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//>>231 投稿日:2010/12/26(日) 11:46:13 クリスマスが終わった。 別に何十年と、物心ついたときからその『終わり』は経験してきた。 楽しい時間は、必ず終わる。クリスマスだって終わる。 そんなの当たり前だし、年中行事は日にちを過ぎれば終るんだ。 でも、それが物悲しくなったのはいつからなんだろう。 子供の頃は、別に純粋だった。 クリスマスが終わっても、プレゼントに喜んでいられた。 行事が『終わる』ということに、特に何も感じなかった。 だけど。 高校生になってから、『終わり』が怖くなった。 終わってしまうことが、悲しいんだ。 なんか切ねえ。 「律?」 「えっ? あ、ごめん。なんだって?」 「聞いてなかったのか? そこの袋取ってくれよ」 今日はクリスマスツリーの片付けだ。 私の家のダイニングに立てられていた、それなりのクリスマスツリー。 昨日まで煌びやかに輝いていたけれど、それも今日でお終い。 クリスマスは終わったのだから、もうツリーの仕事は終わりだ。 それを片付けるのも、私たちの仕事だった。 ツリーの高さは私と同じくらい。澪よりちょっと低い程度。 その澪は、ツリーの上の方から飾りを取り外していっていた。 私も手伝っていたけれど、途中からなんか物思いにふけってた。 袋と言われて、足元にある白い袋を手に取る。 この袋は、主に飾りを入れておく専用の袋だった。 私はそれを澪に渡すと、澪は手に持っていた飾りをそれに入れた。 その様子を、私は見ていた。 澪は私の視線に気付いたのか、首を傾げる。 「どうしたんだ? さっきからぼーっとして」 「……いや、なんでもねえ、けど」 「嘘だろ」 「嘘じゃないって」 嘘だ。 私は飾りに手をつけた。緑の枝から、綺麗な飾りを外していく。 澪とたまに目があったけど、私たちは黙々と飾りを取っていった。 雪を模した白い綿も取って、少しずつツリーは緑色になっていく。 一番上の、木のてっぺんの星だけはまだ取らずにいた。 一番下まで全部の飾りを取り終えた。 ツリーは、てっぺんの星の輝きだけが残ってる。 そこから下は、寂しそうに真緑なただの木だ。 木といっても、作り物だから本当の木じゃないけど……。 でも、飾りも何も無いツリーは、本当に寒そうだった。 「あと、この星だけだな」 「ああ。澪、取れよ」 「いや律が取れ」 「これどっちが取るとか、重要なのか?」 「いいからさ」 「わかったよ」 私は腕を上げて、星を掴んだ。 子供の頃は、これを見上げていた。 ツリーもすごく高くて――なのに、もう同じ身長だ。 私、成長したなあ。 星を取った。 同時にふと見た澪の表情は。 寂しそうな笑顔だった。 ■ ツリーは倉庫に片付けて、私たちは私の部屋に戻った。 暖房を効かせておいたはずなのに、妙に肌寒かった。 「寒いなー」 「暖房本当にかけたのか律?」 「かけたよ。どっか窓開いてたのかー?」 確認を取りに窓際に行くが、開いてなかった。 じゃあなんで、こんなに寒いんだろう。いや、でも……。 寒い廊下から突然暖かい部屋に入ったから、寒いのかな。 多分そうだ。指先はまだ微妙に感覚が無い。 ダイニング、暖房かけなかったからなあ。 寒い部屋で片付けるんじゃなかったかも。 窓の鍵がしまっていることを確認した。 その時だった。 ――澪に後ろから抱きつかれた。 首に腕を回されて、澪の顎が私の右肩に乗る。 私はあまりの驚きに、硬直した。 そして、右耳でわずかに聞こえる澪の息遣いが。 首を取り巻く澪の腕が。 背中に当たる澪の胸が。 私の心臓を叩く。 「律……」 「……どうした澪」 耳元で名前を呼ばれると、くすぐったい。 澪の声は、細くて、弱かった。 「クリスマス……楽しかったな……」 澪が微かに笑ったような気がして。 私は、自分の胸の前にある澪の腕に触れた。 暖かかった。 「ああ……」 「来年も、一緒にさ……クリスマス……」 途切れ途切れってことは、照れてるのかな。 私はなんだか、さっきまでの切なさが嘘のように微笑ましくなった。 「わかってる。来年も澪と一緒にいるよ」 「来年だけじゃ、許さないからな」 「ああ。もうずっとずっと一緒だ」 「……律」 さっきよりもギュッと抱きしめられた。 私は、それに反応するかのように、澪の手をギュッと握ってやる。 感覚の無い指先が、少しずつ感覚を取り戻していく。 耳に聞こえる澪の吐息。 なんというか。 「おい、澪」 「なに?」 「……無防備すぎだろ」 こんなにくっつかれて、平気なもんかよ。 「律、昨日あれだけやってまた?」 「し、仕方ないだろ。お前が抱きついてきたのが悪いんだ」 「……いいよ、私も。抱きついてたら、その……」 澪の吐息が、いつのまにか甘くなっていた。 私はおかしくなって、笑った。 ■ クリスマスって、終っちゃうの悲しいけど。 でも学園祭みたいに、来年がないなんてことはないんだ。 多分何十年経ったって、なくなりはしないイベントだろう。 だから、悲しくない。 澪だって言ってくれた。 『来年』って。 私も言った。 『ずっとずっと』ってさ。 終わりは始まり。 私と澪には、一緒に迎える行事がまだまだたくさんあるんだ。 一緒に楽しめる、いろんな出来事がこの先待ってる。 だから、いちいち切なくなってなんかいられねえよな! クリスマスだって来年もあるんだ!  終わりは始まり。 一日が終われば、明日が始まる。 一年が終われば、来年が始まる。 クリスマスが終われば、もうすぐお正月だ。 今度、お羽根突きで澪に勝つ! で、顔に落書きしてやるぜ。 でもカルタは澪強いんだよなあ……。 終わりは始まり。 今度迎える楽しみな出来事。 あといくつ寝ると、なんて歌があったけど。 私、全然成長してねえな。 まだ、『次』が楽しみで仕方ないじゃん! 澪と一緒だから、もうなんでも楽しみだ。 ■ //俺のSSが終わったってことは、新しいSSの始まりだ! //ROMってばっかの君もぜひその妄想を具現化しようぜ! #comment

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