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Lの季節 -A piece of memories- - (2012/02/16 (木) 10:28:32) の編集履歴(バックアップ)


Lの季節 ~A piece of memories~

【えるのきせつ あぴーすおぶめもりーず】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売元 トンキンハウス
発売日 1999年8月5日
ポイント かなりの意欲作だが、出来が粗い

概要

  • 現実界(普通の現代とあまり変わらない世界)と幻想界(人間以外の種族が当たり前に存在している世界)に分けられた世界で、主人公が手にした「七角ペンダント」を巡る事件が幕を開けることになる。
  • キャラデザに渡辺明夫(ぽよよんろっく)、主題歌に小松未歩の「手ごたえのない愛」を採用し、発売前から様々な雑誌で取り上げられ話題を攫っていた。
    • 発売の時期が夏休み近くという、学生・社会人共に攻略しやすい時期に適していたのも幸いか。

特徴

  • 物語の特定地点でプレイヤーの意見を「口出し」(キャラクターに対しての肯定的な意見か否定的な意見かを選択)し、それによりキャラの好感度や選択肢の内容を変更させるシステム。
  • ルート分岐の繋がり方や現在位置をイメージ化した、3Dマップがほぼいつでも参照できる。
  • 文中の難しい単語や、特別な用語の意味をボタン1つで参照できるTIPS機能付き。
    • TIPSを見ないと攻略に詰まるような類の仕掛けは存在せず、原則はあくまで便利なメモ帳。シナリオ上のちょっとした演出として使われる場面もある。むしろあのシーンのため用意した機能かもしれないが。
    • 現在となっては目新しくもないが、当時は採用作品数が少なく珍しかった。

口出しシステム、その功罪

  • 実際のところ口出しシステムそのものは、形を変えた選択肢の一要素でしかない。ただし口出しできるポイントで、特定のボタンを押して口出しモードを起動する必要がある。
    • ボタンを押さなければ普通に流れるだけなので、無用な選択肢を省略できるというメリットはある。これが通常の選択肢と同じ扱いだった場合、頻繁に、一見どうでもいいような感想選びで物語が中断してしまう。
    • 「選ばれていない側の主人公」が話しかけてくるという形式のため、もう一人の主人公と意識下で繋がっていることを暗示する側面もある。
  • かなり致命的なシステム上の欠陥として、早送りしていると容赦なく飛ばされるという問題が発生している。
    • 見た目には分かりやすいので、見落とすことはまずないはず。また口出しできるタイミングも余裕を持って、3ページ分ほどの期間が用意されている。が、それでもスキップボタンを押しっぱなしにしていると、うっかり飛ばしてしまうことは珍しくない。
    • スキップそのものが遅いことはせめてもの救いだが、同時に別の意味での欠点でもある。そして口出し場面を飛ばしてしまった場合、その遅いスキップで、また同じシーンをセーブした地点から読み直し……。
    • ある程度まで攻略が進み枝葉のルート埋め作業へ突入すると、「早送りしながら口出しアイコンを見落とさないように反応する」アクションゲームのような様相になってくる。

エモーショナルグラフ、その功罪

  • 口出しシステムの一要素……か……?
  • 説明書の記載では口出しシステムでのみ変化するように読めるのだが、実際には選択肢によっても変動している数値。
    もしくはそれをグラフ化したもの。いつでもボタン1つで参照できる。
  • 要するに「好感度」のこと。ただし本作のこれは相手からどう思われているかではなく、主人公側の思い入れを示している。
    説明書いわく「主人公の女の子に対する感情」。
    • 結局のところ作中での扱いは、一般的にいう「好感度」と大差ない。
      ただし一点だけ、決定的な違いが存在する。主人公の感情なので、何の説明もなく可視化されていても不自然じゃないのだ。
    • これが常時参照できるというのも、ADVとしてはそこそこ斬新な親切設計。
    • 基本はグラフ表示のみなので、具体的な数値までは分からない。しかも平面状に広がる形式をとっており、僅差のキャラ間のどちらが高いかなどは判別しにくい。
      • もっとも選択肢による分岐の方が重要なので、実際に高さ比べが影響する場面は少ないのだが。
      • 結果として一見するとグラフ上の好感度が高いヒロインを差し置き、別のキャラがメインのルートへ進行してしまうこともある。口出しシステムの売り文句に偽りありと言えなくもない。
    • 説明書等には記載されておらず隠し要素に近いが、ルート達成率が一定以上になると、好感度の実数値そのものまで表示されるようになる。身も蓋もないけど便利は便利。

3Dマップ、その功罪

  • 当時としてはかなり珍しいシステムだった。現在でも「地図の表示されるADV」は少数だろう。
    • 攻略の上では非常に助かる便利な機能。どこのブロックからどこへ向かって、何本の枝分かれがあるのか視認できるのはありがたい。自分がいつ、どこからどのブロックへ移動したか、おおよそでも分かるのは便利。
    • 何週かして物語の構造が掴めてくると、地図を参考にある程度はシナリオを先読みできるようになってくるのが面白い。またブロックの繋がり方や配置などから、攻略上のヒントとしても機能する。
    • 当然といえば当然なのだが、積み重ねてきたフラグや好感度なども影響するため、見えている分岐の全てを自在に移動できるわけではないことに注意。
  • なぜか3Dマップの表示機能が無駄に異様に凝っている。並んでいるのがただの味も素っ気もないポリゴンブロックであるにもかかわらず、拡大縮小は当然のこと、縦横軸の回転までも自由自在。
    • なまじ充実しているせいで、操作性はかえって悪くなっている。自在に動かせるというよりも、変な挙動をするせいで動かしにくいという感想を抱くことの方が多いだろう。特に最初のうちは意味が理解できず、投げ出したくなること請け合い。
    • 操作に慣れると、ぐるぐる回して動かすのが妙に楽しくもなってくる。攻略要素とは何の関係もないが。
  • 解放されていないブロックは表示されないので、初期配置の景観はかなり大嘘だったりする。
    • 最初の数回はあからさまにブロック数が増えるため、構造が変化したことには気づくだろうが。
    • 現在行ける可能性のあるルートのみが表示されているわけで、地図としては別に間違っていないともいえる。
  • ごく少数ながら、地図が間違っている箇所もある。実際には繋がっていない分岐がのびていたり、逆に移動できる場所が繋がっていないなど。

スキップ機能、その功罪

  • 遅すぎる
    • なまじ本文にボリュームがあるため、この遅さで周回プレイは辛い。
      • 一応、スキップしながらでも毎回、話の流れを追体験できるという見方はできるが…。
      • 早すぎると口出し場面が一瞬で通り過ぎてしまい、反応できないからかもしれないが…。
  • 口出し場面を容赦なく飛ばす。
    • 使わない場面で止まられても、それはそれでストレスかもしれないが…。
      • どっちがマシかと問われたら、止まってくれた方がありがたいのは明らかである。
  • 機能そのものは存在していて当然の代物であり、特に売り文句として記載されてもいない。
    • 使用中はスキップボタンを押し続ける必要がある。どうせだったらオートスキップ機能が欲しかった。スキップ機能がついているだけマシなのかもしれないが。

その他の問題点

  • コアなギャルゲーユーザーには、作品の中に垣間見える荒削りな部分や不出来な部分が許容し難かった。
  • まずは大筋のストーリーについて。
    • 現実界では1年前に今回の事件と似たような意識不明事件が起きていたが、主人公はその記憶を覚えておらず、また当時の関係者に聞こうとしても「関係のないことだ」「知らない方がいい」と邪険にされ、話を聞き出せない。
      • そのくせ最終局面で黒幕・トリスメギストスから「主人公がこの世界を2つに分けた元凶であり、1年前の意識不明事件の真犯人も主人公だ」と教えられ、いつの間にか蚊帳の外から台風の目に持ち上げられてしまう。
    • 幻想界では曲が浮かばないスランプから「魔楽譜」の力に頼ろうとする設定だけならまだしも、プレイヤーの選択や通るルート次第では他人に暴言を浴びせたり器物破損に至ったりと、ギャルゲー全般を通しても問題行動の多い主人公がプレイヤーの不快感を増幅させた。
    • またメインルートで事態に絡んだ「七角ペンダント(魔水晶)」も、サブルートではあっさり壊されたりあっさり封印されたりと扱いが非常にぞんざいである。
      • これに関しては「幻想界のサブルートで破壊もしくは封印される」「だから現実界サブルートでも影響力が薄くなる」、「メインルートは敵がその事態を回避した結果の展開」と、シナリオから読み取れる内容になっているはず。
    • 現実界冒頭で意味ありげに登場しながらシナリオに微塵も絡まない「青いヒガンバナ」など、設定倒れの部分も多く存在した。
  • また攻略制限が非常に厳しく、分担作業での攻略は泣かせプレイヤーの攻略スタイルを無視していた。
    • 現実界・幻想界共にメインキャラの死亡エンド(最終局面での)を見ないと別の世界のメインキャラのハッピーエンドに至れず、それを見た後でないとサブキャラの攻略が出来ない。
  • 何より問題なのは周回を前提にしたゲームシステムなのに、セーブデータとシステムデータが兼用であり、エンディングに至らないとまた最初から始められず達成率が上がらないという仕様(そしてセーブデータは3つしかない)である。
    • そのため達成率70%に至るにしても何度も最初からプレイしなければならない。
  • 女性のメインキャラのみフルボイス。男性にも重要キャラはいるのだが喋らない。
    • なまじ大半の主要キャラが喋るので、喋らないキャラの会話部分にどうしても不自然を感じてしまう。
    • 発売当時の事情を考えれば頑張っていた要素なのだろうが、引っかかるものは引っかかる。
    • 喋るキャラの演技そのものは全体的に良好。それだけに喋らないキャラの違和感が(以下略

余談

  • OPアニメの完成度は高い。
  • なぜかスクリーンセーバー機能がついている。
    • 妙に凝った代物なのだが、クリアしたことのあるヒロインのものしか選べない。つまり初期状態では使えない。でもPSソフトだから問題ない。もうどこから突っ込めばいいのか分からない。

その後の展開

  • 2009年に続編『Lの季節2』とのセットパッケージ『Lの季節ダブルポケット』が5pb.からPSPで発売された。
  • 2001年に世界観を共有する実質上の続編、『Missing Blue』も発売されている。発表順を考えると本来なら、こっちこそが『Lの季節2』のはずなのだが…。
    • 異様なまでにボリュームがありやりこもうとすると大変である、一部のルートでシナリオ展開に不満が残るなど賛否両論はあるものの、それなりに良作なので、念の為。