ゆっくりいじめ小ネタ490 奇跡

男は信心深い男だった。
少なくとも他の人間からはそう見られていた。
毎日毎日欠かさずに神社に賽銭と祈りを捧げていたのだ。
しかし誰も知らなかった。男が何を願ったのかを。
その屈折した内容を。






男の目の前にいるのはゆっくりさなえだ。
つい3時間ほど前。たまたま家の前でゆっくりとしているさなえを見つけた。
男は遂に祈りが神へ届き、奇跡が起きたのだと感謝した。
さなえはゆっくりの中でも目撃情報が少ない稀少なゆっくりだ。
やれ山の頂上に居るだの、町中に居るだの、目撃情報が安定しない。
故に男は当てもない探索に時間を浪費していた。
しかしその必要も最早ない。目の前にさなえが現れたのだから。


男は本で見たさなえに一目ぼれした。
そして、さなえを可愛がるつもりでいた。その為に毎日神に祈っていたのだ。
最も、それが一般的な意味での可愛がるとはだいぶ外れているのだが。







男はさなえに与える為のごはんを台所で調理し終えると、さなえの居る部屋へ鍵を開けて中に入った。
その部屋の中は、白い壁と座布団がぽつりと置かれているだけの殺風景な部屋だった。
その座布団には小さな毛布が置かれている。よく見るとその毛布の中央の部分にふくらみがあった。
注意深く見てみると、そのふくらみはガタガタと小刻みに震えているように見える。
何かに恐怖しているのか。それとも隠れているつもりなのか。
男にはよくわからない。しかしその仕草が可愛らしいのだけはわかる。



男は毛布をどかそうとしたが、毛布がどかせないことに気づいた。
おそらく口で毛布を引っ張っているのだろう。
それほどまでに、あの時の"遊び"が怖かったのか
それを思い出すだけで男の口からは自然と笑みがこぼれた。




そっと。男は座布団をひっくり返した。
すると、毛布の中から何かがコロコロと床へ転がった。
緑色の髪を持つゆっくり。さなえである。



「ゆぅ……ゆ゛! ゆっくりちかつかないでくださいね!」
さなえは最初、何が起きたのかわからずに周りをキョロキョロと見回したたが
男の顔を確認するやいなや、肉食獣に狙われた草食獣のようにさっそうと逃げだすさなえ。


「ゆっくりやめてくださいね! ゆっくりしてくださいね!」
しかし男は簡単にさなえに追いついた。そして目の前に持ってきたご飯を差し出す。


「お腹減ってるだろ? ごはん作ってきたから。」
そういって男はさなえ目の前に皿を差し出した。


「ゆっ…? ゆっくりできますか…?」
さなえは差し出された皿へ恐る恐る近づいていく。
近づきつつも男からは目を離さずに、目の前の皿に盛られたごはんに口を付けた。



「ゆっ! とってもゆっくりできます!」
先ほどまでの泣き顔はどこへやら。嬉しそうにさなえはごはんを食べ始めた。
さなえの食事は、ぱくぱくとゆっくりにしてはお行儀のいい食べ方で
周りに食いカスを散かすようなこともせずに、静かに、そしてにっこりとした笑みを浮かべながら
食事をしていた。
男はそのほほえましい光景を笑いながら見ていた。



「ゆぅ! たくさんたべました!」
ご飯を全て平らげたさなえは満足そうな顔でそういった。
そして、男の方をにっこりとした顔で見る。
先ほどまでのことは完全に頭から飛んでいったのか、はたまたごはんをくれたから良い人になったと思ったのか。
すぅーと息を吸うと、笑顔で



「ゆっくりしんこうしていって『バチィッ!』」


男の手にはいつの間にか黒い機械……スタンガンが握られていた。
そして男がそれをさなえにの頬に近づけた瞬間、青白い光がさなえを襲った。
さなえは、一瞬何が起きたのかわからずにただ転がりまわっていたが、見覚えのある物体を見ると
とたんに騒ぎ出した。


「こっちこないでくださいね! ゆっくりはなれてくださいね!」
さなえはまだ痺れて痛む体を引きづりながら、男から必至に逃げようと
床をずーりずーりと這いずっていた。



「バチィッ!」
「ゆだい゛ッ!!!」


次はさなえの髪へ青白い光が襲った。
さなえの緑色の髪がうっすらと黒く焦げた。


「バチィッ!」
「ゆぎぃ!」
「バチィッ!」
「や゛べでぐだざい゛!」
「バチィッ!」
「ゆ゛ッーーーーー!!! 」
「バチィッ!」



男は何回かスタンガンを当てると、一旦さなえから少し離れた。


「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……も゛う゛じんじゃに゛がえ゛り゛い゛で゛ずぅ……」
見た目は少々皮がかぶれてるように見える程度だが、かなりのダメージを受けているのか
さなえはもはや這いずることもせずに、ただその場で荒く呼吸をしているだけだった。
地面にはさなえの目から流れた砂糖水が溜まっていた。



男はその様子を笑いながら、今までで一番爽やかな笑みを浮かべながら見ていた。
そしてまた、ハァハァと息を荒げながらスタンガンのスイッチを入れた。



「バチィッ!」
さなえはビクンと動くだけだった。もう叫ぶことすらしない。
全身を痙攣させ、口からは何やら甘い匂いを出している。
眼もおそらく視点さえ合ってないのだろう。どこか虚ろだ。
それでも逃げる意思はあるのか、ゆっくりと動きだそうとするのだが
動く体力などないのだろう。寝がえりさえ打てない。

「ゆっふぅ……ゆふぅ……かなこざ……ずわこざ……」
耳を傾けてみると、かすかに声が聞こえる。



男は甘い液体でベトベトになったさなえを持ち上げてみた。
未だに髪はしっとりとしている。
口元に鼻を近づけてみた。甘い匂いなのは確かなのだが、それがなんなのかはよくわからない。


「どれ。味を見てみるか。」



男はさなえを自分の目の前まで持ってくると、おもむろにさなえの口の中へ舌を入れた。


「ゆぐ……んんんんん」


口の中に入ってきた異物に対する反射的な行動なのか、もぞもぞと動き無理やり吐き出そうとするさなえ。
しかしおとこはそれを気にせず口の中をひたすら舌で舐めはじめた。
じゅぼじゅぼと唾液の混じった音が何もない部屋に響く。


(ゆう……きせきさんたすけてください……)


さなえはただただ目から砂糖水を流していた。







男がふと部屋に取り付けてある時計に目をやった。
すると、男は急に焦り始めた。


「やべえ。早く行かないと遅刻だ!」
男はさなえを座布団に置くと、いそいで部屋を出た。







さなえが動けるようになったのはそれから何時間かたった後だった。
さなえは重い体を引きずるようにして起き上がった。
そしてふと気づいた。目の前の扉が開いてることを。


「ゆ?……き、きせきがおこったんですね! これぞしんこうのちからですね!」


さなえは体の奥底から力を振り絞った。そしてピョンピョン跳ねながらドアの隙間を抜ける。
部屋はどうやら庭の片隅にあったようで、さなえはそのまま男の家を飛び出した。



(やっぱりきせきはおこるんですね! とってもゆっくりできます!)
さなえは持ち前の笑顔で道路に飛び出し、





「バチィッ」







「ふぃーばー!」
「おいなにやってんだイク……ヒャア!さなえだ!奇跡だァ!……お持ち帰りするか」








【あとがき】
たまには、神ナギッ歌のことも思い出してあげてください


マジ狩るメイド長 sakuyaさんからのお題『奇跡』
byバスケの人

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最終更新:2011年07月28日 00:06
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