テトリス ザ・グランドマスター3 -テラー インスティンクト-

【てとりす ざ・ぐらんどますたーすりー てらー いんすてぃんくと】

ジャンル パズル
対応機種 アーケード
使用基板 TAITO Type-X
発売元 タイトー
開発元 アリカ
発売日 2005年3月
プレイ人数 1人~2人
判定 スルメゲー
ポイント ワールドルールの導入で快適性向上
テトリスタイムアタックの極限へ
テトリスシリーズ
テトリス ザ・グランドマスターシリーズ
TGM / TA/TAP / Ti / TGM-ACE


永遠より永い一瞬との闘い



概要

高い難易度が特徴的なテトリス ザ・グランドマスターシリーズの3作目。略称「Ti」「TGM3」。
前作では難易度の低いモードが追加され、初心者向けのフォローが行われた一方で、全体的な難易度も上昇しより上級者向けのストイックなゲームに進化。
本作もその路線を継承し、さらなる改良と調整が施されている。


前作からのシステム変更点

基本的なシステムはテトリス ザ・グランドマスターを参照。

ガイドラインに対応した仕様の導入

  • 2002年にテトリスの版権を所有するザ・テトリス・カンパニーがテトリスのガイドラインを制定したことに伴い、本作にもガイドラインの統一仕様が導入されることになった。
    • ホールドの実装、NEXTテトリミノ(以下ミノ)の表示を1つから3つに増加。
    • T-Spin判定の(一応の)導入。ガイドラインの仕様とは異なる(後述の賛否両論点へ)。
    • ワールドルールの実装。細かな仕様をガイドライン準拠のものにするルールで、前作までのルールはクラシックルールとして選択可能。
      • クラシックルールではA/Cボタンが左回転、Bボタンが右回転だが、ワールドルールでは回転ボタンの配置が入れ替わり、A/Cボタンが右回転、Bボタンが左回転に。
      • レバーの上下入力も、上入力が瞬時落下・下入力が高速落下なのは共通だが、クラシックルールでは上入力はミノがすぐ固定されない・下入力はすぐ固定されるのに対し、ワールドルールでは上入力はミノがすぐ固定される・下入力はすぐ固定されない、と真逆の仕様に。
      • ミノの色をガイドライン準拠の色に統一。またL・J・Tミノの出現時の向きが「突起が上向き」に*1
        配色と出現時の向きの比較 クラシックルール
        ワールドルール
      • ミノの回転軸が中央固定*2、かつ回転補正「スーパーローテーション」の導入。従来では行えなかった回転入れや段差越えが可能に。
      • 通称「インフィニティ」の部分的な導入。ミノがフィールドに接地している状態で、1マスでも動かすか回転させると固定までの遊び時間がリセットされる仕様が追加されている。ただし本作では永久パターン防止のため、移動10回・回転8回までに制限されている。
    • なお、ガイドライン制定後にACで発売された純粋なルールに基づいたテトリスは、ルール改変が著しい『テトリス・デカリス』(2009年)を除くと本作とAC版『テトリス ~キワメミチ~』だけである。

クラシックルールも進化

  • ワールドルールとの共通仕様としてホールド、NEXTミノ拡張、T-Spin判定が導入されているほか、ミノが1回のみ「床蹴り」が可能に。これによりIミノが左端1列開けでは入りにくかった点が改善され、他のミノも従来の仕様では動かせなかった地形でも動かせるようになった。
    • ただし、階段状なら左右両方共に入るようになったが、完全に縁まで平らに積んだ場合は右端では入るが左端では入らない、と格差自体は残っている。回転軸が右から2番目なのと、壁蹴り・床蹴りの補正は1ブロック分のみなのが理由である。

「I.H.S.」(先行ホールドシステム)

  • Initial Hold Systemの略。
  • ホールドが実装されたことに伴って追加されたシステム。一言で言えば先行回転の要領でホールドできる。
    • I.R.S.(先行回転システム)と同じく、ミノが出現する直前からホールドボタンを押していると、NEXTミノの代わりにホールドされたミノが出現するようになる。回転ボタンも押していると、ホールドミノが回転した状態で出現する。

プレイヤーデータの記録

  • 本作ではプレイヤーデータを記録することが可能。プレイヤーネームとパスワードを登録することで、成績を保存しておくことができるほか、MASTERモードでは段位認定試験が出現するようになる(後述)。
    • ただし、現在のようにプレイヤーカードやオンライン上にデータを登録するのではなく、『レイクライシス』等と同じく筐体基板自体に記録を行う方式で、プレイヤーデータは登録した筐体でのみ有効となる。
  • プレイヤーデータを読み込むと、フィールドの横にプレイヤーネーム、各モードの個人最高成績(MASTERモードは認定段位)、デコレーションが表示される。
    • デコレーションはプレイの度に増減するポイントのようなもので、成績が良いほど得られる数が増えるが、あまりに成績が悪い場合は数個減らされる。どれほど多くプレイしているかの純粋なやりこみ指標に近く、段位認定などに影響はない。

その他の変更点

  • ミノの出現補正が再度変更。有志の解析により「直近4ミノと同じものが出た場合は一定回数まで再抽選」に加え「7種のミノを5個ずつ入れた35個のミノの中から選出」と、ガイドラインの出現補正の仕様が部分的に取り入れられた仕様であることが判明している。
  • 前作までは20Gになるとタイマーなどの文字が金色に光っていたが、本作では光らなくなった。レベルの区切り線が落下速度の大まかなゲージになっている点は変更なし。
  • 従来では消したライン数がそのままレベルに加算されていたが、本作ではMASTERモードとSHIRASEモードに限り、3列消しは4レベル、4列消しは6レベル上昇するようになり、さらにタイムを縮められるようになった。またレベルの下二桁が99になった際にチャイムが鳴るようになった。
  • メダルのうち「RO」「RE」が廃止、「SK」「ST」「CO」「AC」の4種類に。本作ではMASTERモードとSHIRASEモードでのプレイ中に点灯する。
  • 対戦ではTAPでは隠しコマンドだった妨害なしで規定レベルまで先に到達できるかを競うセメントモードが「CLEARルール」と名を変えて、プレイヤーが従来のルールである「VSルール」と選択できるようになった。
    • VSルールも、攻撃特化の「ATTACK」、守備特化の「DEFENCE」、アイテム重視の「ITEM」の3つの対戦スタイルを選択可能になり、より戦略的な対戦が可能になった。一方でCLEARルールが通常搭載されたためか、隠しコマンドによるノーアイテムモードは廃止となった。
  • 隠しコマンドは「BIG BLOCKモード」のみが続投し、それ以外のコマンドは廃止に。またBIG BLOCKモードのコマンド・入力タイミングがともに変更されており、プレイヤーデータを読み込まずMASTERモードにカーソルを合わせた状態で入力する仕様になり、MASTERモード専用になった。
    • BIG BLOCKモード適用下では強制的に対戦拒否になるほか、レベル上昇の早回し(後述)が行われず前作と同じ速度上昇に固定される。

モード

本作では以下の4つのモードで遊ぶことができる。SAKURA以外は規定レベルに達すると一旦フィールドがリセットされてエンドロールとなる。
エンドロールでは従来通り、フィールド背景にスタッフロールが流れながらミノを処理していく。仕掛けは各モードで異なるが、完全クリアにはエンドロール約55秒間を耐えきる必要があり、いずれのモードもエンドロールで積み上がってしまうとクリア扱いにならない。

EASY

  • 前作のNORMALモードに相当する初心者向けのモードで、レベル200が目標。レベル0~99の間はミノを置く場所のナビゲーションが表示される。前作のNORMALとは異なりアイテムは出現しない。
    • ラインを消すと花火が上がり、打ち上げた花火の数がスコアとして記録される。コンボ消しや回転入れでラインを消すと花火の数が多くなる。
    • レベル200に達するとフィールドリセットされてエンドロール。エンドロール中は20Gになるが、一定間隔で花火が上がり続けるほか、ライン消しでさらに花火を稼ぐことができる。花火が上がり続ける間隔は成績により異なり、エンドロールを耐えきった際の花火演出もスコアに含まれる。
      • このモードのみライン消去の演出が初代TGM準拠になる。またエンドロールのBGMも初代TGMのエンドロールのアレンジになっている。

SAKURA

  • アリカがPSで2000年8月に発売した『テトリス with カードキャプターさくら エターナルハート』のストーリーモードをもとにした面クリア型のモード。モード名もこの「さくら」に由来。
    • 各ステージに配置された「プラチナブロック」を全て消去することが目的。各ステージごとに7つ配置されているが、進むにつれて配置が複雑になっていくとともに、対戦における攻撃アイテムが妨害として発動するステージ(X-RAY、MIRROR BLOCK、ROLL ROLLなど)も存在する。全20面あり、一定の条件を満たすとさらに最大7面*3のEXステージをプレイできる。
    • 各ステージには制限時間があり、時間以内にステージをクリアできなかった場合は強制的に次のステージに進む。またステージごとの制限時間とは別にプレイ全体のリミットタイムも存在し、このリミットタイムがゼロになるとゲームオーバー。なお、ミノが積み上がった場合はリミットタイムに関わらずゲームオーバーとなる。
      • リミットタイムはプラチナブロックを1つ消すごとに1秒加算され、ステージを短時間でクリアした場合はさらに5秒~10秒が加算される。またプレイ中にスタートボタンを長押しすると、リミットタイムが30秒減る代わりにプレイ中のステージをスキップできる。EXステージは各ステージの制限時間がなくなるが、ステージスキップ不可。
    • このモードではミノの出現順が固定されており、255手でループする。またステージ開始前にホールドボタンを押すことでミノの順番を送ることができる(送ったミノは直近の1つだけホールドに残る)。EXステージを含めたオールクリア後は、隠しコマンドの入力でランダムなミノの出現順でプレイすることも可能。
    • ランキングには到達ステージ数とプレイ時間が掲載される他、各ステージのベストタイムも記録される。
    • このモードのみ、全ステージをクリアしてもエンドロールが流れない。

MASTER

  • レベル999と高い段位を目指す従来からのメインモード。基本的な目的は従来と変わらないが、以下の様々な変更が加わった。

G.R.S.(段位認定システム)について

  • 認定段位数が大幅に拡張。「S9」までは従来と同じだが、「S9」の次は「m1」「m2」…となり、「m9」の次は「Master(M)」「Master K(MK)」「Master V(MV)」「Master O(MO)」「Master M(MM)」、そしてようやく「Grand Master(GM)」で、計33段階となった。
    • ただし、本作のMASTERモードにおいてプレイごとに判定される段位はすべて暫定段位として扱われ、プレイヤーデータ使用時に時折出現する段位認定試験に合格しなければ正式な段位として認定されない。さらに暫定段位そのものもプレイ途中では表示されなくなっている*4

足切りタイム

  • 前作のT.A. DEATHモードに導入されていた足切り(通称とりあえずカンスト)がMASTERモードにも導入。
  • ワールド・クラシック両ルール共通で、7分以内にレベル500を突破しないと先には進めない。早いうちから上入力による即時落下を活用していかないと突破は難しい。

スピード変化タイミングの早回し

  • 前作まではスピード変化のタイミングが完全に固定されていたが、本作は成績(レベルx00~x70の所要時間)によってスピード変化のタイミングが前倒しされるようになった。具体例で言えば、最初のセクション(レベル0~99)のうちレベル70を短時間で突破した場合、本来はレベル200で行われる速度減少がレベル100で行われる。
    • つまり、素早くセクションを進み続けるほどスピードアップも激化し、最速だとレベル300で20Gに突入する。その後もセクションのスピードクリアを重ねることで固定までの猶予やミノの出現間隔がどんどん短縮されていき、前作T.A.DEATHや本作SHIRASEにも劣らないゲームスピードに達する。
  • 早回しを起こすほど暫定段位も概ね上がっていく傾向にある。

段位認定試験

  • プレイヤーデータを読み込んでいる状態でMASTERモードを選択すると時折発生する。
  • 過去7回のプレイのうち4回以上、認定段位より高い暫定段位を出しているとランダムで出現する。この試験で指定された段位以上の暫定段位を出すことで合格となり、正式な段位としてプレイデータに記録される。
    • 試験中は強制的に対戦拒否になるほか、ランキングの対象にはならない。そのかわり足切りタイムも無効になり、レベル500以下で7分を超えてもプレイを続行できる。
    • 試験は暫定段位の履歴によっては飛び級となる場合もあるが、段位「GM」の試験は特例としてひとつ前の「MM」が認定されている状態でなければ出現しない。また暫定GM相当のプレイ4回以上、かつ試験時はシャドウスタッフロール完走が前提条件となる。
  • 合否判定はプレイ終了時に開示されるが、合格・不合格ともに「ルーレットなしで即合格(不合格)」「ルーレットが回り、合格(不合格)で止まる」「ルーレットが回り、不合格(合格)で止まるが上からOミノが降ってきて合格(不合格)に変更される」という3パターンの演出が存在し、同じ合格・不合格でもギリギリの判定だったかぶっちぎりの判定だったかがある程度判別できる。

降格試験

  • 認定段位よりも極端に低い暫定段位を取り続けると、その差分の累積によって降格試験が発生する。そのプレイでも認定段位以上を出せなかった場合は、プレイヤーの記録である認定段位が1段階下がってしまう。
    • 段位認定試験と違い降格試験の開始は明示されないが、強制的に対戦拒否になりフィールドが一定間隔をおいて振動するようになるため、判別は容易。またこちらでもランキングと足切りタイムが無効になる。

COOL!!」「REGRET!!

  • 好タイムでセクションを進んでいるときや4列消しを複数回決めたときなどに「COOL!!」、逆にセクション突破に時間がかかったときやフィールドの地形が大きく乱れたときなどに「REGRET!!」とフィールドの下に表示されるようになった。
    • このうち、100レベルごとのセクションタイムで判定されるCOOLとREGRETについては暫定段位に影響する他、タイムCOOLは上述したスピード変化の早回しの条件にもなっている。

シャドウスタッフロール

  • レベル999に達するとフィールドリセットされてエンドロール。前作と同様、一定時間後に置いたミノの表示が消える仕様で、成績によって見えなくなる時間が異なる。
    • 今回はエンドロールでのライン消去量に応じて暫定段位にボーナスが入るようになった。これを耐えきれるかだけでなく、如何にラインを多く、そして同時消ししたかで最終的な段位が大きく変わってくる。
    • 一定以上の好成績だった場合はミノを置いた瞬間に表示が消える(通称「消えロール」)が、前作と違い置いた瞬間だけミノの枠線が一瞬表示されるようになった。ラインを消した際の段位ボーナスも大幅に上がる。

SHIRASE

  • TAPのT.A. DEATHモードを継承した、開幕からいきなり20Gでスタートする超上級者向けのモード。モード名はアリカが以前開発していた『ストリートファイターEX』シリーズに登場するキャラクター「ほくと」の幼名「訃(しらせ)」から取られている。
    • スタート時点でT.A. DEATHのレベル300に相当するスピードで開始し、そこからさらにスピードが上昇していく。MASTERモードのように成績で速度が変動することはないが、T.A. DEATHでは速度上昇が止まっていた足切り突破後のレベル500以降に特殊なギミックが追加されている。

レベル上限と足切りタイム

  • このモードのみレベル上限が999ではなく1300になっている。さらにレベル500だけでなくレベル1000でも足切りタイム判定が加わる。タイムノルマはルールによって異なる。
    • レベル500ではワールドルール3分03秒以内・クラシックルール2分28秒以内、レベル1000ではそれぞれの2倍であるワールドルール6分06秒以内・クラシックルール4分56秒以内に通過しなければ、その時点でゲーム終了となる。

G.R.S.について

  • このモードにもGRSが導入されているが、T.A. DEATH同様に到達レベルセクションに応じて「段位なし」「S1」~「S13」の14段階というシンプルなもの。ただしセクションタイムREGRETによる差し引きは発生する。
  • 段位認定試験は存在せず、プレイ時の評価、及びその最高記録がそのまま認定段位となる。

せり上がり

  • レベル500~999の間は一定数のミノを落とすごとにフィールド最下段をコピーしたものがせり上がってくる。後半に進むにつれてせり上がりの間隔が早くなる。
    • TAPのTGM+モードにもせり上がりが存在したが、こちらとはせり上がりのパターンが異なる。レベル1000に到達すると停止する。
    • 公式サイトの動画紹介では「レベル500以降の『あがるのかよぉ~』をお楽しみ下さい」と紹介されていた。

[ ](モノクロミノ)

  • レベル1000以降はNEXTに出現するミノの外見が変わり、そのままフィールドに積み上がっていく。
    クラシックルールだと白色の [ ] 、ワールドルールだと緑色の [ ] という外見に統一。
    • こうなるとミノを色で判別することができなくなり、NEXTの出現音(や形状)で判別する必要がある。それまでのカラフルな3Dのミノと単色で平面的な[ ]が共存する様子はかなりシュール。
    • 通称「ご先祖様」「骨ブロック」など。最初にテトリスが実装された「エレクトロニカ60」が文字しか表示できないCUI専用だったため、ブロックが「[ ]」と表現されていたことが元ネタ。

ビッグロール

  • レベル1300に達するとフィールドリセットされてエンドロール。
    モノクロ・超高速のままなのは当然ながらまさかの「BIG BLOCKモード」が適用され、2倍のサイズになったミノを積みながらエンドロールを耐えなければならない。
    • ミノの表示が消えることはなく、操作猶予も若干緩和されるが、実質フィールドが一気に半分のサイズになるも同然なので、一瞬でも積み方を誤ると即座に窒息につながる。

評価点

操作性・システム面が快適になって遊びやすく

  • スーパーローテーションが搭載されたワールドルールの登場により、従来作よりもかなり直感的に操作を行いやすくなった。
    • そのため、ガイドラインルールに慣れてから初めてTGMシリーズをプレイする新規のプレイヤーが違和感を抱きにくい仕様になっている。
    • 一方で旧来のルールもクラシックルールという形で残されているため、従来作からのプレイヤーにも配慮されている。またクラシックルール自体も上記のように操作性の改善が行われた。本作のクラシックルールに慣れたプレイヤーが過去作をプレイしたときにミノを回しづらくなったという声も聞かれたが…(後述の余談へ)
      • 先述した通り、本作ではクラシックルールにおいてもNEXTテトリミノが3つに拡張されてホールド機能も搭載され、過去作よりも地形の乱れに対処しやすくなっている。
  • このように本作ではワールドルールの搭載やクラシックルールの調整のおかげで、とにかくスピードが速いゲーム性でも過去作より立ち回りやすくなった。そのため、MASTERモードのカンストの難易度そのものは過去作よりは比較的マシになっている。さすがに後述するSHIRASEモードやシャドウスタッフロールともなると相応の実力が無いと厳しいが。

ビジュアル面もパワーアップ

  • 本作で採用された基板「TAITO Type-X」は「Windows XP Embedded」をベースとしており、従来作から格段にビジュアル面が強化されている。
    • フィールドやミノが初代TGM以来の3D描写になっており立体感も増している。ミノをよく見てみると画面位置によってわずかに角度が違う。
  • サウンドは本作も引き続きMEGA(細江慎治)とAYA(佐宗綾子)が担当。開発時点でアリカから独立しSuper Sweepを設立していたため、本作では外部参加扱いとなっている。
    • もちろんお得意のテクノ節は健在。SHIRASE中盤からは恒例のガバも流れ出し、スピーディーな展開とそれに伴う焦燥感の演出に一役買っている。
    • EASYモードのエンドロールでは初代TGMのエンディングがアレンジされて流れるという、シリーズプレイヤーへのファンサービスも。

賛否両論点

さらに険しくなったGM取得難易度

  • 本作のMASTERモードにおけるグレード「GM」の条件は、前作までと比べると異質。ゲーム終了時に表示されるものはあくまで暫定段位ということで正式な記録ではないうえ、暫定GMは原則(認定前はランキングに入らないと)確認できない。
    「GM」の段位認定試験もなかなか出現しないため、正式な「GM」を獲得するまでに途方もない努力と継続プレイを余儀なくされるようになった。
    • 前作までは一定だったスピード変化も、本作では早回しが行われるように。内部的には18段階(従来作までのレベル0台~レベル1700台に相当)のスピードレベルがあり、早回しされることによって前作のMASTERをはるかに凌ぐスピードでミノが降ってくる。セクションCOOLを全て取得した状態の18段階目ではSHIRASEモードにおけるレベル300台のスピードと遜色ないものになり、この最高スピードまで到達した上で「消えロール」で4列消しを何度も行うプレイを「GM」認定試験までに最低でも10回以上繰り返す必要がある…と書けば、NEXTの増加・ホールドの導入・回転法則の緩和による難易度低下を考慮しても、本作の「GM」認定条件がいかにこれまでより異質かおわかりいただけるだろう。
      • 最初の「GM」認定試験合格者は稼働開始から2年が経過した2007年7月28日にようやく確認された。「GM」認定試験が人間卒業試験と揶揄されるのも頷ける。
      • 稼働開始から年数が経過した現在でも、確認されている「GM」合格者は世界で数十名しか存在しない

降格試験の存在

  • 認定されている段位より極端に低い暫定段位を取り続けていると発生する降格試験。これの存在により、ある程度以上のMASTER段位記録を持つプレイヤーは安易な捨てゲーがしづらくなっている。
    • しかし裏を返せば、認定段位並みかそれ以上の成績を出せるパフォーマンスをほぼ常に要求されるということでもある。認定段位より7段階下までの成績なら降格試験の判定に影響しないことがせめてもの救いか。
    • 捨てゲー一発で降格試験が始まったという報告も割と聞かれ、スランプ気味の時や最初の1クレジット目のウォーミングアップなどでは、プレイヤーデータを読み込まないか、MASTERモード以外をプレイするほうが良い場合も。

殺意に満ち満ちたSHIRASEモード

  • 本作で上限難易度の上がったMASTERモードや前作のT.A. DEATHモードをさらに突き放す難易度に仕上がったSHIRASEモードは、もはやシリーズ上級者ですら一握りの実力持ちしか手の付けられない難易度に。
    • 開始時点からすでにT.A. DEATHのレベル300台並みのスピードで開始し、そこから100レベルのセクションを経るごとに加速度的にスピードが上昇していく。最終セクションであるレベル1200台に至っては、着地してからミノ固定までの猶予はわずか8フレーム、秒数にして約0.13秒という殺意溢れるスピードが展開される。
    • ワールドルールであれば、移動の度に固定猶予がリセットされるインフィニティの仕様を利用して時間稼ぎを行う手もあるが、レベル500と1000に設定された足切りタイムが絶妙にそれを阻んでくる。インフィニティの仕様がないクラシックルールでは足切りタイムがさらに短く設定されており、回転の融通が利きづらい従来作の回転法則の仕様も相まってクリアが非常に困難になっている。
  • テトリスに留まらず、アーケードゲーム全般において最難関に位置する人類への挑戦状であることは間違いないだろう。それでも、ワールドルール・クラシックルールともに稼働年でのクリア者は確認されている。

独特すぎるT-Spin

  • ガイドラインが導入されたことで本作にもT-Spinが一応導入されたが、ガイドラインのそれとは仕様が大きく異なる。
  • 本作のT-Spin条件は「Tミノを固定する直前に行った操作が回転で、回転位置から落下含め1マスでも動いておらず、かつ1ラインでも消せばT-Spin」である。
    • つまり回転入れによる隙間埋めではなくともT-Spinになり得るし、逆にラインを消さなければT-Spinにならないという仕様になっている。ガイドライン搭載テトリスに慣れ親しんだプレイヤーが本作をプレイしたときに感じる一番の違和感がこれだろう。
    • なお勘違いされがちだが、T-Spinの判定条件が変わっているだけで、ガイドライン本来の仕様でT-Spinと判定される回転入れ自体はワールドルールであれば可能である。一部の回転入れはクラシックルールでも可能。
  • 本作はガイドライン仕様を実装したテトリスではあるが、そのルール上T-Spinによる見返りがあまりない。GRSにおいては、T-Spinの回数と段位との関連性は薄いか全くないという見解が強めで、対戦でもT-Spinで送り込めるライン数が増えない。せいぜい連続してT-Spinを行ったりT-Spinトリプルを決めたときにCOOLが出たり*5、EASYモードにおいて普通のライン消去よりも花火の数が増える程度*6

問題点

さらにレバーの調整がシビアに

  • シリーズ共通の問題点ではあるが、MASTERモード・SHIRASEモードともにゲームスピードが上昇しすぎたため、レバーの可動範囲を調整する「ガイド」と呼ばれる部品の摩耗速度も加速することに。
    • 当然、摩耗しすぎると斜め入力が誤爆してしまい意図しない位置にミノが置かれたりする事象が多くなる。その分メンテ回数も多くなり、ゲームセンター及び店員の負担はさらに大きくなってしまった。

加速したゲームのブラックボックス化

  • 本シリーズは情報の秘匿化が作品を追うごとに進んでおり、前作まで表示されていたが本作で隠された情報も含めてかなりのマスクデータが存在する。が、シリーズが進むにつれ複雑化したシステムに対し表示される情報が少なくなりすぎて、内部でどんな作用が発生しているのかプレイヤー側での推測が非常にしづらくなってしまっている。
    • プロデューサー三原氏の発言が必ずしも正しいとは限らないことや、プレイ中まれに表示される流れ星*7などの意味深な演出により、稼働後しばらくは都市伝説や噂話がプレイヤーの間でよく交わされていた。
    • 本作ではプレイ中の段位やスコアが非表示になったこともあり、どの要素が昇段条件に関与しているかが前作以上に不明瞭になった。COOLやREGRET、セクション通過タイムなど容易に分かりやすいものもあるが、プレイ中の段位変動がダイレクトに表示されていた前作までと比べると不親切にも感じられる。

謎の棒グラフとレーダーチャート

  • 本作のブラックボックス具合を象徴する要素の一つ。MASTERモードとSHIRASEモードでは、プレイ終了時に成績を表現していると思われる、最大20本の棒グラフと五角形のレーダーチャートが表示されるのだが、これらが何のデータを示しているのかはまったく説明されない。インストカードにも未記載で、公式サイトでさえ「自分のプレイの流れがプレイデータとして表示されます」としか書かれていない。
    • 有志によって大部分は分析されているが、それでもレーダーチャート左上の緑色に関しては現在でも何のデータなのか不明*8

BIG BLOCKの1マス横移動問題が限定的に再発

  • SAKURAモードのEXステージ3ではアイテム効果の「DEATH BLOCK」が発動し、すべてのミノが倍のサイズで降ってくる疑似的なBIG BLOCKモードとなる。しかしアイテム効果扱いであるためか、横移動が1マス単位になっている。
    • 倍サイズのミノしか降ってこないため、うっかり1マスだけ横移動するとクリア不能になる初代TGMのBIG BLOCKモードの問題がこのステージだけ再発することとなる。

総評

テトリスのガイドラインが導入され、よりプレイヤーの間口を広げるチューニングが行われた本作は、前作よりさらにプレーしやすく進化。
その一方で、MASTERの最終目標「GM」は前作よりさらに果てしなく遠い目標となってしまい、長期のプレイを余儀なくされるようになってしまった。

しかしそんな難易度に対しても、必死に食らいつかんとするプレイヤーが未だ数多くいることもまた事実。
本作のキャッチコピーである「永遠より永い一瞬との闘い」に挑み続けるプレイヤーもまた、果てがないのである。


余談

  • クラシックルールにメスが入り、回転法則も細かいルールも変化したためか、本作をプレイした後に前作TAPや初代TGMをプレイすると途端にプレイしづらくなるシリーズプレイヤーが続出。
    • また稼働当初は前作までのルールで慣れていたプレイヤーが多く、クラシックルールのプレイヤーが圧倒的多数で、ホールドをはじめとするクラシックルールへのワールドルールの一部適用に関しては(『テトリスワールド』の一件もあってか)そもそもの実装が歴戦のTGMプレイヤー間でも「ヌルゲーになりすぎる」「これくらいで丁度いい」等と議論があった模様。
    • 時が経つにつれてガイドラインも浸透し、現在はワールドルールでのプレイヤーも数多く存在する。
  • 基板に使用されているTAITO Type-Xの仕様上、本作の起動には前作までの基板より複雑な処理が組み込まれいるためか起動時間が長く*9、また動作不良も多かったために、上記のレバー調整の件も相まってゲームセンターからの評価はよろしくなかった。そのためか稼働ロケーションは2024年現在はかなり少なく、前作のTAPのほうが多く稼働している逆転現象が起きている。
    • 家庭用ハードへの移植についても初代TGMとTAPはアーケードアーカイブスで配信が行われているが、本作の移植は2024年現在も行われていない。
  • クレジット未投入時に流れるデモプレイは、1Pがクラシックルール、2Pがワールドルールでプレイしているように見えるが、よく見ると2Pはミノのデザインはワールドルールのものであるにもかかわらず、L・J・Tミノの出現時の向きが「突起が下向き」になっている*10
    • ミノの向き以外にもワールドルールにしては違和感のあるプレイ内容になっているため、クラシックルールでプレイした内容を記録し、ミノのデザインだけを変えてデモプレイに採用した可能性が高い。
  • 伝統的に搭載されている裏段位認定*11は、本作ではMASTERモードとSHIRASEモードでのみ判定される。またMASTERモードでは裏段位のスタートは「9」だが、SHIRASEモードでは「S1」からスタートし、10段目からは「m1」「m2」…となる。成形しきると「GM」になるのはどちらのモードでも同じ。
    • 回転法則が緩和されたことやホールドの存在により、本作では裏段位「GM」取得の難易度は下がっている。
  • 没データには本作で廃止された隠しモード「20Gモード」「ずっとTLSモード」用の文字列が存在しており、本作でも実装予定があった模様。
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最終更新:2024年04月16日 15:20

*1 クラシックルールでは「突起が下向き」

*2 クラシックルールではI・Oミノ以外は底面の位置が変わらないいわゆる「セガ則」になっている

*3 成績によりプレイできる面数が異なる

*4 前作と同じ段位ポイント式を内部的な基本値として採用していることが解析で判明している

*5 このCOOLは上手なプレイを行ったときに表示されるもので、段位には関与しないとされている

*6 Tミノに限らずどのミノでも回転入れでラインを消した場合、打ちあがる花火の数が増える

*7 プレイヤーデータを使ったMASTARモードのプレイ中またはプレイ終了後に出現することがある。悪いプレイを行ったときに出現した報告が多く、流れ星は良くない意味として解釈されている場合が多い

*8 現在では様々なデータが解析されている本作であるが、こと棒グラフとレーダーチャートにおいては熱心に解析しようとする者がいないのか、詳しい仕様は未解明の部分が多い

*9 組込み機器向けのWindows XP Embeddedは一般のWindowsよりも起動時の処理が簡素化されているとはいえ、当時はHDD起動だったことからゲームが完全に起動し終わるのに2分以上かかることもザラであった。

*10 上述の通りワールドルールでは「突起が上向き」が正しい

*11 フィールドを特定の地形に成形していた場合に判定される隠し要素