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ROBOTICS;NOTES - (2020/03/01 (日) 10:48:19) のソース

このページでは『''ROBOTICS;NOTES''』と完全版である『''ROBOTICS;NOTES ELITE''』、そしてファンディスク的続編である『''ROBOTICS;NOTES DaSH''』を取り扱う。

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*ROBOTICS;NOTES
【ろぼてぃくすのーつ】
|ジャンル|拡張科学アドベンチャー|&amazon(B007BK2GMW)|&amazon(B007BK2HNK)|
|対応機種|プレイステーション3&br;Xbox360|~|~|
|発売・開発元|5pb.(MAGES.)|~|~|
|発売日|2012年6月28日|~|~|
|定価|通常版:7,300円&br()限定版:9,300円(共に税5%込)|~|~|
|レーティング|CERO:C(15才以上対象)|~|~|
|判定|なし|~|~|
|ポイント|これまでと異なり王道なシナリオ&br()使いにくさに拍車のかかったシステム|~|~|
|>|>|>|CENTER:''[[科学アドベンチャーシリーズリンク>科学アドベンチャーシリーズ]]''|

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#center{&size(18){世界を救うのはヒーローじゃない― ''オタクだ!''}}
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**概要
『[[CHAOS;HEAD]]』『[[STEINS;GATE]]』に続く『科学アドベンチャーシリーズ』第3作。~
『STEINS;GATE』トゥルーEDから9年後となる2019年の種子島が舞台((科学アドベンチャーシリーズの中で最も後の時系列となる。))となり、「ロボット」と「拡張現実」を主題としたストーリーが展開される。~
限定版には劇中に登場する端末「ポケコン」のバックを模したスマートフォンケースと設定資料集が付属している。

アニメ化企画が同時進行され発売から程なくした後にフジテレビ深夜アニメ枠「ノイタミナ」にてアニメ版が放送されるなど従来作以上にメディアミックスに力を入れた他、人型ロボットの競技イベント「ROBO-ONE」との提携も行っていた。

**ストーリー
携帯端末フォンドロイド、通称「ポケコン」が普及した近未来の種子島。~
中央種子島高校にある廃部の危機に瀕している「ロボット研究部」に所属する高校生・八汐海翔はある日、~
「君島レポート」なる告発文を纏めたA.R.アノテーションを発見し、陰謀に巻き込まれていく事となる。

**特徴
-シリーズお馴染みのトリガーシステム「ポケコントリガー」。
--ARアプリ「居ル夫。」を駆使して背景内に隠されているレポートを探したり、SNSアプリ「ツイぽ」による他人物との発言への返信によりストーリーが変化していく。
--システムメニューもポケコンに収録されている。

-「居ル夫。」による背景のAR情報としてジオタグが存在。内容はストーリーと直接関係のない小ネタが多いが、世界観の掘り下げを担っている。
--ストーリーが進むことでアンロックが解除されるジオタグも存在する。ジオタグ収集で会得できる実績もある。

-立ち絵が3Dモデル化され、会話に合わせてキャラクターが動くようになった。

-現実に存在する宇宙開発機関「JAXA」が作中でも登場し、ストーリーと密接に絡んでいく。

-また、『STEINS;GATE』のサブキャラクターである「天王寺綯」が成長した姿で引き続き登場。シリーズ初となる立ち絵が二作品に跨って存在するキャラクターとなった((後の『CHAOS;CHILD』の百瀬克子や(正確には同一人物ではないが)エリンのコスプレをした店員が登場し、彼女のみではなくなった))。
--『CHAOS;HEAD』の西條拓巳や『STEINS;GATE』の橋田至と牧瀬紅莉栖も「ツイぽ」にて(それぞれHNではあるが)登場する。((岡部倫太郎など一部の人物も直接登場はしないが存在が示唆されている。))

**評価点
-種子島を始めとする情景描写。
--背景CGなどで島の様子が美しく描かれており、良質なBGMと相まって島ののどかな雰囲気が感じられる。パッケージなどでも描かれている「青空」は本作を象徴していると言える。

-若者たちが織りなす爽やかな青春ストーリー。
--サスペンス色が強かったこれまでのシリーズとはガラリと変わって、ジュブナイル色が強めな王道ストーリーとなっている。
--テーマこそロボットというギークなものだが、ノリとしては王道スポ根ものにかなり近い。~
「潰れそうな弱小野球部にクセの強いメンバーが集まり、最初はガタガタだが次第にチームワークを発揮して甲子園に出る」といった定番のプロットをロボットに置き換えたような感じである。

-シリーズではもはやお馴染みの難解な科学・SF用語やネットスラングネタも健在。
--当然、俗に言う「キモオタ」キャラも存在。しかも今回はヒロインの一人である「神代フラウ」が該当し、天才プログラマーだが引きオタ腐女子と、声優である名塚佳織の名演(怪演?)もありインパクトも強い。無論、本作きっての人気キャラクターである。

-SNSを活用したストーリーテリング
--ポケコントリガーで確認できるSNSアプリ「ツイぽ」は『STEINS;GATE』のメールの発展版だが、その情報量は比較にならないほど膨大。~
登場キャラクターたちは全員がツイぽで繋がっており、ほぼシーン単位でつぶやきは更新される。
--直前のシーンで起こったことに対するキャラクターの意外な心情がつぶやかれたり、そのシーンで登場していなかったキャラクターたちの動向がつぶやかれたりするので、いわばSNSのタイムラインがキャラクターへの理解を深める役割を果たしている。
--SNSなので作中に登場しない一般人たちのつぶやきも閲覧可能。それらの多くはゴシップだが、ストーリー中では最後まで謎のままとなっている一部設定の考察に繋がる伏線もちりばめられている((特に神代フラウ関係に顕著。個別ルートで提示された謎はそのルート中では明確な答えは出ず、断片的な情報からプレイヤーが想像するしかない。しかし別のチャプターのツイぽをみると、プレイヤーの想像を補完できる様々な情報が色々なつぶやきに隠されている))
--特定のフラグを立てることで、科学ADVの他作品のキャラクターのアカウントをフォローでき、彼らのつぶやきも閲覧できるようになる。
--2019年を舞台にした本作のストーリーの本筋においては、SNSを使ったフェイクニュース拡散によるプロパガンダが重要な要素として取り扱われている。
---これが発売されたのは2012年。製作者からすれば「科学ADVらしい嘘くさい陰謀論」のつもりであったろうが、実際の2019年を迎えた今みると、リアルすぎてゾッとする内容となっている。

-高速スキップ、情報量が豊富なTIPS、読み戻しと音声再生が可能なバックログなど使いやすいインターフェイスは過去作を踏襲している。

**賛否両論点
-これまでのシリーズとの方向性の違い
--王道青春モノなので、基本的には明るく牧歌的な雰囲気が最後まで維持される。
--この点を好む人は多いが、過去作で定番だった「日常が壊されていく衝撃感」は全く無いわけではないが比較的弱い。

-高校生らしい青臭さを強調したキャラ描写
--登場キャラはみんなどこか青臭さが抜け切れておらず、高校生らしいリアルな様子がよく描かれている。~
特に主人公の八汐海翔は「青臭さ」が一番強い。この年頃らしい冷めた皮肉屋で、ロボ部所属でありながらロボットから一歩引いた立ち位置にあり、~
歴代シリーズの主人公とはまた別方向で賛否分かれるキャラとなっている。
--むしろロボットの方に入れ込んでいるのはメインヒロインの瀬乃宮あき穂であり、皮肉屋な八汐と異なり前向きな性格を持つ彼女の方に感情移入したというユーザーが多く、~
事実上のダブル主人公として見なしている人も多い。彼女も彼女で行動が空回りしているなど青臭い未熟さが目立っているが。

-他の科学ADVシリーズの疑似科学の採用
--『CHAOS;HEAD』と『STEINS;GATE』の疑似科学に関する設定が本作では多分に盛り込まれており、過去作の疑似科学の技術を応用したアイテムが出てきたり、現象が発生したりもする。出典に気づけた人はニヤリとできるだろう((「人間にリアルな幻を見せる装置」「他人の思考を盗撮し、操る電磁波」「SERNのマイクロブラックホール」「アメリカの大学で研究されている記憶のデータ化技術」など。なお本作は『STEINS;GATE 0』より前の発売だが、『0』の原作である小説版はすでに既刊だったのでそちらを採用している。))
--もちろん、本作独自の疑似科学要素もあるが、一つの作品に数多くの疑似科学が盛り込まれたことで、本作独自の疑似科学要素が相対的に目立たなくなっているかもという意見もある。

**問題点
-ポケコントリガーによる分岐が使いにくい。科学アドベンチャーシリーズではトリガーによる分岐が分かりにくいという意見が散見されるが、本作は特に顕著。
--作中に登場するSNS「ツイぽ」に対して相手が好みそうな文を選んでリプライすることを積み重ねていくことで、シナリオ分岐のフラグが管理される仕組み。
--『STEINS;GATE』のメールの発展型と言えば聞こえはいいが、上述したように更新頻度が早いのが問題。リプライは基本的に最新のつぶやきに対してしかリプライできず、さらに日付が変われば前日までのつぶやきは表示もされなくなる。~
特定ルートに行くならポケコンの「ツイぽ」画面のこまめなチェックが必要になり、やや面倒。気が付いたら重要な更新を見落としてしまっていた事もままある程。
---日にちごとにオートセーブされ、振り返る事も出来るためやり直しは容易なのが救いではある。また、アップデートにより画面に更新通知が表示されるようにもなった。
--ARによるレポート探しも、肝心のレポートのアイコンが小さくて見つけづらく探索で迷いやすいなど、ストレスが溜まる。

-劇中劇である格闘ミニゲーム「キルバラッド」においてコマンド操作を要求される。複雑なものではないがスキップできないため周回で鬱陶しく感じてくる事も。
--一応、実績の解除となる場面も存在する。

-3Dモデルの表情パターンが少なく、会話内容と乖離している事もある。
--この点はのちに販売された完全版に当たる『ELITE』(下記参照)で改善された。

-ルート分岐のさせ方が微妙
--5章までが共通((条件を満たしていないと6章以降に行かず専用のルートへと進んでしまい強制的にエンディングとなる。))で、6~8章が分岐によるヒロインごとの個別ルート、9章からが終章トゥルールートとなる。9章以降の怒涛の展開については評価する声が高いが、問題は分岐ルートとなる6~8章のプレイ順。
---6~8章が個別ルートである関係上、進め方によっては5章をクリアしたらいきなり8章に飛んでしまう事もある。~
ところが、6~8章はストーリー的には時系列で繋がっている。6章、7章、8章と順番でプレイしないと、ストーリーが理解しにくい。~
つまり、個別ルートを持ちながら本当の意味で一本道なストーリーなのである。

-結末に余韻がなさすぎる
--敵ボスを倒して皆で勝利のおたけびをあげ、家に帰ろうと歩き出すシーンで、エピローグなどもなくスタッフロールに入って終わり。
--そういう終わり方をする作品も世の中には珍しくはないのだが、本作ではロボ部のメンバーたちは「事件を解決した後に、自分の個人的な問題に向き合おう」としていたため、彼らが事件解決後にどうしたのかが描かれないのは尻切れトンボ感がある。
--この点はユーザーからの批判の声も多かったらしく、発売後のスタッフインタビューでは、各キャラのその後についてはユーザーの想像に任せたいので、あえて語らない終わり方をする前提で話を作ったと釈明している。
---後に放映されたアニメ版ではわずかながらエピローグが加えられている。
---そして2019年には、ロボ部の「その後の物語」を収録した続編『ROBOTICS;NOTES DaSH』が発売。より詳細なフォローがされることになった。

**総評
出来自体は特別悪いものではなく、高校生らしい青臭い青春ストーリーとしてはむしろ良くできている部類。~
だが、科学ADVシリーズ過去作のようなSFサスペンスな雰囲気を期待していたら肩透かしを食らうかもしれない。そのあたりを割り切ってプレイする必要はあるだろう。~
感情移入しづらい主人公や分岐システムの難度の高さについては、完全版に当たる『ELITE』(下記参照)でいくつか改善されたので、今からプレイするならそちらをお勧めする。

**余談
-シリーズでは唯一、Windows版が発売されていない。
-2014年6月26日に演出やテキストをブラッシュアップした完全版にあたる『ROBOTICS;NOTES ELITE』が発売。
-2019年1月31日に本作エンディングから半年後を舞台とした続編『ROBOTICS;NOTES DaSH』が発売された。

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*ROBOTICS;NOTES ELITE
【ろぼてぃくすのーつ えりーと】
※データはPS3・360版との違いのみを記載
|対応機種|プレイステーション・ヴィータ&br;Nintendo Switch(DLのみ)&br;プレイステーション4(DLのみ)|&amazon(B00IZT5Y6S)|
|発売日|【PSV】2014年6月26日&br;【Switch/PS4】2019年1月31日|~|
|定価|通常版:7,344円&br()限定版:9,504円(共に税8%込)&br;Switch・PS4ダウンロード版:6,480円(税込)|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|シナリオを一部整理&br;3Dモデルは劇的に改善|~|

**概要(ELITE)
-追加要素を交えた移植作品で実質完全版に当たる。
--限定版には資料集と高画質ムービーを収録したBDが付属している。

-発売前には本作を題材としたVITA用ARアプリも配信された。

-2019年1月31日には続編『DaSH』発売に合わせる形でHDリマスター版がプレイステーション4とNintendo Switchにて移植される。~
2作品を纏めたバンドルパッケージ『ROBOTICS;NOTES お得セット』も発売。

**追加点(ELITE)
-シナリオの整頓
--大筋は変わらないが、各登場人物視点での心情描写が多く追加されており、語りきれなかった物語の裏側などが理解できるようになっている。
--こんなの言われないとまず気づかないというレベルのことまで明かされるので、人によっては物語の印象は大きく変わるだろう。
--ただしストーリー自体に追加はないので、結末の尻切れトンボ感は変わっていない。

-演出面の強化
--3Dモデルの最適化が行われ、元と比べて全体的に表情が生き生きするようになった。新モーションも追加されている。
--随所にアニメや新規ムービーが挿入されるようになり個別ルートに入った時の時系列など、一部の場面が解り易くなった。
---ちなみに使用しているアニメムービーはアニメ版映像の流用となっている。
---また、本作に用いられたアニメ再生技術は後に『Steins;Gate ELITE』に流用されている。

-ポケコントリガーがVITA本体をポケコンに見立てるように画面レイアウトなどが最適化。
--タッチ操作に対応した他、「居ル夫。」がジャイロ操作にも対応した。

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*ROBOTICS;NOTES DaSH
【ろぼてぃくすのーつ だっしゅ】
|対応機種|Nintendo Switch&br;プレイステーション4|&amazon(B07G36SG9R)|&amazon(B07G36T44Y)|
|発売日|2019年1月31日|~|~|
|定価|通常版:7,800円&br()お得セット(『ElITE』同梱):9,250円(共に税抜)&br;Switch・PS4ダウンロード版:7,000円(税抜)|~|~|
|判定|なし|~|~|
|ポイント|ファンディスク的な続編&br;シュタゲからダルが電撃参戦&br;求められていた大団円が7年越しで実現&br;&bold(){良くも悪くも相変わらず強烈なHENTAI紳士ダル}|~|~|

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#center{&size(18){何度だって世界を救うのは―オタクだ。}}
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**概要(DaSH)
-『ROBOTICS;NOTES』の正当続編。あれから半年後のロボ部の冒険を描く。
--実際は続編というよりも後日談に近い。『ROBOTICS;NOTES』にはエピローグがなかったため、この『DaSH』でそれをフォローしている部分がある。

-『[[STEINS;GATE]]』からダルこと橋田至がゲスト参戦。
--タイトルのDaSHはダルがビジネス((この時点では、フリーランスのホワイトハッカーをしている。))で使っているハンドルネーム。前作『ROBOTICS;NOTES』ではツイぽでの隠しアカウントとしてこの名前が登場している。
--『[[CHAOS;CHILD]]』を経てからの発売となっているため、そちらについても会話などで触れられている。
--ただし、他作のキャラで直接登場するのは(前作から引き続き登場する綯を除くと)ダルだけである。他の他作キャラについては名前さえ出てこない。(「あいつ」とか「みんな」のような代名詞やツイぽで存在を匂わせてはいる。)

-各キャラごとの個別ルートがパラレル展開になっていて選択肢によって分岐するという、よくあるギャルゲーのパターンになった。
--すべてのキャラの個別ルートをクリアすれば、真エンドとなるラストエピソードが解禁される
---ラストエピソードは「いずれかのキャラのルートを辿った後に起こった談」という扱いだが、全てのキャラが総出演して活躍し、どのキャラのルートの後日談であったとしても矛盾はないように作られている。
--一応、ツイぽは存在しており、ストーリー進行によって会話の内容が変わるが分岐とは関係しない完全な寄り道要素となった。

**ストーリー(DaSH)
あれから半年。名物の「鉄砲まつり」でにぎわう種子島。~
高校を卒業し、宇宙飛行士を目指し浪人中の主人公・八汐海翔は久しぶりに帰省した故郷の港にて知り合いのJAXA職員、天王寺綯を通じ橋田至という男に出会う。~
偶然海翔と同じ船に乗り合わせていたと語る彼は、観光目的で島を訪れたというが、どうにも言動がおかしい。

夏を満喫して過ごす日常の中で、微かに違和感を感じる出来事が頻発し始める。~
それは、再び世界を混乱に陥れようとする事件の前触れであった……

**評価点(DaSH)
-バラエティ豊かな各キャラの個別ルート
--今までの科学ADVのファンディスクなどでは「もしもの世界」として本筋とは異なるキャラとの恋愛が楽しめたりしたが、本作はあくまで本編の後日談なので、主人公の海翔の恋人は幼馴染のあき穂で固定である。
--そのため、一般的なギャルゲーのような「恋愛オチしばり」がなく、キャラごとの個別ルートは非常にバラエティが豊か。
---前作ではかなり存在感を示していたにもかかわらず男性キャラだからという理由で、前作では個別エピソードがもらえなかった日高昴にも、今回はちゃんと個別ルートがある。((前作が発売されたのと同時期に昴を主役にしたスピンオフ小説も発売されており、個別エピソードがないことへのフォローは『DsSH』以前にもされてはいたのだが))、
--この個別ルートでは各キャラクターが前作での戦いの後に、どのように成長したかがじっくり描かれており、エピローグがなかった前作のもやもや感をすっきりと吹き飛ばしてくれる。
--個別ルートはどれも変にシリアスに振っておらず、人情味あふれるもので、全体的に温かみがある。『ROBOTICS;NOTES』本編の世界観を壊さないようにしている。

-さらに進化したCG演出
--CGモデルはすべて作り直され『ELITE』よりもさらなる進化を遂げた。どのキャラもいきいきとした動きと表情を見せている。
--特にライティングについての進化は目覚ましく、セルシェーディングでアニメ調にしつつも、リアルな立体感も感じさせている。
---ライティングの進化は、南国である種子島の陽光と空気感を伝えるのにも一役買っている。
--さらにシーンの背景(一枚絵)が立体的であると仮定して影のつけ方を変えるなどのテクニックがほどこされており、空間の奥行きや広がりを感じさせる演出が多用された。
--他、背景が動くことで疑似的に歩いている様子を演出している。

-強化されたシリーズ内のクロスオーバー
--ダル側のポケコン内のツイぽでは明らかに『[[STEINS;GATE]]』のラボメンを思わせる人物が多数登場しており、世界観に繋がりを見せている。

**賛否両論点(DaSH)
-''ダルという存在そのもの''
--『[[STEINS;GATE]]』からダルこと橋田至がゲスト参戦というのが本作の売りだが、『ROBOTICS;NOTES』の世界観や雰囲気からはあまりにミスマッチなキャラなので賛否両論となっている。
--『ROBOTICS;NOTES』は科学ADVの中ではキモオタ自虐の色が薄めの作風だったこともあり、ダルの参戦には不快感を持つものも少なからずいる。
--本作は、ひょんな縁から海翔とダルがコンビを組んで、夏まつりの種子島に起こった奇妙な事件を解決していくという流れになっており、本作の多くの場面はダルの視点で進行する。~
そのため、ダルの一人称で情景描写がされる。''つまり例のキモオタ節全開の言動を、プレイヤーは延々と見せられることになるのだ''。こういうノリが肌に合わない人には徹底的に合わない作品となってしまっている。
---『STEINS;GATE』でのダルはあくまでサブキャラであり、彼の言動や動向が描かれる場面は全体からするとわずかなので目を瞑れるかもしれないが、本作では''ダルからは誰も逃げられない。''
--一方、橋田至という個人の魅力はきちんと描かれていて、特に『STEINS;GATE』から10年たち、きちんとした大人として悩める青少年を導こうとする姿は、『STEINS;GATE』のファンには感じるところはあるだろう((本作『DaSH』は『STEINS;GATE』から10年後の時間軸となるが、リアルタイムでも『STEINS;GATE』から10年後の発売である。つまり当時のユーザーもダルと同じだけの年を重ねていることになる。色々な意味で自分と重ね合いやすいというところはあるだろう。))。
--この辺りは『STEINS;GATE』のファンディスクである『[[STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム]]』でも通った道と言えるか。

-ルート分岐のシステム変更
--本作は前半の共通ルートで「今日はどこの場所を訪れるか」という選択が地図上でできるようになっているのだが、その選択により誰の個別ルートに入るが決まる。
---前作で複雑だとされた分岐システムよりかなりシンプルになったが、ノベルゲームの単純な選択肢とあまり変わらないという意味では科学ADVらしさは薄まってしまった。
---一応、地図上で場所を選択しているのはポケコンの機能という扱いなので、「ポケコントリガー」というシステム名は継続している。
--地図から移動場所を選ぶ機会は三日あり、三日間の移動場所の組み合わせで個別ルートが決まる。
---基本的に、「ある日時にある場所にいれば特定のキャラがいるので、それを三日連続で会いに行く」とすればよい。
---ただし、一度ある場所におとずれた場所で起こるイベントで、同日にさらに別の場所への再移動を選択しなくてはならないこともある。なので組み合わせはかなり数が多い。
---しかも、どの場所にいけばどのキャラがいるかは予想はできず、しらみつぶしに探さないといけない。
---そのため、ルート分岐の試行はやりやすくなったが、''簡単になったわけではない''。
--ルート分岐とは無関係だが、ARによるアイコン探しの要素は健在。ただし隠し場所は前作よりかなり分かりやすくなっている。

-ラストエピソードについて
--前作と流れ自体はまったく違うのだが、「種子島のみんなと一致団結して巨悪に立ち向かい、ロボ部の巨大ロボットの活躍でピンチから大逆転を迎える」というノリは変わらず。
--良く言えば王道だが、悪く言うとマンネリというか焼き直しである。
--実際に描かれたクライマックスでは「前作でユーザーが観たいと思っていたシーン」をリサーチして大量に盛り込まれており((裏方メンバーだった昴・愛梨・フラウの最終決戦への同行、あき穂がガンつくのパイロットになる、洗脳から解放されたみさ希との共闘など。))、大団円の満足感は前作のエンディングをはるかに超えてはいる。

**問題点(DaSH)
-主人公としての海翔の扱い
--前作に続いて八汐海翔が主人公ということなのだが、実際のところ主人公(笑)と言われても仕方ないような薄い扱いになってしまっている。
--本作は、海翔とダルが共に行動し、事件を解決していく。一応。海翔が主人公でダルはその相棒のような立ち位置ではあのだが((各キャラの個別ルートをクリアするとそのキャラのアイコンがタイトル画面につくが、上述のラストエピソードをクリアするとダルのアイコンがつく。これはダルは「主人公と絆を結ぶキャラ」であって、主人公自体ではないということでもある。))、二人が常に一緒にいるため、ダブル主人公と好意的に見てもどうしても海翔がダルに食われてしまうのだ。
--これはダルのキャラが濃いというのもあるが、海翔のキャラが変化したことも大きい。~
前作では青臭いイキリが目についた海翔だが、あの時の事件を経て立派な夢を持ち、落ち着いた性格となった。この変化は彼の成長ということで納得はできるのだが、おかげでキャラとしての個性は薄くなってしまった。
--他のキャラたちも精神的に成長して落ち着いた感じになった姿を見せているが、個別ルートではっちゃけたところを見せて本質が変わったわけではないとユーザーに見せてくれる。しかし、海翔は主人公なので個別ルートがなく、そういう掘り下げも薄いのである。
--作り手側としては、ダルを「語り手」としてワトソン役に、海翔を主人公として実際に決断するホームズ役においたつもりなのだろうが、主人公とは別の語り手キャラが成立するのは、ホームズ役が常人からかけ離れた奇矯なキャラで、ワトソンが常識人として読者の視点を代弁しているからである。~
本作の場合はダルこそが奇矯なキャラの代名詞であり、むしろ海翔が常識人のツッコミ役。ワトソンとホームズの役割がアンバランスになってしまっているのだ。
---かといって、海翔をワトソン役にして、ダルの活躍を眺めるだけにするともっと問題もあっただろうが……

**総評(DaSH)
「2019年の世界」を近未来として描いた拡張現実AVG『ROBOTICS;NOTES』は2012年の作品である。~
そして2019年が実際にやってきた時、再び現実を拡張させるべく、この続編が発売された。

ダルの参戦は人を選ぶのは間違いなく、ノリが苦手な人は10分も耐えられない可能性はある。そのため、間口としては前作よりも狭くなっているのは確かだろう。

しかし、『ROBOTICS;NOTES』の雰囲気は気に入っていたが「みなさんの想像に任せます」という終わり方には納得いかなかったという人は、是非これを手にしてほしい。熱血王道感動の、まさに往年のロボットアニメのような大団円が待っている。~
あなたの『ROBOTICS;NOTES』への印象は大きく変わるはずだ。~