「ドラえもんメモリーズ のび太の想い出大冒険」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
ドラえもんメモリーズ のび太の想い出大冒険
【どらえもんめもりーず のびたのおもいでだいぼうけん】
ジャンル
|
アクションゲーム
|
|
|
対応機種
|
ゲームボーイカラー(全GB共通)
|
発売元
|
エポック社
|
開発元
|
スタジオクリシェ 酒田エス・エー・エス
|
発売日
|
2000年3月10日
|
定価
|
4,179円(税込)
|
判定
|
クソゲー
|
ポイント
|
会話シーンとアクションシーンの温度差 ただし、キャラゲーとしての評価は高い
|
ドラえもんシリーズ
|
概要
ドラえもんの漫画30周年記念イベントと連動して制作・発売されたゲーム。キャラクター同士が掛け合う会話シーンを見つつ、合間に挿入されるアクションシーン内で漫画の一部を抜粋した「メモリアルショット」を集めるのが目的。
パッケージイラストこそ当時のアニメ絵だが、ゲーム内のグラフィックや源静香を「しずちゃん」と呼ぶなどの設定は漫画準拠となっており、漫画を熟読していないと元ネタがわからない会話シーンやクイズがあったりと、数あるドラえもんゲームの中でもターゲット層が従来と明らかに違う異色作。
ゲーム内容と流れ
会話シーン
-
全6ステージ。1~4ステージは幾つかのエリア、5.6ステージは1エリアのみで構成。
-
ステージを選ぶと、ドラえもんやのび太たちいつものメンバーによる会話シーンとなる。
-
会話の内容はメンバーが思い出話をする設定で、大長編を含めた漫画のエピソードを振り返るというもの。
-
5ステージはのび太の結婚式を見に行くため、6ステージは生前のおばあちゃんに会うためにタイムマシンに乗り目的地に向かうのだが…
+
|
さらにネタバレ
|
-
着いた先は無関係な工場や森で、結局これらの目的は達せられずに終わる''というよく分からないもの。
-
1ステージのみ登場のジャイ子やドラミの絵はあるのだから、おばあちゃんくらい用意してほしかった。
|
アクションシーン
-
会話シーンが終わるとアクションシーンに入る。
-
はじめにドラえもん・のび太・しずか・スネ夫・ジャイアンの5人からプレイヤーキャラクターを選ぶ。キャラクターにより「ステージ内のドラ焼きやお金を集めた数」「規定時間内にクリアする」「敵を倒した数」など、メモリアルショットを入手するための条件が変わる。
-
メモリアルショットは上記の条件を満たした状態、さらにはアイテムの「あとからアルバム」を入手しステージクリアした時にそれぞれ手に入る。
-
内容はオーソドックスなライフ制スクロールアクションで、アイテム回収をしながら先へ進みどこでもドアに入ればいいのだが…
-
このアクションシーンをクリアすると会話シーンの続きを見られる。
クイズ
-
メモリアルエリア(後述)直前にはライフ増加の特典があるボーナスクイズが始まる。
-
全3問。漫画を熟読していないとわからないレベルのものも多数。ただし次のメモリアルエリアは何度もやり直しができるので、不正解で何も特典が得られなくても特に不利にはならない。
-
エンディングを見るとタイトル画面から10問連続クイズにチャレンジできる。
メモリアルエリア
-
最終エリアは特定のキャラクターを操作し漫画のエピソードを体現するミッションクリア型のアクションシーン「メモリアルエリア」となる。
メモリアルショット
-
集めたメモリアルショットはタイトル画面から入る「メモリアルショット」で閲覧できる。
-
ただコマ絵を見るだけでなく、キャラクターデータやコミックスの掲載巻数とサブタイトル、あらすじなどの情報も見ることもできる。ポケットプリンタがあれば印刷も可。
評価点
原作ネタが多く、かつ拾い方が丁寧。
感動回、有名回に偏らず、重要エピソードをしっかり選んでいる。
-
アクションパート
-
射撃武器が『コエカタマリン』。しかも飛んでいく文字の上にもばっちり乗れる。
-
カタカナ4文字が切り替わりながら飛んでいくのだが、しずかなら「ヤキイモ」ジャイアンなら「ボエーー」などふさわしい4文字になっている。
-
セレクトボタンで切り替えるもう一方のひみつ道具も、破壊可能なブロックを壊す『モグラてぶくろ』と適切なチョイスをしている。
-
敵キャラも細かく原作から拾っている。
-
『恐竜』の恐竜ハンター、『日本誕生』のツチダマ、『南海大冒険』のお化けパイナップルなど。
-
メモリアルステージは、チョイスするエピソードと特殊ルールがしっかりリンクしている。
-
特に障害を乗り越えてのび太を救出するしずかの『ムシスカン』エリア、ドラえもんを避け、ジャイアンを撃破するのび太の『さようならドラえもん』エリアはうまく設定を落とし込めている。
-
会話パート
-
単に原作エピソードを振り返るだけに留まらず、原作の話題を切り口に一定の会話劇を繰り広げており、クオリティが高い。
-
会話で取り上げられるテーマは、親族系、大長編だけでなく、「のび太の家出」、「ジャイアンリサイタル」、「スネ夫の嘘」など幅広いテーマが拾われている。
-
会話の流れも、「調子に乗ってジャイアンにしばかれるのび太」「のび太の成長を見てほっこりするドラえもん」「未来の行動を謝るのび太に困惑するしずか」など、原作のパターンを上手く踏襲している。
-
メモリアルショット
-
チョイスされたエピソードが通好み。有名エピソードを抑えつつ、感動もの、親族ものに偏重していない。
-
『さようなら、ドラえもん』『のび太の結婚前夜』『おばあちゃんの思い出』などの有名エピソードは当然収録。
-
『ノンちゃんのクツ』『精霊よびだしうでわ』などのややマイナーな回、『むじんとうへいえで』『ふつうの男の子にもどらない』などのギャグ回もしっかり収録している。
-
グラフィックの再現度が極めて高い。『みらいの国からはるばると』の画像は初期の胴体が太かったドラえもんを忠実に再現している。
-
漫画のページ切り抜きではなく、重要コマを3~4個集めた画像になっており、ちゃんとストーリーを追えるようになっている。
-
一方で、「のび太としずか」と題されたメモリアルショットは、手をつないで歩いていくのび太としずかをドラえもんが見守るという一枚絵で、テーマの重要性をしっかり表現できている。
-
「恋するドラえもん」をテーマにしたメモリアルショットは、ハート形の枠にメロメロ状態のドラえもんを描き、周囲に恋煩いでおかしくなったシーンをちりばめるという凝ったものになっている。
-
短い解説も付属しており、キャラの基本設定、エピソード内容が追えるセリフ、テーマを象徴するセリフの抜粋がついているため、未読のエピソードにも興味が湧く作りになっている。引用には出展タイトルと収録巻もあるため資料集としても有用。
-
クイズ
-
ドラえもんゲームでもトップのマニア度を誇る一方で、まず誰も知らないような珍問は無く、絶妙な難易度になっている。
-
例:「しずちゃんが2ばんめにすきなたべものは?A.すし B.チーズケーキ C.やきいも」
しずかちゃんがやきいも好き、までは知っていても2番目を聞かれると困るファンは多いのでは?
-
「のび太をつよいイシからすくったのは誰?」「のび太をひゃっくタイマーからすくったのは誰?」などの似たような設問の問題は非常に知識豊富なスタッフが作成したことを感じさせる。
-
誤答部分も、正解と同ジャンルの固有名詞を作中から細かく拾っており、解答時の一言も含め原作の思い出を数多く想起させる作りになっている。
-
例「次のうちフニャコフニャオ作品のタイトルは? A.じくうパトロール7 B.スーパーコアラッコ 3.Dr.ストップアバレちゃん」。
「ハラハラコミックのしんねんごうでしんれいさいされたんだよね」としっかり解説も入る。
-
例「つぎのうちのび太くんがえんじていないのはどれ?A.ガッコーかめん B.セルフかめん C.あらわしかめん」「ほかにもフクロマンとかスーパーダンとかあったよね。」
ドラえもんに登場したヒーローをここまで挙げられれば相当なマニアも満足だろう。
-
途中で誤答したパターンでは、「ぼくは勉強して『勉強しなくてもあたまのよくなるきかい』を発明する!」としっかり小ネタを挟んでくる。
-
アクション面には、バリエーションをつけようと努力した跡は見受けられる。
-
横スク、登山、上がって下がる、下がって上がるなどアクション面のバリエーションが豊富。
-
ジャイアンだと敵の量が増える、ドラえもんだとどら焼きが増えるなどキャラによってステージが微妙に変化し、攻略の幅がある。
-
一部コエカタマリンに乗らないと取れないような配置のどら焼きも存在し、工夫のしどころはある。
-
アクション面の難易度はさほど高くなく、メモリアルショットの獲得自体は若年層でもわりと容易だろう。
-
アクションシーンの背景がやたら書き込まれている。
-
ただ、ゲームボーイカラーでは綺麗に見えるが、モノクロのゲームボーイでは見づらい。
-
作中のサウンドは版権問題からかアニメの曲は一切使用されていないが、クソゲーの例に漏れず良曲揃い。
-
ただしいずれも1ループが短めだったり、ノリのいい曲ばかりで地下ステージのBGMとして不似合いだったりという問題はある。
問題点
-
ファミコン初期のようなぎこちなさが目立つアクション。
2000年のGBレベルには到底達していない。
-
横スクロールのエリアはスクロールすると後ろへ戻れない。
-
下へ抜けられる床が多いので詰みこそ少ないものの、どら焼きや円マーク、『あとからアルバム』を見逃すと取り返しがつかない。
-
触れるとエリアの最初に戻されるトラップ『ふりだしにもどる』が、むしろ取り逃しを救済するアイテムになっている。
-
敵キャラのルーチン、ステージギミックもバリエーションに乏しい
-
敵キャラの動作は「壁に当たるまで直進」「近づくとジャンプ」「まっすぐ飛んでくる」程度のごくごく基本的なものしかない。
-
ステージギミックも、針山、落ちる足場、動く足場程度。
-
メモリアルエリアのみ、「跳ねながら向かってくる」「飛んでくる途中で高度を変える」「頭を覗かせたあとハイジャンプ2回」など、他のエリアに無い動きがある。汎用のルーチンにすればよかったのに……
-
方向転換の挙動が不自然。
-
正確には、後ろ方向へ入力すると半ブロックほど後ろへ移動した後に振り返るという動作になっている。1ブロックのスペースでは振り返ることができない。
-
『モグラてぶくろ』で岩壁を掘り進む場面など、思う方向を向けず四苦八苦させられる場面がある。
-
空中では振り向く動作をしないため、ジャンプ中の後方への制御が半ブロック分しかない。ジャンプの制御が難しいのはこれが理由だと思われる。
-
当たり判定が不自然で、上から踏んだのにダメージになった、横から当たったのに敵が死んだなどの納得いかない判定が多い。
-
のび太のメモリアルエリアでは、ドラえもんに触れると『ふりだしにもどる』が発動するのだが、「横から当たったのにドラえもんのみ落ちた」「相打ちしたのにふりだし不発」「ふりだしは発動したがノーダメ」など、さらに訳の分からない事態が起きる。
-
カメラワークがキャラ中央のみで、上下の足場が確認できない場面が多々ある。
-
停止中の上下キーでカメラを上下にずらす、当時でも一昔前のシステムを使わざるを得ず、テンポが悪い。
-
全体に『メトロイド2』のような探索ゲームにしたいのか『スーパーマリオブラザーズ』のようなジャンプアクションにしたいのか中途半端。
-
横スク、登山、登って降る、降って昇るなど多様な移動方向や、位置が明示されない『あとからアルバム』やゴール、ルートの2択があるマップなど、フリースクロールの探索ゲームにしたかったのではと思わせる要素が多い。
-
振り向きの挙動が不自然なのも、射撃武器を使う関係で体の向きと移動方向をバラバラにする必要があったのでは。
-
カーソル入力でカメラが動くのも探索ゲームならありがち。
-
一方で、高速クリアを要求する、落下死ポイントが多い、不可逆スクロールなど、アクション面では完全に前方一本道のジャンプアクションを意識している。
-
このあたりのちぐはぐさと、そもそもの技術力の低さから、どうにも古臭く完成度の低いアクションステージが出来上がってしまったのではないか。
-
演出面
-
各エリアは大長編や原作エピソード名を冠しているが、背景は森、砂漠、洞窟など数種類しかなく、通常エリアの原作再現要素は無い。
-
落下ミスの際は「ボシュッ」という効果音が鳴って突然キャラクター選択に戻される。ミス用のジングルなどはない。
-
アクションシーンのキャラクターグラフィックが今ひとつ。
-
せっかくのGBCなのに肌の部分が真っ白。コミックスの白黒のイメージだろうか?
-
体型のバランスが悪く目玉がやたらでかいドラえもんをはじめ、むくれたのび太、点目で善人面のジャイアン、顔の潰れたスネ夫、下膨れのしずちゃんなど、GBドラえもんの中でもクオリティが低め。
-
初代GB版や前年の「あるけあるけラビリンス」の方は半分のドット数でつぶれ気味だが、まだ特徴は捉えていた。
-
会話シーンなどその他のキャラ絵は極めて漫画の再現度が高いため、落差が目立つ。
-
回復アイテムとして配置されているどら焼きも、妙に色が明るく赤いフリスビーか地雷のように見える。
-
等身が若干大きめなので、粗いドット数のGBCでは若干きついと言えなくもない。ジャンプなどのアクションも動きが小さく地味。
+
|
参考画像
|
|
|
背景がそれなりに書き込まれているぶん余計に浮いている。
|
|
-
ドラ焼き以外のアイテムや会話シーンのキャラ絵は、なぜか透過されず白い背景がそのままついている。
-
キャラ絵の背景が残っているので、セリフ枠が変に切れてしまっている。
-
アクション面のアイテムは、背景を抜かないとGBプレイ時見にくいため仕方のない面もある。
-
メモリアルは赤外線通信でないと出現しないものもあるようで、ゲームボーイカラーとテレビのリモコン等がないとコンプリート不可能。
-
一応箱には「ゲームボーイカラーがないと手に入らない想い出があります」と注意書きがあるが、肝心の「想い出 = ゲーム内のメモリアルショット」であることはもちろん、ゲーム内容の説明すらない。
-
ここが一番のネックで、当時はGBCを売りにしたゲームが多く、グラフィックもGBCかどうかでも評価が分かれる。
-
メモリアルショット一覧が不便。
-
メモリアルショット画面はフィルム型のアイコンが並んでいるだけで検索性が非常に悪い。
-
NEWマークなども無く、音も無くアイコンが1つ増えているだけ。
-
2画面に無理やり納めずサムネイルにするとか、アイコンを使わずタイトルを縦並びにするとか、やりようはあっただろう。
-
クイズは日付を問う問題がやや多すぎる。
-
「ぐうたら記念日にしたのは何月何日?」「のび太のパパとママがお互いにプロポーズをしあったのはいつ?」など。
-
多いときは10問中3~4問出てくる時もあり、他の問題と比べて面白みに欠けるのでもう少し考えてほしかった。
-
フォントが良くない。「そ」と「を」、「ン」と「ソ」などが見分けづらい。
-
時代的にはよくある話なのだが、運の悪いことに「クンちゃん」というキャラに言及するため、見間違えるとギョッとさせられる。
総評
アクションゲームとしては、まるでお子様向けのような超低難易度な上、単調なアイテム収集作業をこなすのなんの面白味も見いだせない代物。対して散りばめられたネタの数々は、マニアも喜びそうなほど深いもの。双方の温度差が激しく、一体どの層を狙って作ったのかよく分からないゲーム。
事実上漫画のゲーム化であり、「原作漫画にスポットを当ててプレイヤーの想い出を呼び起こさせる」(説明書あとがきより要約)というドラえもんのキャラゲーとしては他に類のない観点のゲーム。実際、合間合間に入るストーリーの回想や会話劇はしっかりした作りになっており、オマージュ漫画並によくできている。ただそうは言っても、制作側の熱意が空回り気味かつゲームの出来が反比例なのは否めない。
漫画版ドラえもん名鑑およびカルトクイズを収録したキャラグッズとしては持っていても損はない。ただしドラえもん名鑑を完成させるまでアクションシーンの単調さに耐えられる、という制限つきでのオススメだが…。