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プロ野球ファミリースタジアム - (2022/01/19 (水) 14:37:36) の編集履歴(バックアップ)


プロ野球ファミリースタジアム

【ぷろやきゅうふぁみりーすたじあむ】

ジャンル 野球
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 ナムコ
発売日 1986年12月10日
定価 3,900円
プレイ人数 1~2人
判定 良作
ファミスタシリーズリンク


概要

1986年12月にナムコが発売したファミコン用野球ゲーム。ファミコン市場の拡大期とプロ野球人気が重なったことや、3900円という手頃な価格設定から幅広い年齢層に受け入れられた本作は人気を博し、ファミコン通信が巻頭で集計発表していたゲームソフト売り上げランキングベスト10に半年以上ランキング入りを果たすなど、ロングセラーを記録した。また日本市場だけでなく『R.B.I. BASEBALL』*1のタイトルで米国市場にも輸出されるなど、世界中の野球ゲームファンにプレイされた。

選手データの概念や代打・リリーフといった選手交代、マニュアル守備、BGM付加などの要素を盛り込み、本作登場前の唯一の野球ゲームであった『ベースボール』(任天堂)の不満点を一気に解消、また本作に於けるシンプル且つわかり易いな操作手順は、その後発売された多くの野球ゲームにも取り入れられている。

ゲーム内容

  • ゲームモードは任意のチームを選び勝ち抜いていく1Pモード、2人で対戦し3試合を戦う2Pモード、さらにCOM同士の試合を観戦するWATCHモードの3つがあり、1Pモードはパスワードによる継続プレイが可能となっている*2
    • どのモードに於いても、10点差以上がつくとコールドゲームとなり、延長戦は回数無制限で決着がつくまで行われる。1Pの場合、プレイヤーは必ず先攻となり、WATCHモードで操作する以外に後攻でプレイすることはできない。
  • チームはセパ12球団をモチーフにした9球団に、ナムコゲームのキャラもしくはゲームタイトルが選手名になっている架空の球団「ナムコスターズ」を加えた10球団が登場。
    セリーグに関しては6球団全てを再現しているが、パリーグは西武をモデルとした「ライオネルズ」のみ単独チームとして登場し、近鉄・阪急・南海の3球団は親会社が関西の鉄道会社であることから「レイルウェイズ」、ロッテ・日本ハムは同じく関東の食品会社であることから「フーズフーズ」という連合チームとして登場している。
  • 選手データとして、打者には「打席」の他、ヒットゾーンの広さを表す「打率」・打球の飛びやすさを表す「本塁打」・足の速さを表す「走力」、投手には打球の飛びにくさを表す「防御率」の他、「利き腕」・「投法」・「スタミナ」・「最高球速」・「変化球の曲がりやすさ」が設定され、これらの要素により、選手及びチームの個性が表されるようになった。
    • なお走力は打撃時のみのデータであり、守備時の足の速さは全選手一律である。
  • 選手人数はスタメン8人+投手4人+代打4人の計16人。スタメン野手は固定され打順変更は不可、投手は先発型2人とリリーフ型2人で構成され前の試合で登板した先発型投手は次の試合では登板できない。リリーフ型は毎試合登板可能となっており、先発させるのも可能であるがスタミナが低めに設定されているため、完投させるのは難しい。なおCチームかわぐち(川口和久)・Lチームくどう(工藤公康)のように実際のプロ野球では先発ローテ組の投手であったが、選手枠の関係でリリーフ型に設定されている投手もいる。
  • 選手名はまだ肖像権や使用許諾に関する規定が曖昧な時代であったため、実名かそれに近い形で登場。原則として本作が発売された1986年時点での現役選手がゲームに登場するが、Gチーム・Sチームにそれぞれ「王貞治」「安田猛」をモデルとしたOB選手が登場している。
  • 現実のプロ野球球団をモデルとしたチームに加え、オリジナル球団として「ナムコスターズ」が登場。選手名は歴代ナムコゲームのタイトルやキャラクターなどから取られている。特にズバ抜けた俊足*3の「ぴの」は、イチローが西武の片岡易之を指して「ピノみたいでしょう」と評したり、巨人の藤村大介のあだ名が「ぴの村」になったなど、プロ野球選手の間でも俊足選手の例えに使われるほど有名。今作では一番打者が「まつぴ」であるため代打としてベンチ入りしており、元が『トイポップ』の主人公で同作がファミコンでは移植されていなかったなど知名度が低かった為と思われるが、以降ピノはスタメンの一番打者を勝ち取り、同作の主人公としてよりも本シリーズの俊足の一番打者として知られるようになる。
    また「まつぴ」も充分俊足でチーム内では八番の「らりいX」と並んで「ぴの」に次ぐ速さを誇っている。

評価点

  • 打高投低のゲーム内容。打者有利に設定されており、本塁打を打つ醍醐味を味わえる。
  • テンポよく進む試合。平均20分程度で終わるため、1日で1Pモードの勝ち抜き戦をクリアすることも可能。試合時間の短さから空いた時間の気分転換などにもプレイされる。
    • バックスクリーンに時計が表示されており、試合開始からの経過時間がわかるようになっている。
  • シンプルなゲームシステム。「ジャパンリーグの選手は投手以外の守備はオールマイティ」*4という設定であり、野手には守備力・守備位置・利き腕などの概念が無い。このため、実際のプロ野球のように代打を出した後の守備を考える必要がなく、スタメン下位にいる打力の弱い選手に最初から代打を出し、ゲームをより有利に運べる。
  • 取り扱い説明書に記載されていない隠し要素。
    • ダウンスイングやアッパースイング・同時押しによる素早い送球・表示データよりも優秀なTチームかわとう*5・代打選手の一打席目は本塁打データが上乗せされる*6・投手のスタミナの消耗量の違い*7などの公開されていない要素があり、これらのテクニックを使用すればゲームプレイにより幅を持たせることが可能。
    可愛らしい選手グラフィック。ずんぐりむっくりにデフォルメされた選手グラフィックは、ユーザーからも好評を博し、続編や業務用・PCエンジンへの移植作品などにそのまま流用されている。『ファミスタ'93』にて選手の体型がスリム化されたが、ユーザーに不評であったため、すぐに元の体型に戻されている。
+ 画像

左・初代選手グラフィック/右・'93選手グラフィック

問題点

  • 守備選手の足が極度に遅いことによる問題
    • 守備範囲も極度に狭い上、足が遅すぎてボテボテのゴロもバックスクリーンに到達するまで追いつけないことも
    • モーションも散歩のようにのんびり歩いているようなものであるため、ストレスのもとになりやすい
    • 稀に外野手からの返球が逸れることがあるが、ベースカバーに入った野手を動かせないため、他の野手に取りにいかせなくてはならない。足が遅いことが響いて捕球までに時間がかかるため、致命的な失策になる上ゲームの流れもスポイルしてしまう。
    • しかし、内野手がタッチに向かうときは素早い。
  • 外野ポールの下をすりぬける本塁打。この付近に飛球が当たると、インプレーとならずそのまま本塁打と判定されてしまう。その理不尽さから「ポール下の穴」とゲーム誌に揶揄された。*8
  • COMの守備が下手。フライ処理は無難にこなすものの、ゴロを横に追うのが苦手なため、平凡な内野ゴロを後逸してしまい長打にするケースがしばしば見受けられる。このためCOM同士の試合では大味な乱打戦になる場合が多い。
  • パターン化で容易にハメれるCOMの打撃。外角に逃げる変化球やフォークに弱く、これらの変化球が得意な投手を使えば、三振の山を築くことも可能。またインコースの球でのけぞらせ、打者を打席の端に移動させた後、外角に投げればあっさりと引っ掛かってくれるなど、左右の揺さぶりにも弱い。
  • フリーパスの二盗。走者一・三塁から盗塁を企図した場合、COMは重盗を警戒し二塁には絶対に送球しない。このためノーリスクでチャンスを広げることができる。
    • 現実でも仕掛けられた側に高度な判断が要求されるプレーであり、投手含む野手間の連携が取れずに本盗を許してしまうケースもザラにあるため、この場合の二盗に限りそのまま見送るケースも多い。うかつに「何が何でも送球する」仕様にしてしまったために一三塁であれば確実に得点できてしまう野球ゲームも見られたため、当時のAI的にも「いっそ送球しない」仕様としたのは英断とも言える。
  • スイッチヒッターがいない。まつもと(松本匡史)・よしひこ(高橋慶彦)・まつなか(松永浩美)など、スイッチヒッターをモデルにした選手は全て左打者に設定されている。なお、スイッチヒッターがファミスタに登場するのは'90から。
  • 四死球を連発するCOMえがわ(江川卓)。同選手の変化球データは「右16・左3・下0」となっており、キレの良すぎるカーブ*9が逆に仇となり、四死球を誘発しやすい。このため「Gチームとの対戦時には強引にでも左打者をそろえる」という攻略法が、当時のゲーム雑誌などに掲載された。
  • 合併球団にされた西武以外の当時のパリーグ球団ファンからは当然評価が悪い。
    • これらの球団を差し置いて加えられたナムコスターズも「自社製品の宣伝用のチーム」とも解釈できなくもないため、連合にされた球団のファンの中には心証悪く映った人もいたかもしれない。

裏技・バグ

  • 1P側のみ、ピッチャーにリリーフを出して、次にその交代したピッチャーが打席に入った時に代打を出すと、ピッチャーはそのまま、打席にはその代打のバッターが引き続き出場するというDH制のような状態になる裏技が可能*10
  • 試合開始直後、画面がスコアボードからバッターボックスに切り替わる瞬間にタイム(ポーズ)を出して、画面にピッチャー・バッター・キャッチャーも誰も表示されてない状態で代打を出すと相手のピッチャーが画面から消えてしまい、投球が全てボールになってしまうバグが存在した*11
    • COM戦で最初にこれをやると、四球連発で得点が稼ぎ放題になる。ちなみに100点を超えると画面上の表示は「0」に戻るが、記録自体はされている。

総評

初代の時点でほぼ完成されたゲームシステム*12は、シンプルながら奥の深いゲーム性を持ち*13、多くのゲームファンから支持を受ける。


その後の展開・余談

  • 本シリーズは『ファミスタ』の略称・愛称で親しまれ、続編もしばらくは『プロ野球ファミリースタジアム』と銘打っていたが、1989年に発売された『ファミスタ'89 開幕版!!』から略称である『ファミスタ』がそのままゲームタイトルに使用されるようになった。
    奇しくも昭和から平成に合った形になり『プロ野球ファミリースタジアム』は昭和、『ファミスタ』は平成というきれいな区切りにもなった。
    • 本作の人気を皮切りに翌年夏には『燃えろ!!プロ野球』が発売され1988年には更に『究極ハリキリスタジアム』など続々と新顔が登場し野球ゲームは本格的ブームとなる(1989年中期以降衰退)。更に他のスポーツゲーム続々と新作が登場し全体も賑わいを見せるようになる。
      • それまでは野球に限らずスポーツゲームすらも少なく『ベースボール』『テニス?』『ゴルフ』『ハイパーオリンピック』『サッカー』『10ヤードファイト』『ハイパースポーツ』『タッグチームプロレスリング』『バレーボール』『プロレス』『ファミリートレーナー アスレチックワールド』とたった11本しかなく、その内半分以上にあたる6つが任天堂のファミコンスポーツシリーズというほとんど見向きもされないジャンルだったので、本作は野球だけでなくスポーツゲーム自体のジャンルの活性化に大きく貢献したと言えるだろう。
    • ナムコ自身も以降「ファミリーシリーズ」として『ファミリーテニス』『ファミリージョッキー?』などのスポーツゲームを次々とリリースし、スポーツゲーム市場を更に賑わせていく。
  • 第1作目となる本作は、業務用への逆移植?をはじめ、パソコン・PCエンジン・ゲームボーイなど多くのプラットフォームにて発売、打順変更や球場選択、好調選手など細かな付加要素を加えつつファミスタは成長を遂げる。
    • 次世代ゲーム機に移行した後も、トップの座こそパワプロシリーズに譲ったもののなお新作がリリースされ続けている。
  • 西武以外のパリーグ球団が連合という形で登場した理由は「12球団を再現しようとすると容量が足りなかったので、当時セリーグに比べ圧倒的に不人気だったパリーグの球団を削り、主力選手だけを再現した」という説が一般的であった。
    • しかし、『ファミスタ2020』開発時期に行われたインタビュー「第5回 国民的野球ゲーム『ファミリースタジアム』シリーズのこれまでと未来」にて、本作のデザイナーを務めた岸本好弘氏はこの説を否定し、「プレイヤーにパリーグの選手を知ってほしかったが、それぞれの球団を単体で用意してもあまり強くなく結局セリーグ球団に流れてしまいかねないので、連合という形で強いチームにすれば使ってくれると思った」という、パリーグを思うが故の意図的な措置であったことを明かした。
      • 逆に、西武がその中で単独の球団として用意されていたのは「当時黄金期を迎えていて強さは充分であり、当然日本シリーズ常連でもあったため知名度は比較的高かったから」と推測できそうである。
    • なお、レイルウェイズで一括りにされた近鉄と阪急(の後継球団のオリックス)は2004年に実際に球団合併し、同じく纏められた南海の後継球団のダイエーも同年にソフトバンクに身売りしており、奇しくも2004年の球界再編問題を予言することとなった。
  • ファミスタオリジナルキャラに思われがちなナムコスターズのエースピッチャー「ぴぴ」にもちゃんとルーツとなるゲームがあり、それはアーケードで1982年に登場したナムコのコクピット型筐体のレースゲーム『ポールポジション』である。
    「ポールポジション」→「P.P.」→「ぴいぴい」(「゛」「゜」も一文字扱いのため字数オーバー)→「ぴぴ」
    • このように、かなり無理矢理なネーミングなため『ポールポジション』そのものを知っている者でも「ぴぴ」のルーズがそれと気が付かない人が少なくなかった。
    • ナムコキャラも年々そのメンツが増えていき『ポールポジション』自身が昔のものとなりつつあったこともあってか次作『'87年度版』限りで「ぴぴ」は現役を退いた*14
      • 上記の通り元はと言えば、このような文字数枠の都合で無理矢理押し込めた結果こうなったのだが、その語呂の良さ、1人プレーする場合は最初の相手がナムコスターズでその先発で出てくることから見る機会が非常に多いことで確固たる地位を築き、双葉社から刊行された「ファミコン冒険ゲームブックシリーズ」の『プロ野球ファミリースタジアム ナムコスターズの挑戦』では選手兼任の監督として登場している。またそれはシリーズのゲーム本編でもその設定が逆輸入されたかファミコン末期の『ファミスタ'93』では監督として登場している。
      • 結果的に「ぴぴ」はファミスタの独立したキャラとなり、元ネタの『ポールポジション』は後々まで語り継がれるような看板的存在にはならなかったこともあって、知名度では元ネタよりも圧倒的に高いものになった。
  • ナムコスターズは「ぴ」が多いと言われたが、それというのも上記の先発エース「ぴぴ」、1番打者の「まつぴ」、超俊足の「ぴの」という看板の3人の印象が強いせいである。
    • 実際にはこの3人のみで他には1人もいない。『'88』では「ぴぴ」だけでなく「まつぴ」も姿を消し、「ぴ」が付くのは「ぴの」1人だけになった。
  • 同作の北米版である『R.B.I. BASEBALL』はその後、ファミスタとは別に同作のパブリッシャーであるTengen自身の手によりシリーズ化され*15、1995年までシリーズ展開が続いた*16。うち、1992年発売の『R.B.I. BASEBALL 4』は日本でも発売された*17
    • 2014年、MLB Advanced Media(MLBAM)*18の手によりシリーズが復活*19。以降、シーズン毎に新作がリリースされている。2021年3月現在の最新作は『R.B.I. BASEBALL 21』である。
  • 平成もいよいよ終わろうとしていた2018(平成30)年8月*20に、メーシーからパチスロ機『SLOTファミリースタジアム』がパチンコホールで稼働を開始した。
    • 既に『ファミスタ』を正式名称としてから30年近くにもなるのだが、当初のフルネームで登場。
    • 「ファミスロ」と題して手軽なゲーム性をウリにしておりシンプルなノーマルAタイプ*21のスペックを採用している。液晶も搭載していないシンプルな構成。
      • BGMは本作は勿論のこと『ファミスタ'90』で一新されたものも採用されている。また、ナムコスターズの「ピノ」と「パック」がチャンス告知のランプになっている。
      • ファミスタ'91』でセーフやアウトは音声になったがセーフやアウトの音は本作から'90まで使われていた独特のSEが使われている。
    • 名前こそ当初の「ファミリースタジアム」だが、キャラクターは「ファミスタ」が正式名称になって久しい2000年以降のものに準じている。
      • この機種は5号機のため2021年一杯で撤去となった。