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シャドウハーツ - (2019/05/26 (日) 10:29:20) のソース

*シャドウハーツ
【しゃどうはーつ】
|ジャンル|RPG|CENTER:#amazon(B00005OVS9)|
|対応機種|プレイステーション2|~|
|発売元|アルゼ|~|
|開発元|サクノス|~|
|発売日|2001年6月28日|~|
|定価|7,140円|~|
|廉価版|PlayStation2 the Best&br;2003年11月6日/2,079円|~|
|レーティング|CERO:15歳以上対象&br()※ベスト版で付与されたレーティングを記載|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|ポイント|恐怖と愛と笑いのRPG&br()舞台は近代の現実世界&br()独創的なシステム&br()魅力溢れる主人公|~|
|>|>|CENTER:''シャドウハーツ'' - [[シャドウハーツII]] - [[フロム・ザ・ニューワールド>シャドウハーツ・フロム・ザ・ニューワールド]]|
#contents(fromhere)
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**ストーリー
1913年、フランスのルアンで一人の神父が殺害された。神父に連れ添っていた養女アリスは発見されず行方不明となった。~
その数ヵ月後、アリスは中国大陸、満州の列車で日本軍によって護送されていた。~
しかし突如として列車の中に日本兵の断末魔が響き、その先からシルクハットにスーツ姿の老紳士が現れる。~
その紳士こそ養父を殺した男ロジャー・ベーコンであった。~
~
その頃、『フュージョン』の能力を持つ主人公ウルは頭の中に流れ込んでくる謎の声に導かれるままその列車へやってきていた。~
『フュージョン』とは倒した魔物の魂と融合しその力を使う特異能力である。~
『彼女を守りなさい』 そう命じる謎の声にウルは鬱陶しく思いながらも、アリスを守るためにベーコンと相対した。~

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**概要
1913年、第一次世界大戦前の中国大陸及びヨーロッパを舞台にしたRPG。~
サクノスの旧作『[[クーデルカ]]』の15年後を舞台とした続編的作品であり、クーデルカの登場人物・設定も引き継いでいる。

『クーデルカ』の原作者である菊田裕樹は既にサクノスを退社していた為、残ったスタッフによって製作された。~

本作の監督・脚本は『クーデルカ』の美術監督を務めた板倉松三。氏が同じく監督・脚本を務めた『[[ファーゼライ!]]』のキャラクターデザインだった加藤美也子、作曲の弘田佳孝がそれぞれを引き続き担当している。

//-中世でもSFでも現代でもない現実の近代を舞台にしている、というだけでかなり異色のゲームだがジャッジメントリングをはじめシステムも斬新。
//-しかしそれらの要素は奇を衒いすぎて滑っているわけではなく、斬新なりにバランスがとれており、むしろ新鮮味に溢れている。
//-ホラー・怪奇的な表現・演出が多く、モンスターデザインなどはクトゥルフ神話を彷彿とさせる。
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**構成
-シナリオは前半の亜細亜編と、後半の欧州編の二つに分かれる。
--亜細亜編は基本的に一本道で、町やダンジョンはクリアすると二度と行けなくなる。~
欧州編は一度行った町なども自由に戻ることが出来、それに比べると自由度が高くサブイベントが充実した構成になっている。

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**ゲームシステム
***ジャッジメントリング
-本作の象徴的なシステム。簡単に言えば、目押しの容易なルーレットを用いて様々な判定をするというもの。戦闘の各種行動・アイテムの値切りや高値での売却・一部の謎解き・ミニゲームなどに使用される。

-リング内を時計回りに回転するバーが一周するまでの間に、ヒットエリアという範囲内にバーがある時にタイミングよくボタンを押すことで行動を成功させることができる。戦闘では、ヒットエリアより狭い「クリティカルエリア」内でボタンを押すことで、通常よりも大きな効果を発揮することができる。
--基本的にどの戦闘行動もヒットエリアは広めなので、慣れれば外すことはあまりない。しかしクリティカルエリアを狙おうとすると途端にシビアになり、一瞬でも入力が遅れればリング失敗となってしまうので、戦闘の緊張感を味わいやすい。
--また「ヒットエリアで妥協するか、クリティカルエリアに挑戦するか」といった選択の幅も生まれている。
--回復アイテムを使う際なども当然ジャッジメントリングによる判定を行い、クリティカルエリアに止めれば''アイテムの効果も本来より大きくなる''。そのため回復したい場面でクリティカル狙いに失敗して回復失敗となり、ピンチに陥ってしまうといったことも。

-強力な行動ほどヒットエリアの幅が狭かったり、必要なボタン入力回数が多かったりといった「リングの難易度」も高い。またリングの難易度が上がる状態異常やバーの速度を減少させて難易度を緩くする装備品があるなど、ジャッジメントリングによってゲームバランスを上手く調整してある。
--「物理も魔法も優秀でSPも高いが、攻撃のヒットエリアが狭く癖のあるキース」などジャッジメントリングによってもキャラの能力が差別化されていたり、バランスが取られている。リングが苦手な人はよりヒットエリアが広く使いやすいキャラを使えばいいし、慣れてきた人はその逆をすればいい。
---とはいえ、全体的に能力が優秀でフュージョンができ、ヒットエリアも大きいウルが一番強い。が、主人公であるゆえに基本的にパーティーから外せないことと一騎打ちするシーンが多いので批判はない。

-アイテムの売買の場合、任意でディスカウント(値引き)やプライスアップ(高値での売却)に挑戦できる。これらに挑戦するとジャッジメントリングによる判定を行う。判定に失敗すると逆に高値で購入することになったり、安値で売却してしまう。

-別のゲームの似たようなシステムで『アンリミテッド:サガ』のリールシステムなどがあるが、それらと比べるとジャッジメントリングは目押しが簡単で慣れれば割と誰でもクリティカルを連発させられる。
--しかしそういったリングがぬるいという人のために「攻撃力が2倍になるがヒットエリアが見えなくなる」「すばやさが大幅に上がるがバーの速度が速くなる」といった強力アクセサリーがあり、それらを装備することでキャラを強化しながらジャッジメントリングの難易度を自ら上げるといったプレイができる。
--お金を払ってヒットエリアを狭くする代わりに武器の攻撃力を上げることもできる。
--逆にどうしても目押しが慣れないという人のために、お金を払って武器のヒットエリアを拡大したりすることができ、ヒットエリアを広げたりバーの速度を減少させる装備・アイテムもあるため救済措置も万全。


***SPシステム
-キャラクターにはHPとMPのほかにSP(サニティポイント、正気度)というものが設定されており、これも個性付けや緊張感のあるゲームバランス構築に一役買っている。

-SPは戦闘中にターンが回るたびに1ずつ減っていき、これが0になると「暴走」しキャラの操作が一切出来なくなる。この状態だと同士討ちもするし勝手にアイテムも使う。
-これにより長期戦をするのがプレイヤーにきわめて不利になることになり、戦闘が長引くにつれて緊張感が高まっていく。
--ジャッジメントリングは判定に失敗するとどんな行動も不発に終わってしまうため、長期戦を避けるためにも一層ジャッジメントリングの判定に気を遣うことになる。
--特に長期戦になりやすいボス戦ではSPの要素が活きてくる。漫然とHPを回復しながら攻撃を繰り返すだけの戦法では苦戦しやすく、HPとSPの両方を管理しながら戦術を立てないとジリ貧になるので、雑魚戦に比べて緊張感がひときわ違うものに。

-回復技が種類・性能ともに非常に優秀なアリスはSPが極めて低く、回復を彼女だけに頼らせて磐石の布陣、というわけにはいかない。

-ただしSPは普通に販売されているアイテムによって回復することができるので、事前の準備さえ周到ならそこまで鬼ではない。

-SPを大量消費してモンスターに変身する『フュージョン』、SPの減少量が増える代わりにステータスが大幅に上がる装備品など、SPを消費して強力な効果を得られるハイリスクハイリターンな要素もある。
--フュージョンシステムは主人公ウルの特殊能力であり、このゲームの戦闘の要となっている。

-終盤のボスなどはSPを減少させる技を使うものがおり、SPによる緊張感・危機感がより際立ってくる。


***その他
-グレイヴヤード
--主人公ウルの精神世界。名前の通りの不気味な墓地。フュージョンモンスターの獲得や、後述のマリスの浄化などが行える。ストーリーに深く関わる場所でもある。メニュー画面から、現実世界とグレイヴヤードを行き来できる。
--本作では敵を倒すことで、その敵の属性に応じた「ソウルエナジー」というものが獲得できる。ソウルエナジーが一定値溜まった状態で、グレイヴヤードにてその属性に応じた墓を調べると、その属性のフュージョンモンスターとの一騎打ちを行う。この戦闘に勝利できれば、ウルが自分の心の中に宿る怪物を制して、そのフュージョンモンスターに変身できるようになる。

-マリスと死神
--雑魚敵を倒すと、倒した敵の悪意である「マリス」という数値が蓄積されていき、これが一定値に達すると、強敵である「死神」系の敵がエンカウント時に出現するようになる。
--グレイヴヤードにて、溜まったマリスに応じた強さの敵と戦い、その敵を倒すことができれば、マリスを浄化して蓄積をゼロに戻せる上に、その敵の強さに応じた戦利品を入手できる。
--グレイヴヤードと同様、本作の世界観やストーリーに大きく関わる要素。
-福引き
--世界中に存在する福引き会員達に話しかけ、ジャッジメントリングによる判定で福引きを行い、様々な景品が貰えるというミニゲーム兼やり込み要素。
--福引き会員は普段は素性を明かさず普通に接してくるが、アイテム「福引券」を持っている状態で話しかけると、通常の会話の後に福引き会員であることが判明する。
---福引券は世界中で様々な形で入手できる。
---会員の多くは町に居る一般人だが、ストーリー上のそこそこ重要なキャラなど、意外な人物が福引き会員であったりもする。
--福引きのジャッジメントリングの形式はルーレットそのもの。会員によってはバーの回転速度が速かったり不規則だったり、リングが小さかったりといった変化もある。

-スコアシステム
--メニュー画面の「スコア」にて、これまでの総戦闘回数や移動距離、ジャッジメントリングの成功率といった各種記録を閲覧できる。
--各種記録を基にして、総合的な成績である「順位」が1位~100位の間で変動する。
--尚、各順位には「○○級」と言ったように、○○の部分に登場する敵キャラの名前が割り振られている。最下位は最弱クラスのモンスターの名前で、最上位の方になるとラスボスや隠しボスの名前まで登場する。

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**評価点
''演出面''
-ホラーを意識した世界観、演出。
--メインシナリオこそ王道だが、先述したように世界観は異色の近代。文明の発達が著しい中世界は戦争や政情不安による時代の闇に包まれ、そしてそれらに紛れるように怪異がはびこる世界観を随所で表現している。
--冒険の舞台も、吸血鬼の住む城、魔物の徘徊する村、精神病院、無人の孤児院などホラー映画の舞台のようなチョイスばかり。
--登場人物の回想が怪談調に演出されていたり、ダンジョン内に置かれたオブジェクトを調べると出てくるテキストは薄ら寒いものが多かったりと直球のグロテスクさ以外の演出もレベルが高い。
--冒頭のムービーはスプラッタホラー調で、いきなりグロテスクな惨殺シーンから始まる。
--音楽は弘田佳孝がメインで作曲し、一部を光田康典が担当した。こうした世界観を引き立たせるために暗い曲調、不思議なメロディーが多い。そのためフィールド曲などは単体の曲としてはイマイチなものが多いが、演出効果としては優秀なものである。
---勿論、後述のウル復活のシーンなどで流れる「鋼の魂-tanjou」、ラスボス戦の曲「Imbroglio」など単体で評価の高い曲もある。
---エンディングテーマはクーデルカ役の笠原弘子が歌っており、こちらも良曲と好評。タイトルはズバリ「SHADOW HEARTS」。
--モンスターのグラフィックもこれらの要素を後押しするものになっており、グロテスクで面妖なモンスターたちはデザインだけでなくそのモーション・設定まで(いい意味で)生理的な嫌悪を催すもの。
---弾むような奇妙な動きで味方に噛み付き、間合いを取る際には物凄い速さで這いずって後退する蛇、羽を瞬かせながら味方の顔に張り付いてくる巨大Gなどモーションの芸当が細かい。

-当時としては非常に美しいグラフィック・ムービー。
--元々スクウェア出身のスタッフで構成されたサクノスの作品だけあってそのグラフィックの質は見事なもの。
--町やダンジョンの背景グラフィックも細部にわたって書き込まれており、一種の美術品のよう。
--本作のムービーはおおまかに以下の2系統に大別される。
---PS以降のFFシリーズなどに代表される、ハイクオリティな3DCGによるムービー
---時代を思わせるセピアな色調・実写あるいは一枚絵による映像・一人のキャラクターの語りによって進行するといった特徴を持つ、独特なムービー
---後者はRPGのムービーとしては非常に珍しいもので、ストーリーへの没入感も高い。ムービーの1つでは、語り手に「百物語」の独演で知られる役者の白石加代子を起用するなど、「聞かせる」ことにも力が入っている。
--ただし、後述の通り、キャラグラフィックには難がある。

-ゲームのFPS(Frame Per Second)が常時60FPS程度を保っており、滑らかな動きを見せる。

''シナリオ面''
-キャラクターの心情描写が巧みで感情移入度が高い秀逸なストーリー。
--特に主人公ウルはそのキャラクター性や作中の描写から非常に高い人気を誇る。
---アリスと出会う前まではその出自ゆえに自暴自棄でごろつき同然の生き方をしており、冒頭ではアリスの自分を怖がる態度に怒鳴り散らし、セクハラ紛いの発言までしていたウルだが、終盤では彼女を守るためには神をも倒すような、主人公らしいキャラクターに成長していく。アリスと出会い彼女を守ることによって成長していく過程や心情描写はとてもしっかりしている。
---中盤、自我を失って離脱したウルがアリスの呼びかけによって復帰するシーンや、ラストダンジョンからエンディングまでの展開はその中でも泣けるシーンとして好評である。特にグッドエンドルートでの彼の姿に惚れたというファンも多い。
---序盤の彼も上記のようなガラの悪さとは言え、他のゲームでよく見られる「尖り過ぎてプレイヤーに悪印象を与える」「主人公なのに感情移入しにくい」と言ったネガティブなタイプではなく、基本はコミカルで親しみやすいキャラ付けになっている。また、オープニングの時点からヒロイックな活躍を見せ、主人公として十分な好印象を与えてくれる。
---フュージョンモンスターに変身する際、ゲーム前半は苦しみもがくように変身するのだが、後半で精神的に成長を遂げると、余裕を持って変身する演出に変化する。終始多用することになる能力だけに、このような演出の変化は主人公の成長を実感できて感慨深いものがある。この主人公の心境による演出の変化は次回作でも採用された。
---普段はとても主人公とは思えない暴言や珍妙な発言の数々でボケ役の殆どを担う。それでいて決める時はしっかり決める男であり、「バカだけどカッコいい主人公」として人気を博した。ホラー要素の強い作中においても常に強い存在感を放ち続けており、次回作『[[II>シャドウハーツII]]』でも主人公として続投している。
--サブキャラや敵のエピソードも充実しており、その悲喜劇はなかなか考えさせるもの。
--話のテンポもかなりスピーディーで隠し要素を堪能しないならば20時間ほどで終われる、さくさくしたもので間延び感がない。

-随所にギャグもちりばめられており、ただ暗いだけのゲームにはならない工夫も施されている。
--かと言って雰囲気がブチ壊しになっている訳ではなく、ギャグ演出はキャラの個性を活かして自然な流れになるように配慮が成されているため、作風に上手く溶け込んでいる。
--『II』から急にギャグ色が強くなったと思われがちだが、実は本作も結構なお笑い要素が盛り込まれている。イベントがムービーで進行する訳ではないので演出自体は控えめで、またホラー重視の世界観から『II』ほどの強烈な印象は無いが、主人公の言動とそれに対する仲間のツッコミを初めとして会話シーンは面白おかしい掛け合いが多い。時には敵まで釣られてコミカルな姿を見せてしまう事も。
---他にも「リングカスタマイズ画面でオカマ鍼灸師がいちいち''男性キャラのSPを減少させて暴走させる''」「''エロ本を本拠地に隠している''敵の大ボス」「仲間にならないくせに''名前入力画面だけは表示するキャラ(しかも直接プレイヤーをからかう)''((この演出はシリーズ恒例となり、そのキャラが初登場する度に無駄な名前入力画面が表示されるようになった。))」など、笑える要素が目白押しで、他の正統派RPGと比べるとギャグ、パロディが多いのも特徴。

''システム面''
-個性的なジャッジメントリングやSPによる戦闘システムや戦闘バランス。
--全体で見れば比較的易しいゲームバランスにも関わらず、ジャッジメントリングとこのSPシステムによって戦闘中の緊張感は非常に高い。そして装備などである程度プレイヤーで戦闘難易度を調整することができる受け皿の広さ。これがこのゲームの戦闘システムの評価が高い理由である。

-凝ったデータベース。
--本作はメニュー画面にて、これまでに登場・入手したことのある全てのキャラクター(敵キャラ含む)やアイテムを閲覧できる機能がある。
--それら全てには個別に解説文が用意されている。解説文は内容がやたらと細かく、本作独自の架空の設定(伝説など)も多く、実際にそういう言い伝えが存在するかの如く語られている。また全てのアイテムには個別のイラストまで描かれており、かなりの凝り様である。
--この解説文にも背筋が凍り付くような恐ろしいもの、逆に思わず笑いがこみ上げるようなものなどバリエーション豊かな内容が記載されている。それらを眺めるだけでも、まさに図鑑を読んでいるかのような面白さがある。

-スコアシステムにより、より良い記録を目指すといったプレイヤー独自の目標が立てやすく、やり込み甲斐のあるゲームとなっている。
--また各種記録・スコアはいちいちコメディックな称号が付属しており、毎回確認する楽しみもある。これらの要素は次回作以降にも引き継がれる。

-やり込み要素・隠し要素が豊富。
--九龍廃城、人形の館のようなメインシナリオに関係ないサブイベント用の隠しダンジョンが多くある。また隠しダンジョンの中には一度クリアしても特定の条件を満たせば更に強いボスを出現させることができたりする。
--メインストーリー用の町やダンジョンもクリア後に訪れるとサブイベントが起こったり強力なアイテムが見つかったりする。
---最強のフュージョンモンスターは入手の為の手順、条件が多く、入手難度は高いがそれに見合うだけの強さとインパクトを持つ。ただの隠し要素ではなくストーリー的にも大きな意味があり、入手時のイベントも必見。
--隠し福引会員や隠しショップなども豊富でついつい入念に探索してみたくなる出来。
--エンディングも特定条件を満たせばハッピーエンドになる。

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**賛否両論点
-時期限定の要素が多い
--サブイベントや隠し要素が豊富で見つける楽しさはあるが、期間限定の要素はコンプリートの面ではやはりつらい。
--特にハッピーエンドになるための手順はやや複雑で、条件を満たさずにラストダンジョンに入ってしまうと取り返しがつかない。
---ただしバッドエンドでもストーリーとしては味のある締め括り方であり、必ずしも駄目な結末というわけではない。

-前作にあたる『クーデルカ』の主人公・クーデルカも再登場するが、性格などが変わりすぎており、旧作ファンからは別人扱いされることもある。
--もっとも15年も経過してあらゆる意味で立場も異なるのだから流れとしてはそう不自然でもないのだが。

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**問題点
-モンスターや背景等のグラフィックが良くできている一方、PS2のRPGとしては、人間キャラのグラフィックがあまり綺麗とは言えない。
--特に表情はまばたき程度しか変化せず、ほとんど無表情。その様相はまるで蝋人形が動いているかのような不自然さである。
---ある意味では本作の雰囲気に合っていると言えるかもしれないが、イラストでは温かみのある雰囲気なので違和感が大きい。
//--2作目以降ではグラフィックの精度が上がっておりキャラが表情豊かになっているため、2作目以降からこのシリーズに入った人は面食らいやすい。
//続編から戻ってきたら、は大体どのゲームでもそう
--キャラの顔がハッキリと見えるのはほぼ戦闘中に限られるので、イベントシーンでは気になるほどのものではない。

-グラフィックは美しいのだが、町やダンジョンは狭い。
--しかし謎解きやイベントを上手く使ってダンジョン内を迷わせるような作りになっているためそこまでボリューム不足感はしない。
--また長所にあるシナリオのテンポのよさも、ダンジョンが狭いことによる攻略の容易さによる部分が大きい。

-少々不便な周回要素
--周回制を用いているが「つよくてニューゲーム」とは行かず、引き継ぎはフュージョンモンスターや図鑑といった一部の要素のみで、パラメーターやアイテムは引き継がれない。時期的に当然イベントスキップ機能も無いので、再プレイにもそれなりの手間と時間を要する。
--2周目以降でないと手に入らないおまけアイテムが存在するため、どうあっても1周目では全ての要素を完全にコンプリートすることは不可能。

-OPムービーの描写が本編から浮いてしまっている。
--オープニングのムービーでは、日本兵を惨殺していた怪物((但し、ゲーム的には本作最弱クラスの雑魚敵。))にウルが腕を切り飛ばされるも平然とその敵を握りつぶして、余裕の態度で自分の腕をくっ付け直すという衝撃的なシーンがある。更には列車の屋根を蹴破ったり、アリスを抱えたまま走る列車から飛び降りると言った人間離れしたアクションを見せる。
---しかし以降はこのような描写はなく、ウルもオープニングを過ぎると人間の姿ではそこまで超人的な能力は見られないので、いささかオープニングが浮いている感がある。或いは本編中でもウルの超人ぶりがアピールされれば違和感も減ったかもしれないが。
--また、流血や惨殺などのスプラッタホラー演出があるのもオープニングのみで、以降はホラー演出はあってもこういった直接的な表現は無い。

-初見殺しなところがある。
--シリーズ全部だが状態異常をしてくる敵には対応するアクセサリをつけてないと苦しい戦いになる。
---特に即死はきつい。負けて覚えるしかない。

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**総評
PS2初期の良作RPGであり、今尚「隠れた傑作」と称される事の多い作品である。~
ホラー演出など人を選ぶ部分はあるものの、緊張感のある戦闘システム、涙あり笑いありのストーリーは本物であり、恐がりな人でなければ一度体験してみる価値は十分ある。一度あなたのジャッジメントリングを回せば、魅力溢れる主人公を始めとする人々の織りなすドラマが、この恐怖と切なさ%%とお笑い%%が同居した世界へと誘ってくれる事だろう。~


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**その後の展開
-三年後には続編『[[シャドウハーツII]]』が発売されている。
--主人公は引き続きウルだが他の仲間は総入れ替えとなっている。
--本作のバッドエンドからの続きとなっており、多くのプレイヤーを驚かせた。

-更に翌年には『[[シャドウハーツ・フロム・ザ・ニューワールド]]』が発売された。
--舞台を一新しており、主人公もウルから新キャラのジョニーに交代している。

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**余談
-本作の説明書には、本作の監督・脚本を努めた板倉松三と、映画監督の石井克人との特別対談を掲載した&br()"『シャドウハーツ』と『鮫肌男と桃尻女』の不思議な関係" というページが収録されている。
--それによれば、板倉氏は本作を制作するにあたり、石井氏から大きな影響を受けたと語っている。
---例えば本作の主人公ウルは、石井克人監督の映画『鮫肌男と桃尻女』の登場人物がモチーフとなっている。
--その他細かいことは、実際にゲームを購入して確認されたし。~
ただし、こちらは''ベスト版では一切合切をカット''されているのでその点は注意。((ベスト版はまさしく取扱説明書としての体を成しているのだが、通常版はこれ以外にも取扱説明書としてはどうかと言わざるを得ない内容(それでも最低限のことは説明されているが)が多く含まれている))