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トゥルー・ラブストーリー - (2021/02/18 (木) 19:54:43) のソース

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*トゥルー・ラブストーリー
【とぅるー・らぶすとーりー】
|ジャンル|恋愛シミュレーション|&amazon(B000069U1I,image=https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51nB5aBmzaL.SL150.jpg)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売元|アスキー|~|
|開発元|ビッツラボラトリー|~|
|発売日|1996年12月13日|~|
|定価|5,800円|~|
|廉価版|PlayStation the Best&br()1998年11月19日/2,800円|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[エンターブレイン恋愛シミュレーションシリーズ]]''|

**概要
ギャルゲーブーム最盛期に発売された恋愛シミュレーションゲーム『トゥルー・ラブストーリー』の第一作。通称『TLS』。シリーズ内では『無印』『TLS1』。~
シリーズが今なお存続している数少ないブーム期作品であり、新しいギャルゲーの方向性を示した。~
メインヒロインに『ときメモ』声優として有名な菊池志穂を配したこと、高校を舞台にしたギャルゲーであることから、当時乱発されていた『[[ときめきメモリアル]]』の二番煎じだと発表当初は言われていた。それだけならまだしも、『[[センチメンタルグラフティ]]』の発売を翌年に控えていたり、作品自体がとにかく地味だったりで、ほとんど話題にならないまま発売を迎える。~
だが、発売されるやいなや、独特な作風と「地味」はむしろ作品の個性となり、『ときメモ』や『[[サクラ大戦]]』に次ぐ第三勢力の一つとして認知されるほどになる。その後シリーズ化した『TLS』は、現在まで続く歴史の基礎を打ち建てた。

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**内容
-ある日、親の転勤により、転校することを突然知らされた主人公。最後の思い出のため、転校まで残された一ヶ月を恋人作りに奔走する。
--同様に転校までに恋人を作る、と言う内容では『初恋物語』が挙げられる(「ときめきメモリアル」同様、初期ギャルゲーの祖ともいえる存在)。

-ゲームが始まると、名前・自分のステータス・プレイする季節を設定する。
--ステータス自体はクリアに支障は無いが、起きるイベントに関係する。ただし、高ければ良いという訳でもなく、低いことが条件のイベントもある。また、別に育成ゲームではないので、これ以降変更出来ないし変更されない。
--ヒロインは固定キャラ5人+季節限定キャラ1人(全キャラ9人)で構成され、選択した季節によって一部登場するキャラクターが変わる。また、季節限定のイベントもある。

-一日の流れは、起床→登校(一日の行動設定)→下校(下校会話)→夜(日数進行・好感度チェック・セーブ)からなる。
--一日は、休み時間・昼休み・放課後1・放課後2で構成され、それぞれ移動を設定する。放課後2から帰ることも出来、学校内に加えて街中へ行くことも出来る。~
ここでヒロインと会うと会話が発生し、好感度が上がる。また、移動場所によっては好感度・ステータス諸条件によってランダムでイベントが発生する。
--帰宅後、妹の「みさき」の部屋に訪れることで、好感度をチェックすることができる。好感度は正方形の散布図で表示され、上に行くと友達度、左に行くと憧れ度の高さを表す。多くのキャラは上昇の仕方がどちらかにあらかじめ設定されており、最大値になると左上に到達する。

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**特徴並びに評価点
-''特徴的なキャラクターデザイン''
--本作のみならず本シリーズ及び後継諸作品にも共通し、なおかつ最大の特徴。当時のアニメやギャルゲーといえば、原色を多用したカラフルなキャラクターが主流だった。本作のキャラクターは、例えば、髪なら黒かったり少々色素が薄い程度と''全員「普通」''の見た目である。もっとも、絵柄自体はデフォルメの効いたアニメタッチであるし、現在では珍しいことではない。しかし、発売当時はこれだけでも強い独自性だったのだ。
--本作から『TLS3』まで関わった松田浩二氏によるキャラクターデザインも評価が高い。温かみのあるタッチで描かれる「現実にいるような」キャラクターは、未だに好評である。
--松田氏の引退に伴い、4作目の『Summer days and yet…』と後継作では、『R』からグラフィックを担当している高山箕犀氏に変更された。松田氏と大きく画風が異なるが、彼は彼で肉質感ある絵が人気。また、シリーズの作風はしっかり押さえており、古参ファンからもなかなか好評である。
---本作はギャルゲーにおける地味なキャラクターデザインのパイオニアとなり、今でも同系統のデザインを指して「TLS系」と称される。

-ゲーム自体は、上記の通りアドベンチャーとしてはオーソドックスなもの。だが、他作品と比べていくつか異なる点もある。
--''高い自由度。''この類のアドベンチャーは、シナリオに縛られて自由に移動したくてもできないことが多分にあるが、本作は基本的にシナリオが無く、起きるイベントも一部を除いて全て独立し、エンディングに関係ないものとなっている。
---ただし、当時の多くの作品がこのようなタイプであったのも事実。「用意された展開を読む」のではなく、「プレイした数だけ展開がある」ことが当時の作品の特徴だった。
--好感度の上がり方はキャラクターによって既に設定されているのだが、イベントによって変更することができ(普通は友達傾向のキャラを憧れ傾向にするなど)、好感度上昇にも数通りの展開がある。傾向が変わるとイベントにも影響するほか、キャラの口調や態度まで変わる。

-本作のゲーム性における見せ場、''「下校会話」システム''。~
下校時、誰かを誘うか誘われるかして一緒に下校すると発生し、固定24個+イベント限定3個の計27個の話題を振って会話をする。この時、画面左上に表示される距離ゲージが最大になると別れて終了、ハート(ドキドキゲージ)が大きくなると相手が緊張し過ぎて終了、好感度が一定値以下になると場が白けて終了となる。そのため、いかに終わらせずに会話を続けるのかが目的。
--終わらせずに目的地に着けば本編中の好感度に影響し、好感度が高ければデートに誘うこともできる。
---好感度が高いと、学校で相手から誘ってくることもあるが、能動的にデートに誘えるのはここだけなので重要性は高い。
--通常はテンプレの会話だが、相手の好みの話題(好きそうなものを予想するしかないが……)を選ぶことで、特殊会話に繋がることがある。これが発生すると通常時より好感度が多く上がり、もう一度同じ話題を選択することで更に話が発展することがある。この特殊会話の数が多く、何度もやる必要がある下校会話イベントに締まりを与えている。~
また、好感度の高さによって話題が与える効果も変化し、それまで良い印象だったのに悪くなったり、逆に悪い印象だったものが良くなったりする。
--この下校会話では当然ヒロインと歩きながら話すことになるが、画面がフルアニメーションで動く。質は時代を考えても決して高くないが、細かい背景の変化や表情の変化まで付けており、臨場感は十分に出している。
--唯一と言えるゲーム部分なので、決して低い難易度ではない。少し慣れたからといって、アイテムの準備が足りない、起こしたイベントが少ない、好感度が低いなど油断をするとすぐ失敗してしまう。かと言って、好感度が上がる話題は大抵ドキドキゲージを上げてしまうので、その調整が難しい。
---ただし、あえてドキドキゲージを上げ、恥ずかしがる反応を楽しむ人もいるにはいる……。

-このように、戦略性が高く、なおかつ画面効果もあってリアルな下校風景を演出している。

-''音楽と「雰囲気」''
--キャラクターデザイン・下校会話と並ぶ本作の肝の一つ。後に『[[グランディア]]』を手がける岩垂徳行氏が担当した音楽はどれも高品質・高評価で、メインテーマから泣かせる。また、演出とシナリオの関係上ゆったりとしたバラードが多い。
--物語自体は「転校するまでに彼女を作ってやる!」という身も蓋もないものだが、それを見事に隠すのが、''作品全編に漂う物悲しい雰囲気''である。~
雰囲気ゲーの要素を持っている以上、文章で説明するのはかなり難しい。だが、季節を選択する点を活かした背景の諸演出(桜・枯れ葉が舞う、喋る時に白い息を吐くetc)によって現実感を強くしていたり、夕日を強く印象付けるイベントが多く、更にそれらの発生期間を月末付近に集中させるなどで雰囲気を盛り上げる点は多い。
--主人公の性格は当時のギャルゲーの中でも個性が薄い部類であり、物語に没入しやすい。もちろんそれだけではなく、OPのモノローグはかなり感傷的で、音楽と組み合わさって本作の雰囲気を早速醸し出している。

-当時はもちろん現在でも人気の声優を多く起用しているため、安定した演技が望める。

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**問題点
-キャラクターデザインは確かに斬新だったが、それは同時に彩りが無く地味であるということでもあり、売り上げに響いた。&br()また、松田氏の事実上最初のゲーム作品であったため、後の作品に比べて氏特有のクセが特に強いのも欠点である。
--更に言えば、デザインだけでなく''キャラクター性も「普通」''。ギャルゲーらしいぶっ飛んだ展開を期待すると見事にガッカリする。もちろん、無個性であるということではないが、本作では、分かりやすいキャラクターはまずおらず、またキャラクターを掘り下げるイベントも多くないので、多分に想像に任される部分が多いのも事実である。
--のちの『2』では比較的丸い絵柄になりながらも、氏の長所が良く活かされたデザインになった。キャラクター性も強化されている。

-UIが酷い。
--○ボタンに文章送り、×ボタンに音声スキップが振り分けられているのだが、○単体では音声を飛ばせず×単体では文章を送れないので、&br()会話を早く進めるには、×で音声スキップ→○で送る……と''ピアノ打ちをしなければならない。''
--タイトル画面でしかロードが出来ない。運要素が強く関わってくる内容ゆえに何度もロードする可能性があるのだが、その度にリセットする必要がある。
--システムがまだこなれていなかった時代とはいえ、これらの挙動は当時としても十分すぎるストレス要素になっていた。まして、快適な操作性の研究が進んだ現在からみると非常につらい。
//--今の基準で見ると、ストレス必至である。
//現在の視点ではなく、あくまで当時の基準で考えるのが原則。ただし、このUIは当時でもキツい。

-EDでの主人公のモノローグの''「別れてしまえば終わり」''がまさかの賛否両論を呼ぶ。転校直前になってから(別れる事前提で)恋人を作ろうとする事自体が疑問だが。
--「これがあってのTLS」という意見もあるが、ある意味救いのないEDに、『R』では変更された。

-90年代半ばの初期ギャルゲーにありがちな、時代錯誤なセンス。これを懐かしいととるか古臭いととるかで大きく変わる。

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*トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~
【とぅるー・らぶすとーりー りめんばーまいはーと】
|対応機種|プレイステーション&br()Windows 95/98|&amazon(B000069U1S,image=https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41uOoZue4PL._SL160_.jpg)|
|発売元|アスキー|~|
|開発元|ビッツラボラトリー|~|
|発売日|【PS】1997年12月11日&br()【Win】1998年7月24日|~|
|価格|【PS】3,800円&br()【Win】8,800円((アクセサリBOX Vol.2同梱))|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
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**概要(完全版)
-問題点の修正、追加要素を収録した廉価版であり、実質完全版扱い。通称『(TLS)R』。

**主な変更点
-問題点がほぼ一掃された。
--メッセージ送りに関する欠点が解消され、×ボタンでメッセージスキップができるようになった。また、長押しで自動送りすることもできる。ただし早送りではないので、過度に期待しないように。
--帰宅後なら、いつでもロード出来るようになった。これによって、やり直しがある程度利くようになった。
--一度クリアした後なら、ブロローグを飛ばすことが出来るようになった。周回プレイが前提のゲームであるため、嬉しい機能である。
---便利な機能だが、何故か『2』には実装されなかった。また、飛ばす際の選択肢に、『する』か『しない』の他に、『してもしなくてもどちらでもいい』がある。選ぶと、『する』と同様にプロローグが始まる。ちなみに途中で飛ばせない。なんであるの?

-内容についてもいくつか変更がみられる。
--前作では声が無く、シナリオ上ただでさえ空気なのにさらに空気だった男キャラに声優がついた。声優も石田彰氏と石川英郎氏という安定したキャスティング(共にドラマCDからの起用)。更に一定条件を満たせば友情EDを迎えることもでき、扱いが良くなった。これが原因か定かではないが、以降の作品では、ギャルゲーにしては男キャラがかなり良い扱いを受けている。
--デートイベントの追加。前作まで1回しか行けなかった(場所が1か所しかなかった)デートが、今回は3回行くことができる。
--妹の「みさき」イベントの強化。条件によってデートも誘うことができ、単なる「情報屋」ではなくなった。ただし、彼女との下校会話は、シリーズトップの難易度として知られる。あくまでも一般作なため妹と結ばれることはないが。
--内容とは関係ないが、メニューにイラストギャラリーが追加され、それまでに出たCDのジャケット・ポスター・描き下ろしイラストを見ることができる。
--OP/EDアニメが一新された。

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**総評(共通)
従来のギャルゲーから敢えてゲーム要素をオミットし、残った恋愛要素に最大限のエネルギーを注ぎ込んでキャラクター・演出・雰囲気に特化。一方で女の子との交流で恋愛するという、ある意味本当の意味での恋愛「シミュレーション」としての面白さを追及した本作は、ギャルゲーに新たな可能性を示した作品である。~
気を衒ったストーリーでも、派手なキャラクターでもない。地味な印象は拭えないながらも、独特な雰囲気・キャラクターに魅せられたファンは多く、後継作も加えれば15年以上続く、息の長い長寿シリーズとなった。

シリーズ自体は2004年の4作目『True Love Story~Summer days and yet…~』を最後に止まっているが、共通するスタッフにより、『[[キミキス]]』から始まる新たなシリーズ作品が発表され、存続している。~
それぞれ、様々な試行錯誤の下で新しいことに挑戦し続けているが、根底にあるのは、初代から変わらないコンセプトである。そういう意味で、その源流として見逃せないタイトルであるといえるだろう。

それだけに、いずれの作品もゲームアーカイブスで配信されていないのが悔やまれる。~
救いは、割と安価に手に入るということか。

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**余談
-本作を語る上で決して外せないのが、今や日本を代表する女優となった仲間由紀恵。今となってはなかなか想像もつかないが、当時まだ駆け出しだった仲間は、アニメ、ゲーム楽曲や声優もこなす、いわばオタクアイドル的な売り出し方がされていたのだ。『TLS』はその皮切りとなった作品であり、''テーマソングを担当している。''CMにも出演する他、取扱説明書には宣材まで掲載されるという、実に熱心なプッシュ振りが見て取れる。
--なお、評判は非常に良い。作品世界が最も表現されているとしてシリーズ楽曲の中でも人気が高く、''サンライズ''が作るムービーどが相まって、シリーズ最高のOPだとされる。((もっとも、曲の出来はともかく、正直なところ歌はあまり上手くない。))
--仲間のオタクアイドル路線は数年で終わったものの、当時の仕事((他の有名どころでは、翌年発売の『ロックマンX4』OP・EDや、『HOUNTEDじゃんくしょん』OP・ED、出演等。))はそれなりに評価されており、彼女がブレイクする足掛かりになったと言える。ただし、プロダクションHPのプロフィールでは【PS用ゲームソフト「 &bold(){アスキー}」テーマソング】と盛大に誤記されている。
---『R』では事情によりOPとEDが差し替えられたが、それが唯一のマイナス点だとされるくらい人気があった。そのため、旧OPを目的に未だ初期版を愛用するファンもいる。
---因みに『R』のOP・EDは、メインヒロイン・桂木綾音役の菊池志穂氏。ムービーはディジメーション(現:GONZO)が制作を担当した。
-数々の誤植で有名な「ゲーメスト」では桂木綾音の登場作を''『[[センチメンタルグラフティ]]』と誤記した''ことがある。たまに作品名を間違えたり、[[メーカーを誤記>バーニングフォース]]することもあったが、よりによってあのセングラと間違えるとは…。