kairakunoza @ ウィキ

黄昏の巫女

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 (つかさ視点)


 家に戻ってから2日後の夕方。
 地面に激しく叩きつけるような強い雨が、やや弱くなった頃、私の携帯が震えた。
 ゆきちゃんからだ。

「つかささん。少し、お話したいことがあるんです。お時間をいただけませんか? 」
「明日はいつでも空いているよ? 」
 しかし、ゆきちゃんはどこか切羽詰まった口調でかぶりを振った。

「いいえ。実は、つかささんのご自宅の近くの駅まで来ているのです」
 私は驚いた。ゆきちゃんの家はかなり離れているから、今まで、
お互いにアポなしで会いに行くという事はなかった。
「雨の中、大変心苦しいのですが、駅前の喫茶店まで来ていただけますでしょうか? 」
 幸いにも私の今日のスケジュールも空白だ。
 私は笑顔をつくって、電話口にいる同窓生に向けて答えた。

「ゆきちゃん。私の家に来てくれないかな? 」
「いえ。あの。しかし…… ご迷惑かと思いますし」
 妙に口調がしどろもどろになっている。少し考えた後、私は答えを見出した。
「家に今、誰もいないよ」
「よかった…… 」
 あきらかにほっとしているようで、彼女は、自分の独り言が相手に
聞こえてしまっていることに気がつかない。

 明日までお父さんとお母さんは旅行に出かけている。
 お姉ちゃん達も、皆外出していて、帰宅は夜遅くなると聞いている。
「お言葉に甘えてよろしいでしょうか? 」
「もちろんだよ。ゆきちゃん」
 私の返事に、ゆきちゃんは嬉しそうにお礼を言ってから電話を切った。


 急な来客を迎えるために、準備を始めてから20分後、玄関先に備え付けてあるチャイムがなった。
「いらっしゃい。ゆきちゃん」
「急に伺ってしまい、申し訳ありません」
 なおも恐縮しているゆきちゃんを部屋に通して、シュークリームと紅茶を運ぶ。
 しばらく静かな時間が過ぎた後、香気を漂わせている赤い液体で唇を湿らせたゆきちゃんが口を開いた。

「今日は、つかささんにお願いしたいことがあって参りました」
 妙に改まった口調と表情だ。
「なあに? 」
 ゆきちゃんは、大人びた顔立ちに物憂げな表情を一瞬、ひらめかせてから話を切り出した。
「もう…… 泉さん達を追いかけるのはやめにしませんか? 」

 しばらく経ってから、私はゆっくりと口を開いた。

「どういうことかな? 」
 ゆきちゃんは、ひどく緊張した面持ちで話を続ける。
「泉さんと小早川さんをそっとしておいてあげませんか? 」
「…… 」
「今回の追跡によって、お二人を精神的に追い詰めてしまったのではないのでしょうか? 」
 ゆきちゃんは、無言を続ける私に向って説得を続ける。
「それに、いくら追いかけても、お二人の絆は引き剥がすことは叶わないと思います。
つかささんにとっても、蜃気楼を追い求めるような行為は、労ばかり多くて益が無いのではないでしょうか」
 ゆきちゃんは、かなり思い悩んでいるらしく、表情に疲労と苦悩の色がはっきりと表れている。
 もともと凄い美人だから、憂色に包まれた表情は妖艶とも表現できるのだけど。

「ふうん」
 私は、小さく相槌を打って続きを促す。
「私があまり言えることではありませんが、つかささんのなさりようは、
やや常軌を逸しているように思えます。お互いに離れ離れでも、
平穏な生活を楽しむ訳にはいかないのでしょうか? 」

「そうだね。『ゆきちゃん』が言えることではないよね」

 私は卑劣と十分に分かった上で、ゆきちゃんの自省の言葉に付け込んだ。
 延々と繰り出される戯言を聞いているのにも飽きたことだしね。

「ゆきちゃんは、去年の12月に、こなちゃん達に酷い事をしたよね」
「お願いですから、言わないでください! 」
 あからさまに狼狽している姿を見ていると、もう少しだけいじめたくなってしまう。
「ゆきちゃんは、あの時、こなちゃんとゆたかちゃんを別れさせたくて、いろいろたくらんだよね」
「やめてくださいっ」
 ゆきちゃんが私に縋りついて哀願する。でも、だめだよ。


「ゆたかちゃんとこなちゃんの二人が付き合っている話を、ゴシップネタみたいにして
面白おかしく生徒の間にひろめたり、学校の先生や、ゆたかちゃんのお母さんに伝えたりして、
仲を引き裂こうとしたよね」
「嫌ぁ、やめてください! 」
 ゆきちゃんは、幼い子供のように耳を塞ぎながら、首を左右に振って泣き叫ぶ。
「でも、本当はゆきちゃんこそが、こなちゃんの事が好きだったんだよね」
「お願いですから、それ以上、苛めないでください! 」

「自分が利己主義の塊なのに、どうして他人に正義を押し付けるかなあ」
「ごめんなさい。許してください! もう言いませんから」
 そろそろ可哀そうになってきたかな。

 私は、小さく苦笑すると、泣きじゃくるゆきちゃんの傍まで近づいて、
首の後ろに手をまわしつつ、もう一方の手で顎をつまむ。
「つ、つかささん!? 」
 みゆきさんの戸惑った声は鈴のように澄んでいて、とても心地良い。
「ゆきちゃん。そんなに自分の過去を責めなくてもいいよ」
 私は一転して、耳元で甘すぎる言葉を囁いた。

「ごめんなさい。でも、わたし、泉さんと小早川さんに酷い事を…… 」
「ううん。違うよ。ゆきちゃんは自分の愛を貫いただけ。
誰かを愛するということは、別の誰かを必然的に傷つけることになるの」
 私は、小さな声で本音を言った。

 私だって、こなちゃんのことが、ゆたかちゃんに負けないくらい大好きだ。
 大学に行くまでは少なくとも、こなちゃんと一緒にいられると思っていたのに、
私の小さな幸せである『お昼ごはんをこなちゃんと一緒に食べること』を無残に奪ったのは、
幸せ一杯のゆたかちゃんだった。

 でも、その時の私はとても非力だった。
 愛する人を自分の手に取り戻そうとして頑張ったのは、私ではなくて、お姉ちゃんやゆきちゃんだった。
「だから、ゆきちゃんは自分を誇っていいよ」
「そう…… でしょうか」
「うん。だから、もう泣かないで」
 ゆきちゃんが、首を縦に振ってくれたことを確認してから、私は、
既に近づけていた唇をゆっくりと重ねていく。
 ゆたかちゃんよりは少しだけ硬いような気がした。


 ゆきちゃんの秘所を弄んでいくと、彼女の喘ぎ声は少しずつ大きくなっていく。
 とても豊かな胸を揺らして喘ぎまくる、高校時代のクラスメイトの裸身を鑑賞しながら、
私はぼんやりと考えこんだ。

 こなちゃんとゆたかちゃんをいきなり、引き離すという試みはやっぱり無謀だ。
 いきなり満点を求めてはいけない。中途半端に見える結末だけど、こなちゃんと
ゆたかちゃんが籠る殻に、小さな亀裂を入れただけで満足しなくてはいけない。

 今後、私がすべきことは何だろう?
 嬉しそうに腰を振っているゆきちゃんのアソコをいじくり、愛液の感触を指に感じながらも、
努めて冷静になって思考を進める。

 決して焦ってはいけない。
 こなちゃんもゆたかちゃんも、私が黒幕であることに気づかないほど愚かではない。
 この期に及んで、お姉ちゃんのような性急な行動は、相手の感情を逆なでするだけだ。
 もちろん、時には不意を突く必要はあるけれども、今はその時期ではない。
「つかささん! ダメです…… いくっ、いくっ! 」
 長い髪を振り乱して、快楽の沼地に嵌りながら、悦楽に身を委ねるゆきちゃんが、
ひどく遠い存在に感じる。

 私は、ゆきちゃんが絶頂に至る手助けをする為に、愛液で濡れた指で秘裂をかき回す一方、
心の中だけで溜息をつきながら、異郷の地にある想い人の姿を思い浮かべた。
 こなちゃんは、どんな声で鳴いてくれるのだろう。
 ゆたかちゃんとエッチしている時みたいに、感じてくれるといいのだけれど。

 ゆきちゃんとの性行為が終わると既に雨はやんでおり、周囲は黄昏から夜の領域に入っている。
 雨に濡れた紫陽花の香りを包んだ濃厚な空気が、網戸をくぐり抜けて
微かに鼻腔をくすぐるのを感じながら、私はこなちゃんを、ゆたかちゃんの手から取り戻す計画を練り始めた。

(了)


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Summer Vacationへ続く







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  • このつかさマジでぞっとするわw笑いながら残酷な事平然とやりそうだなぁw
    -- アオキ (2012-01-28 05:59:57)
  • つかさがすごい面白い -- 名無しさん (2009-12-22 23:43:46)
  • デスノートの夜神月みたいだな
    -- 名無しさん (2008-12-28 20:26:10)
  • このシリーズ何気続いてるよね(=ω=;)次のお話がwktk -- クドリャフカ(九龍) (2008-08-02 14:36:52)
  • こなた……なんというモテモテ……
    ゆたか、かがみ、みゆき……そしてつかさからもこのヤンデレアプローチw
    ゆたかとフラグ立てなくてもいずれ3人で争いかねなかったなw -- 名無しさん (2008-07-30 22:12:22)
  • でもそんなつかさが好きだ -- 名無しさん (2008-07-30 16:20:23)
  • なにこの黒つかさ -- 名無しさん (2008-07-29 22:43:01)
  • つかさ黒い -- 名無しさん (2008-07-29 19:54:23)
  • つかさこええよー -- 名無しさん (2008-07-29 18:07:28)

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