その他 オーバーテクノロジー

「あの・・・それで私は」
「ああ、ごめんなさい。もう少しここでお茶を楽しんで頂ける」
河城にとりはまるで蛇に睨まれたカエルであった。
盟友とのお茶会ならともかく、こんな。

「永琳、その・・・もう一度分かりやすく説明してくれるかしら」
「もう何度原理を説明しても同じよ。魔法か何かだと思いなさい」
「あなたの説明が難しすぎるのよ。重力子だの固有振動数だの。まるで自分がチルノになった気分よ」

一度、ため息をついてから永琳は再び説明を始める。
「この子の作ってしまった装置は重力子を励起させて対象物の固有振動数の位相に合わせて放出し対象物を完全に素粒子レベルに分解するの」
「・・・」
「要は何でも消してしまうLASER(レーザー)、正確にはGASER(グエーザー)と言うものよ」
「・・・ま、マスタースパーク?」
「あれはおそらく高出力のレーザーだと思うから、全くの別物よ」
「???」
「破壊ではなく消滅するの。分かる?」
「う、うん」
「それにしても、あなたはよくこんな物を・・・」
まだよく状況を飲み込めていない紫をよそに永琳はにとりの作った装置をあれこれと調べている。
「うーん、凄いんだけれど。なんでこんな設定にしたの?」
急に話をふられ、にとりは少し戸惑いながらも答える。
「あ、あの人間達がゆっくりに畑を荒らされて困ってる・・・と聞いて、安全な武器を」
「相手を素粒子にまで分解する武器が安全」
「そ、それなら人間には害がないと」
「確かにゆっくりの皮に固有振動数を合わせてあるから、このGASERは確かに人体やその他の物質に影響は無いけど」
そこに紫が言葉を挟む。
「それって凄く安全ってことじゃない?」
「照射するGASERの固有振動数を変えれば、蓬莱人でも消滅させる事ができるかもしれない一品よ。試してみないと分からないけど」
「・・・」
無言で紫は自分を指差す。おそらく自分も?と言う意味だろう。
「あなたもよ」
「それは危険ね。とても危険だわ」


幻想郷に起こった小さな異変、
それは河城にとりの自信作が原因だった。
森の中に放置されている大量の餡子やクリーム、それと帽子やリボン。
人間はゆっくりが何かの病気にかかったのか気味悪がって近づかなかったが、そうではなかった。
永遠亭に人里から調査の依頼が来た頃には、竹林でもそうした死体が見られるようになっていた。
永琳はゆっくりの皮が全く無い事に疑問を持つ。何かに食べられたとしてもこんなに綺麗になくなる事は無い。
まるで消滅させられたようだ。それに餡子の甘さを計ってみたが平均より甘くない。
つまり、このゆっくりは絶命した瞬間、さほど痛みや恐怖を感じていなかったことが分かる。
何かに食べられたり、病気にかかっていたとするなら、もっと餡子が甘いはずだ。
推測されるのは新しい魔法か科学兵器、幻想郷で魔法を使うものなど限られている。
特にこの手の魔法を思いつくとすればパチュリー・ノーレッジぐらいだ。
魔理沙の魔法ではこんな地味な攻撃をするわけが無いし、人形を使役するアリスにしては現場に人形を操った形跡も無い。
紅魔館からの長距離狙撃のような魔法。それを考えていたのだが、当ては外れる。
となると、
森を歩いていた河城にとりを兎たちが取り囲む。背には何やら大きな機械を背負っている。
人間に化けた嘘つき兎に騙され、その相棒の狂気の瞳で感覚を狂わされ、あっという間ににとりは永遠亭のお茶会に強制参加させられる。


「あ、あの燃料の人にもお茶をいただけないですか?」
「燃料の人?」
にとりの言葉に紫は疑問符を浮かべる。
「その、装置の燃料の人です。どうしても高出力が必要なので・・・」
永琳は無言で燃料タンクと書かれた部分を開ける。
「燃料係のお空ちゃんです」
燃料タンクの中で寝ていた少女をにとりは起こそうとするが、永琳はまた無言で燃料タンクを閉めてしまう。
「まさか、核まで搭載しているとは思わなかったわ」



紫はどうにも納得できない様子で、装置を見ている。
「そんなに危険なものなの?試しに一度使ってみましょうよ」
試しに装置を動かしてみる、用意させたゆっくりまりさにGASERを照射する。
照射されたゆっくりまりさの皮はみるみる内の消滅していく。溶けるとかではない消えていくのだ。
それを紫と永琳は無言で見守る。にとりだけが凄いと笑っている。
「にとりさん」
「はい?」
「あとで正式に河童の長に言うけど。この装置の使用は禁止します」
紫の冷たい言葉ににとりはオロオロとする。
「あ、あの私何か悪い事を」
「悪くはないんだけど、あれは危険すぎます」
「え、でも安全に」
「危険すぎます」
「はい・・・」



こうしてGASER照射装置は解体され、にとりはお詫びとして渡された美味しいクックーを食べながら妖怪の山に帰って行った。
お空はと言うと、お燐に声をかけたらすっ飛んできて連れて行かれた。おそらく向こうもお空の事を探していたのだろう。
後日、にとりがマイクロ波照射装置でドスまりさを爆発させるまで、この平和は続いた。








~あとがき~
にとりを書くSS書きさんが増えたらいいな
by118

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最終更新:2008年11月05日 23:36
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