発売を心待ちにしていた。


特徴

  • 『マスターオブアリーナ』以来の2枚組ディスク。1枚目は本編のストーリーが、2枚目はリメイクされたPS1時代のミッションと、過去作のオープニング、ラフスケッチ、BGM、再販ポスターなどの資料が収録されている。
  • 2つのコントローラスティックを移動と視点移動、LRのボタンを攻撃に使うというFPS的な操作方法を選べるように。

新登場

  • チューン
    • 外装とジェネレータ、ラジエータのパーツを計10段階まで強化ができ、痒いところに手が届くようになっている。
  • マガジン
    • 一部の実弾武器にリロードが設定され、特に高い攻撃力を誇っていたマシンガン等に制限調整が加えられた。
  • 格納
    • 一部のコアパーツは小型の右手・左手武器をコアに格納でき、予備武装として携行することができる。
  • ECM
    • 濃度として追加され、対応能力の低いACのレーダーとロックオンを妨害する。
  • 暗視機能
    • 頭部の機能として追加。深夜など、光量不足で視界の利かない状況下で自動的に発動する。
  • ブレード光波
    • ブレード使用時にブーストボタンを押す事で、条件を必要とせず光波を発射する事が可能になった。
  • 武器パーツのカラーリング
    • これまで固定だった武器パーツも色を自由に変更ができるようになった。前作で登場した大量の色換えパーツは消滅。

問題点

大幅な仕様変更と新要素が投入されたものの、そのほとんどが調整不足気味のシロモノであり、或いは変更や追加そのものに疑問を呈したプレイヤーが続出した。

熱暴走

本作で最も批判が集中したのが熱量の仕様変更である。 熱暴走とは、『2』から導入された、外気温や敵攻撃によって機体温度が一定値を超えている間、機体の耐久力が減少し続けるシステムを指す。このダメージは装甲に関係なく被るため、冷却装置や与える熱量の多い武器の選択などの戦略性の拡大に一役買っている。
だが、本作はこのシステムに大幅な仕様変更が入り、後述する様々な問題を併発したために「熱管理シミュレータ」と揶揄される事となる。

  • ブースタの発熱量の追加
    • これまでは、熱暴走とは外気温特性のあるマップや被弾によって発生する事態だった。だが、本作からブースタを使用すると莫大な熱量が発生するように変更され、しかもその数値設定たるや、冷却性能を疎かにするとブースタを数秒使っただけで自ら熱暴走を引き起こすという凄まじいもので、多くのプレイヤーを戸惑わせる事になった。必然的に、冷却を確保しブースタの発熱を抑え込む事がアセンブルの最優先課題となったのである。
    • 肝心の冷却を確保するにはラジエータだけでは足りず、外装パーツの持つ冷却性能も欠かせない。各部の持つ冷却性能と合わせた総合冷却値がジェネレータとブースタの発熱量の合計を超える*1事で、やっと「ブースタ使用時の」発熱を抑える事が出来る。ここまでを確保する事で、ようやくACを実用的に稼動させられるのだ。
    • 熱量はこれまでのシリーズ通り被弾によっても増加する。ブースタ使用時(ボタンを押している間)に被弾すれば、弾の熱量がブースタの熱量に直接加算されてしまう。オーバードブーストの使用や外気温の影響も然りである。つまり各パーツによって得られる合計冷却性能の限界値が低いにも関わらず、発生する熱量は天井知らずな程に高いのである。
  • ラジエータの緊急冷却消費の追加
    • もう一つの問題が、熱暴走時にラジエータがエネルギーを消費する仕様が追加された事である。
    • 熱暴走時は文字通り「緊急冷却」であり、エネルギーの消費は決して納得できない仕様ではないのだが、エネルギーは機体の動力源であるため、一度でも熱暴走に陥れば必然的にエネルギーが足りずブースト移動ができなくなる→敵攻撃を回避できなくなりさらに被弾で熱暴走という負のサイクル『熱ハメ』が成立してしまう。
    • 従来の熱暴走によるAPへのダメージは発生しにくく変更されており*2、重装甲に対しての戦術的価値は大きく低下している。

勿論、これが全ての原因というわけではない。例えばブースタには発する熱量の低いパーツもあるが、それらは例外なく出力や燃費に劣るため厳しい被弾のリスクを伴うし、旧作に比べラジエータの通常時消費エネルギーが軒並み1000以上増加*3しており、これによってエネルギー周りの性能が著しく低下した事で熱暴走のペナルティが数値以上に重い効果を持つ事になる。こういった様々な要因が、熱暴走の仕様と複雑に絡み合っているのである。
発熱も従来通りの被弾、加えてオーバード・ブーストの予備熱なども並行して発生するため、良く言えば慎重な構築・行動が求められる、悪く言えば制限ばかりかけられ爽快感を欠く仕様変更となっている。

パーツバランス

  • パーツバランスは全体的に悪い。上記の熱暴走にも絡む。
    • 本作ではパーツの長所と短所がかなりキツめに強調されており、例えば内装パーツではエネルギーが欲しいのでジェネレータを強化したら発熱が悪化→発熱を抑えたいのでラジエータを強化したらエネルギー燃費が悪化といった事態にすぐに陥る。
    • 言い換えれば全般的に「全てのパーツが選択肢に入る」ような傾向が見られるが、逆に折角資金を稼いで新たなパーツを買ってもなかなか機体のパワーアップに繋がらない弊害を生んでいる。様々なパーツの説明で頻繁に「第○世代パーツ」といった記述がされているが、世代間の性能に価格以外の格差がなく、買い換えたら却って悪化したなんて事は日常茶飯事。
    • 前作まで高出力型一択であったジェネレータが、熱量のデメリットを背負った事で、「別のジェネレータも選択肢に入るようになり選択の幅が広まった」という見方もできるが、そもそも外見に影響しない内装ジェネレータが一択である事が問題と言えるのかは疑問が残る。
      • 選択肢の幅が広まったという事はパーツごとに個性的な特徴があるという事だが、長所が増えるならともかく、短所ばかりが強調されるようでは意味が無い。事実、次回作以降の調整にて放熱や出力に余裕ができた事で、本当の意味で選択肢が広まった事は本作のトータル・バランスの劣悪さを如実に物語っている。
    • また、本作からはエネルギー兵器も実弾に比肩する熱量が追加されている。熱仕様の数値設定がしっかりしていれば良好な調整であった可能性は高いが、熱がプレイヤー以外にほとんど意味を成さない以上、完全に裏目に出てしまっている。
    • 優秀な攻撃機能を持つイクシードオービット搭載コアや、特殊機能を持たない代わりに基本性能の高い、通称「無機能コア」が存在するため、基本性能が低く特殊機能も使いづらいオーバード・ブースト搭載型のコアはかなり厳しい立場になってしまった。
    • コアについては他に、全体的なオプションスロット数の増加と、オプショナルパーツ自体の性能と使用スロットの低下などの変更が見られる。
  • 対戦バランス関連
    • 積載量に余裕があると速度が上昇する仕様(積載余剰)が強化された事で、積載に余裕を持たせた中量脚の方が軽量脚より総合機動力に優れるという問題が発生している。本作の軽量脚は旋回性能が非常に悪化しており、速度まで奪われては軽量脚の存在意義がない。
    • ラジエータ等を始めとした通常時の消費ENが多くなり(エネルギーの回復速度が低下)、機体の慣性がより深く追加された事などで機動性が低下調整されているため、全体的に回避の難易度が上昇し、重量機での火力ゴリ押しが猛威を振るう事に。
    • 「熱ハメ」の影響で禁止パーツの扱いが難しい(シリーズ中でも特にレギュレーションの統一が取りにくい)という問題があり、対戦派ユーザーからの評価は非常に悪い。次回作の『NB』が対戦用ディスクと看做されるのはこういった理由による。
    • 仕様の変更により熱暴走によるダメージを狙いづらくなったため、ライフル系武器は総火力が低すぎて対戦では使い物にならない。そのためか、次回作である『NB』以降は性能がだいぶ強化され使いやすくなった。

ブレードの冷遇

  • 「ロボットもの」において近接戦闘武器は人気が高い。本シリーズにもレーザーブレードの熱狂的な使い手こと「剣豪」が存在していたが、『2・AA』で大幅に弱体化、『3』から僅かながら左腕銃が登場し、『SL』では右腕とほぼ変わらない数の射撃武器が追加されるなど、対戦におけるブレードの価値はタイトルを重ねる毎に低下していた。
    • 本作では、威力減少・使用消費エネルギーが激増・空中でブレードを使用すると相手をホーミングして自動的に接近、攻撃する「ブレードホーミング」機能*4がほぼ消滅と散々な調整を浴び、地位復権を期待していた剣豪達にとっては泣きっ面に蜂であった。光波のみ全てのブレードで使用可能になったものの、元より威力が低く、レスポンスが劣悪で、消費エネルギーも大きく、機体の正面・同高度にしか飛ばない、接地時にしか使えないなど通常の斬撃以上に冷遇されている光波が今更使用可能になったところで…。
    • 結果としてブレードはますます隅に追いやられ、格納ができ、より軽量で威力の高い補助武器に立場を奪われてしまったのである。特定の超大型機体に対しては伝統的に有効ではあったが。

強化人間の廃止

  • シリーズ恒例の公式チート要素。過去作では初心者救済処置やクリア後のお遊びとして用意され、レーダーやブレード補正、旋回性能上昇、ブースタの消費エネルギー軽減、機体温度が上がりにくくなる、コンデンサ容量の倍増など非常に強力な恩恵を得られた。
    • 本作ではプレイヤー側のみ廃止。強化人間の能力は過去シリーズからほぼ変更は無いのだが、熱仕様によってアセンブリに高い完成度が求められる本作において、あらゆる発熱を低減という恩恵はシステムを根底から覆してしまう危険な仕様である。にも関わらず、本作ではストーリーに関わってくるキャラクターが軒並み強化人間仕様だったため、公平さを求めるプレイヤーには不評だった。
      この発熱低減効果はかなりの物で、チートで強化人間化させたデータ同士での対戦は思った以上に遊べた、と言う笑えない逸話があったりする。
    • ちなみに本作ではランキングの1/3、補充ランカーの半分以上が強化人間と割合も大きめ。プレイヤーが熱によってアセンブル幅の狭さに苦しむ中、多くのCOMランカーが好き放題自由に機体を組んでいる。
      • 余談だが、ランク3のジャック・Oは上記の恩恵+重量過多*5無視という非常に強力な補正があるにもかかわらず、超鈍足・爆熱という凄まじい機体をしている。プレイヤー側で再現すると驚きのブースト速度2桁+即熱暴走。強さはともかく、不平等感はシリーズ随一。

ECMの仕様変更

  • 機体の対ECM性能がこれを下回っていると、レーダーとFCSに障害が発生し、敵をロックオンできなくなる仕様。本作では敵ACにも効果があり、効果範囲も作戦領域全体に拡大された。
    • 前作『3』『SL』で禁止武器の筆頭だったステルスと同様の効果という初心者殺しの仕様で、無駄弾が増える・何もできなくなる・エラー音は熱暴走やその他のものと共通で紛らわしい・戦闘時間が延びる等から多くの対戦会でもECMは禁止にされていたが、何故かN系最後の『LR』までこの仕様は続いた。
    • ミッションで遭遇するECMは、AC以外の敵に効果がなく、その他の敵はECM中でも二次ロック射撃(予測補正射撃)を行う他、プレイヤーの設置したECMすら無視してミサイル攻撃を行う。磁気嵐や特殊電波なども同様に対AC専用ECMであったり、敵が用いるECMだけ効果時間がなぜか永遠だったり、各種妨害中でも通信は可能等、不可思議な点が多い。
    • 対ECM性能は肩レーダーを積むと増加するが、肝心のロックオンは頭部パーツとFCSパーツの機能であり、レーダーが連動する仕様は無い筈だが……。ちなみに最高のECM対策をしてもこれを上回るECMを設置する事は容易。ミッションにも対策不能な高レベルのものが存在する。
    • 「両肩にレーダーを積む」というアセンブリがビジュアル以上の意味を持った事は評価すべき点であるとも言えるが、肩が重要な火器の装備箇所である事、元より両肩レーダーがネタアセン*6である事等を考慮するとどうにも腑に落ちない。しかもきちんとしたECM対策は両肩レーダーでなければ不足気味で、単一で対策しようとすると頭部とFCSに悪影響が出る。

ガレージの改悪

  • ガレージ画面のユーザービリティが全体的に低下
    • 各メニュー画面やガレージのフレームレートが半減したため、特に前作『3』『SL』と比べた時に表示の荒さが目立つ。
    • ロード時間はシリーズに共通する悪癖だが、本作では3機のACの読み込みが全て完了するまで操作不能になったため、より長めに。新パーツやチューンの効果をテストする度に機体の読み込みにけっこうな時間を待たされてしまうのは辛い。
  • ショップ関連
    • 対戦モードでパーツの売買ができなくなった。対戦派のユーザーに嫌われる要因となっている。チューンのし直しも不能。
    • パーツ売却が機体構築中に行えなった他、肩武器が左右共用から個別に変更され、それぞれ購入しなければならなくなった。
    • ショップの売買におけるパーツリストの一覧が削除された。ショップ画面はアセンブル画面のそれと同じに劣化し、全体数の把握が困難になり、目的のパーツを探す事さえ不便になった。しかも相変わらず褒賞パーツやショップの更新はパーツの型番名でのみ通知される。前作3系でも拾得したパーツには説明が出ずに何が手に入ったのか分かり難いなど欠点が目立っていたが、わざわざ悪化させてどうするのか疑問を感じる。
    • 中古仕様が新たに追加され、使用済みパーツはUSED(中古)扱いとなり、売却時に10%減額される仕様に変更された。テスト出撃のみなら中古扱いとはならないのだが、後述するパーツチューンによる強制中古仕様がこれを殺してしまう。
    • また、初期パーツが売却不可になったため、借金状態でも初期装備のアセンブリは保障されるようになったが、速度が重タンク並みの初期ブースタだけは何をしても使いようがなく、予備機としての意味が無い。しかもこのような仕様変更に至ってもなお、初期パーツではないコアは全ACのアセンブリから外してからでないと売却ができない。ガレージを往復する事になる。
  • パーツチューン
    • 新規登場したパーツチューンだが、非常に使い勝手が悪い。というのも、チューンには金がかかり、また一度でもチューンしてしまったパーツは売却しなければ初期化もできないのである。いちいちショップと往復しなければならないためかなり煩わしい上、前述した中古仕様もあって所持金が減っていく。その上で劣悪なセーブシステムと重なっているのだから…。
    • 熱の仕様とも絡むが、本作のチューンはしばしば『冷却一択(全振り)』と揶揄される。これは冷却性能の確保が重要である事は勿論だが、基本的に熱量が高いパーツほど実用に耐え得る性能を持っている事、そして冷却性能のチューニングの上昇値が大きい事にその理由がある*7
    • 対して装甲はチューニング幅が小さく、雀の涙ほどしか強化できない。全パーツを装甲フルチューンすれば合計はそれなりに大きくなるが、同じ事を冷却性能や重量で行った場合と比較すると……。

セーブシステムの改悪

  • ゲーム終了を選択した際に保存できるデータのみを正規としたシステムで、ゲーム途中でのセーブを「仮」として扱うというもの。仮データをロードするとペナルティが課せられる。また、データ管理画面からデータロードが削除され、やり直すにはいちいちタイトル画面に戻らなければならなくなった。
    • ミッション失敗に意味を持たせた上で安易なセーブ・ロードを抑制するための仕様だと思われるが、結局は遊び方を制限される上、ゲーム途中でも終了を選択し正規セーブを行うだけで回避できるので仕様の意味がない。
      • 後述する一部の隠しパーツはフリーミッションでは入手できないため、ある程度はどうしても失敗の保険のためにセーブ&ロードを繰り返す事になり、無駄にかかる手間と時間にイライラさせられる。
  • DISC2はこれまでと同じ方式のため、うっかりゲーム終了を選択しデータをパーにしてしまったプレイヤーも…。

アリーナの消滅

  • プレイヤーAC対コンピュータACのデスマッチ。初代・AC2AAを除き伝統的に存在する対COM限定の純対戦型モード。
    • 本作からミッションと同格になり事実上消滅。興行として取り仕切られている為、タイミングは不定期で、対戦相手も、対戦ステージも選択できなくなった。本作の世界観には合っているが、資金調達や気軽な操作練習などが出来なくなった点は痛い。
    • エンディング後には「フリーアリーナ」という恒例の通りのモードが追加されるが、こちらには前回の周回で生き残った・登場したレイヴンしか対戦できないという欠点がある。これは倒してしまったレイヴンだけでなく、ストーリー進行でランクから消えるレイヴンも含まれる為、前周でどんなルートを通ろうと対戦できないレイヴンも存在する。
    • 前作で非常に優秀だった敵ACのロジックが著しく劣化している点も痛いところ。
    • フリーアリーナでも対戦ステージはランダムで選択される上、ステージ数も4種類と少なく、どれも障害物の少ない似たり寄ったりな地形で、しかも狭い。プレイヤー対戦におけるステージは14種類と豊富なため尚更疑問。
      • そのプレイヤー対戦の舞台も3系からの引継ぎが多く、障害物に乏しい地形ばかり。

ミッション関連

  • 報酬が大幅に増額された上、殆どのミッションに契約金が用意されたために失敗時にも赤字になる事はほとんど無くなったが、さっさと任務を放棄し、前金だけをふんだくるという外道な荒業が効率的手段になってしまった(本シリーズは機体修理費や弾薬費の占める出費が莫大なため、最初から放棄してしまえば出費がなくなり丸儲け)。依頼主は涙目である。
    • 本作は放棄時にも失敗としてフェイズが進行する上、任務の成否による変化派生がミッションだけで本筋シナリオに影響しないため、「クリアしなければ進行しない」フェイズに到達するまでは延々と初期放棄していくだけで資金を得つつゲームを進める事ができてしまう。
  • ミッション開始直後に敵攻撃に見舞われる理不尽な状況が激増している。
    • 開始直後、計器類が表示される前にビームが、ミサイルが、という状況が日常茶飯事。なぜもっと前から戦闘モードに入らないのか。生物兵器を駆除するために出撃したら生物兵器に囲まれた状態でスタートし、即座に自爆に巻き込まれ熱暴走するというミッションもある(こちらはネタとして笑えるだけまだマシか)。どちらにせよリアリティが重視される割に不自然極まりない。
  • 前作『SL』で難点として指摘されていた大量の隠しパーツが健在。数こそ減ったものの、それでも60個以上*8
    • しかもこの内9個はフリーミッションでは入手できない。そのため周回プレイを行わなければならないのだが、本作はこれまでのシリーズのような「クリア後は全ミッションの開放」といったものが無く、全てフェイズ形式での進行となっているため、そこまでゲームを進める必要がある。
      • 失敗したら水の泡なので、セーブ&ロードを行う訳だが……セーブシステムの改悪については前述した通り。
    • また、企業の勢力(プレイヤーの成功失敗によって変動する)によって派生が異なるミッションなどもフリーミッションに収録されておらず、下手をするとゲームを何週もクリアしないとパーツをコンプリートする事ができない。中にはわざと失敗することでしか選択できない、失敗が隠しパーツの入手条件というミッションもある。攻略サイトなどを参照しない限りコンプリートはほぼ不可能。
      • 隠しパーツの入手条件を満たしても手に入らないということもある。バグなのかさらに隠された条件があるのかは不明だが、よりによってフリーミッションでは手に入らないパーツのため、下手するとこのパーツのために何週もやる羽目になる。
    • 対戦ツールの側面を含む以上、全てのパーツを入手してからが本番とも言える為、無意味に入手条件の難しい「通常の」パーツが「大量に」あるのは好ましいとは言えない。また、それら隠しパーツを多くのランカーACが遠慮なく使用している事にも賛否がある。

デザイン関連

  • 「新生」のキャッチコピーが打たれていた本作であったが、基礎デザインは3系から変更がなく、各パーツはほぼ全て続投
    • シリーズは初代、2系、3系と時代を経る毎にデザインが一新されてきた。また、大量の色違い武器パーツによるあからさまな水増しとして非難を浴びた3系『SL』でさえ、コアや脚部など外装パーツでは相当な数の新デザインのパーツが追加されている。しかし本作は3系とは直接関わりが無い*9にも関わらず3系の流用ばかりで変わり映えがない。挙句このデザインはN系最後の『LR』まで続くという手抜きぶり。
      • 同様に、デザインが同一でパーツ名や命名規則が変更された事も、3系のユーザーを戸惑わせる。個性化は企業の性質を表現する評価点でもあるのだが、それにしてもクレスト製パーツはあまりに覚え難く、ゲーム中で修得した・追加されたパーツ名が並んだ時など理解しづらい。
    • 企業名とその対立構図にも3系から変化がない。このためパーツを製造している企業と、デザインを流用しながら性能が別物に設定されている各パーツが違和感を生んでいる。
    • 流用はパーツデザインだけでなく多岐に渡る。いくらなんでも攻撃エフェクトまで流用はいかがなものか。
    • 効果音までも続投が多い。ゲームを開始してすぐに耳に入るであろう新鮮なシステムメッセージ表示音が聴こえたかと思えば、後は射撃音、爆発音、カーソル移動から決定・キャンセルまでそのほとんどが3系と同一。これでは雰囲気が変化するはずもない。

その他

  • 削られたシステム
    • 前作で好評だった僚機システムが廃止(エクストラ・アリーナ含む)。ごく一部のミッションの強制僚機のみになってしまった。
    • 護衛対象の基地などの援護射撃だけは継承している(味方増援系は悉く削られたが)。
  • ロックサイト関係
    • 基本的にサイト周りは厳しく調整されている。サイトの範囲は丁度前シリーズの「HARD難易度設定」に近いものになった。経験者ならばそれほど苦にはならないものの、初心者やNORMAL難易度に慣れたプレイヤーは厳しい。
      • ただし、これは「二次ロック」の仕様改善と合わせての調整なので、単純にサイト縮小=プレイヤーに不利な調整というわけではない。
    • 通称「W鳥」と呼ばれる、両手に銃を装備させるスタイルにはリスクとして更にサイトが縮小する。これ自体はバランスに一役買っているのだが、前述の通りブレードの大幅な下方修正に加え、装弾数や射程距離の全体的な低下調整などが重なって相対的に選ばざるを得ない状況になっている。
    • 前作までは武器毎に設定されている射程距離以上にはロックオンできない仕様になっていたが、本作からはFCSの捕捉距離がこれに影響する事でより遠くまでロックオン可能になった。ところが武器の限界射程はそのままのため、特に敵の射程外から攻撃を行おうとした時にしっかりロックオンして射撃を行っているのに敵の目の前で弾が消えているという理不尽な現象が起こる*10
  • マガジン仕様
    • お世辞にも上手く機能しているとは言い難く、マガジン制である必要性のない武装も多い。特に「10~12発ごとにリロードするマシンガン」はやりすぎ。撃つ→止まる→撃つ→止まる……、爽快感の低下に多くのレイヴンが悲鳴を上げた。
    • そもそも前作までのマシンガンは一人プレイや対戦問わずそれなりにバランスが取れており、マガジン内残弾すら可視化されていないマガジン仕様が本当に必要だったのか疑問が残る。マガジンの装填も「武器毎に定められた一定時間使用しない」事で自動的に行われるが、その際に何の情報も通知されないため装填完了を知る事ができない。
    • 装填前にマガジンやチャンバー内にあった残弾は新しいマガジンに引き継がれる…あれ?
    • フロム脳的にはマガジンとは考えず、砲身の冷却時間と捉えるべきであろうか。
  • 格納機能
    • 「パーツは一種類一つまでしか所持できない」仕様のため、右手・右格納ハッチや左手・左格納ハッチに同じ武器を装備する事が出来ない(逆なら可能)。装備の際の操作UIも劣悪で、手と格納の部位の装備の入れ替えなどが非常に面倒。
    • 余談だが、前作までは共用だった肩パーツは自動的に左右を付け替えたりといった事をしてくれる。過去作で出来ていた事を何故出来なくしてしまったのか。
  • 名銃カラサワの弱体化
    • カラサワ自体は基本的にシリーズ皆勤の初心者救済用武器という位置付けで、当然対戦では禁止される事が多い。だが、本作ではほぼ全てにおいてより強力な一般武器の登場により立つ瀬がなくなってしまい、粗末な扱いに旧来のファンは落胆した。余談だがスタッフもさすがにこの性能は不味いと思ったのか、次作NBでは弾数の増加などの調整がなされ一線とは言わないまでも十分な地位復権を果たしている。
  • 前作からの未修正不満点
    • 『SL』で産廃認定されたバースト武器の性能が未改善のまま。

ストーリー関連

  • ディスク1
    • ミッションの音声付依頼文(ディスク2には存在する)、CPUレイヴンの経歴の説明などが消滅。両者とも味気ない紹介になった。淡々とした事務的なやり取りはレイヴンに相応しいともいえるが、代償としてプレイヤーが依頼の背景が読み取りにくくなった。
    • マルチエンディングがあるかのように宣伝されていたが、エンディングは一種類のみ。そのエンディングもあまりに唐突な次回作『LR』への伏線で幕を閉じる。
    • 前のミッションの成否によって次に出現するミッションが異なったり、途中経過や内容が微妙に変化(バージョン)するが、ミッション分岐の条件が細かすぎて攻略情報無しではまず把握できない。しかも大まかな筋に変化は無く、敵の戦力数の変化ばかり。
    • クリア後に出現する恒例の「フリーミッション」では全ミッションの1割以上がプレイできず、かつ前週で未プレイのミッションはUNKNOWNとなっており選択できない。また、一部を除いて各ミッションの派生バージョンのうちの1つしかプレイできないため、実質的な総数はかなり少なめ*11
  • ディスク2
    • 全体的にシリーズ経験者向けになっており、説明を省いている箇所が目立つ。
    • 復刻ミッションのチョイス、アレンジ方法が微妙で、シリーズファンが満足できるとは言い難い。3作目『マスターオブアリーナ』のミッションは「潜水艦を護衛するミッション」ただ一つのみ。PS1シリーズを代表する最強AC「ナインボール」に関連するミッションは一つも無い他、名物レイヴン・スティンガーの活躍する2作目『プロジェクト・ファンタズマ』の扱いも微妙。リメイクの仕方もさることながら、「プロトタイプファンタズマ」という大ボスを登場させておきながら、その完成系の「ファンタズマ」と戦えるミッションが用意されていない。
    • ミッションをクリアするごとに「エクステンドサイド(そのミッションに関する新たなエピソードを描いたミッション)」「リバースサイド(そのミッションの裏側を描いたミッション)」が登場するのだが、派生元のミッションとの関連がいまいち分かりにくい。特に達成条件が敵勢力を全滅させるものばかりで、敵が入れ替わっただけの感が強く、ストーリー背景が読みにくいのも難点。
    • 全体的に高い難易度は従来のシリーズより不自由になった熱・機動力・弾薬不足などに起因する面が大きく、シリーズ経験者には無意味な制限プレイに近いものがある。
    • 難易度の高さの割に本作の厳しいアセンブリをクリアするのに欠かせない隠しパーツが多数存在する。
    • ファンにとってコレクションの価値のあるアーカイブだが、これの解禁には達成率が関係する。その達成率の内訳は、ミッションクリアの他に、出現ACの撃破、そして前述の面倒な隠しパーツの取得(コンプリート)と、悪名高いSランク取得が名を連ねる。ランク査定の基準も『SL』と同じく理不尽*12

既知のバグ

致命的なものは少ないが、一部バランスに重大な打撃を与えているバグ(あるいは理不尽な仕様)が存在する。

  • 「フリーミッション」でクリアしたミッションは必ず失敗にカウントされる。
  • 「フリーミッション」で挑んだミッション中のBGMの音量が跳ね上がる。
  • 左腕に火炎放射器を装備するとロックオンサイトが拡大される。
    • 実際はFCSの本来の範囲。例/広角FCS装備時→あらゆる武器が広角サイトになり、キャノン系が猛威を振るう。
    • 一応、火炎放射器は弱武器のままなのに前作から重量が倍以上に設定されている事から、公式で用意された救済処置(裏技)ではないかという説もある。

評価点

  • OPデモの進化が著しく、かなりカッコいい。ACの活躍を印象づけてくれる。
  • ゲームメニュー画面が一新。世界地図を背景とした擬似GUI方式は評価するプレイヤーも多い。
  • ミッション前のリアルタイムデモが激増し、演出力も向上した。随所でストーリーを盛り上げる。
  • オープニング音楽は『3』同様メイン・テーマのクワイア音を否とする意見もあったが、それでも依然として高い評価を維持。デジタルサウンドを駆使したアップテンポ調の激しい曲は人気が高い。担当は星野耕太氏。
    • ただ、微妙な曲も決して少なくはない。ある程度は好みの問題ではあるが、冒頭ミッションやランカーACの登場するシチュエーションに合った熱く激しいBGMに魅了される一方、単一でのんびりとした緊張感のない通常アリーナ戦のBGMや、時間制限のある襲撃ミッションながらスローテンポで変化のないBGM等、明らかに選曲を間違えているものも散見される。
  • パーツパラメータの日本語表記化と、ダミー・隠しパラメータのほぼ全廃。取っつきにくさの代表例ともいえたこれらの点が改善されたことで、パラメータ画面がだいぶ見やすくなった。
    • パラメータの解説やFCSなど、一部余計に分かりづらくなったパラメータもあるにはあるが、パーツを選択する上で基本となる『重量』や『消費エネルギー』『積載量』に加え各種防御力などパーツの性能をある程度直感的に判断できるようになったのは大きい。
  • 隠しパーツ有無の表示。
    • フリーミッションにて選択できるミッションに限り、隠しパーツ未取得の表示が追加されている。入手条件は非公開だが、これまでのシリーズでは全ての隠しパーツの入手が攻略本やネットの情報に頼らざるを得なかった為、一部とはいえ非常に嬉しい仕様である。
    • だが、何故かこの仕様はNXのみで、次回には引き継がれなかった。
  • ミッションの難易度引き下げ。
    • 大幅な仕様変更と前作『SL』の難易度に対する救済的な意味合いか、報酬が増額し、失敗してもかなりの額が貰え、自動的にストーリーも進行することから、クリア目的なら難易度は低い。
    • 仕様の複雑化などにより初心者に厳しい面も多いが、熱の重要性さえ分かればミッション自体の難易度はそれほどでもない(ヌルいという程ではない。というか所見殺しや初心者殺しのミッションは多数存在するので、そういう意味では初心者には勧められないのだが)。
    • 失敗時のゲームオーバー(強制的にタイトル画面に戻される)仕様が撤廃され、神経質にこまめなセーブを行う必要がなくなった。
  • 「難易度設定」の修正。
    • 対戦する際に大きな弊害となっていた難易度設定によるサイトサイズ問題が解決した。
  • 個性豊かなキャラクター
    • 後続作LRに出演する個性的なキャラクターは人気が高い。本作の時点では名前や声のみのレイヴンもいるが、突然アークから脱退し行方を晦ます同期のエヴァンジェや、二代に渡ってプレイヤーと生死を賭した激戦を繰り広げるファイアー親子とシリアスな路線から、ロケットオンリーの機体で挑むアモー、渋い設定とは裏腹にシステムに嫌われた装備でトップランカーを務めるジノーヴィー、俗に言う「アッー」ネタとして笑いを齎したジャック・Oなど後世でも愛されるキャラクターが多い。
    • 逆に言えば伏線を投げたままで、本作の時点では微妙なキャラクターも多いのだが。
  • 格納機能は本作の時点ではまだアセンブリに若干工夫は必要なものの、これまで右腕・左腕それぞれ一つずつしか持てなかったメイン武器のバリエーションの増加に一役買っており、パージ(装備解除)によって重量を軽くする戦術にもより深みを持たせている。
  • 両手銃でそれぞれ広角タイプと遠距離タイプの武器を組み合わせると、広角タイプ側のサイトが狭くなってしまう代わりに遠距離タイプ側のサイトが拡大でき、従来使いにくかった遠距離タイプ武器の地位向上に一役買っている。
  • 本作で導入された幾つかの新要素は後のシリーズ作品にも受け継がれることとなった。
  • プレイヤーを悩ませ続ける熱暴走だが、これは敵も同じ条件のため、(強化人間が相手でなければ)同じ方法で敵を苦しめる事が可能である事は見逃せない。熱暴走がしにくい機体であれば必ず別の弱点があるため、そういった予測も立てやすい。
    • 冒頭で述べた通り、熱暴走は明らかな調整不足であり仕様自体に問題はない。調整された『NB』『LR』では熱問題に関する批判が減り、よりラジエータ(冷却装置)や排熱を考慮した機体を構築する楽しみが増えている。
  • 暗視機能などの特殊なカメラタイプが生きるミッションがある。自分で暗視機能のON/OFF切替ができないのが玉に瑕だが、赤外線視界戦闘のような画面は一見の価値あり。
  • ファンにとってはDISC2のアーカイブ資料もうれしいものである。過去作品のアレンジBGMも多数収録。
  • 頭部パーツのコンピュータボイスが大幅に進化し、あらゆる状況で喋ってくれるようになった。特にコンピュータタイプ「新鋭」にもなると、敵ACの武装や戦闘スタイルなどの有益な情報まで知らせてくれるようになる。

総評

そこにあったのはファンの求めていた続編ではなかった。
新規プレイヤーの開拓に意欲的な姿勢が見える一方、事前体験会におけるファンからのクレームを無視して未修正のまま発売してしまった事は褒められたことではない。
本シリーズはいわゆる一人プレイ派や対戦派の他にも様々なユーザー層が存在し、それはアリーナを楽しむ層であったり、高速機動戦や空中戦を求める層であったり、破壊や制圧による爽快感を楽しんだり、シナリオを求めていたりと多種多様である。それらのファンに長年支えられていたシリーズであっただけに、新規層開拓とファン離れを発生させた本作の功罪は極めて大きい。
公式でも『3』『SL』と順調にPSP移植された所で、本作を差し置いて続編『LR』の移植版が発売されてしまった事からも、本作の立場は非常に厳しいものにあると言わざるを得ない所である。

ただし、アクションゲーム市場として視野を広げた場合、致命的なバグを持たず、依然として高い品質を保持しているゲームではある。本シリーズのような絶妙な機体の構築によるロボットへの浪漫と硬派な世界観を持つゲームは他になく、また批判点で挙げられた各項目を見て分かる通り、本作への批判は大半が過去シリーズ作品との比較に因る為、シリーズ新規参入プレイヤーからの視点、ならびに作品単体の品質から本作をクソゲーに分類するのは早計と言える。