『ゆっくりの生態 都会編 ~ハプニング~』
「うわ!!!なんだこれ!!??」
「うおおい!!!警察呼べ!!ここは危ないぞ!!」
ある住宅街で事件が起こった。
「ゆっふん!!!いたいめにあいたくなかったらあまあまさんちょうだいね!!」
「ゆっくりぷれいすもよこすんだぜ!!」
「さすがどすだね!!かっこいい!!!」
ドスだと?田舎では時たまドスを見かけるが都会でもドスはいるのだ。正確に言えばドスになるゆっくりがいるということだ。
そもそもドス…ドスまりさは遺伝やら食事やら環境やらでドスに成長するわけではない。突然変異でありその自覚もない。
今までバレーボールくらいの大きさだったまりさが一夜にして一気に2~3mの巨大なゆっくりに進化するのだ。
どのまりさがドスに進化するとかは分からない。田舎でドスは見かけても都会でなかなか見かけないのはゆっくりの寿命の違いだ。
都会のゆっくり、特に野良ゆっくりはすぐに殺されてしまうため進化する前に死んでしまう。滅多にお目にかかれない。
飼いゆっくりでドス化したまりさの話は聞かないが多分それはまだそういったまりさが現れていないだけだろう。
「ゆっへっへ!!!しにたくなかったらおいしいものもってくるんだぜ!!」
「どすかっこいい!!」
「ゆっくちできりゅね!!」
「まりちゃもどしゅになりちゃいよ!!」
早くもドスの周りには色んなゆっくりがいた。成体ゆっくりから赤ゆっくりまで。2、30匹はいる。
日頃の鬱憤を晴らすかのようにドスまりさとその取り巻きが我が物顔で住宅街を歩く。
「ほれ、さっさと処理するぞ」
「ここは危ないから下がってください」
警察や加工所職員がやってきた。彼らに困惑している様子はない。またか、という感じだ。
「どすにかなうとでもおもうの?」
「ばかなの?しぬの?」
「「「「げらげら!!」」」」
ドス御一行は自信に充ち溢れていた。自分達が最強だと思い込んでいるのだ。
「はい、構えて」
指揮官らしき職員がやれやれといった感じで指示を出す。
「ゆ!そんなものでどすをたおせるとでもおもったの?」
「むだなていこうはやめるんだぜ!!」
数人の職員が構えているのは猟銃のような銃だった。
「はい、発射」
一斉に銃が撃たれた。
「ゆぎゃ!!!……いたい!!!」
照準は全てドスまりさの底部だった。ドスにチクリと痛みが走った。
「ど…どす!!!??」
「だ…だいじょうぶ!??」
「ゆ…へいきだよ!!ばかなにんげんさん!!むだなていこうはよしてね!!」
ドスには大したダメージが与えられていないようだ。
「さすがはどすなんだぜえ!!!」
「こわいものなんてないね!!」
ドス達は自信満々に前へ歩き出した。職員達は少し後退した。
「ゆ!ゆ!……ゆ?」
暫くしてドスは底部に違和感を感じた。
「ど…どす?」
「ゆっくりしすぎなんだぜ!!」
「こわいものなんてないよ!!だからどんどんあるこうよ!!」
いつの間にか先頭だったドスが後ろからついてくるゆっくり達に抜かされていた。
「ゆ?ゆ?ゆ?」
ドスは自分の体に何が起こったのか分からなかった。が、すぐ気付いた。
「うごけない!!ゆあああ!!!!あじがうごがないいい!!!」
「ゆ!!??」
「ど…どうじで!!??」
「どうなっでるのお!!??」
「うごいでええ!!!あんよざあぁん!!!うごいでよおおお!!」
ドスの上半身は前のめりになっているが足元はびくともしない。
「んじゃ、トラックこっちに誘導してね」
ドスの元に加工所職員達が近づいてきた。
「うごいでええ!!!ゆううんじょ!!!ゆうううううんっしょ!!」
「ど…どずになにじだああ!!!!!」
「どずうう!!ゆっくりできないにんげんがくるよお!!やっづげでえ!!」
ドス退治の最初の一手は動きを封じ込めることだ。職員達が撃ったのは餡子を固める特殊な薬品だ。
ドスが初めて都会に現れた時力づくで大人しくさせようとした。しかしドスは暴れまわり負傷者が多く出てしまった。
仮に住宅街でドスとの格闘となれば住宅に被害が及んでしまう。手荒な事は控えなければならない。
そこでまず麻酔銃による封じ込めを画策した。が、相手はドス…というより饅頭だ。効果があるのか疑問だった。
というわけで中の餡子を固めて動けなくするという方法が採られた。餡子を凝固させる薬品はすぐに開発された。
「そ…そうだわ!!!どすにはどすすぱーくがあるじゃない!!」
「どずう!!ゆっくりしないでどすすぱーくできめちゃうんだぜ!!!」
ドスまりさの必殺技ドススパーク。殺傷能力の強いレーザー光線だ。ドスの頭や帽子に生える魔法キノコがエネルギーとなる。
「ゆ!???ゆ!??ゆう!???」
ドスまりさはきょろきょろと周りを見回したり体を震わせたりした。
「ど…どうやっでうでばいいのおお!!!!!????」
今朝ドスになったばかりのまりさだ、ドススパークの撃ち方が分からなかった。本能的に分かっている個体は極々僅かだ。
そもそもドスになったばかりではドススパークに必要不可欠な魔法キノコがまだ生えていない。どちらにせよ撃つ事は不可能だ。
「ゆうう!!か…かこまれぢゃっだよおお!!」
「どぼじでなにもじでぐれないのおお!!!」
「ど…どずうう!!なんどがじでえええ!!!」
トラックがやってきた。運転手が荷台からチェーンソーを持ってこちらにやってきた。
「じゃあいつも通り、3か所ほど頼むわ」
「はいよ。バケツと柄杓は荷台にあるから各自ね」
チェーンソーのスイッチが入った。ギュイィイィイイン!!!!と唸りを上げる。
「こ…こわいよおお!!!!」
「どずうう!!!たずげでえええ!!」
怯えるゆっくり達を無視しチェーンソーを持った男はドスのすぐ傍までやってきた。
「な…なにずるのお!!??ど…どずを…こわらぜ………ゆびゃああああ!!!!!」
ギザギザの刃がドスまりさの頬に当たる。刃はドスの頬を貫いた。
「いぎぃい!!!!!やべでやべでええ!!!!!ゆぎゃあああ!!!!」
刃はそのままドスの頬を切り刻む。切り口から餡子が漏れ出していた。
「ごわいよおお!!!!おうぢがえるうう!!!」
「にげるんだぜえええ!!!!」
「れ…れいむはなにもじでないがらねえ!!!!」
取り巻きのゆっくり達はドスを放置して一斉に逃げだした。蜘蛛の子を散らすとはこのことだろう。
動きを封じ込めるよりも処理の方が手間がかかる。動けなくなったドスをどう処分するのか、色々と議論された。
てっとり早くその場で焼却するという案があった。農村では時々見られる光景だが都会では危険であるため廃案となった。
トラックに乗せてどこかへ運ぶという案もあったが意外にドスは重くトラックに乗せる作業が難しかった。
たかがデカ饅頭1匹のために態々重機を持ち込むというのも馬鹿らしい。
このため中身を摘出し餡子と皮に分別してからトラックで運ぶこととなった。
「ゆがああ!!!どおじででられないのおお!!!??」
「ゆるじでえええ!!!おうぢにがえらぜでええええ!!」
逃げ出したゆっくり達はいつの間にか設置されていたバリケードの前で騒いでいた。袋のネズミだ。
「ゆぎゃあああああああ!!!!ほっべざんがああ!!!いじゃいい!!!いだい!!!だずげでええ!!」
一方ドスは左右の頬に大きな穴を開けられていた。中の餡子がどろっと垂れている。
「ゆがあああ!!!!!ぼうやべでええええ!!!」
刃はドスの下腹部辺りの数cm前で高速回転していた。
「ぼうゆるじでえええ!!!!ぎらないでええええ!!!ぽんぼんぎらないでええ!!」
ドスの願いは届かず刃が皮に触れた。
「やべ!やべでええええ!!!!ゆぎょおおお!!!!!!!っがああああ!!!」
ビヂビヂビヂッ!と音をたてて皮が切られていく。と、ぐわぁっと下腹部に穴が開きその穴と切り口から大量の餡子が噴き出した。
「ああああ!!!!いぎゃああああああああああああ!!!!!」
下腹部辺りには排泄器官がある。味わったことの無い痛みからくるショックで餡子を漏らしているのだ。
力加減に制限が利かず思いっきり噴き出したためチェーンソーによる切り口からも漏れ出したのだろうか。
「ほい、終わったよ。じゃ、あとはお願い」
運転手の服はドスが噴き出した餡子をべっとりと浴びており真っ黒だ。何食わぬ顔をしているところを見るとよくある事なのだろう。
「ぎぃ!!ゆびゅ!!がああ!!いぎぃぎぎいいいい!!!!!」
ドスは苦しんでいた。左右の頬と下腹部に開いた大きな穴。そこから餡子がどろっ…どろっと垂れている。
「あ…ああ…あああ………ながみがぁ……どずのながみがぁ…」
ドスの周りには柄杓とバケツを持った人間が多数いた。穴から中の餡子を柄杓で掬いバケツに入れていく。
バケツが一杯になるとトラックに戻り餡子を荷台に盛るとドスのもとへ戻り餡子を掬って…という作業だ。
原始的な方法であるが近々バキュームカーを改良した車両が導入されるらしい。ホースを穴に突っ込み一気に餡子を吸い出すのだ。
「ほれっ!!さっさと餡子動かせよ!!」
ドスの顔面を殴った。こうすると餡子が流れ穴からどんどん垂れてくる。回収し易くなるのだ。
「ゆびゃあ!!!いだいい!!!ゆびぇええ!!!……ごべんなざいい!!ゆるじでええ!!」
ドスの体が少し縮んだように感じる。原始的な作業なだけに徐々にドスが小さくなっていく。
「…ながみぃぃ……がえじ…でえぇ……あんご…ざん…がえ…じ…でよおぉ」
餡子が抜かれる度にドスの弱々しい呻き声が聞こえる。
「おうぢにがえらぜでええ!!!!」
「まりざはなにもじでないんだぜえ!!!だがらゆるじでほじいんだぜええ!!!」
「あげでよおお!!!!ここがらだじでよおお!!」
一方取り巻きだったゆっくり達は誰にも潰されることなくまだバリケードを突破できないでいた。
「ゆんぎゃあああ!!!どずがああ!!!」
「れいぶはおいじぐないよお!!!だがらたずげでえええ!!」
誰にも潰されていないのではなく誰も相手にしていないのだ。まずはドスの駆除、最優先だ。
それが終わったら他のゆっくりの駆除、いつでも駆除できるものは後回しだ。
「…ゅ……ゆが!!……ひぃ……っびゃ!!……っゆ!!ゆ!!」
ドスは時折ビクッ!ビクッ!と痙攣する。帽子は取られ既に解体されていた。
「お…ぼうぢぃ……が…えじ…で……あ…あんごも……がえじ…でよ…」
吸い取っても吸い取ってもまだ生きている。中々しぶとい。
「出が悪くなったぞ。さっさとひり出せ!!」
殴るだけでは餡子を出さなくなったのか今度は蹴飛ばす者まで現れた。
「ぎゃ!!!びゃっ!!いだっ!!!………だ…だがないで……いだいよ……げらないで……」
どんどんドスは萎んでいった。そのうち何人かが頭に登りジャンプし始めた。
「ゆびょお!!ひぎゃあ!!びゅっ!!!いだいい!!やめでえ!!ゆるじ……うぼおおびょぼおお!!」
ドスは口から一気に餡子を吐き出した。
「…ゅ……ゅ…………」
ドスが沈黙した。半分以上の餡子が吸い取られたのだ。つまり死んだということだ。
「やっと黙ったな」
「じゃあ何人かはちっこいのを始末しちゃってください」
数人が後ろを向いた。取り巻きだったゆっくり達と彼らの目が合った。
「…こ…ごないでええええ!!!!」
「ゆるじでええええ!!!!ごろじゃないでえええ!!!」
バリケードの前で固まっていたゆっくり達は逃げ散らばった。あとは一方的だった。
「ゆびぇえ!!!」
「びゃあああああ!!!」
「ゆぎぇえ!!!!」
柄杓で何回も殴られた。中身が漏れるまで叩き潰されてからトラックの荷台に放り込まれた。
「ゅ………ゅ……」
「ぃ…ひゃ……ょ…」
数匹が荷台で僅かに呻き苦しんでいた。が、ここまで痛めつければ五月蝿く叫んだり逃げ出したりはしない。
「どうも。お騒がせしました」
バリケードが撤去された。トラックはどこかへ走り去っていった。住宅街はいつもの平穏さを取り戻した。
「ゆぅ~ゆぅ~」
「おしゃんぽはたのちいね!!」
「おちびちゃん!!ここはあぶないからゆっくりしないであるこうね!!」
公園の前の道路をれいむと子れいむ、赤まりさの3匹が歩いていた。
「おちびちゃん!!おちびちゃん!!ゆっくりしすぎだよ!!」
親れいむは道路の怖さをよく分かっている。だが子ゆっくり達の足取りは遅い。
「おかあさん!はやすぎるよ!」
「ゆっくち!ゆっくち!」
「ゆっくりしすぎだよ!!ここをあるいたらゆっくりしてい……ゆああああああ!!!!」
れいむは叫んだ。自動車が見えたのだ。このままでは子ゆっくり達が轢かれてしまう。
「いそいでね!!!ゆっくりしているとしんじゃうよお!!!」
「ゆ?ゆ?ゆゆ…」
「お…おかあさん…ゆっくりしてないよ!!ゆっくりしていってね!!」
「ゆっぐりじずぎだよおおおお!!!!ごっぢぎでえええ!!!!」
母親の焦りっぷりに違和感を感じた子れいむと赤まりさ。何事かと周りをキョロキョロと見回した。
「な…なにかくるよおおお!!!」
「ゆっくちできにゃいよおぉぉ!!!きょわいよおぉ!!!」
漸く自動車の存在に気付いたようだ。2匹とも恐怖のあまり動けなくなっていた。
「ごっぢぎでええ!!!!…ゆあああああ!!!!と…どまっでえええ!!!どまっでええええええええ!!!!」
「ゆひぃいぃぃ!!!!」
「ゆあぁっ…………」
親れいむは思わず目を瞑った。そして恐る恐る目を開けた。
「おちびちゃ……ま…まりさ?…ゆがあああ!!まりざああああ!!!!!」
「い…いもうとが……れいむのいもうとがいないよぉ!!!!!」
親れいむと子れいむの目の前には餡子がびぢゃあっと散らばっていた。そして見慣れた小さな帽子がその先に転がっていた。
「あがぢゃんがああ!!!!!ちんじゃっだよおお!!!!」
「れいむのいぼうどがああ!!!!ゆえぇええぇえぇん!!!!」
そんな2匹の前に男性が立っていた。
「何だ、轢いたのはゆっくりか。驚かせやがって。犬かと思ったよ」
何かを轢いた感触がしたので車から出てきたのだ。
「どぼじであがぢゃんごろじだのおお!!!!???どまっで!!!!っでいっだでじょおおおお!!!!」
親れいむが男性に抗議する。子れいむは男性の靴にぽよんぽよんと体当たりをしていた。
「がえぜええ!!!!いぼうどをがえぜええ!!!!」
「うるせえな。止まってだと?何で人間が饅頭の言うことを聞かないといけないわけ?馬鹿馬鹿しい」
「おちびぢゃんはたべぼのじゃないよぉ!!!!あやばっでね!!!!あやばれえええ!!!」
「いもうぢょのがだぎぃ!!!!!ゆっくりしないでしにぇえ!!!!」
彼は子れいむを軽く蹴飛ばした。靴に餡子を付けるわけにはいかない。
「ゆびぇっ!!い…いじゃいよおお!!!!」
子れいむは吹っ飛ばされた。
「ゆがああ!!!おちびぢゃあああん!!!!」
親れいむは子れいむの所へ走った。
「ふん」
彼は車に戻った。
「おしっ!良かった。傷はない。タイヤが汚れただけだ」
男性は車に乗り込むとさっさと走り去っていった。
「ゆびぇええぇええん!!!!いじゃいよおお!!!!おがあざああん!!!!」
子れいむは道路の真ん中で泣きじゃくっていた。
「おちびぢゃああん!!!!おちびぢゃあああん!!!!」
と、突然鋭い音がした。何かに驚かされた感覚がした。
「ゆっ!!!!」
親れいむは音がした方向を向いた。大きな大きな塊がこちらへ向かってきた。
「ゆ………」
親れいむの顔に何やら黒くてどろどろしたモノがぶっかけられた。
「ゆ…な…なに?なに?」
トラックは止まることなく走り去っていった。そしてトラックが走り去ったあと親れいむの目の前には数分前に見た光景があった。
「お…おちびぢゃああん!!!おちびぢゃあああああん!!!!」
泣きじゃくっていた子れいむの姿はもうなかった。
「いやだああ!!!!おちびぢゃああん!!!!ででぎでよおお!!!おがあざんはごごだよおお!!!」
れいむは何やら叫びながらそこらじゅうを走り回った。
「でいむ!!???でいぶはどごおお!!!???ばりざああ!!!おがあざんはごごだっでえええ!!!!!!」
いつの間にかれいむは往来の激しい道路にいた。突然のゆっくりの出現にクラクションが鳴りっぱなしだ。
「おちびぢゃあああん!!!へんじじでえええ!!!おちびぢゃ…………」
やがて道路は車の走る音だけしか聞こえなくなった。れいむは多分今頃愛した子供達のもとへ着いたんじゃないかな。
ゆっくりが車に轢かれる…というか潰されることはよくあることだ。だがそこまで問題にはなっていない。
車に傷がつくことはないしタイヤが汚くなるだけで大きな被害はない。運転手が潰したことに気付かないケースも多い。
問題があるとすればバイクだ。急に現れたゆっくりを避けようとしたり潰してしまう事でバランスを崩し横転、という事故が時たま起こる。
死者が出ていないのは不幸中の幸いだろう。饅頭のせいで死ぬなんて末代までの恥だ。
そして最近急増しているのが"スィー突事故"である。車とスィーの衝突事故なのだがこれが厄介なのだ。
スィーとはゆっくりだけが操作することができる乗り物だ。ゆっくりと違って饅頭ではなくある程度の強度を持っている。
こんなものが車とぶつかったらどうなるだろうか?運転手に怪我は無いだろうが車に多少の傷が付いてしまう。
「うわああああ!!!俺の新車がぁああ!!!!!!」
車の前でがっくりとうな垂れる男性。後方のドア付近に傷と僅かな凹みができてしまった。
「ゆ…っぐ…。ひどいめにあったんだぜ!!」
車の傍でひっくり返っていたまりさが起き上がった。乗っていたスィーは車輪が吹っ飛び先端が潰れていた。
「ゆがああ!!!まりささまのすぃーがああ!!!!」
「お前かああああ!!!!!!」
男性はまりさを掴んだ。
「いだい!!!なにずるんだぜ!!!はなぜえ!!!」
「うわっ!!しかも野良かよ!!てめえ!!!どう落とし前つけてくれるんだよ!!!」
これがもし野良ゆっくりではなく飼いゆっくりであったなら飼い主に弁償させることが出来る。野良ではどうしようもない。
「はなぜえ!!じじい!!!ゆが!!!すぃーなおぜええ!!!くそじじいい!!!!」
「それはこっちの台詞だ!!!ふざけるなこの饅頭が!!」
彼は野良まりさを殴った。こうでもしなければ腹の虫が収まらない。
「ゆがあ!!いだいい!!いだあ!!!やべろお!!!ゆがぁ!!ゆびゃあ!!!」
「この!!この!!……あ、待てよ」
彼は野良まりさと壊れたスィーを回収すると車を走らせた。
「おろぜええ!!!どごづれでぐづもりだああ!!!!!」
「うるせえ!!!」
「ゆびぇえ!!!いだ…ゆびょぼおお!!!!!」
2、3発殴って黙らせて助手席にスィーと野良まりさを転がせておいた。
「あ、もしもし。保険会社ですか?」
帰宅するとすぐに電話した。保険が下りるかどうか確かめているのだ。
「できますか!!はい!!…いまから。是非!!今すぐ来てください」
1時間後保険会社の社員がやってきた。
「これがその野良ゆっくりとスィーですね」
「ええ」
社員は色々と調べていた。車の傷とスィーを検証してみたりルーペで覗いて見たり。
「まりささまのすぃーがえぜええ!!!!くそじじいいい!!!」
「お前のスィーはどうして壊れたんだい?」
「あのでっかいすぃーがぶつかってきたんだぜ!!わるいのはあっちなんだぜ!!」
数十分後社員は男性に言う。
「こいつですね。修繕費は出ますよ」
「良かったぁ…」
「しかも…このスィー盗品ですよ。ほら、裏に登録番号と電話番号が書いてあります。公園で見つけたとか」
「元の持ち主は?」
「飼い主に電話して聞いてみたところ今行方不明らしいです」
「ひでぇ話だ」
「後日詳細をお送りします。こちらのスィーは持ち主に返しておきますので」
「ありがとうございました。あ、この野良はこっちで処分しちゃっていいですか?」
「ええ。お好きにどうぞ」
社員が帰り1人になった彼はどうしたものかと悩んでいた。
「ゆがああ!!!!がえぜええ!!まりささまのすぃーがえぜええ!!!!」
「盗んだものなのによく言うよなぁ」
「ごぢゃごぢゃいうなああ!!!がえぜえ!!!!おわびとしでおいしいものもっでごいい!!」
彼は野良まりさを掴むと台所に向かった。
「ちょっとやってみたかったんだよな」
フライパンに油を敷きコンロの火を点けた。フライパンが熱くなったところで野良まりさをフライパンに押し付けた。
「ゆぎゃあああ!!!!あぢぃいいいいいいいい!!!!」
野良まりさは飛び出そうとしたが上から男が力を込めて押している。ジュウウウッ!!と底部が焼ける音がする。
「はなぜえええええ!!!!!まりざざまをだずげろおおお!!!」
「もう少し我慢しなよ」
別に足焼きを楽しみにしていたわけではなかったのだが野良まりさの反応がつい楽しくなってしまい足焼きを続行した。
「じぬうう!!!!ゆぎゃああああ!!!!だじでえ!!!だじでえええ!!!」
少々焦げ臭い匂いがしたので野良まりさを掴み上げた。底部は真っ黒だ。
「ゆひぃぃぃぃ……。あ…あんよざんがぁ……。いだいよぉ……」
虫の息の野良まりさを俎板の上に乗せた。少々生きが悪くなっているため冷蔵庫からジュースを出し軽く頭からぶっかけた。
「なにずるんだぜえええ!!!!よぐもやっだなああああ!!!じねえ!!!じじいはさっざとじねえええ!!!」
元気になった野良まりさを見て彼はほくそ笑んだ。彼の手には包丁が握られていた。
「ゆ!!な…なにずるんだぜ!!!」
キラリと光る包丁を見て野良まりさは体を震わせた。包丁は野良まりさの脇腹(?)に触れている。
「な…なに……ゆぎゃああああああああ!!!!!いだいい!!いだいいいい!!!!ぎらないでええええ!!!」
包丁は脇腹から頬、そして頭頂部へ切れ込みを入れた。
「あ、帽子邪魔だったな」
彼は野良まりさの帽子を取った。ふと包丁を見て呟いた。
「あれ、餡子が付いてない。ちょいと浅かったか」
彼は脇腹の切れ込みをなぞるように包丁を動かした。さっきより若干力を入れて。
「あががががががが!!!!!いだいいい!!!!やべ!!うぎゃああ!!!!」
頭頂部まで切るとそのまま反対側の頬を切り下腹部まで切れ込みを入れた。これで一直線に切れ込みが入ったことになる。
「ぼうやべでええ!!!!わるがっだでずうう!!!まりざがわるが……ぎゃああああああああ!!!!」
野良まりさの謝罪を聞かず今度は背中から切れ込みを入れ始めた。背中から頭頂部、そして顔の真ん中を切れ込みが走った。
「ゆひぃいいいい!!!!!ひぎいいいいい!!!!!!」
この調子で彼は3つの切れ込みを入れた。上から見ると切れ込みは"*"のようになっている。
「ゆるひひぇくださいいいい!!!!!まりひゃがわるひゃったですうう!!!!ゆひぃいいいいい!!!!」
顔の真ん中を切られているせいか呂律が回っていない。彼は今度は頭頂部の切れ込みの交わった部分を穿っていた。
「じたばたするなよ。脳みそ潰しちゃうからな」
「いぎぃいぎいぎいぎぃいいいい……いぎゃい……やべで……じぬううううう…」
頭頂部の皮が少し捲れた。
「じゃあまずは背中からいってみるか」
少し捲れた皮を摘み下方向に力を加えた。
「ひ……ひいいい………あぎゃああ!!!…ぎゃあああ!!ゆぎゃああああ!!!!!!」
皮はぺろんと剥けなかった。とりあえず生きているモノであるせいか少々餡子と癒着していた。
「むがないでええええ!!!!じぬうう!!いじゃああああ!!!!ゆるじじぇええええ!!!!」
あまり音はしなかったがブヂブヂ…という感触がした。剥がれた所は真っ黒な餡子が見えている。
「ああ……あ……ゆぎいい………ぎゃ……ゆひぃ……」
背中の右部分が全て剥がされた。
「じゃあ今度は左側面を剥いちゃおうね」
再び頭頂部から皮が剥がされていく。
「ぼうやべでええ!!!!!じぬうう!!!!!じんじゃううう!!!!ゆぎぃいいい!!!!!ひぎゃああ!!!!」
「安心しなって。殺さないよ。気持ち悪いから顔はやらないでやるからよ」
結局野良まりさは顔を除いた全ての皮を剥がされてしまった。顔を剥いだら剥いだで目や歯が剥き出しになるのは抵抗があったのだろう。
「ほれ、もう悪さするんじゃないぞ。気持ち悪いから外で死ね!」
野良まりさは漸く解放された。前から見れば普通のまりさだが横や後ろから見ればただの餡子の塊だ。
「ゅ……ゅ…ゅゅ……・・・ゅ・・・」
これでも生きているのがこの生き物の謎だ。呻き苦しんでいる。底部が痛めつけられていなかったら動けたのだろうか?
次の日男が家を出ると野良まりさだった餡子の塊と皮が分離していた。誰かが顔を蹴飛ばしたのだろう。
最終更新:2011年07月28日 19:54