三頭政治

シリヤスクス・ケイロニウス二重帝國の発生と理解。

 ここ一年、もっともホットだった帝國SSトピック、シリヤスクス・ケイロニウス二重帝國の発生と展開について、軽くまとめてみました。

1:アルトリウス皇子
 アルトリウス皇子は古人であり、ユスティニアヌス帝の皇女の一人であり、リランディアの姉であった。コンスタンス大公(のちに皇帝)を叔父に持つ。
 帝國の剣の名を奉られる将にして、機神レギナ・アトレータの乗り手。天然。絶世の美少年でレイヒルフトの着せ替え人形。でも色気より食い気の腹ペコ属性。
 ユスティニアヌス帝により、レイヒルフトと婚約を結んだが、後に解消する。レイヒルフトは、妹皇妃リランディアと結婚する。
 父帝ユスティニアヌスは暗殺され、次期皇帝にして叔父コンスタンス大公もまた暗殺される。後継皇帝はアルトリウスと見られていたが、コンスタンス帝の遺言による次期皇帝指名はリランディアだった。アルトリウスはリランディア戴冠を支持した。
 内戦期、アルトリウスは近衛騎士団長として皇帝軍に参加し、内戦終末期まで戦い続け、のちにアル・カルナイ王国我様王に降嫁する。

2:内戦前
 内戦前の帝國は、勃興する各辺境と帝國中央の統治権力との間にアンバランスが生じていた。
 経済力と発言力の高まる各辺境の意向を皇帝は重視せざるを得ない情勢だった。
 南方辺境領の生産力は拡大し、その生産物はペネロポセス海対岸から、北方ゴーラ湾岸諸国まで輸出されていた。東方辺境領は瓦解の危機を乗り越え、魔族大公の一人を討伐して大公領を占領さえしていた。安全を確保された東方辺境は、帝國内部へ経済力を向けるようになった。またかつてはゴーラ帝国の一部だった北方辺境候にはグスタファス候がおり、西方辺境候はカシウス候であった。いずれも武門で知られており、帝國内部におきた力関係変化の方向性しだいでは、内戦を引き起こしかねないと見られていた。
 皇帝ユスティニアヌスは、勃興する各辺境に帝國の流星を託す狙いとともに、皇女を南北東辺境候に降嫁させた。
 これにより、多くの辺境候を皇帝権威と帝國に従属させることとなった。特に、急速に勃興した東方辺境候レイヒルフトを、皇女婚約者ならびに宰相として帝國政治の中に取り込み、東方と南方におきている経済摩擦を緩和する方向に向かうかと思われた。
 このころ、北方辺境候グスタファスは連合王国港湾都市ケーニヒスベルグ奪還を試みるが果たせず、北方辺境は連合王国との間、さらに対北方辺境増援を拒否した宰相レイヒルフトとの間に緊張をはらむこととなった。
 しかしながらユスティニアヌス帝は、死を迎える。この前後の経緯は不明。暗殺を主導した勢力は不明。
 後継皇帝は皇弟コンスタンス大公であった。コンスタンス帝はユスティニアヌス帝の辺境施策を継承した。宰相レイヒルフトを重用し、積極的に取り込む方向性だったようだ。あるいは単にコンスタンス帝の性的嗜好がレイヒルフトを好んだともいわれている。
 このころから帝都の治安は不穏な状況となった。帝國中央で力を持っていた教会と、魔導師ギルドの闘争が、表面化したともいう。これはユスティニアヌス帝の崩御によって両者の統制と調整が緩んだからであるらしい。これに貴族勢力が乗っていったのかもしれない。
 このころ、レイヒルフトはアルトリウスとの婚約を破棄し、それまで知られていなかった皇女リランディアと結婚する。リランディアは特異双性者であり、その存在はユスティニアヌス帝の意思により隠されていたらしい。
 レイヒルフトとアルトリウスとの関係は悪化したと思われたが、実際にはこのころに三頭政治が成立した。


3:三頭政治の成立。
 レイヒルフトより、アルトリウスに対して大陸秩序再編が示された時期と、西方辺境候カシウスがアルトリウスに接近した時期の前後は明確ではない。
 いずれにせよ三頭政治は、レイヒルフトの大構想を礎に、アルトリウスを中心に成立している。これにカシウスが参加することで、アルトリウス枢軸体制となった。
 レイヒルフトの大構想は、魔族領への全面侵攻を最終目標に据えた、大陸秩序の全面刷新であった。この前段階として、南方諸国の占領ならびに帝國化を必要としており、さらにその前提として帝國周辺国影響力排除を必要としていた。さらにレイヒルフトによる帝國権力構造改革と、アルトリウスのアル・カルナイ降嫁と南方帝國化準備はこのころからあったらしい。
 だが、最も重要なことは、この大構想が帝國による大陸覇権の確立のみを目的としたものではないことだった。
 レイヒルフト大構想の要点は、レイヒルフトによる「新秩序」の大陸展開であった。
 レイヒルフト、アルトリウス、カシウスの三者はそれぞれの視点と理由からこれへ貢献することとなる。
 三頭政治は歴史俯瞰的大戦略を伴うものであったが、革命といっていい変革を社会に要求するものであった。三頭政治はこれに積極的に取り組んだ。


4:内戦初期
 ユスティニアヌス帝暗殺以後、コンスタンス帝が即位したが、皇帝権威は失われ帝都の治安は悪化していた。
 コンスタンス帝による宰相レイヒルフトへの厚遇が、旧権力層の反発を生み、この権力層に使唆された勢力による騒擾が多発したらしい。レイヒルフトとこの勢力との暗闘は激しく行われた。
 さらにコンスタンス帝が暗殺されることで、情勢は劇的に変化する。コンスタンス帝暗殺によって、アルトリウス皇子が皇帝即位すると考えられていたが、コンスタンス帝が生前指名していた次期皇帝はリランディアであった。しかもアルトリウスは三頭政治にしたがってリランディアの即位を認めた。これによってレイヒルフトは皇帝配偶者という、皇帝と一体化した存在となり、さらに副帝に任ぜられてこの権威を確立した。
 反レイヒルフト勢力は中央政界における後ろ盾一切を失うこととなった。彼らはレイヒルフトの権力基盤であった東方辺境と対立する南方辺境諸侯を頼り、南方辺境は皇帝リランディアの元老院招集に応じなかった。リランディアはこれに対して最終勧告を提示し、無視した南方辺境諸侯討伐を命じた。もちろん、すべては三頭政治によるものだった。
 レイヒルフト指揮下の皇帝軍は南方辺境軍を完膚なきまでに撃破し、貴族秩序を破壊した。


5:内戦後期
 南方征伐は、レイヒルフト大構想の一歩に過ぎなかった。
 三頭政治は、この成果を背景に、これまで不可侵であった教会勢力の粛清をはかろうとした。すでに教会を擁護する貴族勢力は限られたものとなっていたからである。
 貴族政界、すなわち元老院の掌握に、カシウス候ならびに東方辺境貴族ラウルレスが力を発揮した。
 教会勢力はレイヒルフト軍が南方にある隙を突き、状況を一挙に逆転する策をとった。カシウスならびにレイヒルフト腹心ラウルレスの暗殺と、北方辺境候軍の帝都呼び込みである。しかしラウルレス暗殺には成功するものの、カシウス候の暗殺には失敗し、カシウス候子息の一人を死に至らしめたにとどまる。帝都の混乱は最小限で、北方辺境候軍の呼応より早く皇帝軍マグヌスは帝都前方防衛線を確立した。続けて皇帝軍ガイユスならびに近衛騎士団アルトリウスと、北方辺境候軍との間に激しい衝突が起きるが、北方辺境候軍の突破は成らなかった。この後、北方主戦場における戦闘は10年にわたって続くこととなる。
 北方辺境ならびに教会勢力は公敵となり、レイヒルフトは信教の自由令を含む教会粛清策を公然と行った。教会勢力との闘争は帝國全土で行われた。
 この混乱を突いてペネロポセス海対岸諸国から南方辺境に積極的な干渉が行われたが、皇帝軍フェルナンらにより排除される。
 この内戦の中で、カシウス候の子息三人ともが失われた。これは三頭政治の先行きに大きな影響をもたらした。
 内戦終結直前、トイトブルグ事件が起きる。これは西方辺境の周辺国に対する影響力の低下と見なされた。


6:内戦終結
 北方辺境候の敗北の後、アルトリウスはアル・カルナイ王国我様王へ降嫁する。これもまた三頭政治の盟約に従うものであった。アルトリウスは以後、アル・カルナイで辣腕を振るうことになる。
 レイヒルフトは確固とした基盤を確立し、帝國改革を進めることと成る。帝國教会勢力は粛清され、その後の統合された教会は教皇としてレイヒルフト息女双性者カタリナを頂いていた。
 三頭政治のうち内戦でもっとも大きな打撃を受けたのがカシウスであった。三人の王子のすべてを失い、三頭政治の今後に大きな齟齬を予想させた。
 しかしながらカシウス候の息女クラウディアが、機神ラバクスに受け入れられ、事態は劇的に好転する。クラウディアは、レイヒルフト息女シルフィスと共に、西方衛星国メクレンブルグを征伐し、西方諸国に対する西方辺境影響力を回復した。
 クラウディアはその後、帝都に召喚され、皇室をパトローネスとして学院生活に入る。学院生活でありながら、近衛騎士としての訓練を受ける二重生活であった。
 さらに南方諸侯は復権をゆるされ、北方辺境もまた再建を急がれた。
 三頭政治の成立以来20年近くの時を経て、ようやく第一段階の帝國再編成の終了を見たのである。


7:内戦後の三頭政治
 三頭政治の最大の問題のひとつが、一角であるカシウス候の後継問題であった。
 カシウスの三人の子息はすべて内戦でうしなわれ、残るは息女クラウディア一人であった。
 またカシウスも、クラウディアも常人であり、レイヒルフトや皇族、アルトリウスのような双性者の長命を期待できなかった。

 また西方諸国の対帝國干渉姿勢は変わらずあり、北方ゴーラ帝国とともにこれを早期に処理する必要があった。

 内戦による傷は深く、同時にそれはレイヒルフトの社会改革を柔軟に受け入れる素地ともなっていた。


8:三頭政治のまとめ
 三頭政治の構成員は レイヒルフト、アルトリウス、カシウスの三人だった。
 それぞれの立場や目的は違うが、三人は利益を共有し、その目的のために未来を計画した未来計画同盟と言っていい。

 レイヒルフトの描いた未来は、今後長く語られるべきだろう。革命、と言っていい。
 アルトリウスの描いた未来はおそらく、中興の時代を迎えることだったろう。
 カシウスの描いた未来は、帝國による秩序の確立であった。

 レイヒルフトは卓越した軍事力と経済力を持っていたが、帝國全体を相手にするには小さすぎた。
 帝國の当時の、ユスティニアヌス帝ほどの能力を持ってしても、各辺境の統制が困難な状態にあった。帝國は辺境候領単位に分解されかねない状況にあった。中興の時代を迎えるには体制が遅れていた。
 だが秩序は守られねばならなかった。帝國はその中で、最大の危険要素と見られていたレイヒルフトとカシウスの同盟を、皇統として承認した姿が三頭政治とも言える。
 結果として帝國は統合を維持し、中央集権を強化して、帝國軍を強化することとなった。
 帝國周辺は、帝國軍の手により分断、あるいは占領される。北方ゴーラ帝国は、完全に解体され、北方辺境は帝國化をさらに進める。ゴーラ湾貿易の出口たる連合王国は最終的にアドニス殿下によって占領される。南方諸国はゴーラ帝国の解体の後に、完全に占領される。さらに帝國化される。
 これによって帝國はゴーラ湾から、南方外海までを領域とし、内水交通線によって連絡しながら、各副帝によって統治される大陸縦断帝國となる。

 帝國全体と聖界は、古人皇帝にして教皇によって統合される。
 帝國西方辺境、北方辺境はセルウィトス系貴族によって統合され、副帝が置かれる
 帝國東方辺境、南方辺境は東方系貴族によって統合される。
 南方中央山脈以東は、ケルトリウス皇統によって統治され、副帝が置かれる。
 皇帝ならびに副帝は、双性者であり、長期の安定した統治が予定されている。

 この三者の共有する未来の最大の敵は、魔族であったろう。魔族討伐による人類帝國の安寧確保には、帝國は疲弊しすぎており、帝國の再建と再活性化には、レイヒルフトの革命が不可欠だった。これは、同時に魔族統治を可能とするものだった。


9:その他 メモのスピンオフ
 帝國と南方諸国情勢
 アル・カルナイ王国の地政学的位置は、帝國東方辺境をうかがう位置にあった。
 国王は通称「我様」ギルガメッシュのような王器の男であるらしい。
 我様は東方辺境候と国境をめぐってしばし戦い、我様もレイヒルフトと対面している。
 この我様戦争で、我様軍は武門貴族をかなり失ったらしい。東方辺境は国境を画定し、アル・カルナイの対東方辺境領進出はそれ以後起きなかった。
 レイヒルフトの対南方政策は続き、アル・ファロス王女をアドニス殿下に娶らせることでアル・ファロスを親帝國化させ、ペネロポセス海越しのアル・レクサ王国の進出はこれを撥ね付け、ペネロポセス海の制海権は帝國に帰した。
 これらによって、帝國内戦北方辺境戦争にあっても、南方諸国は帝國本土に大規模侵攻を行うことはなかった。
 帝國による北方辺境候征伐がなったあと、アルトリウスはアル・カルナイ王国に降嫁した。アル・カディア王国へアリアが降嫁し、さらにハ・サール王国へ副帝妹オフィーリアが降嫁することで、帝國の南方第一次政策は完結する予定だった。


 アル・カルナイ降嫁にあたって、アルトリウスは機神レギナ・アトレータを伴いまた、近衛騎士団より三人の腹心を帝國製機神とともに伴った。
 東方との戦争によって、武門貴族の多くを失ったアル・カルナイに一定以上の役割を果たすのだろう。

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最終更新:2010年07月14日 00:23