エシュガル文字の発音

エシュガル文字の発音

 このページの[ ]は全てX-SAMPA表記を意味する。ただし表記簡略化のためäは(aでも大差無いので)例外とする。
 実際には実用上、下記以外の様々な発音も用いられている。歴史的経緯から、注釈の範囲内であれば方言の範疇と捉えられるが、それ以外の変種は母語の影響を受けた下手なエシュガル語であるとみなされる。


  • 対立を持つ無声子音 (清音)
 文 字   規 範 音   条 件 異 音   文字の読み方 
 P p   無声両唇破裂音[p]   母音を伴う場合は帯気して[p_h]となる    pò ポン 
 Z z   無声歯茎破擦音[ts]   同じく[ts_h]となる    zè ツィン 
 T t   無声歯茎破裂音[t]   同じく[t_h]となる    tò トン 
 C c   無声後部歯茎破擦音[tS]   同じく[tS_h]となる    cù チュン 
 K k   無声軟口蓋破裂音[k]   同じく[k_h]となる    kè キン 
注1) あくまでも無声・有声の対立であって無気・有気の対立ではないので、母音を伴う際に無造作に発音してもそれほど問題は無い。
注2) C c無声歯茎硬口蓋破擦音[ts\]で発音する話者も少なくない。

  • 対立を持たない無声子音
 文 字   規 範 音   条 件 異 音   文字の読み方 
 F f   無声唇歯摩擦音[f]       fì ファン 
 Þ þ   無声歯摩擦音[T]       þò ソン 
 H h   無声硬口蓋摩擦音[C]       hò ヒョン 
 S s   無声後部歯茎摩擦音[S]       sè シン 
 R r   無声口蓋垂摩擦音[X]       rù ホゥン 
注1) S s無声歯茎硬口蓋摩擦音[s\]で発音する話者も少なくない。
注2) Þ þまたはS s無声歯茎摩擦音[s]で発音する話者が多い。大半の話者はÞ þ[s]で、S s[S](ないし[s\])のままで発音し、それ以外の話者のほとんどはS s[s]で、Þ þ[T]のままで発音する。規範通り[T][S]を用い[s]は用いない、という話者は実の処かなりの少数派である。ただしÞ þ[s]で発音する話者は、しばしば[s]の自由異音として[T]を用いる。
注3) R r無声声門摩擦音[h]無声軟口蓋摩擦音[x]で発音する話者も少なくない。
注4) 母音もR rも伴わないR rW wと同様の音で発音する話者も少なくない。

  • 対立を持つ有声子音 (濁音)
 文 字   規 範 音   条 件 異 音   文字の読み方 
 B b   有声両唇破裂音[b]       bè ビン 
 X x   有声歯茎破擦音[dz]   アクセントのある母音を伴わない場合は摩擦音に弱化する傾向がある    xù ズン 
 D d   有声歯茎破裂音[d]       dà デン 
 J j   有声後部歯茎破擦音[dZ]   アクセントのある母音を伴わない場合は摩擦音に弱化する傾向がある    jò ジョン 
 G g   有声軟口蓋破裂音[g]       gì ガン 
注1) J j有声歯茎硬口蓋破擦音[dz\]で発音する話者も少なくない。
注2) G gD dB bを少し口蓋化する話者が多い。

  • 対立を持たない有声子音
 文 字   規 範 音   条 件 異 音   文字の読み方 
 M m   両唇鼻音[m]       mè ミン 
 W w   そり舌接近音[r\`]       wù ルン 
 N n   歯茎鼻音[n]       nà ネン 
 L l   硬口蓋側面接近音[L]       lì リャン 
 Q q   口蓋垂鼻音[N\]       qè グィン 
注1) W w歯茎ふるえ音[r]円唇化した歯茎接近音[r\_w]で発音する話者も少なくない。
注2) L l歯茎側面接近音[l]で発音する話者も少なくないが、その場合でも少し口蓋化する傾向がある。
注3) Q q軟口蓋鼻音[N]で発音する話者も少なくない。

  • 半母音
 文 字   規 範 音   条 件 異 音   文字の読み方 
 V v   両唇接近音[B_o]   U uまたはÙ ùを伴う場合は有声両唇摩擦音[B]となる    vò ウォン 
 Y y   硬口蓋接近音[j]   E eまたはÈ èを伴う場合は有声硬口蓋摩擦音[j\]となる    yò ヨン 
注1) 上記以外の場合でもV v[B]で発音する話者も少なくない。
注2) 上記以外の場合ではV v有声両唇軟口蓋接近音[w]で発音する話者も少なくない。
注3) 一見[j\][C]との対立を持つように感じるかもしれないが、この[j\]はあくまでも半母音[j]の異音に過ぎないので対立とは見なさない。
注4) 上記以外の場合でもY y[j\]で発音する話者も少なくない。

  • 口母音
 文 字   規 範 音   条 件 異 音   文字の読み方 
 U u   円唇後舌め広めの狭母音[U]   O oに続く場合は少し円唇後舌狭母音[u]に近付く傾向がある    u ウ 
 O o   円唇後舌半広母音[O]       o オ 
 I i   非円唇中舌広母音[ä]       i ア 
 A a   非円唇前舌半広母音[E]       a エ 
 E e   非円唇前舌め広めの狭母音[I]   A aに続く場合は少し非円唇前舌狭母音[i]に近付く傾向がある    e イ 
注) I i非円唇前舌広母音[a]で発音する話者も少なくない。

  • 鼻母音 (口母音が鼻音化したもの)
 文 字   規 範 音   条 件 異 音   文字の読み方 
 Ù ù   [U~]   Q qまたはN nまたはM mを伴う場合は自身の鼻音化の代わりにそれを長子音化する傾向がある    ù ウン 
 Ò ò   [O~]   同じく長子音化する傾向がある    ò オン 
 Ì ì   [ä~]   同じく長子音化する傾向がある    ì アン 
 À à   [E~]   同じく長子音化する傾向がある    à エン 
 È è   [I~]   同じく長子音化する傾向がある    è イン 
注1) 破裂擦音を伴う場合、例えばìt[ä~t]ではなく[änt]とする等のように、鼻音化の代わりに同器官的鼻音で発音する話者も少なくない。
注2) I i[a]で発音する話者は、Ì ìもそれに準じて[a~]で発音する。






最終更新:2021年09月09日 19:54