72-42『ねこのレポート』

皆様。皆様は現在、興味深い事は何であろうか。私はご主人とその番いの巣における行動様式である。
今回、ラボ…ご主人の巣だが…における行動様式を纏めてみた。取り留めないレポートではあるが、皆様に報告をしたい。

「暑い…」
「言の葉に乗せるのはやめたまえ。余計に暑くなる。」
ご主人とその番いは、羽根が高速回転して異音が立つ物体の前に寄り添っている。
最初は離れていたが、次第に物体の前に寄って来た。風よりは自分のように日陰にいたら涼しかろうに。
番いも番いだ。ご主人に寄り添っては暑いという事は、この番いの中には無いらしい。ご主人の腕に手を回している。
だが、ご主人は気付いてすらいない。汗をかいた飲み物を入れた透明なもの。カランと音を立てる、水が固まったもの。
ご主人からも少し発情の香りがする。番い?言うに及ぶまいよ。漸く子を成すか。
ここはそっと巣から出るのが思いやりだろう。だが、ご主人よ。せめて物陰に移動したほうがいい。
番いも下が冷たいほうがよかろう。煮えた床では肉球が火傷してしまう。
「佐々木。」
「キョン…」
やれやれ。初めての発情ではやむを得んな。レクチャーしようにも私には相手がいない。ここはご主人達の勢いに任せるべきであろう。
出歯亀を止めて外に出る私。主人の幸せを願う忠猫といえる。
「シャーミー♪」
……人によっては天使の音色と呼ぶであろう、その声。私は地面に落ちたセミが、最後の力を振り絞り騒ぐが如き勢いで振り向いた。…そこには…
「あそぼ♪」
殺猫兵器の権化たるご主人の妹…私のもう一人の主人が立っていた。
私は逃げた。心肺機能の限界に挑むが如く走り、猫のオリンピックがあれば有数の成績が取れるであろう走りを見せた。
だが。現実は非情だ。
アメフトで世界を狙えるであろう凶悪タックルに、私は成す術なく倒れ…敢え無く妹の腕の中ご主人の巣へ戻された。
耳をつんざくような叫びがあったが、それはご主人、妹、番いの叫びだといっておく。
あまり関係ないが、ご主人と番いは日陰に移動していた。どうやら心配は杞憂だったようだ。
だが。番いの匂いを嗅いでもご主人の匂いはしなかった。猫は5分もあれば……。ううむ、人は難しい。
まだまだこの巣には、私の学術的関心を引くものが多い。ご主人と番いの研究はまだ、始まったばかりだ。私はご主人の膝の上に座り、次なる機会を待つ事にした。
レポートを取る機会があれば、皆様にご紹介していきたいと思う。また次回に期待して頂きたい。

END

※『ねこの森には帰れない』の続編

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最終更新:2013年10月20日 17:21
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