けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

イノセント16

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mioritsu

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 私はサボったその日、すぐに家に帰って寝ていた。
 家に帰ってきたのが午前九時半で、今は午後十時だった。
 どうやらまるまる十二時間は寝ていたみたいだった。
 お昼御飯も晩御飯も食べていない。
 だけど全然食欲はなく、頭には律の顔が浮かんでいた。




(……律)



 律。



 私の、初めての友達。
 今まで誰とも友達にならなかった、そしてなれなかった私にとって、初めての。
 初めてあんなに人と話した。
 初めて家族じゃない人とご飯を食べた。
 一緒に授業を受けた。
 一緒に買い物にも行った。
 お互いの誕生日を祝った。
 クリスマスも一緒にいて。
 冬休みは、同じ地方だって知ってたから一緒に帰って。
 それで、実家も近くだったから一緒に遊んで。
 年越しも一緒で。
 初詣も。



 ずっと。
 この一年ずっと、ずっと一緒だった。
 律は友達がたくさんいるのに、いつも私と一緒にいてくれた。
 私は律しか友達がいない。
 律はたくさん友達がいる。
 だけど律は、私といることを選んでくれた。
 律は、私の寂しさを知っていたかもしれない。
 知らなかったのかもしれない。
 律が私じゃない誰かと一緒にいることが、私は嫌なのだと。
 それを律が知ってたから、私と一緒にいてくれたのかもしれない。
 そうじゃないのかもしれない。
 でも、どっちでもいい。
 律は私と一緒にいた。
 どんな時も、一緒にいたんだよ。



 だから、一緒にいられないのも怖いんだよ。
 律のことを好きだと言っている、その子と食事をするって聞いて。
 怖くて。
 一緒にバレンタインを過ごせないのかなって、怖くて。
 そしてもしかしたら。
 律が私を放って、その子のところに行っちゃうんじゃないかって。
 怖いんだ。


 平沢さんと、律が話してる場面に出くわした時、怖くなった。
 律が曽我部さんと元々知り合いだったと知った時、痛くなった。
 律が誰かと一緒にいたりすることを想像する時、震えた。

 私は、律に嫉妬してるんじゃない。
 律と一緒にいる、私以外の誰かに嫉妬してたんだ……。





 だけど律と一緒にいるのは、楽しいんだ。
 話してるのは、楽しい。
 だけど、それだけじゃなくて。
 最近は律といたら、恥ずかしくって。
 律の事見てると、可愛いなって思ったり。
 律の体を変に意識しちゃったり。
 エッチなこと考えたり。
 笑ってくれたりすると、私はドキドキしてしまう。
 律の隣にいて、一緒にいて、ご飯食べて、一緒に講義受けて。
 一緒に演奏して。

 名前を呼んでくれるだけで、痺れるんだ。
 『澪』って、律の口から出るだけで、心が躍ったりするんだ。



 一つ一つが、楽しいのに。
 最近は、直視できないよ。
 律を見ていたら、胸が張り裂けそうになるんだよ。



 『田井中さんの事、好き?』


 『私にとっても、澪は特別』


 『澪』――。


 『澪を一人にしたら悲しんじゃうだろうしなー』


 『もっと早く出会いたかったな』




 これが。
 これが、好きってことなの?
 律のことが、私は。











 好き。














 好きなんだ。



 律のことが、好き。



 律の顔を思い出すだけで、落ち着けなくなって高揚したり。
 律が話しかけてくれるだけで、嬉しくて楽しくて。
 律が他の誰かと仲良くしてて、胸が痛くなるのも。
 一日中律のことを考えてるのも。



 好きだから。



 私は、律に恋してるんだ。



「律……」





 律は、私の初めてをなんでも奪っていく。
 今度も、奪われちゃったな。



 初恋。
















 三連休だった。
 今まで祝日は律と一緒にいたけれど、律を突き飛ばした揚句逃げた。
 さらにメールも電話も無視した手前、少しだけいつものように律と会うのは居た堪れない。
 だから今回の祝日三連休は律とは会わないことにした。
 私は律に今ものすごく会いたい。でも、律は怒ってるんじゃないだろうか。
 そう思ったのだ。
 三連休の初日の今日は、建国記念日の十一日だ。
 バレンタインまで、あと今日含めて三日。
 十四日には、律は『理学部の子』と食事をするんだ。
 もしかしたら、律との恋が成立してしまうかもしれない。
 律に限って、そんなことはないだろうけど……。



 でも二人がくっついてしまったらどうしよう。
 信じてるけど、でも、怖い。
 でも、どうしようかも全然思いつかなかった。

 結局お昼の十二時までは、寝たり起きたりしていた。
 でもやっぱり、律の顔は浮かんでくる。
 それだけで胸は痛いのだけど、でもやっぱりふわふわした気持ちはするのだ。
(……詩)
 ふと、頭に浮かんだ。
 私は文芸部で、詩を書いていた時期がある。
 あの時は意味不明な、よくある言葉の模倣でしかなかった。
(……作詞)
 今は『詩』ではなく、『詞』なのかもしれない。
 一応、音楽やってるわけだから。
 律とやってて、いつかは歌詞を書いてみたいと思ってた。
 それが今、ふと思い出されたのだ。

 私は、布団からのそりと出て勉強机に向かってみた。
 適当なルーズリーフに、ペンを走らせる。
 不思議なほどに、言葉が溢れてきた。




 律を見てると、胸がドキドキする。
 ふわふわしてるし、暖かい。

 (君を見てると――)

 好きって昨日自覚して、さらに眠れなくなって。
 夜が切なくなった。

 (好きになるほど――)

 もう少し私が勇気を振るえば、何かが変わるのかもしれない。
 昨日みたいに、恥ずかしいから逃げるんじゃなくてさ。

 (何かが変わるのかな――)

 でも、律を見るとやっぱり恥ずかしさで顔が真っ赤になりそうだ。
 そうなると、普通に話すのはどう考えても難しい。
 だからって段取り考えたって、それは全然自然でもない。

 (全然、自然じゃないよね――)



 でも、話したら。
 なんとか話せば。
 その後は、どうにかなるよな。

 だって律といるのは、楽しいし嬉しいから。
 私に笑顔を、たくさんくれるから。

 (どうにかなるよね)






「書けた……」
 律の事考えてたら、律の事だけで歌詞が書けた。
 これに曲をつければ、もう立派な曲になる。
 もちろんバンドなんてないのだけど。
 私はルーズリーフを机に置いて、それを見つめた。

 ……恥ずかしい歌詞かもしれない。
 律に歌詞を書いてみたよって言ったら、笑われちゃうかな。
 それも、いいかもな。

 タイトルは、どうしようかな。




「ふわふわ……タイム」


 ふわふわ時間。
 それはまさに、私が律と出会って送った日々のことだった。


 律と恋人同士になりたい。
 そんな想いは、どんどん膨れ上がっていた。












 2月11日 くもり



 澪、怒ってるかなあ。
 メールもしたし電話もしたのに、応答がないってことはそうだよな。
 今までずっと一緒にいたのに、バレンタインは他の子となんて。
 私の馬鹿野郎。大馬鹿野郎だ。
 最初に澪が行けばって言ったから、少し頭にきて。
 澪の嫉妬が見てみたいななんて気持ちで受けるんじゃなかった。
 「これでいいかよ」なんて煽ったけど、私馬鹿みたいだな。
 いや、実際馬鹿だ。本当に馬鹿だ。
 馬鹿律。マジで情けない。


 でも下宿まで行ったら迷惑だろうな。
 会いたいな。でも、そっとしておいた方がいいのかな。


 ってか、澪の奴鈍感だよなー。
 気付けって。私の気持ちぐらい。


 澪、大好きだよ。
 日記に書いても意味ねーよ私も。


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