アメリカの某所。カナダとの国境付近

本来観測所として設営された大規模な施設がこの期間中はYRWG【ゆっくり・レイプ・世界・グランプリ】の会場となっていた
その一角にある選手村の一室

「おーーーそーーーーいーーーーーーー」

見知らぬ土地に何日も滞在し、おまけに息子にも会えないという理由でふらんは夕食後、父相手にぐずっていた
ちなみにふらんの首には飼いゆっくりを証明する大会委員会が発行するタグがぶら下がっている
「あ~~よしよし。ほらふーちゃん。高い高ーい♪」
両脇に手を入れて持ち上げる
「・・・・・・・」
ふらんは冷たい目で父を見下ろしていた
「低い低ーい……」
ロウテンションでふらんを床に降ろした
「全く、何をしているのですかあなたは」
「母さん」
ふらんの相手を今部屋に戻って来たきめぇ丸とバトンタッチする
きめぇ丸の首にも飼いゆっくりのタグがかかっていたが、部屋に戻ると同時にそれを外し乱雑な手つきで机に置いた
「なんの事情も聞かされないで、一週間もこんなところにいたら誰だってぐずりたくもなります。おお憐れ憐れ・・・・疲れたでしょう、今日はもう寝なさい」
ふらんを布団に寝かせて頭をポンポンと触る。その間も頭をシェイクするのは忘れない
「あいつ、いつくる?」
「明日来ますよ」
我が子を寝かしつけるように言い聞かせる
「きめぇまる、きのうもそういった」
「そうでしたっけ? おお、デジャヴデジャヴ」
その言葉を聞くとまるで不貞寝をするように、頭から布団をかぶりふらんは動かなくなった

「こんな可愛い子を待たせるとは。父親に似てトコトン甲斐性なしですね。おお、遺伝遺伝」

父に聞こえるよう、わざとらしい声で言った










夜も更けたレイプクラブの地下室

「コツは掴んだか?」
「集中したいから話しかけないで」
まりさを両手で押さえながら冷たく言い放った
「つれないこと言うなよ~~~。こっちは酒飲みながら見てるだけで暇なんだから、少しはノッてこいよぉ」
「えーと。じゃあ、どうしてこの道に?」
目をまりさに向けたまま言った。訊くだけ訊いて、話しの内容を聞く気はなかった
よくぞ訊いてくれたと隊長は胸を張る
「8年前、俺はかつてパラシュート部隊に所属し隊長を務めていた。ある訓練で、降下した密林で4ヶ月の間、支給された道具だけで各自生き延びるというのがあった」
「へー、大変ですねー」
「水や食うもの、寝床は現地調達でどうにでもなった。しかし、どうしても調達できないものがあった・・・・・・・女だ」
「そのご意見。ご尤もだと思います」

まりさを固定して、力加減を考えながらツボを押す。先程からこの作業を延々と繰り返していた

「人間の三大欲求は睡眠、食事、性欲だ。睡眠と食事の二つは満たせても最後の一つはどうしても駄目だった」
「ですよねー。参考になりますぅ」

ツボを押されたまりさの顔が蕩けそうなほどに歪む

「訓練も三ヶ月目に入り、俺の精神はもう限界だった。その時俺の前に現れたのが・・・・・・」
「へーーーはーーー凄いですね」
「・・・・・・・・・」

幸せを体言する表情を見せた瞬間、まりさは体を小さく振るわせた

「むかし、むかし、あるところにグリーンベレーが川で洗濯をしていると、沈黙の要塞がどんぶらこ、どんぶらこと・・・」
「そうだったんですか。知りませんでした」
「お前人の話し聞けよ!! さっきからテキトーな相槌ばっ…」

「SUUUUUUUUUUUUUUUUUUKKIIIIIIIIIRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
隊長の怒鳴り声をまりさの嬌声がかき消した

「な、なんだ?」
あまりの大声におもわず耳を塞いでしまった
「太い親指よりも、細い小指で突いた方が効果があるんだ・・・でも小指だと力加減が難しいな・・・でもコツは段々掴めて来た」
そうぼやきながら彼は、他のゆっくりを手に取った







「ボブ・・・ボブ起きて」
「ンン?」
バーのテーブルに突っ伏して眠るボブは体を揺すられて起きた
起こしたのは息子だった
「隊長さんが車を出してくれるから、早く準備して」
寝ぼけまなこのボブに隊長から預かった車の鍵を見せた
「スゴイネ。タイチョウニ、ミトメラレルナンテ」
話しは全てつけてあるようで。クラブのメンバーらしき男性がその鍵を受け取り駐車場に停めてある隊長の車に歩いていった
「今夜中にここを出れば。明日の昼には向こうにつくって」

車に乗り込み。目的地であるカナダの国境に向けて出発した


二人が出て行くと。バーのマスターは店に残っている客を帰して、店頭の電気を消した
隠し階段をつかい地下のクラブに降りて行く
「(こいつは凄ぇな)」
「(ほとんどアイツがやったよ・・・・片付ける身にもなってほしいね。Gスポット突きを完璧にマスターしやがった)」
飼育されているれいむとまりさがアクメ顔でこれでもかというほど床に転がっていた
「(愛車の鍵を他人に渡すなんてらしくないじゃないか。自分で会場まで送り届けてやればいいだろう? 飲酒運転なんてアンタ日常茶飯事じゃないか?)」
「(やだね)」
「 ? 」
「これ以上あいつと一緒にいると、多分嫉妬で殺したくなる」

最後の言葉だけ、英語ではなく日本語で言った





二人を乗せた車はハイウェイのゲートをくぐったばかりだった

「なんだろう。今悪寒がした」
「ジャァ、オンガクキク? キバラシニナルヨ」
MP3プレイヤーを彼に見せる
「コレ、エイガモ、ミレル」
「今は寝たいから、起きたら貸して」
「ワカッタ」
ボブは自分の耳にイヤホンをかけて、プレイヤーをいじり始めた


『こういう道具も、母さんは好きだろ?』
『くぅうう、あ・・・・・・ハァ。そ、そんなこと、は、ありません』
『そんな顔で言っても説得力ゼロだよ』
『悶える私の顔を見て喜ぶなんて、とんだサディストですねアナタは・・・・』
『褒め言葉として受け取っておくよ』


「はっ!」
不吉な会話が聞こえ、眠っていた彼の頭は一気に覚醒した
周囲の様子を確認する。自分は車の中にいて、すぐ隣にはボブ。運転席にはクラブのメンバーが仏頂面でハンドルを握っている
(夢・・・・なのか?)
「ドウシタノ?」
音楽を聴いていたボブが心配していた
「大丈夫、変な夢を見ただけ・・・・おっと」
車が小さく揺れて彼はボブに寄りかかった
『いいです! ああ!! やっぱり道具なんかよりもこっちの方が、ずっと!!』

ボブに触れた瞬間、そんな音が聞こえてきた
「・・・・・・」
ボブの耳をそっと手で触れてみた
『そんなに声を出していいのかい? あの子が起きてしまうかも? 今見つかったらどうなるんだろうね?』
『言わないで・・・・そんなこと、言わないでください・・・』

全身が聴覚器官の彼は、指先で触れただけでその音を拾うことが出来た
自分が聞いた両親の会話はボブのしているイヤホンから出ていることがわかった
ボブは両親の動画をMP3プレイヤーで再生して見ていた

「めがとんぱんちっ!!!」
「ガァ!!」
ボブの横腹を思いっきり殴りつけた
「なにちゃっかりコピーしているんだよ! いつした? 飛行機の中か?」
「70ドルハラウカラ」
「駄目だっつてんだろーが!」
プレイヤーを取り上げてデータを消去する
「USBとかにも保存してないだろうね?」
「ナラ、シンタイケンサ、スル?」
「服脱ぐなよ・・・・あっ!」
ルームミラーを介して運転手と目があった。バツが悪そうに運転手は目を背けた
「違います! 僕らそういう関係じゃありません!」
「ドンタッチミー!! ドンタッチミー!!」
「ボブがおかしいだけで僕は普通です・・・えーと、ア、アイアムノーマル! ボブイズアブノーマル!!」
「ノーサンキュ! ノーサンキュー!!」
「ちょっとボブ! この人の誤解を解いてよ!! もとはと言えばボブのせいなんだからね!!」

ようやく服を着なおしたボブが運転手の耳元に顔を近づける

「(なに俺のハニーに色目つかってんだよ? 仲間に入りたいのか?)」
「(違います! 違います!)」
「ボブてめぇ、今絶対に違うこと言ってるだろ!!?」

東の空に朝日が顔を出しかけていたが、それに気付く者は車内にはいなかった



「やっと着いた」
「ソウダネ」
車を降りた二人は運転手に礼を言い会場のゲートに向かい歩いていた
到着したばかりなのに息子の顔はげっそりとしていた
「クルマニ、ヨッタ?」
「誰のせいだと思ってるんだよ・・・」

選手ゲートの受付口
日本人の部署を見つけて係員に話しかける
「選手カードはお持ちですか?」
「これですか?」
「はい、それです。その紙をこの機械に差し込んでください」
言われた通りにする。機械に青いランプが点灯した
「紙が本物だということと、本人の確認がとれました。危険物の持ち込みが無いかチョックしますので鞄をこちらに」
(どんだけ厳重なんだよ)
指示に従い手続きを全て済ませる
「日本の選手村は東区の6です。どうかご健闘を」
(別に参加しに来たわけじゃないんだけどなぁ)

「ボクモ、ニホンチームノ、カンケイシャデス」
「では、証明書をこの機械に」
「OK・・・・アレ、ナイ?」
「本当ですか。困りました、どなたが確認の取れる方はいらっしゃいますか?」
丁度その頃、廊下にあったゴミ箱に息子がボブの証明書を捨てていた
「これで良し・・・・・・えーと東区は・・・・・」
ボブが父と連絡を取り、中に入れたのはそれから二時間後のことだった



案内板の通りに進み。日本の選手村になんとか辿りつく

【同好会本部】と札の掛かった建物に入る
そこで黒く頭のとんがった覆面と黒いマント(外道君スーツ)を身に纏いっていた者が何人かいた
正直異様な光景だった
「えーと、会長さんですか?」
「会長ならアッチだよ」
丁寧に教えてくれた

「遅かったな」
「はい、すみません」
その場に彼以外の面子もいるため、会長は男口調だった
「こうちゅう(交通)事故にあったと思って心配したぞ」
「甲虫?」
とりあえずこの人が会長に間違いないということは理解出来た
簡単な挨拶をしてから、父たちが泊まっている部屋の場所を訊き、別れた


父の居る部屋はそう遠くない位置にあった
ドアの前に立ち、息を整える
「よし」
この部屋にふらんがいる
ドアノブを掴もうと手を伸ばしたら、ドアが勝手に開いた。向こう側から誰かが開けたようだ

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

息子とふらんは無言で見つめあっていた

「おそい・・・」
「やっと会えた」

ドアの前でどちらからともなく静かに二人は抱擁した
身長差があるため、ふらんが彼の胸に顔を当てる形になる

「ずっと、まってた・・・・」
「これでも全速力だったんだよ?」
「それでもおそい、ゆっくりしね」

誤魔化されたと思ったのか、ふらんは不機嫌そうに頬を膨らます
頭を撫でてやるが機嫌は直らない

「ごめんね。遅くなって、本当に・・・でもここに来るまで、ずっとふーちゃんのこと考えてた」
「ばか」

寂しかったとはお互いに決して口にしなかった

「・・・・・おつかれさま。おまえよくがんばった」
「ありがとう」

彼の苦労が分らぬほど、ふらんも無知ではない
その言葉を聞けただけて彼は満足だった

「そういえば父さんに変なことされてない?」
「されてない」
「良かった」
「人目も気にせずハグとは、おお、若い若い」
うざったらしい目が二人を見ていた
「か、母さん! 来てたの!?」
自分に抱きつくふらんから離れようとしたが、ふらんの腕がそれを許さなかった
「私のことはお気になさらず、続けてください・・・」

扇のようなもので口元を隠しているが、母が笑っているのは明らかだった




「帰るから、飛行機のチケット代出して」
久しぶりに再開した父に最初に言った言葉がそれだった
「だが断る」
「出せよクソ親父。僕もふーちゃんも日本のゆっくりが食べたくてイライラしてるんだから」
「条件がある」
「条件?」
大会プログラム表を持ってくる
「父さんの代わりにこの個人競技に出なさい。60人参加するこの競技で、30位以内に入ったら日本に帰らせてやる」
そこにはショットガン方式と書かれていた
「まずルールはだな…」
「数制? 時間制? 自由型?」
「なんだ、知ってるのか。一分間の時間制で指定の道具なら使ってもいいという自由型だ」
「今日の何時?」
「午後の2時からだ・・・・・やる気があるのは結構だが、お前なんかヤケっぱちになってないか?」
「こっちはさっさと帰りたいんだよコノヤロー」




選手控え室
「デビュー戦ですね」
「やな言い方しないでくださいよ会長」
会長は外道君スーツを着てはおらず、会長の秘書という肩書きで彼の傍にいた
「大会選手には素性を明かさない権利があるんですよね?」
「そうです。試合直前の委員会の本人審査で本人の確認が取れましたら。その選手の国籍以外は公表されず、顔を隠しての競技参加が可能なんです。私はその制度を使って参加しています」
「じゃあ、僕もそれで」
「わかりました。競技の際にはこれをどうぞ」
虹色の生地の塊を渡される
「なんですかこれ?」
「外道君スーツwithレインボーヴァージョンです。私が特別にデザインしました。日本のユニホームです」
「なんで虹色?」
「シドニーの雪辱を今こそ…」
「・・・・あ、そうだ。話しは変わりますが、これを借りてもいいですか?」
いつかどこかで見たことのある細長い棒を手に取った。自由型ということで会長が色々と持ってきてくれていた中にあった
「素材は一流かもしれないですが使い辛いですよ? 結局だれにも扱えないとのことで近いうち廃棄予定なんです」
「構いません」
以前この棒を見たとき、言い知れる感覚を感じており、密かに気になっていた

控え室を出て、競技場へ向かう
指先で器用に棒を回しながら






















一週間後

「やっちゃった・・・・・・」
自宅のリビングで彼は同好会が発行するニュースレターを見てそうごちた
ニュースレターには『期待の新人。惜しくも5位』という小さな見出しがあった
顔と名前こそ書かれていないものの、試合の様子が克明に書かれていた。ちなみに母がこの記事の執筆に関わったらしい
「てか僕いつ会員になったんだよ!!」
頭を抱えて床に転げまわる
「うーーーー?」
ふらんも彼の真似をして頭を抱えて羽をピコピコと動かした

こんな事ならもっと手を抜いておけば良かったと後悔する
20位あたりの目立たない位置にランクインして誰の記憶にも留まることなくアメリカを発ちたかった
競技の途中、自分が余りにもハイペースだったことに気付き、途中でワザと失速したが、その時にはもう遅かった
回ってくる競技の順番が早く他の選手の記録がわからなかったため、加減の仕方がわからなかった
そしてあの棒と自分の相性が恐ろしい程にマッチしていた
手を抜かなければ裏ギネスの更新も簡単に出来たような気がする

「一時のテンションに身を任せた結果がこれだよ!!」

今にして思えば会長に頼むなど、競技に出なくても帰る方法はいくらでもあった
約束通り日本に早く帰ってくることが出来たが、5位という非常に不愉快な記録を残してしまった
ゆっくりレイプの大会に関わったことを悔やんでも悔やみきれない


彼が自分のしでかしたことに今更ながら悶えている時
「ただいま帰りました」
「帰ったぞー」

「おかえり」
「あ、お帰りなさい」

大会最終日まで残った両親はこの日ようやく帰国した

「おい見ろ! 5つの競技でトロフィー貰ってきたぞ!」
「うん。今度ゴミだしの日に捨てようね。日本の恥だから」
「最後の競技の決勝の相手が元米軍のパラシュート部隊の隊長だったんだがな・・・・・・・・全然余裕でした!!」
「惚れ直しましたよアナタ」
「じゃあ浮気したこと許してくれるかい? そろそろ戻っておいでよ?」
「駄目です」
「ちぇっ・・・・・まあそれはさておき」

父は鞄の中からのしが付いた封筒を取り出した

「優勝賞金の使い道だが。半分は会に寄付。ボブへのお礼。それで残りは新しい18禁のおもちゃに使うというので異存ないかな?」
「買うモノによりますね」
「あまあまがいい」
「いや、家計に入れてほしいんだけど」

彼の何の変哲もない日常が再び始まった



fin


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最終更新:2022年05月03日 22:21