ファミコン将棋 竜王戦
【ふぁみこんしょうぎ りゅうおうせん】
ジャンル
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将棋
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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I'MAX
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開発元
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ホームデータ(現:魔法株式会社)
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発売日
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1991年2月15日
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プレイ人数
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1~2人
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記録方式
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パスワード、8桁の数字
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定価
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6,500円
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判定
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なし
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ポイント
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初心者お断り 大内延介九段作の詰将棋 CPUの長考がひどい
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概要
I'MAXから発売されたファミコン最後の対局用将棋作品。
特徴
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本作は竜王戦とあるが、トーナメントモード以外にも色々と用意されている。
テレビ画面でモード選択
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本作はテレビ画面で番組を選ぶような感覚で以下のモードを選ぶ。
「竜王戦~トーナメント~」
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本作のメイン。プレイヤーは決勝トーナメントに勝ち残ったアマチュアとしてプロ(CPU)を相手にトーナメントを勝ち抜いてファミコン竜王を目指していく。アナウンスが用意されているのも凝っている。
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参加者は、アマ(プレイヤー)、すま、かたはら、かなた、あわず、なにかわ、よのなか、おおやみ、竜王。実際のプロ棋士のそっくりさんを意識している。
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全部で4局。時間無制限。パスワード方式。トーナメントの組み合わせは変更可能。
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CPU同士の対局は観戦するか飛ばすかを選ぶ事が出来る。
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このモードのみ対局後に感想戦ができる。任意の局面から指し継ぎをすることもできる。負けた後に指し継ぎをして勝っても負けた事実を覆すことはできない。
「詰将棋」
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出題は大内延介九段によるものである。
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3手詰め、5手詰め、7手詰めが各10問ずつ収録されており、「三匹からの出題」という形式で3人の登場人物がそれぞれ担当している。
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また、「あなたから出題」というモードも有り詰将棋を解いてもらう事も可能。メイン画面にいる3匹が回答する形になっている。
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簡単な詰将棋なら瞬時に解く。また、時間をかければ15手詰めくらいは解いてくる。
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3匹が出題してくる問題の盤面を再現すれば自分で解いて答えを教えて(バラして)くれる(こちらが解くときと違う変化、手数になることもある)。
「将棋 実験室」
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普通の対局モードで、2P対局やCPUとの対局、CPU同士の対局の観戦ができる。
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CPUとの対局では、人造棋士に性格・戦法データ・思考時間を設定し、それによって10級から初段までのランク付けがされる。
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こちらは思考時間の目安が5秒から540秒までの10段階で設定できる。
評価点
将棋の内容
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CPUは強い
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長考するだけあって強い事は強い。そして、後に発売される多くのSFC将棋にも刺さるパックマン戦法も通用しないので簡単には勝てない。総合的には下手なSFC、PSよりも強いとは言える。
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ただ、ファミコン将棋では最も時間をかけて長考している割に簡単な詰みを逃している部分もある。
詰将棋
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大内延介九段による出題であり、本作で最も価値があるものとされている。
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詰将棋にありがちな正解手のみ受け付けるという仕様ではなく、CPUが詰将棋対戦という仕様が良い。
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本作では対局は長考で悲惨な事になっていると言ったが、詰将棋に関しては短時間かつ的確に応手をやって来てくれるようになっており、誤答を咎めてくれる手順も参考になる。このあたりは本当に実用的であり現在でも通用する。
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指した手が正解かどうかは指し返してくるタイミングで分かるようになっている。
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正解、不正解によって3匹の1枚絵が表示されるが、これがいい味を出している(正解されて悔しがったり、不正解に対してドヤ顔をしたり)。
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各手数ごとの10問を全て解くと、選択画面でその項目がグレーになって選べなくなる。全30問全て解いても特別な事は起きない。
構成は練られており、グラフィックが引き立てる
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豊富な一枚絵
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タイトルでは流れる滝のグラフィックが迎えてくれる。
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テレビ画面でチャンネルを選ぶと言う趣向の凝らし方が面白い。
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モードに応じてテレビ画面全体に画像が出て来るのも良い。例えば実験室では稲光も併用されている。
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登場人物達には、口パク瞬きも用意されている。
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竜王戦
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対局相手の顔グラが用意されているのは勿論、こちらが勝利した際は敗者の弁を聞け、その時一枚絵が少し動き色々なセリフが用意されている。
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対局中は鯉が飛び跳ねる。
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優勝者への表彰状の文章は筆体で書かれており、胴上げの際は一枚絵が用意。だが表彰内容は…(後述)
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詰将棋
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3匹からの出題という形でこちらも全体像が用意されていて、表情が色々と用意されている。
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実験室
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ここだけは対局中にも相手の顔グラが出る。しかもアニメーションも併用されている。
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盤面は手番に応じて上下反転する。2Pプレイでも自分のターンでは自動的に反映されるので地味に便利。
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人造棋士が設定した戦法通りに指さない事があるのも人間臭くてよい。
賛否両論点
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初心者には厳しい
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説明書には駒の動かし方など初歩的な事が書かれているが、本作のCPUの強さはファミコンの中でも一二を争う強さである。
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詰将棋も7手詰めまでしか用意されておらず、これで終盤戦を鍛えても対局で勝つのは厳しい。
問題点
CPUの長考
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CPUの強さに比例するように、長考もひどい事になっている。
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1手事に数分費やすためどうしても長期化してしまう。そのため時間無制限の竜王戦モードでは一局毎に数時間を費やさなければならない。また、観戦でもCPU同士の対局は15時間以上かかっている有様。
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このため、肝心の竜王戦が看板倒れどころかクソゲーの条件さえ満たしてしまっている。
本当に賞金一千万もらって胴上げまでしてもらえるなら話は別だが…
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実験室の方でも、思考時間を最大に設定して対局させると7時間以上かかる。しかも、その割には簡単な詰みを逃したり、無駄合いで手数や時間を伸ばすのもプレーヤーを呆れさせた。
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それなら一晩置いておけば翌朝見れると思いきや、対局は終わっているのみでリプレイを見ることも出来ない。
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制限時間を突き付けられる事が無く、パスワードも毎回用意されている事を差し引いたとしても、流石に1局数十分はかかり過ぎであり、CPU対局としてはまったくもって使い物にならない。
その他
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竜王戦で対局中は相手の顔グラが見えない。実験室では表示されていたのに残念。
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優勝時の表彰では、賞金1,000万円と副賞の竜王位と御苦労さまですとの言葉がもらえる。もうちょっとマシな言い方はなかったのか…
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詰将棋
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出題は良いのだが、10問がランダムで出て来るため解きたい問題を選べないのは不便。ただ、一度解いた問題は全部解くまで再度出ないようになってはいる。
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中断やリセットするとまたランダムで出題されるようになってしまう。
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解答機能についても所要時間が表示されないのは不親切である。
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5手詰めと7手詰めの問題の中に打ち歩詰めの禁手が発生する物が1問ずつあるが、実際にそれを指すと正解扱いになってしまう。
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7手詰めの問題の中には王手をせずに寄せて5手で詰ましても正解になってしまう問題がいくつかある。
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実験室
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対局で駒落ちが出来ないのはマイナスポイントといえるかもしれない。
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人造棋士の顔グラは2パターンあるのだが、2つ目の方がCPU同士の対局を観戦するときの後手番のみ見られる物となっていて勿体ない。1Pだとこちらの手番にかかわらずいかつい方の顔に固定されてしまう。
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パッケージ詐欺
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「初心者から有段者まで楽しめます!」とパッケージ裏にあるが将棋ゲームとしては中途半端なものになってしまっており、とても楽しめるものではなくなっている。とはいえこれは本作に限った事ではなく、ファミコンの性能ではプロの棋力に及ばなかったためだろう。
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とはいえ、詰将棋だけは長考なしで応手をしてくるなど、現在においても通用する付加価値と言える。
総評
構成からグラフィックまで力が入っており、志の高さはうかがえる。
しかし肝心の竜王戦が長考によりまともに遊ぶにはきつい状態になっており、ファミコンの限界を突き付けられた作品になってしまった。
やはりハード性能的に無理があったのか、CPU対局としてのファミコン将棋は本作を持って最終作となってしまった。
本作の場合、大内延介九段による詰将棋という付加価値目当てに遊ぶのが無難だろう。
その後の展開
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アイマックスは数か月後の11月に『ファミコン囲碁入門』を発売。
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こちらも対局出来るFC囲碁としては最終作。FC将棋は振るわなかったが囲碁の方は成功したと言えよう。
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翌年の1992年には、SFCで『SUPER将棋』を発売。
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SFC初のまともな将棋であり内容的に『FC竜王戦』の正統進化版とも言える。尚、1992年度に発売されたSFC将棋ソフトはこの1作のみである。
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本作の開発元のホームデータは、1989年3月3日に『早打ちスーパー囲碁』を発売している。後に魔法株式会社となり『将棋最強』も発売している。
最終更新:2023年05月18日 15:51