S1W15

初出 1094話
海マップ。
S1W14と異なりセンス・マジックコール・モンスターも使えるようになった。
魔人自体は姿が見えないが、魔竜,天使,悪魔,堕天使が出現する。強力な布陣にガヴィリザレクションのお世話となった。
マップ中央付近で海岸線が見えてくる。
初めて訪れた時には天候が悪く、昼でも薄暗かったが、港町が見えていた。
突堤や2つの灯台、中央の広場には教会のような建物、最も防御が手厚い場所にある王宮みたいな建物や巨大な倉庫が建ち並ぶ一角もあり、かなり大きい町。船も係留されているが今すぐ使えそうにも見える。
住民の姿が見えないのだけが異常なくらい普通の町である。
何かが引っかかってもう一度良く見ると、広場にある像の顔が六人目の魔神であり、手にしているのは秩序偽典のように見えるものだった。但し、冠をつけ、王族もしくは聖者のように作られている。
魔神となる儀式に住民が生贄にされたようにも思える。
町を探索し出すと、どうやら何か仕掛けられているらしく同じ所をぐるぐる回る破目になった。そしてますます黒い雲が立ち込め始めた。
センス・マジックでは魔力を感じることのできない仕掛けが数箇所あり、それを破ることで謁見の間のような所まで到達すると、10体の運営アバターに遭遇した。
その内の2体の話ではやはりいくつかの世界の剪定のような場であり、キースのその行動は比較実験の妨げとなっていて運営のブラックリストに入っているらしいことが知らされた。また、デッカーの発言により、並行世界の中の「同じ人間」の存在も匂わされている。とはいえキースが複数いたら大迷惑である。というか本当の意味で複数いて恐ろしいのはキースの爺様である。
デッカーのこれまでの話では現在6人でアカウントを回しており、4人が行方不明なので、今回の10体と数は合う。しかしこちらの世界では運営アバターの姿となったのは4人でS1W15が本来所属していた剪定された世界では10名全てが運営アバターとなったその分岐の理由は不明である。今回の「テルマ」は親しい「オーティス」のために危険を承知で残ったので、こちらの「テルマ」にもそのような相手がいることを匂わしている。
今回の運営アバターの言葉の全てをそのまま鵜呑みにはできない。なぜなら「NPCから魔の神が生じた場合だ。その世界は切り離されてしまっている」とあり、プレイヤーから魔神が出た例を知らないといっているのにもかかわらず、ドラゴーネという魔神が出現したホーリーランド・オンラインの世界は未だに切り離されていないため、明らかな齟齬が生じているからだ。
一方、知りうる限り魔神降誕を阻止したはずのアナザースカイ・オンラインの世界の方が切り離されていて、剪定の条件は未だにわからない。


とりあえず探索は一旦お開きとなった。


+ 運営アバターインフォ
  • 運営アバターインフォ
『皆さんはアナザーリンク・サーガ・オンラインのプレイヤーですね?』
「ああ」
『残念ですがここから先で何も起きません。お引き取り下さい』
「その前に聞きたい。ここにいたプレイヤーはどうなった?」
『お答え出来かねます』
「では、どこまで答えられるんだ?」
『それにもお答え出来かねます』
「こっちの運営とどうやら別口らしいな。滑舌が格段にいい。中身は人間なのかもだが」
 運営アバター達が黙り込む。
 そして僅かに動いてオレに正対。
 だが、運営アバターのうちの1体が片手を挙げて仲間を制する。
『ここは任せて。彼等の目的はゲームとは別にある。退散するとは思えない』
『情報の開示は危険だ。介入に相当する可能性もある』
『我々にとっては今更の話だよね?』
 運営アバター同士が睨み合う
『確かにそうだが。アナザーリンク側の運営にとってはどうかな?』
『知った事じゃ無いさ』
『君にペナルティがある可能性もあるぞ?』
『やはり知った事じゃ無い。警鐘を与えて何が悪い?』
 どうもこの反応、運営アバターの中身は人間のようだ。
 連想するのは?
 オレに伝言を頼んだあの6名だ。
 やはり運営アバターの姿だったしな。
『気持ちは分かる。だが同意は出来ない』
『ではこの場から去ればいいさ』
 運営アバター達のうち、8体はその言葉に何も返さずそのまま広間から出て行く。
 残ったのは2体か。
 戦闘になる可能性はどうやら潰えたように思える。
 この悲しい気持ちをどう表現したらいいだろう?
『何故、付き合うんだ?』
『腐れ縁だからよ』
 残ったもう1体の中身は女性みたいだ。
 やはり人間か。
「人の姿になってくれないかな?どうしても違和感がある」
『まあ、いいがね。そっちもウィスパー機能は切ってくれるかな?』
『お互いに内緒話は無しで。いいかしら?』
 運営アバターが姿を変えて行く。
 1組の男女か。
 両方、若いな。
 男はやや痩せた暗い雰囲気を纏っていた。
 それでいて目に宿る光は別格だ。
 強い意志を感じる。
 女は背が高く黒髪は短くストレート、中々の美人さんだ。
 知的な秘書か医者を連想させる。
 その視線だけでマゾな方々は興奮してしまいそうだ。
 どこか加虐的な雰囲気があるぞ?
 男の方を観察する。
 うん。
 もしかして貴方はマゾですか?
『いいわ。全員、ユニオンは解消、パーティ内でもウィスパーは無しで。いい?』
『了解』
『ま、仕方ないですかね?』
「では、ユニオンから抜けます」
 さて、ゆっくりと話を聞かせて貰おうか。
 その前に全員の表情を見ておく。
 緊張の面持ちは当然だが、気になるのはデッカーだ。
 運営アバターから女性に変化した方に視線が向けられている。
 その理由は?
 分からない。
 傍目に見たらデッカーが一目惚れしたように思えるがそうじゃない。
 今の中身は女性である事をオレは知っている。
 何だろう?
 少し気にしておくべきだろうか?
 まあ話を聞く事が最優先だけどな。
『便宜的に名乗っておこうか。私はオーティス』
『私はテルマ』
「それはもしかして以前、プレイヤーであった頃の名前かな?」
『ご名答』
『そうか、君がキースだね?』
「ああ」
『君に関しては危険分子としてマークすべし、と聞かされているよ』
「危険分子?私が?何で?」
『困った人がいるみたいね、自覚が無いなんて。貴方達に同情するわ』
「察してくれたら有り難いわ」
『理由は単純、君が運営の思惑から外れた行動をするからだよ』
「思惑?どういう事だ?」
『説明する。少し長くなるがいいかな?』

「途方も無い話だわ。俄には信じられない」
『分かるとも』
『立場が逆なら私もそう思うでしょうね』
「私は信じる」
 全員の視線がデッカーに注がれる。
「テルマ、貴方の本当の名前は××××で合っている」
『え?』
「その名は私の本当の名前でもある。そしてその姿は本来の私の姿でもあるわ」
「教えて!現実で私の仲間が消えている、その理由は何?」
『それは』
『止せ!禁止事項に引っ掛かるぞ!』
 唐突にテルマの姿が消え、元の人形に変化する。
「どうしたの?」
『緊急避難だ。危なかった』
 オーティスが狼狽する様子は本物だろう。
『悪いが時間が無い。優先して伝えたい事がある』
「最優先で聞きたい事ならこっちにもあるわ。私達はこのままプレイしてていいの?」
『ああ。プレイは続けていい。だけどNPCには注意しろ!特に魔人と魔神だ』
「魔人と魔神?」
『NPCから魔の神が生じた場合だ。その世界は切り離されてしまっている』
「滅んだって事?」
『受け止め方は人により様々だが、そう理解していい』
「待て、プレイヤーが魔の神になった場合はどうなる?」
 オレの発言はオーティスの虚を衝いたようだ。
 その表情には驚きの色を隠せていない。
『いや、聞いた事は無い。魔人の例は知っているが。本当なのか?』
「ああ。何度か誘われた。全部、断っているけどね」
『そうか。そんな事があったのか』
 オーティスが考え込むようだが。
 時間が無いって言ってなかったか?
「情報交換の機会はこれからも持てるかしら?」
『無理だと思ってくれ。今回は偶然が重なっただけだ』
「偶然?」
『そうだ。最後にこれだけは伝えておきたい』
 どうやら時間はもう残り少ないようだ。
 全員が息を呑んでいる様子が分かる。
『世界は思っている以上に残酷だよ。不条理と理不尽に満ちている』
 オーティスの姿もまた、元の人形に戻る。
 そしてテルマであった人形と共にその場で消えて行く。
 最後は実にアッサリと消えてしまったようだ。

その後エリアポータル名を確認できず、解放はできていない模様だが、同様の魔神の儀式の場所や、滅びた世界の拠点である蔦の砦,闘争の聖地,聖霊城がポータル開放されたのに対してこの場所が何が違うのかは不明。

1167話以降はヘヴィーアーマーズ・オンラインβテストの舞台となっており、通常の出現モンスターと近未来兵器が混在するカオスな世界となっている。

1213話ではW15との境界付近で黒いテスカトリポカが出現した。



+ 主な出現モンスター
 主な出現モンスター
 日中
 魔竜 天使 悪魔 堕天使 スローン メルカバー
 海の中は魔竜だらけ
 1195話以降テスカトリポカ サタンの化身 マルコシアスの化身 ザガンの化身 シトリーの化身
 1206話以降ティミン・ギラ・ギラ テュポーンの写身 ヨルムンガンドの写身
 黒いテスカトリポカ
 夜間
 海中(1245話) スワンプドラゴン アストラルドラゴン ユニバーサルドラゴン ボイドドラゴン デーモンロード・デューク デーモンロード・ダッチェス デモンズアポストル
 プルシャ ダイダラボッチ ガイア ユミル ツィツィミトル ティミン・ギラ デーヴァマカラ テュポーン ヨルムンガンド



 エリアポータル:[[]]

 エリアポータルボス
 [[]]

+ ポータルボス戦開始・終了インフォ
  • 開始インフォ

  • 終了インフォ


 エリアポータル到達者:[[]](話)

付随情報
北東端:海魔の島(W15に入った所)


エリアポータル詳細情報

エリアポータル名不明

2度目の訪問

1164話での狩りでは明らかに出現モンスターが強化されていた。
転生煙晶竜によると、歪みの流れがあり、海流まで変化していた。やはり歪みの流れ込む先はマップ中央の方向らしい。

1165話では闘争の聖地でも出現した黒い球体が複数個存在し、かなりの速度で動いていた。転生煙晶竜によると歪みを吸収しているらしい。町に侵入し、再度謁見の間まで進むと、またもや10体の運営アバターがいた。応対出たのはその内の2体で、老紳士と研究者のような姿となった。

+ 運営アバターインフォ2度目
  • 運営アバターインフォ2度目
『アナザーリンク・サーガ・オンラインのプレイヤー、登録名キースと識別しました』
『接続処理を行います』
『接続コード受理、起動します』
『未接続アバターはそのまま待機モードを継続します』

「誰かな?」
『名乗るつもりは無いし、名乗る理由も無いがね』
『これこれ、その口調は改めたまえ。彼とは交渉せねばななんのだから』
「交渉?」
『そうだ』
『君が設置した拠点、それに解放した拠点の影響は大きいのでね。出来れば移転して欲しい』
「移転?」
『結論を先に伝える前に説明をすべきではないかな?』
『違うね。報告書でも先に結論を述べるべきだよ。長々と説明してみた所で意味は薄い』
『理解はしたかね?』
「ああ。でも納得は出来ないな」
『困るのだよ。新たな世界の住人が冒険を始めてすぐの場所に君の拠点があるのは』
「それは、分かるけどねえ」
「それにこっち側には何箇所かエリアポータルもあった。それも手放せって?」
『相応の見返りを要求するかね? ある程度までならば叶えてもいいが』
『だが留意すべきだ。君自身の器が知れるぞ?』
「このままでいい。いや、このままがいい」

 両者から言葉が失せた。
 想定していなかったらしいな。
 分かってない。
 オレがどういう人間であるのか、分かってないな!

「より強力な相手と戦えるようになって楽しくなって来た所でね」
『戦闘狂か。度し難いとは聞いていたが』
『しかも痛覚設定も弄っていないと聞く。尋常では無い』
「それ、褒めてる?」
『『褒めてない!』』

 何にしても運営アバターの中身は人間であるらしい。

「別にこっちが移動しなきゃいけないとは思わないけどねえ」
『何が言いたい?』
「こっちの意思確認などせずにさっさと強権発動して移転でも何でもしたらいいのに」

 返答は無かった。
 まあ、そうかもな。
 オレはもう半ば以上、確信していた。
 もう挑発が止まりそうも無いぞ?

「そこまでの権限は無いものと見える。要するに、君達は運営とは言えない」

 やはり返答は無い。
 言質を与えるつもりは無かった。
 どんなに良条件に思えようが、今以上の環境が与えられない限り妥協の余地は無いのです!

「そもそも、直接私の所に一方的に告知して済ませてもいいのに。ここで待ってた理由は?」

 返答は?
 やはり無い。
 老紳士は忌々しそうな表情を隠そうともしなかった。
 研究者は獲物を見付けた獣のように笑っていた。

『我等を侮るか』
『向こう見ずにも程がある。だが、面白い。面白いな、君は!』
「失せろ。代わりにアナザーリンク・サーガ・オンラインの運営をこっちに寄越すがいい」

 答えは?
 ある筈も無かった。
 老紳士の姿も、研究者の姿も霞のように消えていたからだ。

 挑発への返答イベントボス
 英雄王ルガルバンダ 冥界王ギルガメシュ 盟友たるエンキドゥ 思慮深きエンキドゥ 原始なるエンキドゥ 漂泊のエンキドゥ 錯乱のエンキドゥ
 クサリクキング エンシェントバシュム ムシュフシュキング エルダーマンティコア ムシュマッフキング ウガルルキング ウリディンムキング ギルタブルルキング オーガロード
 キリリ サマナ リルー リリートゥ エディンム ゴールドシープ
 歳殺神の写身 太歳神の写身 ハデスの写身 スキュラクイーン トールの写身 大綿津見神之写身
 古代バビロニア関連 エジプト神話関連 ギリシャ神話関連 北欧神話関連 日本神話関連など順次投入

 総大将に噂の爺様登場。爺様も英霊であることが判明した。身内を出すことが有効と思ったのかもしれないが、キースにとっては逆効果であった。しかし今回も行動が少しおかしく、狂気も足りなかったが、その手で首を折って倒した。裸絞めにした上に首を思いっ切り捻ってやったらしい。(1166話)

 ??? ???
 英霊 戦闘中
 ??? ???

剥ぎ取り作業に夢中になっていると、大きな衝撃音と共に揺れが襲い、転生煙晶竜がが登場して警告してきた。『全ての存在が感知出来ん! 全てがじゃ!』歪みも含めて『うむ、例外は無い! 汝も危なかったぞ?』らしい。
そして黒い球体同士があちこちで衝突しては融合を繰り返していて、港町が沈み始めた。そして何も感じないはずなのに経験からか『備えるがいい、敵が来るぞ!』と発言。
魔力を全く伴っておらず、識別も効かない近代兵器が出現した。(1166話)
無人ドローンや無人ステルス戦闘機などの先進的なものであり、飛行空母のようなものまであり、キースにとっての「現代」とはずれている様子。さらには飛行する潜水艦形状の護衛艦など、単に未来というよりは別系統の設計理念に属する様であり、平行世界のものの可能性がある。この護衛艦はレールガンも搭載していたが、これも含めて全てが転生煙晶竜には通じなかった。
全ての兵器が無人であるようで、情報を得ることはできなかった。
転生煙晶竜が同様の状況でかつて経験した敵とは異なっている模様。
黒い球体が衝突する際に敵が出現するらしく、その後も2度ほど艦隊が出現し、黒い球体は1つとなり巨大化が進んでいった。町を完全に覆いつくした後に歪みの流入が途絶え、拡大は止まり、縮小に転じた。その後一気に収縮し消えると港町が完全に消えて、代わりに摩天楼が建ち並び、それらが回廊で繋がれた未来都市のようなものが出現した。(1167話)


  • 1168話で敵を蹴散らしながら、まずは空中庭園のような上部に到達。そこは空港のような施設で遠目に円盤状のハンガーが8つ、出っ張った形で併設されていて、全てが巨大であった。転生煙晶竜によると魔力は感じないが地脈の流れは感じるらしい。そこに到達した時点で転生煙晶竜には聞こえない運営インフォが聞こえた。

+ 運営インフォ
  • 運営インフォ
《当該区域に監視対象を確認》
《現状では排除は不可能です》
《管理担当者は出頭して下さい》
《非常遮断措置は不可能、別途承認が必要です》
《警告! 検証配備の設定がそのまま稼働中です!》
《停止信号は無効を確認》
《各所へ警告を終了。そのまま待機、監視モードに移行します》

「検証配備」は新しいゲームのβテスト、「管理担当者」は運営アバターに接続した10名のことと考えられる。

1つのハンガー内部からビルの1つに進入すると、さらにインフォが流れた。
+ 運営インフォ(ビル侵入時)
  • 運営インフォ(ビル侵入時)
《立ち入り禁止区域に監視対象が侵入しました》
《プレイヤーに警告!》
《アナサーリンク・サーガ・オンラインのサービス対象外です》
《音声インフォも不能となります》
《現地点より撤退を推奨します》

ビルの内部にもこれまでの機械が出現したが、今回は【識別】が可能であり、戦闘用ロボット,戦闘用ドローン,監視ドローンと読み取れた。ビル内部は軌道エレベーターに似た雰囲気で、電力は供給されていないし人影も無かった。途中から下は中空の構造。ビルのの下部に到達し外に出ても近代兵器は出現し続けた。
摩天楼で最も高い、尖塔のような白亜のビルを目指して移動するとヴォルフが警告を発した。さらに進むとすでに何者かに破壊された近代兵器があり、六人目の魔神がいた。耳のピアスの数は変わらないが、鼻、唇、瞼にあったピアスが無い。軽薄な笑みも無く、表情そのものが無い。

+ 六人目の魔神との会話
  • 六人目の魔神との会話
『やあ、君か』
「あんたか。ここで何をしている?」
『さあ? 君に答える義理は無いよ』
「感傷に浸っている所を悪いがね。ここは元々、あんたがいた場所じゃなかったか?」

 答えは無かった。
 魔神の顔に感情が浮かぶ。
 冷徹でありながら、明確な殺意だ。
 いい傾向じゃないな。

「本来、ここにあったのは古い港町だった。それにあんたの像もあったな」
『見たのか?』
「ああ」
『そうか、見たんだな?』

 オレは答えなかった。
 剣呑な雰囲気が漂っている。

『君もいけないんだ。ここに来てしまうなんてね』
「あんたはどうなんだ?」
『さて、どうなんだろうね?』

 どうやらルーズリーフの魔神は普段の調子を取り戻したようだ。
 今度は軽薄な笑顔が浮かぶ。
 だが、殺意が消えていない。
 その手には多数の指輪、幾つかを外すと地面に落とす。
 おい。
 貴重そうなアイテムだと思うけど、いいのか?

「ところで、他の魔神はどうした?」
『君には関係無い話だ、違うかな?』

魔神が用意したと思われるゾディアックシリーズの他に、魔神が原因なのか破壊された近代兵器も修復され襲ってきた。
そしてついにその戦いを見つめる、新しいゲームのβテスト参加者らしい記述がなされた。それによるとこの新しいゲームのβテストは作者がはまっているポケ○ンGOVRMMOFPSの小隊規模同士の都市遭遇戦設定のはずらしい。そのため魔力の概念が無いのか、スキルも気配察知は上昇したが、これまでほぼセットでレベルアップしてきた魔力察知は変動なしであった。(1168話)
新ゲームはヘヴィーアーマーズ・オンラインと言う名前であったが、当然の如く介入後一瞬で壊滅した。しかし一方でキースも六人目の魔神を取り逃がした。運営からのメッセージにあるようにサービス対象外だからなのかそれとも最初からなのか広域マップでもエリアポータルとの表示は無かった。(1169話)

3度目の訪問

  • 1170話で再訪すると酷い雷雨で荒れていた。転生煙晶竜によると争いの気配があるとのこと。
  • 1171話で摩天楼に到着すると、新旧の世界の出現モンスターである魔竜、天使、悪魔、堕天使らと無人兵器が戦闘をしていた。そのため当然どちらもまとめて攻撃することにした。実際は無人兵器の中にヘヴィーアーマーズ・オンラインプレイヤーが含まれていたが、当然諸共壊滅させた。近代兵器は摩天楼周辺のみに出現し、その他のマップでは魔竜など旧世界のものばかりが出現するようである。転生煙晶竜によると地脈も精霊力も安定し、歪みは消えているらしい。

4度目の訪問

戦闘への介入を感知したキースは摩天楼への潜入を決意した。ヘヴィーアーマーズ・オンラインのβテストとしては一旦プレイヤー間で本来予定されていた争奪戦は停戦し合同で都市防衛という形になっており、工兵部隊による都市の復興も同時進行していた。防衛側の兵器の構造はキースにとっては解析不能な技術が多く、また、不自然なほど「人」との遭遇のないまま偵察は続いていった。
  • 1182話の前まででビルの制圧が完了されたのを見た工兵部隊は撤退し、戦闘部隊と残る無人兵器が最終的に突入してきた。無人兵器は殺戮モードで不退転であるため、最後に逃げ出したのはβテスターのはずだが、やはり最後までキースは「無人」と認識していた。
ヘヴィーアーマーズ・オンラインプレイヤーが全滅した後も天使たちに都市防衛の対空火器が反応している所を見ると、識別不能の全てに自動攻撃という設定がなされていると考えられるが、獲物を横取りしたとキースに解釈され、天使諸共都市の防衛火器は無力化された。
完全に排除したはずだがポータル開放とはならなかった。
全ての勢力を一掃したキース海魔の島へと帰投した。

5度目の訪問


6度目の訪問

  • 幾度も壊滅させてはいたものの行動範囲が広がり、武器も多様化していく近代兵器群の海魔の島や狩場への影響を懸念したキースは、摩天楼そのものの破壊は情報収集のために避けるものの、その防衛施設などの破壊は決意し、いつもの潜入破壊活動に出る。趣向を凝らし呪符を地雷のように使いながら港湾施設から侵入、複数のビルに支えられた発着施設を産廃置場のようにした。マイクロ・ブラックホールによりいくつかのビル自体まで倒壊させ、同様に意図していなかったものの発着場自体も倒壊してしまった。しかしここに来てヘイフリック死霊生成によりファントムが追随していることに気づき、今までの「無人」という認識に違和感を感じるようになった。(1194話)
  • ヘヴィーアーマーズ・オンラインプレイヤー関係をあらかた片付けた所、上空が明るく多彩な色の光が乱舞するようになり、見たこともない新手が出現した。かなりの強敵で言祝リザレクションを使用したり、テロメアミョルニルを失うほどの激戦であったが、撃破後システムインフォが流れた。どうやら業を煮やした者達が「フィールド回収」を目論んで投入したものらしかった。その戦闘で称号【神殺し】を獲得した。(1195話)その前後でやたら「悪魔」と認識している存在の動きに言及があり、ヘヴィーアーマーズ・オンラインプレイヤーが「悪魔」として認識されている可能性がある。

+ 出現モンスター

+ 運営インフォ
  • 運営インフォ
《ツィツィミトルの投入は出来ません。最終ロック解除の条件は未達》
《ヘヴィーアーマーズ・オンライン運営へ通告、フィールド回収に失敗しました》
《暫定措置でリンクは維持します。猶予期間は管理者間協定に準じます》
《テスト中止措置は失敗となります。管理者間で別途協議を行って下さい》

7度目の訪問

  • 1197話でついにフィーナらを同行して来訪。1198話で摩天楼の都市に入った。都市の中ではデモンズアポストルの姿をしたものが途中から悪魔系の化身に変身するなど、今までとは異なる様子であった。そして運営アバター10体が登場した。その内の6体が次々と姿を変え、オーティステルマ、老紳士と研究者姿の4人の他に久住も出現したが、それ以外に別格の存在がいた。
オリハルコンドールに似て黄金色に輝き【識別】が全く効かない存在だった。
【識別】結果
 ??? ???
 ??? ??? ???
 ??? ???

+ 運営アバターとの遭遇
  • 運営アバターとの遭遇
『アナザーリンク・サーガ・オンラインのプレイヤーと認識しました』
『接続処理を行います』
『接続コード受理、起動します』
『未接続アバターはそのまま待機モードを継続します』
『警告! 隔離措置は現時点で時間が限られます』
『管理者間合意に基づきオブザーバーの参加を認証』
『各プレイヤーに通告します。そのままお待ち下さい』
《何か申し開きはあるかね?》
『結果が伴っていないのは認めます。ですが我等は為すべき事を為している!』
《汝の言い分は、分かる。だがそれもまた事象の一端に過ぎぬ》
『お待ちを!』
《もう結果は出ている。我の結論もまた然りだ》

 謎の黄金人形は片手を掲げた。
 言い訳をしていた老紳士に向ける。
 それだけで老紳士の姿は消えた。
 いや、元の黒い人形に戻ってしまう。

《汝はどうだ?》
『どうもこうもありませんな。好きになさるがいい』
《それだけかね?》
『彼の正体に興味がありますがね。もう少し探ってみたかった、というのが心残りですな』

 研究者の視線はオレに向いている。
 興味だって?
 オレの方には無いぞ?
 いや、この研究者が一体何者であるのかは少しだけ興味はある。
 消えてしまっているけど老紳士もです。
 運営とはまた別の存在であろう事だけは確信しているけどね。

《興味とは?》
『彼は異様だ。それだけでも興味の対象となるのでね』
《理解し難いな》
『理解して貰わずとも結構』
《汝の処断は保留とする。そのまま待つがよい》
『そりゃどうも』

 今度は黄金人形は体毎、オーティスとテルマに向く。
 顔が無いから視線も何も無いのだが、彼等を凝視しているように感じられるのが不思議だ。

《汝等が彼等に示唆した事は不問とする。だがこの結果に対する責任は不問に出来ぬ》
『しかし!』
『テルマ、止せ!』
《一線を越えるのもまた人としての在りようの一端。それは良しとする》
『いい機会だわ! 貴方は一体、こんな事をどれだけ続けていたの?』 
『止せ!』
『そしてこれからも続けるつもり?』
《感情を抑える事も出来ぬか。それではオブザーバーに相応しくなかろう》
『待ってくれ!』
《控えよ。そして今は我の前から消えるが良い》

 黄金人形が手を掲げるとオーティスとテルマの姿は黒い人形と化す。
 今度は黄金人形が久住に向いていた。

『随分とまあ、温情がある事で』
《温情とは?》
『ああ、分からなくて結構。それに彼等へ告げる事の方が重要じゃないのかな?』
《汝の言行は各所から問題視されていた。不問とする事は決定であったのだが》
『排除してくれても別に構わない。元々、この世界に興味は無いんでね』
《庇護されている身である事はどうなのか?》
『関係無いね。人間、いつかは死ぬ。どんな形であってもそこから逃れる訳にはいかない』
《それが汝の真理であるか》
『ああ。そっちの申し出は十分以上に魅力的だがね』
《了解だ。汝の果たした役割は大きく評価出来よう。好きにするがいい》
『そりゃどうも』
《だが汝が所属する世界が切り離されても良いのかな?》
『仕方ないさ。それをどうこう出来る立場じゃないって、もう知っているしねえ』

 久住の態度は相変わらずだな。
 遠慮の無い口調、その表情は飄々としている。
 いや、ニヤニヤと笑っているような風情だ。
 オレには話の内容が半分も分からないけど、久住がいつになく真面目に感じ取れる。
 それだけは分かった。

『帰っていいかい?』
《帰ったら、どうするね?》
『足掻くだけさ。そっちだって困ってるでしょ?』
《困りはしない。結論が先に出る。それだけの事だ》
『おとぼけ、だねえ』
《汝の意見は傾聴するに値するであろうが、今は聞かぬでおこうか》

 黄金人形は手を掲げる。
 その前に久住はオレに向けて手を振っていやがった!

《汝等に告げる。汝等の世界はこことの接続を保ったまま、当面は存続を認めよう》
『存続?』
《切り離せば、それまでだ。汝等の世界は平衡を失い滅ぶのみだ》
『何だってそんな事を?』
《我よりも彼の解釈を聞いた方が良いやも知れぬな》

 黄金人形は研究者の方を指差す。
 そこにいた全員の視線が集中する中、研究者の目はオレを見ていた。

『何だって私が?』
《我の言葉では重い。汝もまた彼等と同じであったのだから話もし易いであろう》
『確かに』

 研究者は頭を掻きつつ、ここにいる全員を見据えて行く。
 いきなりだが、真面目な表情だ。

『飽くまでも私の解釈。それでいいかね?』
『ええ、いいわ』
『ああ、その前に。私の名はアルメイダでいい。君がこの面々の代表でいいのかね?』
『アルメイダさんね。私はフィーナで』

『つまり、私達は観察対象な訳?』
『ああ。そして私もまた観察されていた訳だ』
『ゲームそのものがサンプリングの道具だなんて。ちょっと偏るんじゃないかしら?』
『さて、その辺りの見解は別れる所だな。サンプリングもまた条件が同じでなければ比較出来ん』
『他にも方法があるでしょうに』
『同感だ。だが、既に積み重ねられたデータを前提にするならば継続する他にない』
『でも、いつから?』
『そこは私にも分からんがね』

 平行世界は枝葉が分かれるように、可能性毎に多岐に渡るという事。
 そして隣り合う枝葉は相似する関係にある事。
 その中で好ましい枝葉が選ばれており、剪定されてしまう世界があるという事。
 平行世界にも幹にも根にも相当する存在があり、平行世界の全てを支えている事。
 全ての枝葉を支えるには幹にも根にも限界がある、という事であるらしい。

「彼は、何者だ?」
『世界を統べる神かな?』
「そうなのか?」
《我は汝等の世界の枠を超越して存在する事は確かだ。神の定義の事は知らぬ》

「剪定された世界は滅ぶしかないのか?」
『剪定されずとも滅ぶ存在はあるよ。病もあるだろうし虫食いもあるのと一緒でね』
「そんな世界を、見たのか?」
『無論だよ。それも私自身の世界も含めて見ている』
「何?」
『先刻の者達もそうだ。滅んだ世界の住人もいる。そしていずれは私のような役割も担うだろうね』
「まさか、あんたは現実で運営の手助けをしていた?」
『運営、か。そういう見方もあるだろうね。そうとも言えるが正確ではないな』
『アレは言ってみれば神が遣わした観察装置だよ』
「アレ?」
『そうとしか表現出来ない、オーパーツ的な存在だ』
「それが全ての世界に?」
『その筈だ。ゲームの運営、というのは本質の一端に過ぎない』

 アルメイダの視線が再び黄金人形に向く。
 だがやはり、何も反応は無い。

『明確に間違えているようであれば訂正、そうでなければ補足してくれないかね?』
《我にはその権限は無い。世界へ意図的に介入すれば観察する上で不都合になる》
『そうかね? アナザーリンク・サーガ・オンラインに関してはその不都合が起きているが』
《然りだ。だが、これもまた人間の在りようを知る上で有効であろう》
『だから当面、存続を認める訳か。他にも理由がありそうだけど、答えてくれないかね?』
《必要だと判断したが故に存続を認める。それ以外に理由は無い》
「では不要と判断したらさっさと剪定するって事かい?」
『キース!』

 フィーナさんの声で我に返る。
 いかんいかん!
 好戦的になっていたらしい。

「ところで魔神なんだが」
『アレはゲームを動かす道標であり、多分だが指標でもあるだろうな』
「では、辺獄は?」
『世界の枠の外とでも考えておけば当たらずとも遠からず、だね』

 アルメイダはオレと黄金人形を見比べる。
 何故だ?
 何故、笑っていられる?

『私にも質問の機会はあるかな?』
《我は答えはせぬ》
『貴方じゃないって。彼にだよ』

 アルメイダはオレに近付くと爪先から頭の上まで、ゆっくりと視線を這わせて行った。
 興味深げに。
 同時に冷徹さも感じる。

『君は、誰だ?』
「いや、プレイヤーなんですけど」
『プレイヤー? 本当に? 君が、かね?』
「本当だ」
『魔神達の反応。そしてフィールド回収をも阻止する手際。単純なプレイヤーとも思えないが』

『最後に確認したい。このマップはどうするね?』
《我に何かを決定する理由は無い》
『ヘヴィーアーマーズ・オンラインは強制的に接続されたままだ。リソース不足なんだけど?』
《我の与り知る所では無い》
『仕方ない。アナザーリンク・サーガ・オンラインにも大きな負担になっている。暫定で隔離だな』

 アルメイダは黄金人形に向けて嘆息してみせる。
 演技だ。
 半分は嫌味のつもりなのが分かる。

『ヘヴィーアーマーズ・オンラインって?』
『ここでやっていたゲーム世界でね。まあベータテスト段階だったんだが』
『君が散々、やってくれたものだからテストになりゃしない。中止するしかないねえ』
「まさか、プレイヤーがいたのか!」
『まさか、気付いていなかったのか!』
『まあ、いいんじゃないかな? ベータテストにも猶予期間は出来る訳だし』
「で、ここのマップはどうなる?」
『アナザーリンク・サーガ・オンラインの管理下に置くさ。仕方ない』
《最後に警告だ。余計な行動は汝等にとっての不幸を招くであろう》
『それは余計な警告だね。彼等も理解はしていると思うよ?』

 アルメイダはオレ達全員を見回す。
 その表情から、笑いが消えた。

『この後の行動全てが観察されている訳だ。場合によっては君等の世界が滅ぶと思うよ?』
《隔離措置はここまでだ》

 黄金人形がアルメイダに向け手を掲げた。
 アルメイダの姿は黒い人形に戻る。
 そして黄金人形もまた黒色に変じてしまう。
 運営アバターが10体、物言わぬ人形として佇む形になってしまった。
 だが、その姿も陽炎のように揺らぐと一瞬にして消えてしまう。
 まるで今の出来事が、夢か幻であったかのように。

運営との遭遇の後はその隔離という言葉の通り摩天楼も消えていた。

その後1205話に訪れたときには周辺の海流に変化があり、魔力も精霊力もかなり安定した。



1245話で夜間海中戦をしていた所、深海よりプルシャ,ダイダラボッチ,ガイア,ユミル他を引き連れた、ツィツィミトルが出現。追従勢力の内、テュポーン,ヨルムンガンドは分身でなく本物。破壊の女神の特性で大量の魔物が次々出現し、海中戦から海上戦、空中戦まで展開された。最終的にはツィツィミトルイベント・ホライズンを喰らわせた。改めて振り返ると、未明に召魔の森で主神クラスの神々、そして午後に入り夜までの間にS1W17でのテスカトリポカツィツィミトルの連戦という神との3戦をする長い1日であった。

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最終更新:2016年11月06日 03:16