1-497「新SOS団」

土曜日。
いつもの喫茶店で第一回新SOS団ミーティングが開かれた。
なんだか嫌な予感がしたのでそーっと喫茶店のドアを開けた俺は、やっぱり恐ろしい光景が広がっているのを見て冷や汗を流した。
ハルヒは不敵な笑みを浮かべて佐々木を見つめており、佐々木はあえて視線を外してお決まりの薄ら笑いを浮かべながらホットドッ
グなんぞを上品に口に運んでいる。古泉はいつもの笑みを浮かべているが、それを橘がキツく睨んでいる。長門と九曜はお互い無
表情で視線を交わしている。朝比奈さんは「えっと・・・その・・・」とおろおろするばかり。

回れ右しようとした俺をハルヒが目ざとく見つけ
「ちょっとキョン!どこ行くのよ!」
やれやれだ

俺が席についても一向に会議が始まらない
「なぁ、ハルヒ、今日集まったのはなんでだっけ」
それを聞くとハルヒはめを輝かして
「そうだわ!それを忘れるところだった!キョン!あんたたまには良い事言うじゃない!」
俺はこの場にいた誰もが取り敢えず確認するであろうごく当たり前の事を確認したまでだ
「今回私達は新SOS団としてスタートを切る事になりました。まずは佐々木さん、よろしく」
佐々木はくっくっと笑い
「よろしく、涼宮さん」
と言った。なぜだろう、なんだか尻がもじもじする
橘が急に立ち上がり、
「わ、私はあくまで佐々木さんがいいというから従ったまでです!別に望んで参加した訳じゃないんだから!」
「橘さん、落ち着いて。仲良くやりましょう。ね?」
古泉がいつもの爽やかスマイルでそういうと、しぶしぶという感じで席に着いた。

ハルヒは大いに満足した様子で、
「じゃ、みんないろいろあると思うけど、新メンバーと仲良くしましょう!」
色々ありすぎるんだよ、本当に。
「じゃあ、早速新SOS団の活動として不思議探しをしましょう!」
と、佐々木が手を挙げた
「はい、佐々木さん」
「不思議探しってのは何?何をするの?」
「そのままよ。そこらにある不思議を探すの。オーパーツとかUMAとか謎の伝染病とか!」
「そんな物がこの街にあるとは驚きね。でもまあいいわ。私はあなたに命令するつもりも権限も無いのだから。」
と、橘が
「駄目です!佐々木さん!そんな事じゃいいように・・・」
まだ橘が発言中なのにも関わらずハルヒは満面の笑みを浮かべて
「中々物分りがいいわね佐々木さん。それでこそ私の右腕だわ!」
と言った。
がっくりうなだれる橘を尻目にハルヒはごそごそ鞄をいじって
「クジを作ってきたわ。今日はいつもと違うの。二人店に残って席取りをするのよ。最近この店も繁盛してきたじゃない?マックも混んでるし。だから当りの人が二人残ってこの席を取っておく訳。どう?古泉君。」
「大変結構かと。」
おいおい、そしたら誰かが二人っきりでこの店に残るのか?残るのが九曜と長門だったらどうなるんだ?俺がハルヒ団長に付き合ってたら知らないうちに地球が無くなってあの世行きってのは無しだぜ。
「じゃあ早速くじを引きましょう」
なにやら嫌な予感がするな。古泉と橘によればここには二人の「神」がいる訳だ。なぜかしらんが俺の体が真っ二つに引き裂かれそうな予感がするぞ。なぜだかはしらんがそういう予感がするんだ。
「せーの!」

半ば目をつむってくじを引いた。しばらく目をつむっていたが俺の体には特段異常は無いようだ。心底安堵する。
「当りは誰?」
ハルヒの声にくじを確認すると、当たっていた。
「俺だ」というのと同時に、長門の右手が上がった。

ハルヒ団長が「いいの!あんたデートじゃないんだからね!」と何度も繰り返すのを佐々木が引っ張っていって、取り敢えず店内は静かになった。
ふう。
「なぁ長門、お前またインチキでもしたのか?」
こっくりうなずく長門
「そうしなければならない理由があった」
「詳しく説明してくれないか」
「天蓋領域からの干渉。涼宮ハルヒと佐々木からの干渉。全てを中和し均衡状態を作り出した。」
長門にしては分かりやすい的確な説明だ
「時間軸を改竄した。他のメンバーが探索中、この喫茶店の中は時間が早く経過する。」
なんだ。じゃああっという間にあいつらは戻ってくるのか
「そういう事」
そう言うと長門は、なぜか俺の肩に頭をあずけた
「な、長門さん?」
「情報の改竄に大量のプロセスを実行した。疲労が蓄積した。」

そして、
「眠い」
と言うと、俺によりかかってすうすうと寝息を立て始めた。

えーと、こういう時健全な男子高校生は何をすればいいのかな。取り敢えず、アイスコーヒーおかわり!
二杯目のアイスコーヒーを一気飲みしていると、ハルヒ達が帰ってきた。早いな。
隣を見てみると、長門は目を覚ましていた。
「二回目よ二回目!京子ちゃんがナンパされかかるわ九曜がふらっとどっか行くわでロクな事なかったわ!いい?いくわよ!」
ドーン
「当たりは」
「また俺だ」「くっくっ、僕らしいね」
「ちょっとキョン!あんた真面目にやってんの?デートのつもりでやってんでしょう?」
いや、くじに真面目も不真面目もあってたまるか
「いい、今度真面目にやらなかったら殺すわよ!」
そう言うと今度はずんずん自分から出て行った。

さて。どうしようか。
「キミと喫茶店で二人っきりってのはいつ以来だろうね?」
さぁてな。昔の事なんか忘れちまった
「ふっくっくっ、キミは相変わらずだな。ふむ、でもこれでSOS団に入ったという気がしてきたな。覚えているかい?恋愛は精神病の一種と言った事」
ああ。
「恋愛という概念はキリスト教の教義が神学化して行き社会が豊かになる過程で生まれたんだそうだ。スペインの偉大な思想家も『恋愛、この12世紀の概念!』と嘆いているぐらいだしね。だから精神病の一種という見方も正しいわけだ。」
ちょっと待て。歴史的な定義と心理学上の定義はまた違うだろう
佐々木はストローの抜け殻をいじりながら
「そんな事は無いさ。要は歴史上恋愛概念なんて曖昧で作られた概念という事だから、後から生まれた心理学で精神病の一種と定義してもおかしくはない。ただ、最近考えが少し変わってきた。」
へぇ、それはどんな風にだい
「結局重視しなければいけないのは主観なんだな、とね。定義なんてのは概念の遊びに過ぎないんだよ。沢山ある定義に振り回される生き方はあまり好きじゃなくなった。まぁ、そういう事かな。」
佐々木はストローでカラカラと氷を回しながら答えた。
俺が口を開こうとした時

「キョン!ちゃんと席取りしてたでしょうね!」
ハルヒ様が帰ってきた
「くっくっ、続きはまた今度」
佐々木は手をひらひらさせた。なんなんだろうね、全く。

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最終更新:2007年11月15日 09:52
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