70-493『抜擢』

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石門高校との試合前から、不穏な人影が彷徨くようになった。 小肥りの、いかにもヲタでございますという男だ。 石門高校の制服を着ているから、石門高校の関係者で間違いはなさそうだが。 「気分悪いわねー。」 ハルヒが小肥りの男を睨む。小肥りの男が一年生達に追い出され、練習再開となる。 投球練習をする長門、そして佐々木。 相乗作用で、いつもよりも捗っている。 長門の武器は緩急。剛速球に全く同じフォームからのチェンジアップが武器だ。 佐々木の武器は、多彩な変化球。針の穴を通すようなコントロールと、決め球のライズボールが武器だ。 本格派と技巧派。この二枚看板で行きたい森だが、前述のように佐々木はイップスを抱えている。 また、長門はコントロールが悪く、球数を食ってしまう欠点がある。不器用な為、変化球もチェンジアップ以外は投げきれない。 リード次第では終盤にバテてしまい、滅多打ちに遭う場合もある。 それだけにリードのうまいキョン子を使いたいが、キョン子のバッティングは目を覆わんばかり。びっくり箱は、みくるだけでいい。 朝倉のリードは下手でないが、球威を過信する傾向があり、リードに関しては冷徹に判断を下すキョン子のほうが上手いのだ。 この差があっても朝倉を正捕手に据える理由は、朝倉の打撃の確実性。三番長門、四番ハルヒ、五番鶴屋の重爆クリーンナップから恐怖の六番として確実に仕事をする。 みくるは、最強の9番打者として活躍している。……打つ時は打つが、モチベーションが上がらない場合などは打てないのだ。神憑り的な活躍をしたと思えば、次の試合では空気だったという事も珍しくない。 人は、みくるをファンタジスタと呼ぶ。 朝倉のコンバート案もあるが、朝倉はキャッチャーというポジションに強く拘っており、キョン子に関して 「私の自尊心は、彼女が私より上だとは言わせない。」 と、強いライバル心を剥き出しにしている。 贅沢な悩みを抱えている森である。 佐々木の早急なイップス克服が待たれるところだ。 佐々木が投げる場合、長門をショートに回し、周防をレフトに回せる。 長門が投げる場合、佐々木をセカンドに回せる。 阪中、橘にとっては戦々恐々だが、そうなればチームは確実に底上げとなり、二人にとっても痛し痒しだ。 ただ、ベンチにいれば必然的に古泉の近くに居られる為、そこもまた痛し痒しである。 「石門高校戦、どうせ調べられているなら佐々木さんとキョン子ちゃんが先発でもいいかしら?」 「どうなんでしょうね。長門さんをどちらに回します?」 「阪中さんの足は惜しいし、セカンド……いや、橘さんの守備もお金取れるレベルなのよねぇ……」 監督にとってもまた痛し痒しだが。 ---- キョンは本日も雑用である。 ロッカーのユニフォーム掛けにあるユニフォームに、背番号を縫い付けていく。 オーダーは 1 佐々木 2 キョン子 3 長門 4 橘 5 ハルヒ 6 周防 7 みくる 8 鶴屋 9 喜緑 10 朝倉 11 阪中 以下略。 5ツールプレイヤーのハルヒが内野、外野に適性があるとは言い難いみくるがレフトというのには、疑問を抱かずを得ない。 打順もまた 1番 周防 2番 橘 3番 長門 4番 ハルヒ 5番 鶴屋 6番 みくる 7番 喜緑 8番 佐々木 9番 キョン子 という不可思議な打順だ。 森にも何か思惑があるのだろうが、その思惑はこのオーダーからは読めない。 しかし。また背番号1番をつけて躍動する佐々木を見られるのは楽しみである。 中三の春にイップスを抱えるまで、佐々木は長門と並び評される逸材であり、キョン子の関連もあり試合を見に行った時、躍動する佐々木を見て胸が高鳴ったのは、キョンだけが覚える事だ。 部室で目につくのは、雑然としたキョン子とハルヒのロッカー。みっともなく出た制服に、羞恥があるのか怪しいレベルに出たシャツ。 そんなにきれい好きというわけでないキョンだが、部室に入る場合はこの二人のロッカーを片付けてやる。 「か、カビたパン……!愚妹、お前は何をしてやがるんだ……! うげぇ!パンパンに膨らんだ未開封のパックジュース?!ハルヒ、何を考えてやがる!」 因みに。このふたつの品物。カビたパンはキョン子が藤原に貰ったもの、未開封のパックジュースは、ハルヒがキョンに貰ったものだ。 キョンが二人から正座で説教された事だけ明記しておこう。思春期の乙女、恐るべし。 因みに佐々木、長門はジュースのパックのみを保存している。中身は飲まないと悪くなるからだ。 ぴっしりと綺麗に置かれたパックジュースのパック。たまたま部室の掃除をしていたキョンに発見され、リサイクルに流されたのはまた別の話である。 ---- 今日は、キョン、ハルヒ、長門、朝倉、佐々木、キョン子、藤原、国木田、鶴屋で下校。 古泉は居残りで森と戦略を立てている。阪中、橘は居残り練習をするらしい。 みくるはお茶を買う為に早めに帰った。 朝倉の顔面は蒼白だ。 「(い、胃が痛い……)」 キリキリする。 「あー、あたしお腹すいたんだけど?藤原。」 「そうか。公園で水でも飲んでろ。鶴屋さんはどうだ?」 「あたしはお腹はすいてないっさ。国木田くんはどうかな?」 「僕はお腹すいたかな?キョン子、食べに行かない?」 「やだ。公園で水でも飲んでる。」 「あの本、読んだ?」 「ああ。お前SFが好きなんだな。」 「SF?有希らしいわよね。キョン、こんな本はどう?」 「流行りの本かよ。まぁ面白いけどな。」 「くっくっ。この本も悪くはないよ?」 「哲学書かよ。」 最近手放せない牛乳。乳脂肪が胃の粘膜を優しく包み込み、朝倉はひと心地つく。 それを見たキョン子、長門、佐々木は朝倉の均整の取れたプロポーションは、日々の牛乳からと勘違いし、お腹を下す羽目になるが、それはまた別の話だ。 まともな人間はいないのか、と朝倉は思うが…… 朝倉自身もナイフの収集が趣味であり、とてもまともだとは言い難い。 和式鍛造、ククリ、スペツナズ、ジャグリング、ボウイ、マルチツール、アンカライト、ペン、ジャンピーヤ、サバイバル、ブッシュ、ハンティング、ブッチャー、登山、キルパン…… 彼女の部屋の壁には、所狭しとナイフが並んでいる。朝倉はモテないわけでは決してなく、彼女と付き合って自宅に招かれた彼氏が、怖くて逃げるだけだ。 キョンは一度、長門達と朝倉の自宅に招かれ、ナイフを持つ朝倉を見たが、朝倉の危険で妖艶な美しさに見惚れたものであった。 朝倉と付き合った彼氏達に言える事だが、朝倉と情を通じ合わせる前で幸運だったと言わざるを得ない。 気質的に相手に対する情の深い朝倉。その理由で離れて行かれるとしたら、コレクション達が黙ってはいないだろうから……。 因みに。喜緑はまともな恋愛を謳歌中。みくるは、恋愛に関心はあまりないようだ。 他のソフトボール部のレギュラークラスの面々に、何故彼氏が出来ないか。 それは一般から逸脱した人間が多く、そして彼女らが好きになる人間もまた、変わり者だからだ。 「(石門高校も、オカリン、牧瀬氏をはじめストレンジャーが多いけど、北高の逸脱具合もまた異常だお……)」 背後からつける男は、心からそう思った……。 To Be continued

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