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投稿日:2010/06/30(水) 04:13:58 中学を卒業して、高校に入ったらあいつとは離れ離れになる。 私とあいつは……違う学校に進む、はずだから。 『はず』なのは、あいつが行く高校の名前は聞かなかったから。 いや、聞けなかった。あいつと別々の学校ってことを、出来る限り認識したくなかった。 そして、そのことを嫌でも認識しなければならない中学を卒業する今日。 ……告白をすることにした。 卒業式が終わって、誰も居なくなった教室でひとり待つ。 あいつは人気者だから、きっと色々と時間がかかるだろう。 とりあえず、あいつの席に近づいて、座る。 そして、いつもあいつがそうしていたように頬杖をついてぼーっと外を眺めて。 あいつが見ていたのは、こんな景色だったんだなあ。なんて浸ってみる。 「澪!悪い、待たせた……って、なにしてんだ?」 「律の真似」 静かだった教室が、一気にうるさくなった気がする。 一人増えただけでここまで……いや、律だからかな。 律は真っ直ぐ私の前まで来て、机に寄っかかった。……何時も私がそうしていたように。 「なにしてるんだ?」 「澪の真似」 お互い顔を見合わせて、笑う。 「……で、話って何だ?」 ……話さなければならない。今になって、やっぱりなし、と言いたくなる。 でも、ここで逃げたら、次はきっとない。家が近いからって、何時でも会えるわけじゃないんだから。 「私、さ。ずーっと考えてたんだ」 寝ても覚めても律のことばっかり。何時からなんて分からない。……気がついたらずっと。 「高校に行っても、律と一緒に登校して……あぁ同じ部活に入れたら楽しいだろうな、とか」 でも、同じ高校に行くことは叶わない。一緒に登校どころか、まともに会えるかもわからない。 「て、手とかも……繋いだりとか。そ、それでその、キ、キキキ、キスとかも……」 したい、と思っていた。……でも、それも叶わない。そもそも私たちは女同士だしな。 「つまりだな、えっと……その。……私、律のことが好きなんだ!」 別々の学校に行くってことがなければ、伝えられなかった気持ち。 本当は胸の中にしまい込んでおくつもりだったから。 「そっか」 言い切ってから急に怖くなる。 拒否されるなんてことは解りきってたはずだろ。そう頭の中で繰り返す。 ……でも。怖いものは、怖いんだ。 「……じゃあ、これからもよろしくな」 「え?……それって」 『それってどういう意味なんだ』と問うために開いた唇は、あいつのそれによって封じられた。 「こういうこと」 そういってニヤリと笑うあいつの顔を見たら、とたんに涙が溢れてきた。 どうしようもなくなって、律に縋りついて泣いた。 私の頭をなでる律の手が優しくて、余計涙が止まらない。 「ばか……ばかばか。……ばか、りつぅ」 「はは、泣くなよ~」 おまえのせいだ、ばかりつ。 しばらくそうして泣いていた。……どれくらい時間がたったかわからないけど。 そろそろ帰らなければならない、ということだけは分かった。 「落ち着いたか?」 「ん」 一頻り泣いたから、なんとか。 下を向いたまま、返事をして律から離れる。 「じゃあ、澪ちゃんのお望みどおり手をつないで帰るとしますかー!」 「えっ、ちょっと……律!」 抗議する間もなく、私の手をつかみ走りだす律。 一瞬だけ見えた横顔は、今までに見たことがないくらい、赤かった。 おわる。
投稿日:2010/06/30(水) 04:13:58 中学を卒業して、高校に入ったらあいつとは離れ離れになる。 私とあいつは……違う学校に進む、はずだから。 『はず』なのは、あいつが行く高校の名前は聞かなかったから。 いや、聞けなかった。あいつと別々の学校ってことを、出来る限り認識したくなかった。 そして、そのことを嫌でも認識しなければならない中学を卒業する今日。 ……告白をすることにした。 卒業式が終わって、誰も居なくなった教室でひとり待つ。 あいつは人気者だから、きっと色々と時間がかかるだろう。 とりあえず、あいつの席に近づいて、座る。 そして、いつもあいつがそうしていたように頬杖をついてぼーっと外を眺めて。 あいつが見ていたのは、こんな景色だったんだなあ。なんて浸ってみる。 「澪!悪い、待たせた……って、なにしてんだ?」 「律の真似」 静かだった教室が、一気にうるさくなった気がする。 一人増えただけでここまで……いや、律だからかな。 律は真っ直ぐ私の前まで来て、机に寄っかかった。……何時も私がそうしていたように。 「なにしてるんだ?」 「澪の真似」 お互い顔を見合わせて、笑う。 「……で、話って何だ?」 ……話さなければならない。今になって、やっぱりなし、と言いたくなる。 でも、ここで逃げたら、次はきっとない。家が近いからって、何時でも会えるわけじゃないんだから。 「私、さ。ずーっと考えてたんだ」 寝ても覚めても律のことばっかり。何時からなんて分からない。……気がついたらずっと。 「高校に行っても、律と一緒に登校して……あぁ同じ部活に入れたら楽しいだろうな、とか」 でも、同じ高校に行くことは叶わない。一緒に登校どころか、まともに会えるかもわからない。 「て、手とかも……繋いだりとか。そ、それでその、キ、キキキ、キスとかも……」 したい、と思っていた。……でも、それも叶わない。そもそも私たちは女同士だしな。 「つまりだな、えっと……その。……私、律のことが好きなんだ!」 別々の学校に行くってことがなければ、伝えられなかった気持ち。 本当は胸の中にしまい込んでおくつもりだったから。 「そっか」 言い切ってから急に怖くなる。 拒否されるなんてことは解りきってたはずだろ。そう頭の中で繰り返す。 ……でも。怖いものは、怖いんだ。 「……じゃあ、これからもよろしくな」 「え?……それって」 『それってどういう意味なんだ』と問うために開いた唇は、あいつのそれによって封じられた。 「こういうこと」 そういってニヤリと笑うあいつの顔を見たら、とたんに涙が溢れてきた。 どうしようもなくなって、律に縋りついて泣いた。 私の頭をなでる律の手が優しくて、余計涙が止まらない。 「ばか……ばかばか。……ばか、りつぅ」 「はは、泣くなよ~」 おまえのせいだ、ばかりつ。 しばらくそうして泣いていた。……どれくらい時間がたったかわからないけど。 そろそろ帰らなければならない、ということだけは分かった。 「落ち着いたか?」 「ん」 一頻り泣いたから、なんとか。 下を向いたまま、返事をして律から離れる。 「じゃあ、澪ちゃんのお望みどおり手をつないで帰るとしますかー!」 「えっ、ちょっと……律!」 抗議する間もなく、私の手をつかみ走りだす律。 一瞬だけ見えた横顔は、今までに見たことがないくらい、赤かった。 おわる。 #comment

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