てゐ×ゆっくり系2 崩壊と嘘

部屋の中に一匹のゆっくりれいむがいた
彼女は自分のことを人間だと思っている

おねーさんにそう教えられたからだ
おねーさんも人間らしい

「あなたは誰?」
いつものアナウンス
「にんげんだよ」
いつもの答え
「本当に?」
いつものアナウンス
「にんげんだよ」
いつもの答え

「本当の事を教えてあげる」
いつもと違うアナウンス
部屋のドアが開くと、そこから自分と似た容姿の人間達が

「おはよう」という人間の挨拶は
「ゆっくりしていってね!!!」というゆっくりれいむたちの挨拶にかき消された






「ゲシュタルト崩壊?」
「アレンジを加えてみたんだけど、面白そうでしょ?」
「アイヒマン実験の次はゲシュタルト崩壊、永遠亭はいつの間にかナチスになちゃったウサー」
おどけて両手を挙げもうダメだーのポーズをとるてゐを尻目に八意永琳は資料になにやら書き込んでいた
「あー、なんで私?鈴仙の方が適任じゃない?」
「あなたの方がイタズラには向いてるでしょ。それにあの子はこういう救いの無い実験は不得手なの」
「実験とイジメの区別がついてない、倫理観の無い研究者による生物実験。バイオハザード確定ウサー!!」

用意されたのはそこまで広くない部屋だ
通常サイズのゆっくりなら30匹位入る程度の
仕掛けは極簡単なものだ。エサが出てくる箱を置いておくだけ
あとはアナウンスで質問をするだけ


用意されたのは子から親への中間地点ぐらいのゆっくりれいむだった
実験で徹底された事は一切手出しをしない事
故にゆっくりたちが寝静まる深夜に地上の実験場から地下の部屋に移された

その部屋にかけられているプレートは
「ゆっくりによるゲシュタルト崩壊実験」と無機質な字で書かれていた
少しでもゆっくりたちを歓迎しようと鈴仙がいつも用意している可愛い文字のプレートは無かった


ゆっくりれいむは生まれて初めて一人で起きた
時計は既にお昼過ぎだった、他のゆっくりがいなければこんなもんだろう
「ゆっくりしていってね!!」
目覚めと共に行われる挨拶が高い天井に吸い込まれて無意味にこだまする

「ゆ?・・・おかーさん?みんな?どこー?!」
しばらく辺りを見回すがこの部屋に隠れるようなところなんて無い
ためしに小さな箱の傍まで行ってみる

「あなたは誰?」
そこへ質問が投げかけられる
「ゆ?だれかいるの?」
「あなたは誰?」
「ゆ?どこ?どこ?」
辺りを見回すが鏡に映った自分しかいない
「あなたは誰?」
「れいむだよ」
「本当にそう?」
「ゆ?そうだよ。れいむだよ」

それ以降、声はしなくなった
代わりに箱からエサが出てくる
「わぁー!!」
ビスケットが三枚と魚肉ソーセージが一本、それとミックスベジタブル
ゆっくりには十分すぎる食事だ
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」
食べ終わると後はゆっくりするだけ
何も無い部屋だが、天敵もいない
ゆっくりれいむはウトウト眠りについた


「ゆっくりしていってね!!」
周りは無言である
小箱まで行くとエサが出てくる
するとアナウンスがされる
「あなたは誰?」
「れいむだよ」
「本当にそう?」
「なんどもきかないでよ」

そんな日が何度か続く
イライラする日もあったが今は何より心細い
「あなたは誰?」
「れいむ・・・」
「本当にそう?」
「・・・」

だんだん物事を理解できなくなっていくゆっくりれいむ
食事が出てきても、それが何か分からず
敵だと思い当り散らしたかと思えば、丸いバターロールを自分の妹だと言い出した
それでもお腹は減るので、妹に謝りながらバターロールを平らげる
昼も夜も歌い続けた事もあった
ただ、「あなたは誰?」という質問には答えた

「わ゛がら゛な゛゛い゛!!」
涙をダラダラ流して大声で泣くゆっくりれいむ
一頻り泣き叫んだ後は気が狂ったように暴れた

暴れ疲れたのか、コテンと倒れる
「あなたは誰?」
「も゛う゛ほ゛う゛っでお゛い゛で!!」
それからゆっくりれいむは死んだように眠りについた








「あははははは、もうあいつ、自分のことゆっくりだと思ってない!!
コントロールルームで爆笑するてゐを尻目に永琳は次の何かを考えていた
「え、あ、永琳様、何か悩んでる?」
「えぇ、この後、どうしましょう」
「何なら私が撲殺してきますけど・・・あ!!」
何か閃いたのかてゐが大声を出す
「そうだ。私があいつに自分がなんだったか思い出させて上げますよ」
「・・・あなたにしては優しいのね」
「だって、あいつは人間なんですよ!!」
ビシッとモニターに映るゆっくりれいむを指差すてゐ
「やっぱり、この実験はあなたで良かったわ」
てゐの頭をなでる永琳は本当に嬉しそうだった


部屋のドアが開く
とことこと小柄な女の子が走ってくる
可愛らしいワンピースにニンジンの首飾り
もこもこした耳としっぽがなければまるで人間に見える

「ああ、ここにいたのね」
目薬を使って、目を潤ませながら
「ゆ?ゆ?」
「私の可愛い妹、ここにいたのね。こんな所で寂しく過ごさせてごめんなさい。こんな所、人間の住む場所じゃないわ」
「ゆ・・・おねーさん?」
「そうよ。人間のあなたをこんな所に囚われてしまったのは私のせいなの、許してね」
ギュっと抱きしめられるゆっくりれいむ
何日ぶり、何十日ぶり、もっと途方も無い時間を過ごしてきて
久しぶりに、まるで初めてのような感触を思い出す
「ゆっくり・・・」
「違うのよ。れいむ、あなたは人間なの。人間の挨拶は『おはよう』よ」
「お、は」
「そう、言ってごらん。おはよう」
「おは・・・よう?・・・おうはよう!!」
「そうよ、おはよう、れいむ!!」

かかった。その笑顔に気付くほどゆっくりれいむはゆっくりしていなかった
今はただ、自分が何者か分かった嬉しさと姉の優しさに泣くばかりだった

れいむは人間だった
思い出した。優しいお姉さんもいた
れいむはとっても嬉しかった

お姉さんはれいむを膝に置き、えさを食べさせてくれた
知らない唄も歌ってくれた、疲れるまで遊んでもくれた
言葉を一杯教えてくれた、ギュッと抱きしめてくれた
れいむは人間に生まれてよかったと思う
おねえさんと一緒の人間でよかったと心から思う

鏡の前でリボンを結びなおしてくれた事を覚えてる
私はこんな姿をしていたんだ。おねーさんとちょっと違うけど
私も大きくなったらおねーさんみたいになるんだ

ある日お姉さんはちょっと出かけるらしい。でもすぐに戻ってくるからと抱きしめてくれた
れいむは我がままを言ったが、お姉さんが困ったような笑顔を見せると
我慢しようと思った

すると

「あなたは誰?」
いつものアナウンス
「にんげんだよ」
いつもの答え
「本当に?」
いつものアナウンス
「にんげんだよ」
いつもの答え

「本当の事を教えてあげる」
いつもと違うアナウンス
部屋のドアが開くと、そこから自分と似た容姿の人間達が

「おはよう」という人間の挨拶は
「ゆっくりしていってね!!!」というゆっくりれいむたちの挨拶にかき消された

混乱するゆっくりれいむ
「あ、れいむ、ゆっくりしていってね!!」
不意にゆっくりれいむに声をかけるものがいる
「お、おはよう」
初めての相手に緊張した面持ちで挨拶を返す
「ゆ?どうしたの?にんげんのあいさつなんかして」
「だって、れいむはにんげんだもん」
「ゆ?れいむはゆっくりだよ。にんげんじゃない」
どうしたの?どうしたの?と集まってくるゆっくりれいむたち
れいむは鏡の前に座らされた事を思い出した
全く同じ姿をしている者達が自分たちは人間じゃない。あなたも人間じゃないと言っている


「あなたは誰?」
いつものアナウンス
ほぼ全員が「ゆっくりれいむ」と答える中で
人間だと信じ込んでいたれいむは再び崩壊を起こした







「おーおー、やりますね。あいつ、おお、今度は噛み付いたよ。いいねいいね」
崩壊したれいむが自分の似た姿に者に一斉に食って掛かってから一時間
本能むき出しのれいむは強かった。というより、周りが弱いのだ
薬で適当に弱らせてある。れいむが自分が人間だと言い張れるように
全部殺すのだ、自分と似た者を全部殺す
「ゆっくり」なんかじゃない「にんげん」だ
おねーさんといっしょの「にんげん」なんだ

「てゐ、遊びはほどほどにしてちょうだい」
永琳は少し不機嫌そうに言う
「わかりましたー」
不満そうに答えるてゐはマイクのスイッチを入れる

「れいむ、大丈夫?」
優しいおねーさんの声だ
「う、うん、れいむ、にんげんだもん。つよいよ」
「そうね。でも、お姉ちゃんが少し手伝ってあげる」
「どうやって」
逃げ惑うゆっくりれいむたちを尻目にれいむとおねーさんの会話は続く
「今からゆっくりたちが死んじゃう空気を入れるわ。大丈夫、人間は死なないから」
「そんなことできるの?れいむ、にんげんだからだいじょうぶだね。おねがい」

マイクのスイッチを切り、爆笑しながらガスの注入ボタンを押す
「良い性格してるわね」
「褒めても何もでないウサー!!」
またてゐはおどけて見せた



兎たちがゆっくりの死体を袋に入れていく
誰も彼も一緒くたに、人間だったれいむはもう袋に入れられただろうか?
それともまだこの死体の山の中にいるだろうか
しかし、実験の概要を知らされていない兎たちの手つきは無慈悲だ
もし、誰かがれいむを自分を人間だと信じていたれいむの事を知っていたら
優しく扱ってくれたかもしれない
だが、そうはならない。この実験には実行者の言うように救いが無い














~あとがき~
ゆっくり虐待スレ16の>>29さんのネタを基に書かせてもらいました

by118

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最終更新:2008年09月14日 08:25
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