チルノ×ゆっくり系7 チルノ助ける

氷の妖精が一人、月夜に口笛を吹く
水面につけた足を遊ばせると月の兎が踊る
その言葉の意味を妖精は良く知らないが「風流だ」と感じた
傍らにはあなたは冷たいのが好きだからと友達が淹れてくれた水出し珈琲
大事そうに口に運んでは、「やっぱり苦いじゃない」と文句を言った
そして、思い出したかのように吹く口笛は夜には似つかわしくないほど調子っぱずれだった

「ゆっくりしていってね・・・」

口笛に誘われたのは一匹のゆっくりれいむだった
顔は汚れ、顔にざっくり傷を作っているが餡子の流れは止まっているらしい
それとも流れ出すほどもう餡子が無いのか
不死性からか死に鈍感な妖精も、終わりを連想する
その子の餡子の流失は止まっていたが、死が流れ出ているのが分かった
命がゆっくりにあるのか、妖精は知らないが
そういう生きるとか動くとか遊ぶとか食べるとか、そういう事をする源が流れ出てしまっていた

「ゆっくりしていってね」
それでも何か伝えたいのか必死に自分に話しかける
珈琲をひと口含み渇いた口の中を潤す
忌々しい。死ぬのなら森なり人里なりで死ねば良い
貧しい人間なら死んだゆっくりでも土ぼこりを払って
ご馳走とありがたがって食べるだろうに
森ならば蟻ともっと小さい名も知らないような虫が分解してしまう
それなのに、何故この月明かりの綺麗な湖畔にやってくるのか

「ゆっくりしていってね」
それでも何か伝えたいのか必死に自分に話しかける
珈琲をひと口含み渇いた口の中を潤す
不思議だ。助けを求めるなら妖精じゃなくて良い
妖怪なら物好きが多く何より強い
何かと揉め事にちょっかいを出す天狗や鬼に話せば良い
人間ならばあの不死鳥を纏った少女だ。死に直面しているなら気まぐれを起こしてくれるかもしれない
それなのに、何故この妖精の歌う湖畔にやってくるのか

「ここはあんたがどんな事を望んでも無理だよ」

たぶん、このゆっくりれいむはあと数時間で死ぬ
人里に行くのは無理だろう。それに夜中は人間達の時間じゃない

「ゆっくりはなしをきいてね」
「・・・」

健気なのか無能なのか
ゆっくりれいむは氷の妖精の元を離れなかった

「お、おはよう!」

急にゆっくりがそう挨拶する

「にんげんさんのあいさつしなきゃね、れいむ、ゆっくりまちがちゃったよ」
無理に作った笑顔で傷が開き痛々しい
それでも媚び諂い引きつった笑顔を必死で作るゆっくりが痛々しかった

「れいむはね。れいむっていうんだよ。おねーさんはなんておなまえ?ゆっくりおしえてね」

氷の妖精にふと遊んでやろうと言う考えがよぎった
どうせ、仲間は皆寝静まってしまった夜
遊び相手なんて水面に映る月の兎ぐらい
それなら、このまだ喋る饅頭の方が退屈凌ぎには良いかもしれない

「あたいはチルノ」

「うん、チルノさん。チルノさん、れいむのおはなしゆっくりきいて」

「いいよ。話してごらん」

チルノはポットを持ってカップに珈琲を注ぐ
たっぷりミルクをいれ、スプーンでよくかき混ぜる
どうして砂糖を持ってこなかったんだろう。チルノは少し後悔した
チルノが珈琲を一口飲むのを待って、ゆっくりれいむの話は始まった

「れいむはまえににんげんさんにかわれてたゆっくりなの」
話は簡単だった。れいむは昔、人間に飼われていたが
その人間が何らかの理由でれいむを飼えなくなったので
仕方なく、れいむは家を出た
それから程なくして、れいむは形の良いゆっくりまりさと恋に落ち
二匹の子どもを授かった。しかし、まりさはすぐに別の場所に恋人を作りどこかへ行ってしまった
それでも、れいむは愛したまりさとの子どもを大切に育てた
そこへ、すごく大きなゆっくりまりさがやってきた
どれぐらい?と聞くとチルノより大きいと答えた
木を使って大きさを聞いてみた、「このぐらい?」もっと上「このぐらい?」もっと「この辺りかな?」それぐらい
大人の女性ぐらいの大きさ
それが子どもを連れ去ってしまったらしい
れいむも捕まりそうになったが、寸での所で逃げてきた
その際に顔に傷を負ってしまったが

「あのね。チルノさん、おねがいがあるの」
大体予想はつく。その子どもを助けて欲しい
「れいむのこどもをたすけてほしいの」

「あんた、正気?あたいが子どもを助けたとして誰が面倒見るの?」
れいむの考えなしの言動に少し言葉を荒げるチルノ
「チルノさん、まりさがね。もりのたきのそばにすんでるの。それでまりさがもしなにかあったらこどもたちだけならめんどうみるよって」
「ふぅん」
この親も身勝手だが、その相手のまりさも随分と身勝手だ
「たすけて、まりさのところにつれていってあげて」
「まりさが約束を破ったら?」
「まりさはそんなことするゆっくりじゃないよ」
「じゃあ、あんたの願いは子どもを助けてそのまりさの所に連れて行って欲しいって事なの?」
「そうだよ。チルノさん、おねがいできる?」
チルノは珈琲を一口のみ、いろいろ考える
そんなデカいゆっくりなら一度退治してみたい
大ガマ氷漬けの練習相手にはなるだろう

「いいよ」
「よかった。これでゆっくりできるよ」
その言葉以降、ゆっくりれいむは喋らなくなった
行きつった笑いではなく本当の笑みのまま動かなくなった
チルノはそれを湖に投げ入れる
珈琲を一気に飲み干すと
デカいゆっくりがいる巣穴に飛んだ



「きりきりはたらいてね!!」
「おまえたちはゆっくりしなくていいよ!!」
巨大なゆっくりれいむは普通のサイズのゆっくりたちに命令をしている
ゆっくりたちは一列になり口に干草を銜えて運んでいる
洞窟の奥に集められた干草
「ほら、ぜんぜんたりないよ。まりさをゆっくりさせないき?!」
洞窟の中にいた巨大なゆっくりまりさが舌で少し大きなゆっくりれいむを叩く
「やめて、このこはおなかにあかちゃんがいるの。わからないの」
勇気を出してゆっくりちぇんが飛び出す
「かんけいないよ。それにどれいのくせにこどもとかつくらないでね!!」
舌でひょいとすくわれたゆっくりれいむはそのまま巨大なゆっくりまりさの口の中に消えていった
「ひどい!!」
涙を流すちぇんに後ろにいたゆっくりアリスが話しかける
「・・・ちぇん、はやくしましょ」
「でも、れいむが」
「ちぇん、はむかったらころされるわ」
「わ、わからないよ・・・」
ゆっくりちぇんはれいむとその子どもの死と理不尽なゆっくりまりさの行動と自分の無力さに涙した



「あー、こういうのを何て言うんだっけ・・・えーっとナントカ収容所・・・まぁいいや」
チルノは空の高い場所から巨大ゆっくりたちの巣を見下ろしていた
普通サイズや小さいゆっくりたちは奴隷のように働かされ
何か気に食わないことがあれば、殺されるか食われるかだった
面白そうだ。チルノは笑顔になる
頬を押さえて、クールな顔を作ろうとするがどうもニヤけてしまう
「・・・とりあえず、作戦を立てるわ。最強のあたいが敵を蹴散らす。よし、完璧」
ポケットからスペカを取り出す

「雹符!ヘイルストーム!!」

激しい雹の嵐と共にチルノは上空から一気に地表に突撃した
チルノにとってこれはゲームだった。悪い奴らをやっつけるただのゲーム
その途中で誰が死んでも構わない
でも、難易度を上げてみよう。そう思ったチルノは弾幕をコントロールする
デカイゆっくりはテロリスト、小さいゆっくりは民間人、誤射はダメ

コントロールの結果、雹は外で見張りをしていたデカいゆっくりれいむ二匹にのみ降り注いだ
着地と同時に、回し蹴りを巨大ゆっくりれいむに打ち込む
巨大ゆっくりれいむの身体が大きく揺れる
「ゆ?なんで?!」
回し蹴りは抉り取るように巨大ゆっくりれいむの一部を剥ぎ取る
できた穴に右手を突っ込み、餡子の中に氷塊を作り出す
「ゆ゛ぎぃ!!」
体の中に異物をぼっこり孕んだゆっくりれいむはバランスを崩し跳ねられなくなる
もう一匹が助けに体当たりしてくるが、こいつらの動きは雑
ひょいと上に逃げてやると、急停止できずにバランスを崩している仲間に突っ込む
チルノは両方ともまだモゾモゾと動けていないうちに
攻撃を加えていない方に取り付く、左目の眼球に触れ凍らしていく
ゆっくりの特筆すべき弱点は目だった。ほとんどの場合はそんな小さな場所は狙わず
頭から踏み潰してしまうが、相手が巨大な場合は別だ
ここを狙えば動きも遅くなるし、何より戦意を奪える
凍った左目を蹴る砂糖細工のように割れる。次は右
ゆっくりれいむは何が起こったのかわからない内に両方の目を失った
「ゆ、みえない。れいむ、どこ?」
下手に動くと仲間を潰してしまう
そう思って動かないでいる失明したゆっくりれいむだったが
さっさと逃げればもう少し生きていられたかもしれない
それまで眼球が入っていた穴にチルノの両手が突っ込まれる
餡子の中に氷塊を作っていく、それも異物レベルではない
口から餡子を押す出しゆっくりれいむの中身はほとんどが氷になってしまった
今度は起き上がれなくなっているゆっくりれいむにしがみつく
口に手を突っ込み、手当たり次第に氷柱を撃ち込む
ゆっくりれいむの絶命を確認すると辺りを見回す
大きな洞窟とそこを中心とした草原、森が奴らの巣になっている
チルノはさっきの奴らの悲鳴を聞きつけてやってきた巨大ゆっくりまりさを視認すると
力任せに体当たりした


巨大なゆっくりはエサをまともにとれない
音で虫は逃げるし、花や草は踏み潰してしまう
木の実は・・・木自体を揺らして採れるが、全然足りない
人里に下りればすぐに見つかり、人間達が何を投げてもたいてい当たる
一匹、人里に降りた巨大なゆっくりまりさがいたが斧や鍬、鎌や鋤などでメタメタにされた
それでもなお生きていたので見せしめに生きたまま火をつけられた
人間達は笑っていた。なんて間抜けな奴だと
巨大なゆっくりは山に引きこもった。どうやってエサを手に入れるか
自分でする必要などどこにも無い
自分達より小さなゆっくりやらせよう
巨大なゆっくりは暴力で自分達より小さなゆっくりを支配した
エサを運ばせ、寝床に藁を用意させる
まだそれほど大きくない自分達の子供の世話をさせ
退屈しのぎに殺す
しかし、それが変わってしまった
何がいけないのだろう

自分に追突した妖精から放たれる氷柱の弾幕で絶命する巨大ゆっくりまりさは疑問を抱き死んでいった


「わかるよー、あなた、たすけにきてくれたんだね」
チルノにゆっくりちぇんが話しかける
「へ?あーあ、そうそう、あんたは逃げないの?」
先ほどの混乱で普通のゆっくりたちはあらかた逃げてしまった
「ちぇんにはきがかりなことがあるんだよ」

ゆっくりちぇんの話はこうだった
前に連れてこられたゆっくりれいむの赤ちゃんがいる
その子が何なのかよく分からないが
もし、奴隷としてつれてこられたなら開放してあげたい
洞窟の奥にはゆっくりまりさ、それも今までのより巨大な奴がいて
その子たちを監禁している

「あー、なるほどね。じゃ、あんたはここで待ってなよ。あたいがちょちょいとやっつけて来るから」
チルノにしては正しい選択だった
滝の傍にいるゆっくりまりさ、なんかじゃ全然手がかりにならない
ちぇんがいれば探しやすいかもしれない
実際は自分の凄さを見せたい。ってのが本年であったが


「ゆっくりできないやつはくるな!!」
洞窟に入るとそんな声が奥の方からした
天井が低いから飛ぶのは危険、歩いて進む
一歩一歩、何歩か進むと
また「ゆっくりできないやつはくるな!!」と声がした
さっきより大きな声、確実に敵に近づいている


圧倒的だった
相手にならなかった
狭い洞窟の中では巨大なゆっくりまりさはうまく立ち回れない
それに対して小さくすばしっこいチルノは終始有利に事を進めた

「こどもたちをこどもたちをまりさはまもるんだよ!!」

当たらない体当たりを繰り返す
チルノに負ける要素なんて無かった


「・・・あのね、おねえさん、おねがいがあるんだよ」
「今まで死ねとか殺すとか言っておいて?」
「それでも・・・おねがいがあるんだよ」
瀕死の巨大ゆっくりまりさは命乞いをしなかったが
奥にいるゆっくりのこの面倒を見るようにチルノに頼んだ
「元より、そのつもり、あたいはその子たちの母親に頼まれてきた」
「ゆ?れいむに?・・・あんなバカなおやにこどもはそだてられないよ」
「れいむは死んだよ。その子たちを育てるのはもう一方の両親。滝の傍に住むゆっくりまりささ」
「それは・・・まりさのことだよ・・・」

ゆっくりまりさはゆっくりれいむを置いて出て行った
そこでゆっくりパチュリーと恋に落ちた
二人は知恵を出し合いたくさんの食料を得た
パチュリーは途中で死んでしまったが
ゆっくりまりさはどんどん大きくなった
そして、巨大なゆっくりの群れに向かい入れられた
ゆっくりまりさは思った
ちゃんとエサを取れば、大きくなれる
久しぶりに自分の子を見に行こう
子供達の姿は自分より遥かに小さく弱弱しかった
だから、れいむから取り上げた
ここで巨大なゆっくりにしようと思った

「ふーん、まぁ、いいや。あの子たちは死なない。あたいが別の親を探してやるよ」
「ゆっくりそだってね」
目を閉じる巨大なゆっくりまりさに氷柱が降り注いだ



「わかるよー。このこたちをそだてればいいんだね」
「お願いできる?」
ゆっくりちぇんはチルノを待っていた
友人のゆっくりアリスも一緒に
「あんたら、これからどうするの?」
「ここにはいられないのはわかるよー」
「とかいはのアリスににあうばしょをゆっくりさがすよ」
「子どもを抱えて?」
「うん、ちょっとむずかしいたびになるけど」
「・・・とりあえず、あたいの家においでよ。都会派もゆっくりできると思うよ」


氷の妖精が一人、月夜に口笛を吹く
水面につけた足を遊ばせると月の兎が踊る
その言葉の意味を妖精は良く知らないが「風流だ」と感じた
傍らにはあなたは冷たいのが好きだからと友達が淹れてくれた水出し珈琲
大事そうに口に運んでは、「やっぱり苦いじゃない」と文句を言った
そして、思い出したかのように吹く口笛は夜には似つかわしくないほど調子っぱずれで
一緒に歌おうとする子どものゆっくりれいむたちを困惑させた

















「師匠、報告が・・・」
鈴仙は八意永琳に部下が調べてきた資料を渡す
「まぁ、いいわ。巨大なゆっくりは製品に向かない。工場側もそう言ってきてるし」
資料には『実験中の巨大化ゆっくりのコロニー全滅について』と書かれていた
「あと、あの薬、てゐが持ち出したんですって?」
「はい、二錠ほど」
「どうなったの?」
「パチュリー種は大きくなる事なく死にました。まりさ種はかなり巨大に。群れのリーダーにまでなってました」
「ふーん、でもこの薬の研究はコレで終了。薬は全部破棄してちょうだい。あと、てゐを呼んできて」
鈴仙はオフィスを出ようとする
「待ちなさい」
「は、はい、何でしょう」
「一応、巨大化ゆっくりが全滅したか、あなたが確認に行ってきなさい。チルノが全部片付けてくれたと楽観視はしたくないわ」












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最終更新:2008年09月14日 08:25
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