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トゥルー・ラブストーリー - (2014/02/15 (土) 08:36:16) の編集履歴(バックアップ)


トゥルー・ラブストーリー

【とぅるー・らぶすとーりー】

ジャンル 恋愛シミュレーション
対応機種 プレイステーション
発売元 アスキー
開発元 ビッツラボラトリー
発売日 1996年12月13日
価格 5,800円
廉価版 PlayStation the Best
1998年11月19日/2,800円
分類 良作
エンターブレイン恋愛シミュレーションシリーズ

概要

  • ギャルゲーブーム最盛期に発売された恋愛シミュレーションゲーム。
    シリーズが今なお存続している数少ないブーム期作品であり、新しいギャルゲーの方向性を示した。通称『TLS』。シリーズ内では『無印』『TLS1』。
  • メインヒロインに菊池志穂を起用していること(『ときメモ』の隠しヒロインの声優として有名だった)や高校を舞台にしていることから、当時乱発されていた『ときめきメモリアル』の二番煎じ作品だと発表当初は言われていた。また、発売前が人気の絶頂と言われた『センチメンタルグラフティ』の発売を翌年に控えていたり、作品自体の特徴から色々な意味で話題性の薄かった本作は、ほとんど話題にならないまま発売を迎える。
  • だが、発売されるやいなや、『ときメモ』や『サクラ大戦』に次ぐ第3勢力の一つとして認知され以後シリーズ化し、現在まで続く歴史の基礎を建てることになる。

内容

  • 高校2年生のある日、主人公は突然の転校を知らされる。残された時間は一ヶ月、最後の思い出として彼女を作ろう!というのが掻い摘みに掻い摘んだ内容。プレイヤーは最後の一ヶ月を恋人作りに奔走する。
  • ゲームが始まると、名前・自分のステータス・プレイする季節を設定する。
    • ステータス自体はクリアに支障は無いが、起きるイベントに関係する。ただし、高ければ良いという訳でもなく、低いことが条件のイベントもある。また、別に育成ゲームではないので、これ以降変更出来ないし変更されない。
    • ヒロインは固定キャラ5人+季節限定キャラ1人(全キャラ9人)で構成され、選択した季節によって一部登場するキャラクターが変わる。また、季節限定のイベントもある。
  • 一日の流れは、起床→登校(一日の行動設定)→下校(下校会話)→夜(日数進行・好感度チェック・セーブ)からなる。
    • 一日は、休み時間・昼休み・放課後1・放課後2で構成され、それぞれ移動を設定する。放課後2から帰ることも出来、学校内に加えて街中へ行くことも出来る。
      ここでヒロインと会うと会話が発生し、好感度が上がる。また、移動場所によっては好感度・ステータス諸条件によってランダムでイベントが発生する。
    • 帰宅後、妹の「みさき」の部屋に訪れることで、好感度をチェックすることができる。好感度は正方形の散布図で表示され、上に行くと友達度、左に行くと憧れ度の高さを表す。多くのキャラは上昇の仕方がどちらかにあらかじめ設定されており、最大値になると左上に到達する。

特徴並びに長所

  • 特徴的なキャラクターデザイン
    • 本作のみならず本シリーズ及び後継諸作品にも共通し、なおかつ最大の特徴。当時のギャルゲーといえばいかにもなアニメ絵がとにかく多く、それを嫌う人も多くいた。その代表ともいえるものが「カラフルな髪」だが、本作はそれがなく、黒かったり少々色素が薄い程度と全員「普通」である。現在ではそう珍しくなくなり、その程度か、と思うかもしれないが、発売当時はこれだけで多くの人に「普通の女の子だ」と言わしめた。それぐらいのインパクトがあったのだ。
    • また、身体設定も高校生女子の平均が参考にされているほど、「普通」にこだわっている。
    • 本作、というか3作までの特徴としては、松田浩二氏による温かみのあるキャラクターデザインが挙げられる。彼の描く「現実にいるような」キャラクターはシリーズの特徴を表しており、未だに好評である。
      • 松田氏の引退に伴い、4作目の『Summer days and yet…』と後継作では、『R』からグラフィックを担当している高山箕犀氏に変更された。松田氏と大きく画風が異なるが、彼は彼で肉質感ある絵が人気。また、シリーズの作風はしっかり押さえており、古参ファンからもなかなか好評である。
      • 本作はギャルゲーにおける地味なキャラクターデザインのパイオニアとなり、今でも同系統のデザインを指して「TLS系」と称される。
  • ゲーム自体は、上記の通りアドベンチャーとしてはオーソドックスなもの。だが、他作品と比べていくつか異なる点もある。
    • 高い自由度。この類のアドベンチャーは、シナリオに縛られて自由に移動したくてもできないことが多分にあるが、本作は基本的にシナリオが無く、起きるイベントも一部を除いて全て独立し、エンディングに関係ないものとなっている。
      • ただし、当時の多くの作品がこのようなタイプであったのも事実。「用意された展開を読む」のではなく、「プレイした数だけ展開がある」ことが当時の作品の特徴だった。
    • 好感度の上がり方はキャラクターによって既に設定されているのだが、イベントによって変更することができ(普通は友達傾向のキャラを憧れ傾向にするなど)、好感度上昇にも数通りの展開がある。傾向が変わるとイベントにも影響するほか、キャラの口調や態度まで変わる。
  • 本作のゲーム性における見せ場、「下校会話」システム
    下校時、誰かを誘うか誘われるかして一緒に下校すると発生し、固定24個+イベント限定3個の計27個の話題を振って会話をする。この時、画面左上に表示される距離ゲージが最大になると別れて終了、ハート(ドキドキゲージ)が大きくなると相手が緊張し過ぎて終了、好感度が一定値以下になると場が白けて終了となる。そのため、いかに終わらせずに会話を続けるのかが目的。終わらせずに目的地に着けば本編中の好感度に影響し、好感度高い状態ならデートに誘うこともできる。唯一デートに誘うことが出来るのはここだけなので、重要性は高い。
    • 通常はテンプレの会話だが、相手の好みの話題(好きそうなものを予想するしかないが……)を選ぶことで、特殊会話に繋がることがある。これが発生すると通常時より好感度が多く上がり、もう一度同じ話題を選択することで更に話が発展することがある。この特殊会話の数が多く、何度もやる必要がある下校会話イベントに締まりを与えている。また、好感度の高さによって同じ話題でも内容が変わる。好感度ダウンから好感度アップになるものもあるが、当然逆もある。
    • この下校会話では当然ヒロインと歩きながら話すことになるが、なんと画面がフルアニメーションで動く。質は時代を考えても決して高くないが、細かい背景の変化や表情の変化まで付けており、臨場感は十分に出している。
    • 唯一と言えるゲーム部分なので、決して低い難易度ではない。少し慣れたからといって、アイテムの準備が足りない、起こしたイベントが少ない、好感度が低いなど油断をするとすぐ失敗してしまう。かと言って、好感度が上がる話題は大抵ドキドキゲージを上げてしまうので、その調整が難しい。
      • ただし、あえてドキドキゲージを上げ、恥ずかしがる反応を楽しむ人もいるにはいる……。
  • このように、無駄に戦略性が高く、なおかつ画面効果もあってリアルな下校風景を演出している。
  • 音楽と「雰囲気」
    • キャラクターデザイン・下校会話と並ぶ本作の肝の一つ。後に『グランディア』を手がける岩垂徳行が担当した音楽はどれも高品質・高評価で、メインテーマから泣かせてくれる。また、演出とシナリオの関係上ゆったりとしたバラードが多い。
    • 冷静に考えると、上記のように「転校するまでに彼女を作ってやる!」というエロゲーのようなシナリオ(簡単にいうと本当にこんな感じ)だが、それを見事に隠すのが、作品全編に漂う物悲しい雰囲気である。
      雰囲気ゲーの要素を持っている以上、文章で説明するのはかなり難しい。だが、季節を選択する点を活かした背景の諸演出(桜・枯れ葉が舞う、喋る時に白い息を吐くetc)によって現実感を強くしていたり、夕日を強く印象付けるイベントが多く、更にそれらの発生期間を月末付近に集中させるなどで雰囲気を盛り上げる点は多い。
    • 主人公の性格は当時のギャルゲーの中でも個性が薄い部類であり、物語に没入しやすい。もちろんそれだけではなく、OPのモノローグはかなり感傷的で、音楽と組み合わさって本作の雰囲気を早速醸し出している。
  • 当時はもちろん現在でも人気の声優を多く起用しているため、安定した演技が望める。

短所

  • キャラクターデザインは確かに斬新だったが、それは同時に彩りが無く地味であるということでもあり、売り上げに響いた。
    また、松田氏の事実上最初のゲーム作品であったため、後の作品に比べて氏特有のクセが特に強いのも欠点である。
  • 更に言えば、デザインだけでなくキャラクター性も「普通」。ギャルゲーらしいぶっ飛んだ展開を期待すると見事にガッカリする(もちろん、無個性であるということではない)。
    • のちの『2』では比較的丸い絵柄になりながらも、氏の長所が良く活かされたデザインになった。キャラクター性も多少強化されている。
  • アドベンチャーゲームとしての操作性が正直良くない。
    • ○ボタンに文章送り、×ボタンに音声スキップが振り分けられているのだが、○単体では音声を飛ばせず×単体では文章を送れないので、
      会話を早く進めるには、×で音声スキップ→○で送る……とピアノ打ちをしなければならない。
    • タイトル画面でしかロードが出来ない。運要素が強く関わってくる内容ゆえに何度もロードする可能性があるのだが、その度にリセットする必要がある。
    • 今の快適な作品に慣れていると、いや、当時の作品でもイライラするかもしれない。
  • EDでの主人公のモノローグの「別れてしまえば終わり」がまさかの賛否両論を呼ぶ。転校直前になってから(別れる事前提で)恋人を作ろうとする事自体が疑問だが。
    • 「これがあってのTLS」という意見もあるが、ある意味救いのないEDに、『R』では変更された。
  • 90年代半ばの初期ギャルゲーにありがちな、時代錯誤なセンス。これを懐かしいととるか古臭いととるかで大きく変わる。

トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~

【とぅるー・らぶすとーりー りめんばーまいはーと】

対応機種 プレイステーション
Windows 95/98
発売元 アスキー
開発元 ビッツラボラトリー
発売日 【PS】1997年12月11日
【Win】1998年7月24日
価格 【PS】3,800円
【Win】8,800円*1
分類 良作

概要

  • 上記作品のベスト版とは別に、アスキーが発売した廉価版。廉価版とは言っても、問題点の修正、追加要素を収録した実質完全版扱い。
    後述する目的以外なら、間違いなくこちらを買うべきである。通称『(TLS)R』。

主な変更点

  • 問題点がほぼ一掃された。
    • メッセージ送りに関する欠点が解消され、×ボタンでメッセージスキップができるようになった。また、長押しで自動送りすることもできる。ただし早送りではないので、過度に期待しないように。
    • 帰宅後なら、いつでもロード出来るようになった。これによって、やり直しがある程度利くようになった。
  • 内容についてもいくつか変更がみられる。
    • 前作では声が無く、シナリオ上ただでさえ空気なのにさらに空気だった男キャラに声優がついた。声優も石田彰と石川英郎という安定したキャスティング。更に一定条件を満たせば友情EDを迎えることもでき、男キャラの扱いが良くなった。これが原因か定かではないが、以降の作品では、ギャルゲーにしては男キャラがかなり良い扱いを受けている。
    • デートイベントの追加。前作まで1回しか行けなかった(場所が1か所しかなかった)デートが、今回は3回行くことができる。
    • 妹の「みさき」と一緒に帰ることができる。また、条件によってデートも誘うことができ、単なる「情報屋」ではなくなった。ただし、彼女との下校会話は、シリーズトップの難易度として知られる。あくまでも一般作なため妹と結ばれることはないが。
    • 内容とは関係ないが、メニューにイラストギャラリーが追加され、それまでに出たCDのジャケット・ポスター・描き下ろしイラストを見ることができる。

総評

  • ギャルゲーから敢えてゲームとしての面白さを取っ払い、残った恋愛要素に最大限のエネルギーを注ぎ込んでキャラクター・演出・雰囲気に特化させた本作は、ギャルゲーに新たな可能性を示した作品である。いかんせん地味な印象は拭えないが、それでも独特な雰囲気・キャラクターに魅せられたファンは多く、未だにシリーズが続く長寿作品となった。
  • シリーズ自体は2004年の4作目『True Love Story~Summer days and yet…~』を最後に止まっているが、シリーズスタッフが後継作の『キミキス』を06年に、『アマガミ』を09年に発表し、曲がりなりにも存続している。また、後継作から入り、遡って本作をプレイする流れもあり、見逃せないタイトルだといえるだろう。
  • それだけに、いずれの作品もゲームアーカイブスで配信されていないのが悔やまれる。救いは、割と安価に手に入るということか。

余談

  • 本作を語る上で決して外せないのが、今や日本のトップアクターともなった仲間由紀恵。なんとテーマソングを歌い、CMにも出演。また、取り扱い説明書には彼女の紹介まで掲載されている。
    • プロダクションのプロフィールにもきちんとCDの欄に書かれている。ただ【PS用ゲームソフト「 アスキー 」テーマソング】と盛大に誤記されている。
    • 評判はどうかというと、作品世界を最もよく表現しているとしてTLSベストソングとされることが多い。さらに、OPムービーはサンライズが作っているだけあり高品質で、シリーズ最高傑作だとされる。ただし、歌はあまり上手くない……。
      • 後に『R』が発売された時、版権か事務所との折り合いかでOPとEDがアニメともども差し替えられたが、それが原因で批判されるくらい人気がある曲だった。そのため、旧OPを目的に未だ初期版を愛用するファンもいる。
      • 因みに『R』のムービーを制作したのはディジメーション(現:GONZO)。