けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

ROCK!!32

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mioritsu

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 私は唯ちゃんと、学校へ向かっていた。
 私の背中には、キーボード。
 五人の思い出が詰まったあのキーボードだ。
 隣にいる唯ちゃんの背中には、もちろんギー太。
 私たちの足は軽快だった。
 心は軽やかだった。
 縛りつけるものは何もなかった。
 悩ませるものが何もないというのが、こんなにも心躍るなんて。
 そして。
 十六日に皆と会うことが怖かった気持ちとは真逆の今。
 皆と会うのが、こんなにも楽しみだなんて。
 思い出すんだ。
 高校時代の放課後へ向かう時間を。
 楽しみなんだ。
 楽しめることへの足取りが、皆の笑える条件だって事。
 澪ちゃんとりっちゃんが一緒にいるのを見ているのが、幸せだということ。
 全部私の中にある。
 だから、楽しみだ。
 部室でまた、皆でおしゃべりできるのが。
 すっごくすっごく楽しみだ。



 私は部室で一人ギターを弾いていた。
 ストロークに心が跳ねる。
 こんな気持ちはいつ以来だろう。
 鏡に映った私の顔は、自分で言うのもなんだけど、ちょっと輝いてた。
 心の重みが取り除かれた。
 不安も寂しさも、孤独も何もない。
 そして、先輩たちに会えるんだ。
 『楽しみな気持ち』で会えるんだ。
 演奏できるんだ。
 律先輩と澪先輩の、幸せそうな顔を見ることも、とっても楽しみだ。
 泣いた記憶も悲しみの記憶も。
 嫉妬に歪んだ記憶も。
 全部私の一部だけれど、それを感じさせないわくわく。
 今日はある意味で、決別の日だ。
 『放課後ティータイム』と『今の軽音部』との。
 私は、憂たちと学園祭へ一歩を踏み出す。
 だからそのために、今日を笑顔で終わりたい。
 そのための、今。
 そのために、私は笑う。
 笑わずにはいられないよ。


 心を揺さぶるってことを、皆に伝えた。
 伝わったのは嬉しかった。
 そして今、ムギちゃんと並んで学校へ歩いている。
 久しぶりに皆で演奏できるから、嬉しそうなギー太を連れて。
 私はついつい鼻歌を歌う。
 ムギちゃんもくすくす笑うんだ。
 それが見たかったんだ。
 友達の、大好きな友達の笑ってくれる顔を。
 あずにゃんの、りっちゃんの、澪ちゃんの笑顔を。
 見たくて見たくて仕方がないんだ。
 だから部室で皆と出会った時。
 そこに絶対笑顔があるって信じれるから。
 私は今、心を踊らすことができるんだ。
 皆の気持ちを知らなかった苦しみも。
 そんなの、ちっぽけで、今は笑い飛ばせるよ。
 それを分け合える友達がいる。
 それを慰めてくれる音楽がある。
 嬉しいから。
 ここにいるんだ私は。
 ハッピーな気持ちが、全身から湧き上がってるよ。
 最高だよ。
 本当に。


 私は、律と並んで歩いていた。前と同じように、ドラムは斎藤さんに運んでもらった。
 道を手を繋いで歩く。
 律は照れくさそうに、でもこれ以上ない可愛い笑顔で笑ってくれるんだ。
 それを見ているだけで、私はとっても幸せだった。
 思えばそうだ。
 私の書く詩は、そんな一瞬の光景から生まれてた。
 いつか目にした、君のマジ顔も。
 好きになるほど切ない夜も。
 愛をこめてスラスラと、手紙を書こうとしたことも。
 好きの確率を割り出したいと思ったのも。
 前髪を下した姿を見てみたい思ったのも。
 どんなに寒くても、僕は――私は幸せなのも。
 全部。
 全部律のおかげだったし、律がいるから。
 律のための、言葉だったから。
 だからそんな一瞬から生まれる詩を、私は好きだと言えるんだろう。
 皆で作り出した曲と演奏を、大事に思えるんだと思う。
 律が掛け声を掛けて。
 一緒にリズムを作っていく。
 私は、『放課後ティータイム』の演奏が大好きだ。
 そして走り気味でも、強弱が極端だったりしても。
 私はそんな律のドラムが大好きだ。
 そしてそれを叩く律が、大好きだ。











 暖かい手と、暖かい心。
 澪とこうやっていられること。
 『放課後ティータイム』で集まる事に、楽しみを感じれること。
 そんな高校時代に当たり前であったことが、またできること。
 『過去』だけのものじゃない。
 『未来』にまで繋いでいけるから。
 私たちは幸せだと、確信できる。
 梓やムギ、そして唯の鳴らすそれぞれの楽器。
 そして。
 大好きな澪と、大好きな澪のベース。
 私のドラムも、皆で鳴らすロックの一部だ。
 音楽を通して、澪と重なることも。
 気持ちが通じ合えるのも。
 私と澪が、一緒にいる証だって思うから。

 不安だった。苦しかった。
 だけど、そんなのどうだっていい。
 だって大好きだから。
 あんなに嫌いだった自分も、澪が好きって言ってくれるから。
 澪が好きって言ってくれるから、私は私を好きでいられる。
 澪が好きな、私が好き。
 それ以上に、澪が大好き。
 だから。
 歩けるよ。
 手を繋いで。


 私たちの言葉は、それぞれの心を揺り動かした。
 大好き。
 大好きをありがとうって。












「ワン、ツー!」











 辞書でも引いてみようかな。


 ROCK。ロック。
 名詞での意味は――音楽のジャンル。ロックンロール。ロックを演奏する。
 動詞での意味は……。

 ――動揺する。
 ――心を揺り動かす。
 ――感動させる。


 だから私たちの『ROCK』は、永遠に終わらないんだ。
 この手が繋がっている限り。


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