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デルトラクエスト 七つの宝石 - (2016/04/30 (土) 01:30:52) の編集履歴(バックアップ)


デルトラクエスト 七つの宝石

【でるとらくえすと ななつのほうせき】

ジャンル フルタッチARPG
(実際はAADVの方が近い)

対応機種 ニンテンドーDS
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 アウディオ
発売日 2007年9月20日
定価 5,040円(税5%込)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
セーブデータ 1個
判定 なし
ポイント 完成度の高い世界観
DS機能のフル活用
爽快だが不親切でもあるシステム
人によっては隠れた名作

概要

エミリー・ロッダ作のファンタジー小説『デルトラ・クエスト』の第1シリーズ「沈黙の森」から「帰還」までの範囲を素材にゲーム化した作品。

システム

  • 一部画面はボタンで操作もできるが、全編タッチペンによる操作を取り入れている。
  • 探索
  • DS下画面に映るマップをタッチペンで触れると、その位置にキャラクターが直線的に走ってくる。なぞるように動かすことでキャラを滑らかに移動できる。
  • 戦闘
    • アクションRPGと紹介されているが、操作キャラはリーフ、バルダ、ジャスミンの3人のうち一人を選ぶことになるので、事実上のアクションアドベンチャーである。
    • 体力はゼルダシリーズのようなハートマークの残機性、敵の攻撃によって1~2個ハートが奪われ0になると最後にセーブしたところからリスタートになる。
      調合や敵のドロップで入手できる食べ物や回復アイテムを使うことで回復できる。
    • 操作キャラに隣接している敵をタッチすると持っている武器で切り付ける。
  • キャラをタッチペンで弾き出すようにスライドすることでダッシュ突撃ができる、またダッシュ直前にタッチペンでホールドすることで力をためられる。
    • 上画面は波型曲線のバイオリズムが表示されており、最高に達したときに敵を攻撃するかマイクに音を感知させることで、キャラ固有の必殺技を放つことが出来る。
      • 波型曲線の平均値は、敵に攻撃を当てると上昇、敵から攻撃を受けると低下する。武器が強化していれば、レベルに応じて放てる必殺技が強力なものに。
  • マップ
    • 章マップ選択画面から、攻略するマップに入る。
    • 小マップを転々としながら探索を行う、エリアチェンジ方式をとっており、なお初めて敵と遭遇したエリアはその敵を全滅させないと出られないシステム。
    • 敵は倒すと主人公たちを強化する装備用の素材をドロップするが、経験値などはないため、スルーして構わないが、初回遭遇時のみ敵は全滅させる必要がある。それ以後は無視することができる。
  • キャラの強化
    • 経験値によるパワーアップが無い代わりに以下の方法で強化できる。
    • リーフの鍛冶
      • ステージの各所に設けてある鍛冶台を使うことで、持っている武器の攻撃力を上げることが出来る。武器レベルに応じて出せる必殺技の選択肢も増えていく。また
    • ジャスミンのまぜまぜ部屋(ルーム)
      • 経験値によるキャラ強化は無く、敵のドロップや宝箱から入手する素材を調合し体力の最大値を底上げ、及び強化効果を付加する防具・アクセサリを作成することで強化を図る。なお装備はリアルタイムで着せ替えが可能。
  • アイテム
    • 装備品は1つでも作成してしまえば、3人で使いまわすことが可能。3人同時装備もできる。
    • 手持ちの消費アイテムを最大5個まで持ち運ぶことが出来る。ザコ敵を倒すと確率で体力回復用のアイテムをドロップするほか、素材から合成することもできる。
  • 攻略には全く関係のないアイテムだが、レアドロップアイテムとしてモンスターに関するトリビアカードがある。このカードを集めることでモンスター図鑑がどんどん埋まっていく。
  • クリア後
    • 全100Fあるダンジョン「夢幻の塔」に挑戦できる。マップがランダムで変わり、登り階段を探して突破していく~途中セーブや自動回復ができないので、3人を上手に使い分ける技量を問われる。
    • 10Fごとにボスが登場、20,40,60,80,99Fは本ダンジョンオリジナルのドラゴンと戦うことになり、100Fにたどり着くとゲームのBGMをいつでも聞けるようになる。

評価点

  • 爽快性を重視
    • 戦場をものすごい速さで駆け抜けることが出来る。あまりにも速いので違和感を覚える人も多いが、ゲーム攻略のテンポには大きく貢献している。
    • システムなどの粗などはあるが、シナリオと演出は原作にあるどこか怖いが痛快な雰囲気の作出に成功しているだろう。
  • 敵の挙動
    • 雑魚敵もワンパターンではなく、足の速さや攻撃力の高さ、遠距離攻撃の有無などのバリエーションが存在する。
      後ろから攻撃しないとダメージを与えられない、近づくまで姿を現さないなどの特殊な敵もいる。
    • ボスもアクションゲームとしては奥の深い動きをする。予備動作を見たり、攻撃パターンを読んだりとプレイヤーの戦略性も問われる。
  • BGM
    • その場の雰囲気に沿った様々な楽曲が用意されている。
    • 他のゲームでは聞けない、おどけた曲調のものも多い。
  • グラフィック
    • キャラの立ち絵やボスのドットグラフィックは原作がもつハイ・ファンタジーの雰囲気を損なわない。
    • 実際、行動できる範囲は狭いのだが2画面使った綺麗なステージ背景が広がることもあり、世界の狭さを感じにくい。
    • ボス戦闘も2画面使用されており、上の画面からボスの次の攻撃を予測できるようになっている。
  • なお本作のシナリオアレンジは野島一成氏、BGMは崎元仁氏が担当している。

賛否両論点

  • 原作改変
    • ゲームの都合上、存在を省かれているキャラ、原作と異なる行動をしているキャラがいる。
      本ゲームは軽快なアクションとシナリオに重きを置いているので、ゲームのテンポを損なわないための良い改変とする見方もある(決して原作のテンポが悪いという意味ではないので注意)。

      またゲーム単体で見た時にそれなりに楽しめる展開も存在する。

      +
    • フェルディナンドのイカサマシーンカット
    • 魔女テーガンは登場するが嘆きの湖では彼女の子供と戦うだけで直接戦わない。魔物の洞窟ではじめて決闘することに
    • ネリダが全編にわたって登場しない。
    • ルーカスの兄、スカールが暴れるシーンカット。
    • ファーディープの謎解きもカット。ゲームでは謎解きの代わりに試練を課してくる。
      • 逆に明らかに設定が説明不足であり、原作未読だと混乱する場面も存在する。
        +
      • 章ラスボス全般の生い立ち
      • チュルナイからの脱出口のキノコ(原作ではカビ)とネズヌクが着ている服についての説明
      • 後半の展開
        • デインとは結局戦って倒す展開になるものの、こちらの協力者だったという設定に改編。
        • ラスボスが影の大王ではなく、それを復活させようとするファローに変更。
          • 原作と反する展開ではあるものの、シナリオ自体の熱中度は高い。
  • 一方で、この小説の根幹となるジョーカーとアンナの正体関連は分かりにくい部分でもあるのだが、ゲームではしっかり再現されている。
  • 操作が単純すぎる
    • ニンテンドーDSの機能をフルに使うという意欲が大いに認められるうえ、評価点ではアクションが軽快と述べたが、まだまだ発展途上な点も存在する。
    • ゲーム進行という目線からすれば主人公たちの足の速さは良い点でもあるのだが、やはり慣れない人にとっては違和感が強い。
    • ザコ敵の戦闘はヒットアンドランのスタイルが基本。そうしないとダメージを受けてしまう。
    • 操作をタッチペンのみにした弊害で攻撃手段が少ない。よって人によっては戦闘をごり押しに感じやすい。
    • バイオリズムによる必殺技はマイクが音を感知することでも発生できるため、ひたすら逃げ回って高威力の必殺技を撃ち続けることも不可能ではない。
      特に敵の攻撃が激しくなる隠しダンジョンではこのような行為に逃げがち。
  • 3人選べない戦闘
    • RPGと銘打ってはいるが実際はアクションアドベンチャーである。
    • リーフ、バルダ、ジャスミンの3人のうち1人を選んでステージを攻略していくことになり、操作キャラの体力が0になると残りの2人は関係なしにゲームオーバーになる。
  • 絵のタッチ
    • アニメらしくない特有の癖があるので、受け入れられない人には受け入れられないかもしれない。
    • こちらはこちらでかなり繊細な美しさがある。

難点

システムが全体的に不親切、および調整ミスが見受けられる。

  • セーブデータが一つしかない
    • 過去にクリアした章に挑戦できはするものの、シナリオをもう一度楽しむことが出来ない。
    • 特に攻略に対して悪影響はないのだが、作中にこなしたミニゲームや特殊ダンジョンも二度とは入れずにカット。一通りマップに進むと唐突にボス戦が始まったりする。
    • また本ゲームシステムの鍛冶、ジャスミンのまぜまぜ部屋はやり直しが効きにくい事もあり相性が悪い。
  • 3人のバランス
    • 3人は体力と攻撃力に関してはバルダ>リーフ>ジャスミン、攻撃の速度ではジャスミン>リーフ>バルダという性能差がつけられているが、前者はストーリー終盤になるとあまり意味が無くなってしまうので基本的な立ち回りはヒット&アウェイが得意なジャスミンがやや有利と思われる。
  • セーブポイントがやや少なめ
    • 本ゲームは独特な操作方法もあり、敵のボスの動きが機敏なため難易度が高いので、何度かゲームオーバーになる。
      • しかし一度見たムービーをスキップする機能が無いのでテンポが悪くなってしまう。
  • 所持アイテムの使用順序を入れ替えることが出来ない。
    • 「どくのくすり」のような使用者にとってデメリットにしかならないアイテムも存在するが、捨てることはできずアイテム所持欄から除外したいなら使うしかない。
  • 主人公たちのパラメータ強化について
    • ステージの各所に設置してある武器強化施設「鍛冶」が各セーブデータごと1度きりしか使えないので、進め方次第では武器を最強にできない事もありうる。
      • ジャスミンが未加入の時にも行える鍛冶ポイントがあるが、この時に武器強化を行ってしまうとジャスミンの攻撃力が後れを取ることに。
      • また持っている金属・鉱物素材を武器に合成できるのだが、その効果が一定時間で切れてしまい、肝心の隠しダンジョン「夢幻の塔」攻略時には効果を活かしづらい。
  • 上述のジャスミンのまぜまぜ部屋の仕様
    • 鍋に素材を投入し一定時間かき混ぜる(時計回りのみ対応)ことで素材を合成できる。
      このかき混ぜが足りないもしくは素材の組み合わせが不適切だと鍋にどんな素材を入れようが「炭」が完成し、逆に早すぎると素材が鍋から遠心力で吹っ飛んでしまう。この場合は「炭」の入手もできない。
    • レシピを入手することもできるが、レシピには載っていない素材の組み合わせもいくつか存在するが、間違えた素材の組み合わせを行うと上述の通り、問答無用で「炭」と化す。
    • 素材自体は無限回収できるものの、通常の攻略では間違いなくレア素材もあるので失敗すると後の難易度に影響することもありうる。
      + 有用な調合
      • 水晶(=虫の羽+はちみつ+青リンゴ)
      • 回復の薬(=緑のコケ+ハチミツ)
      • 金の指輪(=金)
        • 敵を攻撃すると確率で体力を1つ回復する。
    • 良くも悪くも失敗して覚えろというスタンスなので、成功したときの喜びは確かに大きいが失敗のリスクも大きい。
  • TOMの店
    • 証を示す(「W」を上下逆にしたようなマークをタッチパネルに書く)と店の商品を割引で購入できるが、これを入店するたびに毎度やらなくてはならない。
    • 具体的な値段の変動を覚えていない限り、ずっと割引価格だと勘違いして損するケースもありうる。
  • グランドファームの使い方
    • ファームを経営するおじさんの作物を魔物から守るという話をつけた後、3回にわたって襲撃してくる魔物を退治すると彼から作物のおコボレをもらえる。
    • DS内蔵時計で1日が経つ(時計操作によるペナルティ無し)ごとにモンスターが襲撃してくるのだが、そういった説明が一切ないので放置して作物がやられてしまったプレイヤーが多いのではないだろうか。

その他、細かい難点

  • 「終章:帰還 デルへ」で七種族が集まった小屋を探すミニゲームがあるのだが、そこにたどり着くヒントが難解。単に答えも固定されている2択クイズなのだが正解に至る理屈が不明。
  • ステージマップには足場の有無が存在し、足場を踏み外すと転落してダメージを受けてしまうのだが、このダメージを無効化するアイテムの入手方法が分かりにくい。
    • ルーカスの店で非常に限られた時期(ゲームのイベント1回限り)で購入するか、とある敵のドロップを待つかで入手できるが、殆ど情報が与えられないので、入手方法はおろか存在自体に気付かずプレイする事にもなりうる。
    • もっとも転落によるダメージは小さく、ゲーム攻略に大きな差しさわりがあるわけでもないが、隠しステージの「モキートの館」の終盤はこのアイテムの有無で難易度が激変する。
  • 活かしきれない通信機能
    • 本作には本ソフトを持つ人同士でワイヤレス通信し、メモ帳を介して攻略のヒントを教え合ったり敵のドロップアイテムであるコレクションカードを共有したりが可能だが、あまり広く出回った作品ではないのでこの機能が十分に生かせた例は少ないと思われる。
      • 特に前者は口頭で伝えるかネットで攻略法を調べた方が早い、という根本的な問題が存在する。

総評

DSならではの機能を存分にかつかなり自然に生かせているという特徴もあるが、肝心のアイテムやセーブシステムで粗が目立つ、アクションゲームとして単調などの点がなければ十分良作となりえたであろう惜しい作品である。
プレイのハードルがやや高い一方でそれに耐えることが出来れば、美しい絵と音楽、演出で描かれる世界観と原作の雰囲気を味わうことが出来るため、原作が好きもしくはデルトラ・クエストのシリーズのお話に興味がある人はプレイして損はないだろう。