ゆっくりいじめ系852 ある愚者の孤独な復讐(前編)1

注意
  • ドスまりさ登場。虐殺は後編から





山々に囲まれた盆地
そこに外部との交流はほとんど無く、土地の痩せた貧しい村があった


「村八分の身のくせに飯をたかりに来るだなんて本当に卑しい子だね」
青年はただ黙って女性に対して頭を深く下げていた
「まったく、親が親なら子も子だよ。兄妹そろって厄介者だね。本当にっ!」
女性の小言が終わるまで、青年は顔を上げることができなかった。奥歯をかみ締める音が青年の鼓膜にだけ聞こえる
「ほら、受け取ったらさっさと村から出て行きな」
ようやく女性の小言が終わり、青年は乱暴な手つきで袋を手渡される
「ありがとうございます・・・・」
米を受け取り礼を言い、青年は次の場所を目指す
目的に建物に着き、左右を見回し人気の無いことを確認してから小さく戸を叩く
「先生、先生」
返事は無い
「先生に何用だ」
代わりに背後から声が掛けられ咄嗟に身構える
「・・・・・・なんだあんちゃんか。先生はどこか知らないか? 妹の薬が欲しいんだ」
「もう無くなったのか?」
「最近また発作が酷くなって、もうほとんど飲んじまった」
「生憎と先生は薬草取りに出かけている。明日の夕方にでもまた取りに来い」
「わかった出直すよ」
建物に向かい頭を下げ、急いで村を後にする
村を出るまでの途中、すれ違う村の人間に悉く冷たい視線をぶつけられた


村を出て家に向かうまでの道中。ろくに整備のされていない林道を青年は進む
「あっ・・・」
受け取った米の入った袋の底に擦り切れてできた小さな穴があいていた、慌ててそこに手をあて塞ぐ。村に居たときは人目を気にし過ぎて気付けなかった
あの家の女性の嫌がらせだと青年は瞬時に理解する
「以外と胸筋使うなこの持ち方は・・・・・・・・ん?」
草の影に動く複数の丸い物体を見つける。ゆっくりの一家だった、大きいものから小さいものまでいて地面を掘ったり、草を食んだりしていた
(冬篭りの餌集めか)
色めいた山は落葉が進み始め、徐々に気温も下がり始めている
暖かい時期を恋しく思いながら青年は家路を急いだ



村から離れた山の中に青年の家はあった
しかしそれを『家』と呼ぶにはいささか躊躇われた
童話の狼が息を吹きかかれば簡単に吹き飛ばされそうな粗末なつくりの小さな小屋だった
戸が外れるのに気をつけながら慎重開ける
「ただいま」
「あ、にぃちゃんお帰り」
小屋の真ん中には小さな囲炉裏。それを挟んだ向かいに布団に入った妹がいた

この家には兄妹の二人だけで住んでいる。両親は2年前に他界した、二人とも流行り病だった
父親が村で人傷沙汰を起こして以来、一家はこの小屋へと追いやられ細々と暮らしていた
家の横には石を積んだだけの小さな墓が二つある

囲炉裏で火を起こしながら青年は話す
「また今日も帰る途中にゆっくり見たぞ」
「そうなんだ、最近はこのあたりまで来るようになってるみたいだね」

半年ほど前の話
この集落の近くにゆっくりの群れが越してきた。ゆっくりまりさとゆっくりれいむだけで構成されていた群れだった
その群れを統べるのはドスまりさ。3メートルはあろうかという巨体で賢くて仲間思い。それ故に群れの信頼も厚かった

「あいつらの中身は餡子っていうけど。本当だと思うか?」
甘い物などここ何ヶ月も口にしていない兄妹にとって餡子ほど魅力的な甘味はなかった
「駄目だよ食べたら。ゆっくりだって一生懸命生きてるんだから」
もうこの家には食べるものはほとんど無く。青年が罵られのを承知で村の親戚に食べ物を分けてもらいに行ったのはこのせいだった
「わかってる、村とあいつらが結んだ『決まりごと』だろ。破る気は無いよ」

ドスまりさは引っ越してきて早々仲間を引き連れて村へとやって来て、自らの力と能力を見せ付けた後に『不可侵協定』を申し出てきた
その力は圧倒的で、争えば自分達はただではすまないと理解した村長は協定を結ぶことに合意した
協定の内容は単純明快。ゆっくりが畑を荒らさない代わりに人間もゆっくりに危害を加えることをしない
このルールに違反した場合は犯した側に厳しい処罰が下す。というものだった
ある意味で村とゆっくりは共存していた

自分たちとしても下手に手を出して村との関係をこれ以上悪化させるわけにはいかなかった
ゆっくり同様、この兄妹も冬を越せるかどうかの瀬戸際だった
「そういえば薪の備蓄がもう・・・・」
「わかった。明日とってくるよ」
「手伝えなくてごめんね」
すまなそうにして俯く
「そんなこと気にするな」
妹にそんな顔をされるのが青年には堪らなく堪えた
「でも私も枝拾ったりとかなら・・・・・うっゴホッゴホッ」
ゴホ、ゴホン、、ゴホン、ゴホゴホゴボ…ッ うぅ…ゴホン―…!
「おい、大丈夫か!」
妹は呼吸器を患っていた。発症したのは約1年ほど前。元々体が弱く、さらに長期にわたる不摂生と湿気の多い場所で過ごしたのが原因だった
大体一週間に2~3回の割合でこの発作は起きる
青年は急いで木箱から三角に折られた紙を取り出す
発作を抑える粉薬が包まれていた
そしてこれが最後の一つだった
げほっげほゲホゲホンゲホン・・・ゼィゼィ・・ぅゲホンゲホンゲホンゲホンゲホゥげホッ、、ハァッ、ハァッ、げほ、ハァッ、
咽る妹に竹の水筒を渡す
「一気に飲むなよ、ちょっとずつ、ちょっとずつだ・・・・・・・そうだ。上手いぞ」
兄の指示通り、薬を少し含んでは水を飲む行為を繰り返す
飲んだ粉が気道に付着していがらを抑え、徐々に呼吸が安定していく
この薬がなければ妹は長時間この咳に苦しむことになる。長いときは一晩中
「ふぅ・・・・・・ふぅ・・・・・・・・・」
背中をさすってやる。さする青年の手が背骨の形を布越しにもかかわらずはっきりと捉える
袖から伸びた腕は肘の関節の輪郭がはっきりとわかった
「お前また痩せたか?」
妹は頑なに首を横に振るだけだった

発作から数分が経ち、妹の呼吸はいつもの浅いものに戻っていた
「ねえ。にぃちゃん」
「なんだ?」
「にぃちゃんって恨んでる人いる?」
唐突な質問ではあったが、兄は包み隠さず答えた
「そりゃぁいっぱい居る。まず川向こうの親戚のババァにくそジジイの村長、親父にお袋、あと俺とお前に石投げてきたやつら全員。挙げていったらきりがない」
村八分となる原因を作った両親。その親が死んでなお自分たちを受け入れようとはしない村長。手を差し伸べてくれない親戚。迫害する村人。全てが許せない
「ねえにぃちゃん。私たぶん・・」
「滅多なことは言うな。親父らとお前の病は違う、お前のは治る見込みのある病だと先生は言ってたぞ」
「そうじゃなくて、わた・・」
「米が炊き上がったぞ」
無理矢理言葉を遮った。何が言いたいのかは知らないが、縁起でもないことを言おうとしているのはわかった
「食ったらさっさと寝ろ。いいな?」
「うん!」

食後、二人は寄り添うように眠る
「寒いな」
所々壊れた壁から吹き付ける冷たい隙間風が兄妹を舐め回した
「私は平気だよ」
「ならいい」

もうすぐ本格的な冬がやってくる
春になれば今よりずっとあたたかくなって、今よりたくさん食べるものが手に入る
この冬さえ越せば妹はきっと治るという確信があった
寝息を立てる妹の寝顔を見る
その頬にはもう以前のようなふくよかさは無かった
(明日も頑張ろう)
そう誓い青年も眠りについた




次の日
朝から青年は冬を越すための薪を集めるために小屋にあるノコギリとロープ、ナタとヨキ(斧)を持ち手ごろな樹木を探していた
「この木でいいか」
薪に適した程よい大きさの広葉樹を見つけた。伐倒方向の確認をしてノコギリで受け口をつくり、追い口をつくり木を倒す
倒したらナタとノコギリで枝を打ち。小さく玉切りをして、ヨキで割る。割った薪を集材用のカゴに入れてる。この作業を延々と繰り返す
空腹が仕事の邪魔をするが構ってなんかいられない
季節は待ってはくれない。少しでも多くの薪を集めなくてはならなかった

汗を拭うついでに周りを見渡すと今日もゆっくりの群れを見つけた
(まったくご苦労なことだ)
気にせず薪集めを再開した





兄が樹木にノコギリの刃をあてている頃、妹は家の周りを散歩していた
家に閉じこもってばかりでは治るものも治らない。と兄に言われ、定期的に行なっている
たった少しの距離を歩くだけで息を切らしてしまう自分を不甲斐無く思いながら、おぼつかない足どりで進む
「あら」
草の陰から小さな球が一つ飛び出してきた
「ゆっきゅりちてってね!!」
手のひらに乗る大きさのゆっくりの赤ん坊が一匹だけいた
突然の挨拶であったが、妹も微笑みながら返した
「うん、こんにちは」
よく見ると赤ん坊ゆっくりの目の周りは赤く腫れていた
それに子供が単体でいるのはおかしいと思い訊いてみる
「あなた、お父さんとお母さんは?」
するといきなり赤ん坊は目に大粒の涙を浮かべて泣き出した
「ゆう゛う゛う゛う゛う゛う゛みんなどっがいっじゃっだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
この赤ん坊、数時間前から親とはぐれこのあたりを泣きながらずっと彷徨っていた
そこへ偶然妹が通りかかり寂しさに勝てず草むらから出て声をかけた
「あなた迷子なの?」
顔を前に傾けて肯定する
「よかったら家に来る?」
「いいにょっ!?」
その言葉泣き止んだ
家からこの場所まで大した距離はないから親が来ればすぐに見つかるはずだ、それにここにいたら他の動物に捕食されてしまうと思った
赤ん坊を手に乗せてすぐ近くの小屋へと戻る。いつもより高い視点に赤ん坊は歓喜した
手のひらからあがる歓声に妹は頬を緩ませる、赤ん坊を連れてきたのには話し相手が欲しかったという気持ちもあった

その光景を離れたところから見ている者達がいた
赤ん坊ゆっくりの家族である。いなくなった子供をようやく見つけたと思った直後、人間の手に乗って連れ去られるのを見て驚愕した
「ゆゆっ!! いもうとがゆうかいされたーーーーー!!」
「れいむのこがぁぁぁ!!」
「と、とりあえずどすにほうこくするんだぜ! あしのはやいまりさがいってくるんだぜ!」
母れいむに人間の監視を任せて父まりさは一目散に巣を目指した

ゆっくりたちの巣は村の北側にある山肌の露出した斜面にできた洞穴だった
入り口はドスまりさより一回り大きく、同じ直径で奥まで続いていた
どういう仕組みかはわからないが、洞窟の中は奥まで明るかった
巣にたどり着き、息切れ切れの父まりさに仲間が声を掛ける
「どうしたのまりさ、そんなにいそいで? もっとゆっくりしようよ」
「いまはそれどころじゃないんだぜ! どすはどこなんだぜ!?」
「いつものいちばんおくのへやだよ」
礼を言うのも忘れ父まりさはその道を急ぐ
「どす! どす! たいへんなんだぜ!!」
『どうしたの?』
洞窟の奥は底がすり鉢のように窪んでおり、ほかの場所よりも広かった
すり鉢の底にドスまりさが鎮座していた。その横には腹心と思われる成体のゆっくりれいむとまりさがいた
この場所は普段ドスまりさと腹心しか常駐することは許されていなかった、その奥に食料を蓄えてあるからだ
「まりさのこどもが、にんげんにゆうかいされたんだぜ!!」
「「『ゆゆっ!!』」」
父まりさは自分の見たことを全て伝えた
群れ全体に激震が走った

だがドスまりさだけがこれはチャンスだと閃いていた
もしこれが事実なら赤ん坊の生死を問わず、協定違反の罰金として越冬の食料を要求できる。苦労して餌をあつめる必要が無くなる
万が一人間が要求を断っても自身の必殺技“ドススパーク”を使えば人間は「はい」といわざるおえないはずだと
普段温厚なドスまりさも群れの繁栄のためなら人間に対して鬼のように冷徹に振舞える覚悟と自信があった


目先の利益に囚われてドスまりさは、父まりさの報告が誤解かもしれないという可能性にまで頭が回らなかった


腹心の2匹と話し合った結果。赤ん坊の救出隊と村に行く部隊の二つを作り同時に進行するという段取りを立てた
『群れの中で強い子を集めてね! その子たちで赤ちゃんの救出部隊を作るよ!!』
「ほかのこはやまでしょくりょうをあつめているみんなをよんできてね!」
「かずがあつまったらみんなでむらにいこうね!」
ドスまりさと腹心がそれぞれ指示を出した
部隊はすぐに編成され兄妹の家に派遣された

『仲間を傷つけたやつは絶対に許しちゃだめだよ!!』
「「「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」」」
別れ際にドスまりさは救出隊にそう激を飛ばした







布団から上半身だけ出してゆっくりの赤ん坊と会話を楽しむ妹。かれこれもう2時間以上は経っていた
「ん?」
「どうちたの?」
外から物音が聞こえた気がした
そう感じた直後、いきなり戸が倒れた
「にぃちゃん、戸を開けるときは丁寧にっていつも自分で・・・」
小屋に入ってきたのは兄ではなかった
「おとーしゃん、おかーしゃん!!」
ゆっくりの赤ん坊が目を輝かせながら喜び叫んだ
小屋に入ってきたのはゆっくりたちだった。目で追って軽く数えてみても10匹はいる
一人と一匹は向かい合って笑い、赤ん坊が妹の手のひらから降りる
「良かったね、迎えに来てくれて」
「うん!!」
とてとてと小さな歩幅で母のもとまで歩み寄る
母れいむは急いで我が子を口の中に入れるとすぐ小屋を出て行った
さよならを言う時間も無かった
その母れいむが出て行くと他のゆっくりが壁を作るように横一列に並ぶ
「 ? 」
その奇妙な光景に妹は首をかしげた
集団の代表である父まりさが口を開いた
「よくもうちのこをさらったな!!」
その言葉に妹は驚愕した
「待って。私は・・」
「うるさいよこのゆっくりさらい!! あのこをたべるきだったんでしょ!?」
群れのゆっくり達は『人間はゆっくりに対してヒドイことをする』というの認識を強く持っていた
その言葉を皮切りにゆっくりたちが一斉に飛び跳ねだした
「ぐぅッ」
4キロ以上ある皮と餡子の塊がぶつかり、体を大きく振られる
その痛みを堪えて事情を丁寧に説明する
「勝手に連れて行ったのはごめんなさい。でもあの子に危害をつもりなんて無かったの、信じて」
「いいわけしないでね!!」
「あやまったっていまさらおそいんだぜ!!」
「おお、みぐるしいみぐるしい」

数匹が妹を襲い、残りが部屋の中を荒らしまわった

ゆっくりといえど成体は以外と力を持っている、病人の妹がそれを追い払うのは困難を極めた
ましてやこの数ではどうすることもできなかった
自分の身を守ることだけで精一杯だった
「にんげんがまりさやれいむにかてるわけないんだぜ!」
「『ふかしんきょーてー』をやぶったばかなにんげんはゆっくりはんせいしてね!」
妹は薄い布団を被ってゆっくり達からの暴力にひたすら耐えた
布団の上にゆっくりが乗りかかり、容赦なく飛び跳ねる
「痛い・・・痛い・・・・ごめんなさい、許して・・・・」
叫ぶ力すらもう無かった
「ゲホッゲホッ」
ゆっくり達が暴れたことで舞い上がった部屋の埃と灰、ゆっくり達の体に付着していた砂により気管を痛めてしまった
ハァッ、ぐゥゥっゴボンゴボンゴボンゴンゴンゴンゴンゴン、は、ハァっ、ヒ―――…ゴボンゴボンゴボンゴボっ
「ごほごほうるさいよ! さっさとだまってね!!」
咳の音に苛立ちを覚えさらに強く妹を踏みつけるゆっくりたち
ついに妹の被っていた布団を剥ぎ取り、直接体当たりを始める
妹はただ本能で体を丸くすることしかできなかった
頭に、足に、腕に、背中に、腹、いたる所に重量のあるゆっくりがぶつかってくる
砂袋で殴られているのも同然だった。骨は折れないものの相当な痛みだった
やめてと言いたくても咳で声が出ない
ゆっくりの気が済むまでこの暴力は続いた

部屋にあるものはほとんど壊され、妹も虫の息の状態になってようやくゆっくりたちの動きが止まった

「じゃあね! これにこりたらにどとばかなまねはしないでね!!・・・・・・・ペッ」
「にんげんがまりさたちにかなうはずないんだぜ!!・・・・・・・・・ペッ」
それぞれの言葉で妹をなじり、その体に老廃物となった餡子の唾を吐きつけてゆっくりの団体は小屋から出ていた
圧倒的勝利にみなご満悦だった
ゼヒィ…ゼヒィ…ゼヒィ…,コヒュゥ、コヒュゥ、、コヒュゥ、、ゼィッゼィッゼィッゼィッ、、うぅ…、――
痰だらけの喉で必死に呼吸して息を整えようと努める
うう・・・・っゴボンゴンゴンゴンゴンゴン…、ゴボンっ
しかし駄目だった
痛む体に鞭打ってなんとか這いずりながら薬の入っている箱に辿り着く
「あ・・・」
薬はすでに昨日の時点で無かったことを思い出した
少女の咽る音だけが寂れた小屋の中に響いた



薪の積んであるカゴを担ぎ青年は家を目指していた
「ん?」
道の向こうからゆっくりの群れがこちらの方向にやってきた
ゆっくりたちは何か楽しげに話している
(本当に最近よく見るな・・・)
青年とゆっくりは特に何事もなくすれ違った

家についたのはそれから数分のことだった

小屋の様子がおかしいことに気づきカゴを捨てて走る
倒れた戸を無視して土足のままあがる
「おい、何があった!!」
床にうつ伏せになって倒れている妹を抱き起こす
妹に付着した餡子と先ほどすれ違ったゆっくりの集団の二つが符合する
「ゆっくりどもが襲ってきたんだな!?」
「ち、違うの・・・ゴホぉッ、、 ゴホぅごホ・・・・私が迷子の赤ちゃんを連れて来たから・・・あの子たち、私が攫ったと・・・・あハッ、エホンゲホン」
「なんだよそれ! あいつらの勘違いじゃないか!!」
体についた餡子を無視して布団に寝かせる。いつもよりも症状がひどい
「すぐに薬とってきてやるからな! おとなしく寝てろよ!」
時刻はもう夕方だ今行けば薬はあるはずだった。全力で走れば村とここまでなら20分とかからない
だが
「まって・・・・にぃ、ちゃん・・・・・行かないで・・・」
妹の手が離れていこうとする兄の着物の袖を掴む。どこにそんな力があるのか、袖に皺ができるほど力強い握りだった
「心配するな、あっという間だから」
「でも・・・・・・・・・・・わか、った・・す、ぐに、帰ってきて、ね・・・・」
息も絶え絶えにそう言うと手を離した
青年は妹に布団を掛けなおしてから家を飛び出した
薪集めの作業と空腹でクタクタだったが、疲労感は背後から聞くる咳き込む音にかき消されていた







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最終更新:2008年09月14日 09:09
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