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投稿日:2010/10/19(火) 00:13:47  あたしは澪の出してくれた救急箱から消毒液を取り出して、傷口に振りかけた。  しゅわしゅわ。痛い。ものすごい染みて泣きそうだ。 「……っ」 「律!? 大丈夫、痛い?」 「へい……き……だぞ!」  自分に言い聞かせるようにして脛を伝う消毒液を拭き取る。  怪我なんて小学校卒業してから滅多にしてなかったけど、こんなに痛かったんだな。  ……もう一回消毒液かけるの、怖いな。でもまだ傷口汚れてるし。 「……私、やる」 「え?」  傷口とにらめっこしていた顔をあげると、いつの間にか澪がこちらを向いていた。  相変わらず青い顔のままで、ピンセットを手にしている。 「消毒するぞ、律」 「澪しゃん、平気なの……?」 「へいき……だ……よ!」 「ちょっ、いててて、ピンセット、ささってる! ちゃんと傷口見て!」  顔を背けたまま、えいや、と突き出されたピンセットが傷口をえぐった。  ……ほんとに泣きそうなんだけど。 「澪、やっぱり……」  自分でやるからいいよ、と言おうとして、あたしは口を閉じた。  澪、今度はちゃんとあたしの傷口しっかり見て手当てしてくれてる。  顔、青い。変な汗書いてる。目に涙浮かんでる。手、震えてる。 「澪、大丈夫か……? あんまり無理しなくても」 「痛いのは律の方だろ……だっ、だから、私が手当てしてあげるの」 「…………ありがと」  澪は震える手で不器用に血を拭き取ると、大きめの絆創膏を傷口にぺたんと貼りつけた。  最後の最後で気が緩んだのか、ちょっと位置がずれているけど、そんなのは別に気にしないよ。  だって澪が手当てしてくれたんだから。 「澪のおかげで治った!」 「ばか」 「ほんとだよ! もう痛くない!」 「ほんと?」 「うん。あと澪が痛いの痛いのとんでけって言ってチューしてくれたら完璧」 「……」  赤い顔で「ばか」ともう一度言われたけれど、澪の表情を見る限りはまんざらでもなさそうだ。 「言って欲しいなー」 「……一回だけだからな」 「うんうん!」 「……」 「早くぅ」 「わ、分かってる! いっ、いっ、痛いの痛いの、飛んで――」  言いながら澪があたしの足を見て、言葉を止めた。  はみ出した傷口からまた血が流れ出していた。 「……………………」  ぱたん。 「おわっ」  本日三度目の白目を公開した澪が、意識を失いあたしに向かって倒れてきた。  肩にもたれかかってきた澪をなんとか抱き支えて、そのままあたしは笑う。 「……せっかくいいところだったのに」  でもね、ドキドキさせてもらったからね。  それに、澪、いっぱい頑張ってくれたからね。  まあ、これで良しとしよう。 「ありがとね、澪」  意識を失ったままの澪をぎゅっと抱きしめると、なんだか本当に怪我が治ったような気がした。  ああ、でもさっきの続きは後でちゃんとしてもらおう。そこだけは譲れない。 おわり
投稿日:2010/10/19(火) 00:13:47  あたしは澪の出してくれた救急箱から消毒液を取り出して、傷口に振りかけた。  しゅわしゅわ。痛い。ものすごい染みて泣きそうだ。 「……っ」 「律!? 大丈夫、痛い?」 「へい……き……だぞ!」  自分に言い聞かせるようにして脛を伝う消毒液を拭き取る。  怪我なんて小学校卒業してから滅多にしてなかったけど、こんなに痛かったんだな。  ……もう一回消毒液かけるの、怖いな。でもまだ傷口汚れてるし。 「……私、やる」 「え?」  傷口とにらめっこしていた顔をあげると、いつの間にか澪がこちらを向いていた。  相変わらず青い顔のままで、ピンセットを手にしている。 「消毒するぞ、律」 「澪しゃん、平気なの……?」 「へいき……だ……よ!」 「ちょっ、いててて、ピンセット、ささってる! ちゃんと傷口見て!」  顔を背けたまま、えいや、と突き出されたピンセットが傷口をえぐった。  ……ほんとに泣きそうなんだけど。 「澪、やっぱり……」  自分でやるからいいよ、と言おうとして、あたしは口を閉じた。  澪、今度はちゃんとあたしの傷口しっかり見て手当てしてくれてる。  顔、青い。変な汗書いてる。目に涙浮かんでる。手、震えてる。 「澪、大丈夫か……? あんまり無理しなくても」 「痛いのは律の方だろ……だっ、だから、私が手当てしてあげるの」 「…………ありがと」  澪は震える手で不器用に血を拭き取ると、大きめの絆創膏を傷口にぺたんと貼りつけた。  最後の最後で気が緩んだのか、ちょっと位置がずれているけど、そんなのは別に気にしないよ。  だって澪が手当てしてくれたんだから。 「澪のおかげで治った!」 「ばか」 「ほんとだよ! もう痛くない!」 「ほんと?」 「うん。あと澪が痛いの痛いのとんでけって言ってチューしてくれたら完璧」 「……」  赤い顔で「ばか」ともう一度言われたけれど、澪の表情を見る限りはまんざらでもなさそうだ。 「言って欲しいなー」 「……一回だけだからな」 「うんうん!」 「……」 「早くぅ」 「わ、分かってる! いっ、いっ、痛いの痛いの、飛んで――」  言いながら澪があたしの足を見て、言葉を止めた。  はみ出した傷口からまた血が流れ出していた。 「……………………」  ぱたん。 「おわっ」  本日三度目の白目を公開した澪が、意識を失いあたしに向かって倒れてきた。  肩にもたれかかってきた澪をなんとか抱き支えて、そのままあたしは笑う。 「……せっかくいいところだったのに」  でもね、ドキドキさせてもらったからね。  それに、澪、いっぱい頑張ってくれたからね。  まあ、これで良しとしよう。 「ありがとね、澪」  意識を失ったままの澪をぎゅっと抱きしめると、なんだか本当に怪我が治ったような気がした。  ああ、でもさっきの続きは後でちゃんとしてもらおう。そこだけは譲れない。 おわり #comment

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